寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「嘘や建前ば言わんとは、ただ自分が楽したかだけのこつやろうもん。他人にはいっさい 気遣いとうなかて、そらただの怠慢たい」
嘘や建前を言わず、やりたくないことはしない、そんな雨音に向けられた言葉。
私もずっと「嘘や建前」「察する」ことは善だと、大人の嗜みなんだと思ってきた。
読み始め、雨音の言動がいまいち理解できないというか、「うーん…?」という気持ちだったのはそこから来ているのかもしれない。
読み終わった今、過剰に他人に気を遣うことってはたして本当に必要なんだろうかと思う。それって本当に「気遣い」なのかな。人間って疲れる。
表紙のイラストの傘はあのシーンだったのか、と気付いた。
●よく -
Posted by ブクログ
ふんわりとした終わり方で、あの人やこの人はどうなったんだろうと気になってしまった。大きな事件が起きるわけじゃない、やさしい物語。
やさしい分ちょっぴり退屈に感じる時もあり、私にはあんまり合わなかった。
でも心に残る言葉は散りばめられていた。
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「仕事って楽しいですか」
楽しいものか。なにが楽しいものか。
金のために働いているだけだ。
今日も明日も生き延びるために、
ほんのすこしでも社会の役に立てるなら、
自分みたいなものでも
生きている意味があるもしれないと、
あると思いたいと苦しい息の下で願いながら、
ただただ毎日必死で働いているだけだ。
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「あたりまえ」は変わるんや。
変 -
Posted by ブクログ
タイトルと表紙の絵がファンタジーな話を連想させるが、全くファンタジーとは無縁の羽猫家のバラバラな家族と、その長男山吹の物語。
現実にはいない架空の犬を撫でながら幼い頃から生きてきた山吹。
物語というのは、言ってしまえば現実におこったことではない。嘘、です。
物語を読む、現実にはないなにかを心の拠りどころとして生きること。
人は見えない嘘を心に抱えて生きているのかもしれない。
わかっていても誰もが触らないように生きていく。
家族だって架空の犬であり、嘘をつく猫なのだろう。
嘘がほどかれたとき、その糸を手繰り寄せてまた紡いでいく、家族にしかできないことなのかもしれない。
彩瀬まるさんの解説が -
Posted by ブクログ
「自分」を持つとは何なのか。そんなことを考えた。
兄誠実が、失踪した弟の希望を捜索する中で、様々な人たちの生き方が出てくる。
「自分」を出せない人、「自分」に自信が無い人、「自分」を持っていないと思う人。
多くの人が「自分」を持って、生き生きとした人生を歩みたいと思っている。けれど、その「自分」はどのように見つければいいのだろう。見つけた「自分」は、本当の「じぶん」なのだろうか。
私はこれから多くの経験をする。そんな中でも、自分の意思を考え、尊重し、人と関わり、生き生きとした人生を送りたいと思った。
私がしたいことをする。嫌だと思ったことは、嫌だという。私がありたいような姿を目指し、求め続 -
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Posted by ブクログ
突然失踪した弟・希望ノゾミのゆくえを追う兄・誠実マサミ。希望のゆくえ、ね。
希望を捜し、彼と接点があった人とを訪ね歩く中で、自分が知らない弟の姿に出くわし、そして、弟と過ごした記憶をたどるうちに、誠実もまた自らの生き方を省みざるを得なくなっていく、みたいなお話。
現実を『見ずに済まそうとしてきた』誠実は、なんとなく誰しもそういうところはあるよなという感じで、読んでいてちょっとだけ胸が痛かったが、あのラストで浮かばれたのか、どうかな。
一方、自ら『空っぽなので』という希望の姿は、彼の失踪の謎から始まった話としては身も蓋もない。文庫のために書き下ろされた話でなんとか丸め込んだという印象。
好き -
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Posted by ブクログ
ネタバレ【収録作品】
「もうすぐ十八歳」 飛鳥井千砂
「ありふれた特別」 寺地はるな
「二人という旅」 雪舟えま
「漂泊の道」 嶋津輝
「祀りの生きもの」 高山羽根子
「六年目の弔い」 町田そのこ
冠婚葬祭アンソロジー。
「もうすぐ十八歳」 「成人」を巡る話。沖縄出身で、十八で子どもを産み、結婚した智佳。娘が十八になることで感慨を抱く。
「ありふれた特別」 取り立てて仲がいいわけでもなかった幼なじみたちの関係が変化した、出産騒ぎ。
「二人という旅」 結婚。旅をしている家読みのシガと助手のクローン・ナガノとの関係の変化。
「漂泊の道」 弔事のときだけ会う親戚のカナに漠然と惹かれる希和子の生き方。
「祀