寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
寺地はるな著書を読むのは2冊目。徹底的に等身大の人物を、大きなドラマを設定することなく描く人なんだろうな、と思う。
アラフォー女性2人。
弓子は小さいときから母親による衝動的な暴力を受けていたけど、「今は虫が悪いんだな」と冷静に捉える感性と忍耐力を持っていた。それが優しい夫のある行動を耐え忍ぶ事に繋がってしまう。ただ今別居中。そして夫、失踪中。
楓は弓子と正反対の奔放な性格のようで、男は選んで付き合ってる。この前ヒラツカさんに振られた。同時に会社社長のセクハラがあまりにも酷くて会社も辞めた。その社長がストーカー行為を始めたので、弓子に「夫を探してけりをつける旅に出よう」と誘う。
弓子も楓 -
Posted by ブクログ
曾祖父が興した会社「天瀬ワイナリー」の代表者であった母を突然失くした双子の姉弟、光実と歩。
姉の光実はできのいい子で、18歳の頃からずっと家業を手伝っていて、弟の歩は特にやりたいこともなく、アルバイトで日々を過ごしている。
性格も対照的な二人だけれど、歩は強引に光実に会社を手伝わされることになる。
大阪の架空の町が舞台の物語である。
ワインのもととなる葡萄の栽培、醸造、販売等々、人が一本のワインを購入し口にするまでにどれだけの時間と工程を経てつくられているか、家業を継ぐと一言でいうけれど、そうそう容易いことであるはずもなく、この物語を通してとても尊いものを見せられたような気がします。
地味 -
Posted by ブクログ
大阪近郊に位置する暁町にある「あかつきマーケット」が物語の舞台…様々な店舗が軒を連ねて営業していたが、時代の波に飲み込まれる形で閉店することとなる…。「あかつきマーケット」のマスコット的存在の「あかつきん」はイベント途中に失踪(!?)するも、その後町の至る所に出没し困った人を助けていた…さらに「あかつきん」のしっぽをお守りにする人も多数現れたが…。
「あかつきん」だけにしぼったストーリーかと思いきや、実際は「あかつきマーケット」で働く人々やその近隣に住む住民やその家族など、様々な年代の人たちが主人公となる短編集でしたね…。日々の生活の中でどんな人とつながり、どんなことを思い、今後どう生きてい -
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星は4.8ぐらい。
タイトルに惹かれ、また、なんともいえない愛嬌のある表紙のマスコットに心を癒やされる気持ちで読み始めたら、この表紙の「あかつきん」が重要でした。
登場人物が多い、と書かれている方がいますが、一つ一つ独立した話としても十分で、私にとっては一冊でとても得した気分になれました。
とはいえ読後、改めて登場人物の相関関係を図にしてしまいましたが。
最初は子どもを持つ母親の気持ちに深く共感し、その後、父親の立場で書かれたものを読んで少し自分の態度を反省。
寺地さんの本は2冊目ですが、立場の違う登場人物がとても丁寧に書かれていて、私は好きです。
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Posted by ブクログ
閉店が決まったあかつきマーケットが舞台。行方不明になったゆるキャラのあかつきんを軸に、町の人それぞれにスポットライトが当たって行く短編集。
物語が繋がっているから、前の話でチラッと出てきた人が主人公になるんだけど、ガラッと印象が変わる。
なんてやつだ!と思っている人の背景を知って、切なくなった。
誰かのことをちゃんと知るって難しいんだな。
自分にも同じような後悔ある物語を読んで、前向きなって救われ気持ちになったり、自分もこんな風に考えたいってなったり。
気持ちがじわじわとあったかくなって前向きになる本だった^^
自分を大切にする。
まだ幼い女の子にが言われた「他人の期待に応えるために生ま -
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32歳で、清掃会社でバイトしているハセ。
見た目はいいが、要領が悪く失敗ばかりしている2歳年下の沖とコンビを組んで、偽宝石売りをしている。
違法カジノで雇われていた灰嶋に、二百万円を返済するためである。
噓をつき、騙したり騙されたり、ターゲットが女性からさらには老人へと向かう。
そんなやりとりが面白くコミカルに描かれていて、この先の2人の展開が気になってしまいます。
ハセには、働かず女にたかった金で暮らす父親がいて、沖には、自分を認めてくれない母親がいて、誰もがいろんな境遇のもとで生きているけれど、それは考え方を変えれば、どんな人にも背負うものがあって、人としてさほど変わりがないのではない