寺地はるなのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
妙ちくりんなキャラクターの表紙が目を引く本書。
大阪某所にある〈暁町〉を舞台にした、リレー形式の群像劇、13話が収録されております。
暁町にある市場・〈あかつきマーケット〉のマスコット・「あかつきん」の失踪を皮切りに、その界隈の人々が悩みや葛藤を抱えながらも、“それでも生きていく”様が描かれております。
寺地さんは心の機微の描写がお上手なので、登場人物達のモヤモヤが実にリアルに伝わってくるんですよね。
なので、読んでいてちょっと心がヒリつくような部分もありましたが、それでも、
“皆、何かしら事情を抱えながらも日々をおくっているのだな・・”
と、出てくる人々が愛おしく思えてきます。
それぞれ -
Posted by ブクログ
突然行方不明になった弟・希望(のぞむ)。誠実(まさみ)は、弟を探して出会った人々に「弟はどんな人間だったと思いますか」と尋ねる。「とてもきれいな人でした。いつもやさしくて。」と言う元彼女。誰の頼みにもいいですよとこたえる都合のいい人と言う同僚。探偵のようなことをしているという男は「写真によってずいぶん雰囲気が違うんですね」と言った。元保育園の先生は「印象的な子だった」 。そして、一年以上一緒に逃げていた女性は、「どんな人間かって、そんなに大切なことなんでしょうか?…柳瀬さんは、ただ、柳瀬さんでした」。 最後に誠実は、不気味だとすら思っていた弟のことを理解できたのだろうか。自分の行きたいところ
-
-
-
-
Posted by ブクログ
私も親と折り合いが悪かったので、なんともいえない気持ちで読んだ。
自分自身がアラフィフになって改めて感じることは、親だからって皆んなが大人ではないということ。母親は動物的本能で子供を無条件に愛するというのも、都市伝説・おとぎ話の類いだと思っている。
自分の親が世間一般の親と違うと感じても、子供としてはなかなかそれを認めたくないし、自分も他の子供のように愛されてると思いたいもの。でもどんなにジタバタしても事実は事実で、成長して現実を受け止められるようになっていくまでもがくことは仕方のないことだと思う。
とはいえ、実際には飼うことのできない妄想の犬を撫でることで寂しい現実をやりすごす子供のことを考 -
-
Posted by ブクログ
大阪市近郊の暁町。
閉店近い創業60年を超えるあかつきマーケット。
人気のゆるキャラ“あかつきん”が突然失踪のあと、町のあちこちに出没。なんだか人助けをしているようだが。
マーケットを中心に その町に住む母親・父親・娘に息子。13の連作ショートで多くの物語を連ねていきます。
「ただの朝と夜」を過ごしている住人達の 心がざわつく悩みや葛藤。一つの町を俯瞰しているようです。
奇跡は起きないけれど、それでも明日のために。
優しすぎない、踏み込みすぎない、そんな住民達の現実的な距離感。
みーんな何かしら心配事があるんだなって、なんだか安心したりした。 -
Posted by ブクログ
行き場のない母子を保護する目的で作られた「のばらのいえ」それは、大学のボランティアで知り合った志道と実奈子が運営する慈善施設なのですが、崇高な理想が現実の荒波に削られ少しずつ破綻していく。やがて実奈子は酒浸りの生活に堕ち、志道は見て見ぬふり。
祐希が実質、家事全般を担当し母子たちの世話をする。幼いころに引取られた祐希はそれが当たり前の日常と思い、疑問を隠しつつ成長していく。もう一人の少女の紘果は志道に溺愛されて人形のように扱われる。
ヤングケアラー&性的グルーミングのコンボで、ホラーハウスのようなキモさを感じてしまいました。
弱者を無抵抗にさせるエぐさに思考停止してしまう悪環境。真綿で首を絞め