寺地はるなのレビュー一覧
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自分が違和感を抱いたことや、考えたことに対して、あいまいに流さず、自分と向き合った上で言葉を紡ぐこと。
波風を立てないことを優先して、いつの間にか自分の言葉を口にできないと気付く希和。
彼女が働き始めた民間の学童保育で働く要とその姉の、自分の考えに真摯に向き合い、自然に言葉を紡いでいく姿に、少しずつ声をあげていけるようになる。
自分の思いをしがらみなく言葉にして、相手に伝えることで、お互いの誤解が溶けることもある。
人間同士である以上、100%お互いを理解することは難しいが、実直に言葉を重ねていきたい。それが、自分自身で腹落ちして生きていくことにもつながると思う。 -
Posted by ブクログ
同じ地方都市に生まれ育ち、それぞれに鬱屈した思いを抱えるアラサーの男女3人をめぐる小説。
自分は子どもの頃にいじめられたりしていたわけではないが、学校の主流層からは外れたポジションにいたので、朱音や園田の思いや考えにはわかるところがあった。一方、莉子は、かわいそうなところはあるが、自己中心的思考に思えてあまり共感できなかった。また、莉子の夫でクラスの「王様」だった中原大樹はまったく関わり合いたくないタイプの人間だと感じた。地方都市に生きる20代~30代の人間を、そのどす黒い内面も含めて、よく描けていると思う。
本書のタイトルにも表れているが、第三者からのいっけん前向きなアドバイスが本人にとっては呪いの言葉になり得るのだということも認識した。
本書の主要登場人物3人の行きついた関係のような、相手に依存するのではなく、友だちと言えなくても、お互いに支え合う(ことがある)関係というのも人間関係の在り方の一つとしていいんじゃないかと感じた。
最後は、3人ともどこか吹っ切れたような、希望の持てる結末で、よい読後感だった。 -
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ネタバレ嶋津輝「漂泊の道」
葬式の時にしか会わない遠い親戚との話。自分の母親の兄の奥さんの妹の娘、遠すぎてものすごく考えた…その親戚、カナさんと4回顔を合わせ、その後、父親の後妻になっていた、そんな複雑でもあり得そうな話。何度登場してもカナさんはステキで、自分に対してもハッキリ物申す人で憧れていたのに、いつか違う感情を抱くようになっていた。薄く長いスパンの付き合いの親戚ならではの動きのあるストーリーだと思った。
町田そのこ「六年目の弔い」
哀しみを共有してくれる人がいて必要と思えば手を差し出し触れ合える、それがありがたかった
というところ、が身にしみる。
亡くなった人は、思い出の中でしか生きられない、ひとりだと自分一人の胸に収めないといけない、そして万一自分が思い出せなくなったら、と辛いから。夫は家に住み始めた直後にカタクリを植えていた。開花まで8年ほどかかる、そして志乃の誕生花。ここでラストがよかったな。
アンソロジーは初読みの作家さんに出会えるチャンス! -
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自分が育った小さな町で小学四年の息子を育てる主人公希和。
息子の学校の保護者達とはあまり上手く付き合えない。
夫にも不満はあるのに声に出せない。
自分の言いたい事が言えない。
そんな中で民間の託児所で働くことになり、少し浮世離れした感じのオーナーの要と出会う。
希和の真面目で正直な感じに好感が持てた。
生きづらいだろうな、とも、
潔くてカッコいいな、とも、思った。
長いものに巻かれがちな保護者同士の関係に、巻かれることなく1人でいることは容易なことではないと思うから。
思えば、子供達が小学生の時が1番大変だったような気がする。
物理的な時間は全然ないし、子供達の変化も激しい、子供同士のいざこざや、保護者同士の軋轢。。
そんな時期に「要」のような存在の人がいてくれるのは、ありがたいだろうなぁ。
その時期にこの本を読んでたら、心が軽くなったに違いない。
子育てのヒントにもなっただろうな。
もっと子供達といられる時間を噛み締めて過ごしたかもしれない。
自分の気持ちを言語化して話す、この私の苦手な分野を意識していこうと思った話でした。 -
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ネタバレ優秀な光実と「出来の悪い方」な歩の双子の姉弟が亡くなった母の跡を継いでワイナリーで働くお話。
私も「出来の悪い」側の人間だと思い込んで生きてきたので、自分を卑下してはふてくされながら大人になった。だから歩の気持ちがよく分かったし、歩に対する周りの言葉がグサグサと刺さる。
ページをめくるハッとする言葉に出会う。歩以外にも光実やワイナリーで働く人々、友達…周りの人たち皆それぞれに共感できる部分があって、ぐんぐんと物語に惹き込まれ一気に読み切った。
1歩ずつ前に進む皆を見て、私も今から変われるかなぁなんて思った。
●ちょっとだけ期待をしていた、というようなことを歩は言った。新しいことをはじめるたびに、いつも期待をするのだと。自分にはなにかがあるんじゃないかと。他人より抜き んでた部分が、周囲も自分自身も今まで気がつかなかった素晴らしい能力が、その新しい なにかをはじめたことで目覚める、そんなことが起こりはしないかと。(中略)
「そういうのはさ、なんの努力もしたくない人が見るタイプの夢やと思う」
●「ぜんぶ理解できんでもええんや。親族とはいえ、他人なんやから。共感もするな。共感なんてもんは、なんの役にも立たん。ただお前は、誰にでもいろいろある、ということを理解するだけでええと思う。それが、他人を尊重する、ということや。」
●天職ではなかった。昔から夢見ていた仕事でもなかった。
それでも仕事にちゃんと向き合うことはできると思った。 -
Posted by ブクログ
これはタイトルが好きすぎて。
誰でもこの気持ちになったことがあるんじゃないかな。
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羨み、傷つき
心揺れる10代。
そして年月を経て踏み出す
大人たちの新たな一歩。
万人向けに量産された
「大丈夫」ではなく、
自分の人生にとって必要な
「大丈夫」を与えてくれる――
(伊藤朱里)
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中学の同級生、天、ミナ、藤生。
天は家庭に違和感を覚え、閉塞感のある田舎から脱出したい。
ミナは、藤生のことが好きだが、藤生の気持ちを知って言えない。
藤生は天が気になって仕方ない、一緒にいたいと思っていたのに。
それぞれの矢印が一方通行。
読んでる私から見れば、
それぞれに魅力的な部分があるのに、
人はないものねだりだよねって。
わかるよ~って。
どうして私はあの子じゃないの、って今まで何度思ったことか。
自分もあの子みたいになりたいと。
あの子になりたかったって。
そういう気持ちになったことがある人には、
たぶんぐっとくるのでは。
あと、最近の私の読書の傾向なのか、
思春期で大人と子供の境目の中学生が、
どうしようもできない家庭事情で、
というパターンがめちゃくちゃ多いです。苦笑
どん詰まりというか、なんというか。
非力だし幼くて環境を選べない変えられないという。
本書では、そんな時代を経て、
中学卒業前にそれぞれに向けて書いた手紙を
30歳になる前に開けて読もうと。
当時の自分との再会、
現在の友人たちとの再会、
そこで知ることになる、それぞれの気持ち。
どんなことがあっても、それでもいいよ、って言ってくれるような。
時間が解決することが全てでもないけど、それでも大きい。
読後は良かったです!