宮内悠介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
宮内悠介さんの、金融・ゲーム・メンタルヘルスの知識と、バラード派SF観が惜しみなく詰め込まれたテクノロジー系短編集。おもしろかった。
ひとつひとつのお話しに関して好みの差はあるものの、編集がいい。
前半の4話
「暗号の子」
「偽の過去、偽の未來」
「ローパス・フィルター」
「明晰夢」
は、暗号通貨またはSNS環境と何らかの社会不適合や依存性をからめてあり、新しいテクノロジーに人生の何かを壊された人がテーマになっている。
とはいえ、物語としての完成度は、やはり「暗号の子」がもっとも高いと思った。
「すべての記憶を燃やせ」
は、半分はAIが書いた小説。
悲しい、苦しい、涙が止まらないなどの陳腐な感情表現が何度も繰り返され、正直、AIが小説を書くのは時期尚早、としか思えなかった。が、宮内さんがAIに負けないようにがんばった、と記しているように、なんとか対比が描かれていて、浪漫派の詩の解説くらいに体裁は整っていたと思う……好みではないけれども。
後半、
「最後の共有地」
「行かなかった旅の記憶」
では、テクノロジーの中に生きつつ、ノスタルジックな雰囲気でほの明るい雰囲気になり、最後
「ペイル・ブルー・ドット」
で、いちばん明るく希望的な物語で締めくくられていて、とても読後感がよかった。
暗号通貨やプログラミング言語、ハードウェアの解説部分は多いけれども、分かりやすく書かれていて読みやすい。また、興味のない人はここは読まなくても大丈夫、と書いてあり、実際その部分を読まなくても物語を理解できるところは、ひねくれたSF作家、宮内悠介の面目躍如だなぁ、と楽しかった♪ -
Posted by ブクログ
私にもっとゲームの知識があれば…と悔やんだ作品。
単なる盤上ゲームを扱った作品ではなく、ゲームそのものの抽象的意味を投げかけるような哲学的な話であったり、そこに掛ける人間の精神性であったりを描いていて、とても読み応えがあった。
正直言って難解な内容。起承転結も掴みにくく、ゲームのルールが理解できないと、本書の魅力は半減すると思う。
それでも静謐たる文章が心地よく、また実在するようにすら感じる人物たち、SFらしい驚きと新鮮さに引き込まれた。
個人的には「人間の王」と、「象を飛ばした王子」が好き。これはどちらもゲームがよくわかっていなくても面白いから、というのもあるけれど。
短編だけど、実は連作小説的にわずかな繋がりもあるお話で、それぞれ独立しているようで、全てがゲームとは何かということに繋がる小説。
深く、そしてあまりにも多様な世界観で、とてもよい読書体験だった。
こんなことを書いたが、内容の10%も理解していないかもしれない。
ゲームのルール以前に、どのようにゲームが動いているのか、なぜその手を打ったのか、そうしたプレイヤー目線ができるようになるには、自分自身も対局を読む力が必要だから…。
盤上ゲームを理解した上で、もう一度挑戦したい。 -
Posted by ブクログ
直球王道、本寸法のバカSF(←褒め言葉ヽ( ´ー`)ノ)。いや、バカSFに本寸法も何もありませんけどねヽ( ´ー`)ノ
地獄の女王にこき使われていた天才SEの青年が、銀河を股にかける金融会社の取立て担当者に助けられ、共に貸付の取り立てをするために宇宙やら地獄やら情報の渦の中やらに飛び込んで大冒険。・・・って話なんですが、みなさん意味わかります?鴨も書いててよくわかりません(笑)。取り立てをするときに主人公が先輩に突かれて発声する企業理念「わたしたち新星金融は、多様なサービスを通じて人と経済をつなぎ、豊かな明るい未来の実現を目指します。期日を守ってニコニコ返済・・・」が水戸黄門の印籠のように登場するのがお約束。周囲に振り回されているように見えても最後はちゃんと着地すべきところに着地する主人公と、自分勝手で横暴ながらもやるべきことはキッチリこなす有能な(?)同僚ユーセフの丁々発止のやり取りが、この作品の定番です。
そんな一見「お笑い」のシリーズですが、でも、相当ハイレベルでハードコアなSFのロジックが、ストーリーの中心にズバッと刺さっているのが、この作品の見どころ。そのハードさを全く感じさせない”フラ”のある筆致が、さすがの宮内悠介節です。
・・・と書き進めて、鴨はふと気づきました。そうだ、これ、落語だわ。
二人の言葉のやり取りでくすくす笑わせつつ同じ枠組みで同じ決め言葉で、最後にストンとオチで決める。落語の「八つぁんと長屋の御隠居」ですね、これ。手練れの作家が全力でバカSFを書くと落語になるという、新たな発見ですわこれは。軽い作品と見せかけて、かなりのSF上級者向けですよ、この作品。 -
Posted by ブクログ
世にも奇妙な物語で気になったので読んでみた。完全に理解できたのがトラ技と今日泥棒くらいしかなかったし、トラ技すら映像で一回見てたから理解できただけなのかもしれない…なんか全体的に難しく感じた。
でも読み進めていけばわからないなりにグッとくる部分もあったし文学部、アニマとエーファ、エターナルレガシー、エラリー・クイーン数が特に好きだなと思った。
作者の文学やミステリーやAIへの愛情みたいなものを漠然と感じられて良かった。
わからないなりに伝わってくるものがあったし、そこに感慨があったので好きなタイプの小説でした。私が頭良くて尚且つ色んなこと知ってたらもっと楽しめたかもな。
クローム再襲撃が一番入り込めずに終わったけど春樹のパン屋履修したら何かわかったりするのかな… -
Posted by ブクログ
ネタバレ岸本佐知子さんがアトロクで推薦図書として挙げていた。
大森望、武田砂鉄が帯文。
宮内悠介は「たべるのがおそい vol4」に掲載された「ディレイ・エフェクト」があまり好きでなかったのだが、他の著作があまりにも面白そうなのでいずれ読もうとぼちぼち買い集めており、再挑戦するなら本作と決めていたのだ。
結果的には正解で、一気読みだった。
ルネ・ドーマル「類推の山」を最初は連想したが、ちょっと違うみたい。
むしろ、夢枕獏「神々の山嶺」のように、気象条件が奇跡的に整った瞬間のみに現れる聖域のような……あれ、「神々の山嶺」にそんな箇所あったっけ。
まあともかく下敷きにしたり参照したりネタとして取り込んだりした作品は多いのだろう、作者にしかわからないレベルでも。
自分はバックパッカーとは程遠いインドア派だし、プログラミングには疎い者だが、ざっくり世界5分前仮説やシミュレーテッド・リアリティについて把握しておけば問題なく読める。
視覚的には大友克洋「童夢」のごとき超能力戦闘を想像してもいいだろう。
本文も、注釈も、実に楽しそうに書いているところが、愉しめた。
以下のメモに書き足していきながら、いずれ再読したい。
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◇登場人物
怜威
ジョン
ロニー
泰志
レタ
フアナ
ルディガー
バーニー
●第一部
■1.イシュクト山 008
■2.ティト・アルリスビエタ 014
■3.黒い礫 020
■4.カラコルム・ハイウェイ 027
■5.川下り 036
■6.世界医 042
■7.エウロパの鱒釣り 047
■8.確率的な攻略 053
■9.緑の感謝祭 058
■10.幻の鳥 063
■11.レタとフアナ 068
■12.ワームホールのある密室 074
■13.ユーチューバー探偵・勇一 080
■14.このたびの解体子(デストラクタ)葬につきまして 085
■15.宇宙エレベーターを奏でる巨人 090
■16.プログラマ、点を動かす 096
■17.刑事ルディガーの乱心 106
■18.精神の氷河期において 115
■19.腐らなかった死体 122
■20.航路 130
■21.常春のABC 138
■22.アナーキー・イン・ザ・PK 144
■23.刑事ルディガーの無謬 150
■24.コンクリ車いっぱいのレモンティー 158
■25.ラーワルピンディ特別区 165
●第二部 (複素数的な? 第一部と対応)
■i.ティト・アルリスビエタの場合 176
■2i.ロニー・”シングルトン”・ルルフェの場合 181
■3i.レタの場合 187
■4i.刑事ルディガーの回転 194
■5i.桃源郷を目指して 202
■6i.フンザにて 211
■7i.メタフィクションにおけるダイヤモンド継承 217
■8i.メタフィクションにおけるコンポジット・パターン 229
■9i.収束条件 241
■10i.氷河を渡りに 248
■11i.死は天帝に捧げる 255
■12i.氷河にて 263
■13i.ふたたび氷河にて 269
■14i.偶像を直す 275
■15i.思い出の列車 281
■16i.イシュクト郷 291
■17i.つながらない迷路 299
■18i.物語の争奪戦 305
■19i.永遠の墓標 311
■20i.巡礼の宿 320
■21i.ロニー・”シングルトン”の二択 326
■22i.邂逅 335
■23i.最後の一撃 341
■24i.素子の中の失楽 348
■25i.そして、それから 356
◇偶然にまかせて(初出 単行本カバーにデザイン使用)