寺地はるなのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレSNSで紹介されてたのをきっかけに読んだんだけど,紹介してたのが,社会正義に基づいて,理詰めでバッサバッサと官僚や政治家を斬っていく,あの鋭い舌鋒の政治家.
しかも,YouTubeではちょっとコミカルな顔も見せるギャップの持ち主で,日本の“政治界の頭脳三傑”の一人だと思ってるような人.
…が!このタイトル?この表紙?この作風??
えっ,本当に!?と思いながら読み始めたけど,読後にはしっかり納得していた.
というか,むしろこの人がこの作品を勧めていたことが,自分にとっては強く印象に残った.
物語は静かで,日常の細やかな場面が中心.
でも,そこにさりげなく差し込まれる言葉たちが,じわじわと心に沁みてくる.
特に「好きな人に,いい枕で寝て欲しいと思っています」という一言には,ぐっときた.
(どんな場面で出てくるセリフなのかは,ぜひ本編で確かめてみてほしい!)
自分が何かをすることよりも,その人が穏やかに過ごしてくれていたらいい,という祈りのような感情.
無償の愛って,きっとこういうことなんだろうな.
誰かのために祈るって,実は自分のためでもある.
そしてそれは,同情でも,理解でもなくて,
立場や価値観を超えて「そばにいたい」と思える,ただそれだけの共感.
でもそれが,たぶん,いちばん尊くてむずかしい.
そうなりたいけど,でもどこか違う気もして…
そのモヤモヤを抱えながら,最終話「対岸の叔父」に辿り着いたとき,
“ぼく”の視線に,自分の気持ちが少しだけ重なった.
思い出したのは,シルヴァスタインの『おおきな木』(これもきっと,読んでみてね)の最後の一言.
「でも,それはほんとうかな?」
優しさや共感が,もしも犠牲の上に成り立っていたとしたら,
それはほんとうの優しさだろうか?
再びその問いを,そっと胸に残してくれる一冊だった. -
Posted by ブクログ
再読…
寺地はるなさんの作品では一番好き!
夫が突然失踪してしまった39歳の弓子
ずっと性欲のピークが続いていて、短いスパンで彼氏が変わる41歳の楓
たまたまアパートの隣同士ということから「ご近所付き合い的な関係」が始まる
そしてなぜか二人は、弓子の失踪した夫の姿が目撃されたという島に旅をすることになるが…
二人は正反対の性格だし、それぞれに抱えている問題も違う…
時にはハメを外してしまうこともあるけど、互いに相手に寄りかかり過ぎない、いい距離感を保っている!
「他人から際限なく引き出せるやさしさなんてないんだよ」
でも相手のピンチにはちゃんと助け合う
何なんだ?この二人は?と思うところもあるかもしれない…
でも二人はちゃんと自分がつけるべき落とし前を自分でつける
他の人に押しつけたりしない
私がこの作品が好きなのは二人のこんなところなんだと思う…
「なんかふたりでここに来たけどさ、けっこう別行動だったね、あたしたち…」
夫婦だって、友だちだって、一緒にいるだけで『ふたり』という新たななにかになるわけではなくて、ただのひとりとひとりなのだ
みちづれはいても、ひとり… -
Posted by ブクログ
読み進めるほど、心が締め付けられていく。登場人物の抱える課題が次々と浮き彫りになると同時に、その痛みや葛藤が自分自身にも突き刺さってくる。
人間には誰しも、良い面と悪い面がある。本来は混ざり合っているはずなのに、それを二極化させてしまうこと自体が、苦しみを生んでいる。自分にはグレーを許せるのに、なぜか他人には理想像を押し付けてしまう。それも無意識に。
芦田愛菜さんが、「その人自身を信じているのではなくて、『自分が理想とする、その人の人物像みたいなものに期待してしまっているのかな』と感じて〜(略)」と語っていたけれど、この小説はまさにそれを物語に落とし込んだようだ。
相手に期待してしまうことは、結局自分自身の可能性まで狭めてしまうのかもしれない。
この小説は、読む人によってまったく違う表情を見せると思う。そして、それぞれの感想の中に、その人の本質が隠れているように感じた。
-
Posted by ブクログ
自分も察することって苦手だなと思って本を読み始めたけど、主人公とは違うタイプかもと思った。私の場合、ただ勘が悪いだけだけど、主人公は深く考えた上で(無意識のうちに)そうなっている。もともとの性質であり、生きる術でもある感じがした。同じ苦手でも、そこに行き着く理由が違うのは、スポーツや絵だけでなく性格もなんだなーと思った。
主人公と私は、察することをしない深度も違う。主人公は言われたことをやる、それ以外は(主人公のサービス精神が働くとき以外)やらない、ときっぱりしているところが、尊敬もありつつ、同じコミュニティにいたら上手くやれないのかもしれないと思った。自分は案外、暗黙の了解みたいなところをある程度は察しながら行きているのかもしれない。
でも、主人公のこと嫌いじゃないなと思った。私とは違うところもあるけど、共感もする。優しくないわけじゃないし。あと、ひとりごとや考えてることが可愛かったりして、読んでて楽しかった。
主人公をとおして周りの人に優しい人も嫌な人もいて、でも嫌なだけじゃない、逆にいつもわかってくれるわけでもない、みたいな状態を客観的に見れた。落ち着いた雰囲気で、読みやすい本! -
Posted by ブクログ
ほたるいしマジカルランドの社員、社長のお話。それぞれに闇を抱えている感じ。
でも、いま、季節柄、退職代行サービスのニュースをよく見るけれども、サービスされてしまう企業の方にぜひ読んでほしいと思った。売店のおばちゃん上がりの(まるで某ホテルの会長のような)社長が社員を見ているからこそ言えたことば。(引用参照)
大阪北部の蛍石市にある「ほたるいしマジカルランド」は、願いごとを叶えてくれるという噂のあるメリーゴーラウンドが人気の老舗遊園地だ。ここで働くのは、どこか不器用で悩みを抱えた人ばかり。アトラクションやインフォメーションの担当者、清掃スタッフに花や植物の管理。お客様の笑顔のために奮闘する従業員たちの日常が、ふとしたきっかけで動き出し――。