寺地はるなのレビュー一覧
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ネタバレワイン農園で働く双子の姉弟。母の意思を守ろうとする姉と特にワインに興味があるわけでもない弟。この2人の違いがいい。自然を相手にし、うまくいくこと。いかないこと。どうしようもできない出来事。そういうことを繰り返しながらワインを作り、自分の立ち位置を見つめる2人。1人で背負いこむ姉と1人ではまだまだな弟。でも近くに誰かがいるという救い。苦しくなる時、逃げ出したくなる時にそういう存在がいることの心強さ。たくさんの工程を経て熟成して作られるワインのように、たくさんの人と出逢い、感情を知ってその人の味が作られ年々深くなっていく。新しいことを始めるワクワクと恐怖。でもその先にあると信じるもの。さまざまな想
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この心地よい集まりはいつまでも続くものではないんやろうとまず思う。満たされた人は自然に離れていくやろうし満たされなくても細い絆の集まりなんでちょっとしたことで切れてしまうやろう。そんなせつなさを内包しながらも補完し合っているうちにそれぞれの夜道に月が出たらええなという話。
自己の価値観を正しいとして押しつけてくる人々は実はそれこそが究極の「悪」やとは気づかないまま他者に澱を溜めさせるので深夜の散歩はその掃除でもあるんやろう。実のところ自己の価値観と他者の価値観は常に違うということさえ皆が理解しようと努力すればだいたいは改善できるんやろうけどそれが人には難しい。この話もスカッと終わるわけでは -
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世界に対して受け入れがたさ、あるいは後ろめたさのようなものを抱えながら生活している人たちの連作短編集。
各話の語り部が話しだす、めいめいの思い出の食べ物に心が温まった。人のこういうエピソードを教えてもらうのすごく好きなんだよなぁ。私自身もよみがえるものがたくさんある。
そうした思いを包括する最終話、『ピクニックバスケットの歌』がとても良かった。
残った女子たちによる、おだやかな春の日の持ち寄りピクニック。こういうあたたかい大人たちのまなざしの下で育った彼らなら、きっと大丈夫。ゆっくりと世界への信頼を取り戻していけるはずだと、根拠なく思うことができた。
余談だけど、このまえ読んだ『だから夜は -
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ネタバレ面白い面白くないはわからない。ただ一気に読めたし、読んだ後しばらく考えた。読んだ後に考えることを残してくれる本は良い本だと思う。だからこの本も良い本なんだと思う。
色んな人の感想が聞きたくなる本だった。
「発達障害は人の気持ちが分からない」とよく言われるしこの話にもあったけど、じゃあ発達障害の気持ちが分かる定型発達は何人出てきただろう?
定型発達が発達障害の気持ちが分からないことは「人の気持ちがわからない」に入らないのなら定型発達以外は人ではないってこと?
という言い方は意地悪だろうか。
感情を制御しない妹
診断を受けさせない、離婚しない、頑なな母親
穏やかに話し合いのできない伯父
そのフ -
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レースやフリルやリボンで彩られた下着を見てワクワクしていた子供時代。
入院中のお母さんのブラジャーを分解して、父に「異常、おかしい、いかがわしい」と言われるが、その時唯一味方をしてくれたおばさんとの交流を通して、自分が本当にやりたい事を見つけるまでが描かれた作品。
OLとして勤務する会社の社長はちょっと風変わりで、コネ入社の姪っ子はそんな叔父とは違って、人と違う事や周囲から浮く事を避ける傾向にある。
そんな2人の背景や会話は「自分らしいって?」や「多様性とは?」という事について考えさせられる。
そして、マリエさんが言った「わたしはいつか死ぬ」「できるうちに、できることをすると決めたの」とい -
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ネタバレ【男らしく、女らしく】そういう時代ではなくなった。無意識のうちに決めつけた発言をしてしまわないか気をつけようと思った。男女に限らず年齢や立場など、自分以外の誰かから決めつけられた〇〇らしく〜じゃなくて【自分】が大切。黒田縫製社長の視点が一番じんわりきた。子どもにとって両親以外に相談ができる大人の存在って大きい。大人になって、誰かの世話を焼いたり、頼りにしてもらえる子どもとの関係を築くことが、自分が自分でいられる、真っ直ぐに立っていられるような張りを与えてくれるんだな。あなたの決めたことを応援し、支える、見守る。大事だね。それはそれは美しいドレスができて満足でした。