宮内悠介のレビュー一覧

  • Genesis 一万年の午後

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    日本人作家によるSF短編アンソロジー。様々な味わいのある作品を楽しめる。読者ごとに好みがあるので、すべての作品を面白いと思う人はそう多くないと思うが、これから好きになる作家出会う良い機会になるだろう。私の好みは、「イヴの末裔たちの明日」(松崎有理)と「生首」(倉田タカシ)の2作品。前者はAIが仕事を奪った結果、治験のアルバイトにたどり着く、どこかユーモラスな作品。後者は生首が現れる現象がホラーチックであるが、なぜか笑いたくなる作品。なんだ、私は笑える作品が好きなのだろうか。今気づいた。

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    2022年12月21日
  • 宮辻薬東宮

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    「人・で・なし」
    宮部みゆき上手いよねえ。
    極めて普通の(もしかしたら宮部自身が遭遇したかもしれない)居酒屋の、よくある話から、「人でなし」のワードを引き出して、ひとつの現代の「怪談噺」が始まる。まあ、やり過ぎ(ありきたり)のオチだったけど。リレー・アンソロジーどうなるんだろ?

    「ママ・はは」
    宮部からバトンを受け取ったのは、辻村深月。話の導入方法と「表題」「写真」というキーワードを引き継いだようです。果たして何処を引き継いで何処を引き継がないのか。ちょっと推理したくなりました。

    「わたし・わたし」
    辻村からバトンを受け取ったのは、薬丸岳。初めて読む作家。確か実際にあった犯罪に取材した小説

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    2022年12月14日
  • ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー

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    斜線堂有紀の上智卒なるほど!と思わせる英語力も見せつけられました。斜線堂ファンなら、この短編だけのために読むべき一冊です。
    ・石川宗生「うたう蜘蛛」
    死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延したイタリア。総督の前に、「この流行り病を収束させてみせましょう」とホーエンハイムなる錬金術師が現れる。
    性描写あり、中学生には微妙ライン。
    好み的には合わず。
    ・宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
    一九六五年の日本。そこには「ピーガー」というSNSが存在した。
    一番心が乗らなかった作品。発想は面白い。
    ・斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
    和歌を詠むと同時に“詠訳”する平安時代。“詠語

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    2022年12月04日
  • ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー

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    歴史に生きる人々の心情を特に焦点が当たっていた話や、SF設定におもむきを置いている話、とアンソロジーの強みを活かした独自の世界観が面白かった。

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    2022年11月27日
  • 超動く家にて

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    「超動く家にて」(宮内悠介)を読んだ。
    面白い。実に面白い。
    穂田川洋山とか澤西祐典とかを彷彿させるものから「アメリカン・ブッダ」の柴田勝家を連想させるものまでありとあらゆる感性が詰まっている短篇集。
    中でも異色なのが『クローム再襲撃』である。よくぞこれを書いてくださいました。

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    2022年09月03日
  • 偶然の聖地

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    多数のバグを抱えたこの世界。それを日々修正する世界医と呼ばれる人々の間で「この世に残された、最後の特Aランクのバグ」と呼ばれるのが、地図に無くウエブで検索しても見つからないイシュクト山。
    本作はその山を目指す4組の旅人たちを主人公にした物語である。

    まじめに概略を書くと上記のような感じになると思うんだけど、普通の小説とは一線を画すヘンテコな作品であることも確か。ハマる人はとことんハマると思うんだけど、ダメな人はとことんダメなんじゃないかなあ。
    実はあっちに行ったりこっちに行ったりするメインストーリーのほうは自分も途中でついていけなくなってしまった。いや、そもそもストーリーなんてあってないよう

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    2022年08月13日
  • 偶然の聖地

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    ネタバレ

    秋のあとに訪れる短い春「旅春」、このような事象を「時空の側がかかった病=バグ」とし、それを直すこと(デバッグ)ができる「世界医」という存在がある、という世界観。地図にも検索結果にも出てこないイシュクト山を目指す、旅とデバッグのお話。

    SF小説と注釈エッセイ。私自身もPG/SE系の仕事なので用語やあるあるの理解に問題なく、エッセイも好きなのですごく楽しめた。こんな書き方もあるのか、と目から鱗。

    どうしても技法というか上下注釈のスタイルに気が行ってしまうけど、小説の内容自体もしっかりと面白い。中盤あたりから「あれ?これは?」と気づき始め、終盤のタネ明かしやそれぞれの収束はカオスだったが興奮を憶

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    2022年06月10日
  • 遠い他国でひょんと死ぬるや【単行本版】

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    ネタバレ

    竹内ノートを追う冒険小説かと思いきや、ハードボイルドになったり、急展開で恋愛小説になったり、宗教問題になったり、華僑の財閥が汚職したり…随分とっ散らかったまとまりのない小説なんだけど、宮内さんの文章だから読めてしまうねんなぁ。

    こんなとっ散らかりまくりやのに、最後の50Pでああいう散らかし方してくれるから油断ならん。戦争を選ぶ政治が最低だが、戦争を継続する政治も最低なのだということ。

    とはいえ、ウクライナのゼレンスキーは現状戦わないと、国が地獄になるのが分かっての戦争選択だろうし…難しいよなぁ…ってこれは、本作と関係ない気持ち

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    2022年06月05日
  • あとは野となれ大和撫子

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    ネタバレ

    深刻さと軽さ、爽快さのバランスが絶妙。面白かったです。
    アラルスタンという中央アジアの架空の国で、高等教育機関「後宮」で学んでた女の子たちが、大統領が暗殺されて議員たちが国外逃亡してしまったために「しょうがないから、国家をやることにしようかなと」と国政を執り行う。
    アラルスタンが割と緊張感ある情勢で、周辺国からは侵攻されてるしAIMというイスラム系の反政府組織はあるし、政治系の教育受けてきたとはいえ20代くらいの女の子たちに出来るのかと思ったけど、なかなかどうして惹き込まれました。大の大人の軍部男性が割とすぐ従うのはご愛嬌で。
    命がけの場面もたくさんあってヒヤヒヤしました。でも女子高ノリでひた

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    2022年04月30日
  • Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー

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    幅広いアンソロジー。宇宙モノは無かったが、理不尽、インナースペース、動物モノと様々。気が付いたらブエノスアイレスにいるとか理不尽系が面白かった。
    表題作の「時間飼ってみた」は火浦功のようなドタバタとした展開。面白いけど完全に理解してるかは怪しい。

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    2022年04月11日
  • Genesis 一万年の午後

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    東京創元社が、社名の「創元=GENESIS」を冠して二〇一八年に刊行したSF書き下ろしアンソロジー第一集。各作品の前に編者による洒脱な紹介コメントも寄せられていて、「日本の現代SF小説界、作家も出版社も一丸となってこんなメンツで盛り立てていきますぜ」という顔見世興行的な気合いの入りようが感じられる。今のところ二〇二一年の第四集まで毎年刊行が続いているようだ。
    SFに限らず同時代の作家の好きと思える小説に出会えることには、古典名作を楽しむのとはまた違う喜びがある。創元さんの四年前のお薦め、彩り豊かで「ぜんぶ好き」とはいかないが、これだけいろいろ並べて出してくれたことにありがとうという気持ち。

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    2022年03月20日
  • 盤上の夜

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    盤上ゲームをテーマにした短編集

    収録は6編
    ・盤上の夜(囲碁)
    ・人間の王(チェッカー)
    ・清められた卓(麻雀)
    ・象を飛ばした王子(チャトランガ)
    ・千年の虚空(将棋)
    ・原爆の局(囲碁)

    四肢を失った女性
    生涯ほぼ負けなしのマリオン・ティンズリー。
    宗教団体教祖の女性、プロ雀士、サヴァン症候群の少年、一人の女性を追いかける医師
    父親に捨てられた王子
    将棋で現実世界に影響を与えようとする弟、ゲームを殺すゲームを作ろうとする兄、二人の人生に大きく関わる女性
    広島に原爆が投下されるまで打たれていた一局


    ・盤上の夜
    四肢を失う経緯がちょっと……
    ただ、解説でも書かれてある通り、不幸そうでは

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    2022年02月11日
  • Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー

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    やっぱりSFは、最高と思わせてくれる。想定外の景色が頭に思い浮かぶ。そして上手く騙された事が心地よい。こんなストーリー考えつくなんて。

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    2022年01月09日
  • 超動く家にて

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    く、く、くだらねえええ・・・。と切り捨ててしまうのは惜しすぎる、バカミスおよびバカSFを16編も収めた短編集です。こういう作品ばかり描かれても困るけど、重たい作品ばかりじゃ書くほうも読むほうも精神的にきついだろうし、たまにはいいんじゃないですかね。一本目の「トランジスタ技術の圧縮」やラストを飾る「星間野球」あたりの、しょーもないところに真剣にコストをかけているあたりが結構好きです。ヴァン・ダインの二十則とかシュレディンガーの猫とか、まあ表題作のネタなんかもそうなんだけど、割とマニアックな題材を扱っているので一般人向けには少々敷居が高くなっているのが難点かな。「今日泥棒」や「かぎ括弧のようなもの

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    2021年11月21日
  • 彼女がエスパーだったころ

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    疑似科学を扱ったルポ形式の短編集で連作っぽくなっています。スプーン曲げ、火を使う猿、ロボトミー手術、ホスピス、新興宗教といったテーマ。疑似科学そのものよりそれを取り巻く人々の考えや行動が物語られています。後半、重いテーマが続きますが、最後はすっきり終わった感じですね。

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    2021年11月18日
  • エクソダス症候群

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    21世紀半ば、火星で唯一の精神病院に赴任した主人公。人手も薬も不足する中で奮闘しながら、病院に隠された自分の過去の秘密を探ります。精神医療の暗部がテーマになっており、巻末にたくさんの参考資料が列記され、作者の力の入れ方が感じられます。

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    2021年11月18日
  • ヨハネスブルグの天使たち

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    登場する歌唱ロボットは初音ミクを意識していると思いますが、DX9はシンセサイザーのベストセラー機DX7の廉価版。あまり売れなかったようでちょっと残念な感じがイメージにあってるのかもしれませんね。?

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    2021年11月18日
  • 彼女がエスパーだったころ

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    ネタバレ

    テーマははっきりしているのにどこかつかみどころのなさを感じました。
    「疑似科学シリーズ」と銘打ってしまえば簡単ですが、科学で解き明かすことが常に最良とは限らないのでしょうか。

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    2021年10月30日
  • アメリカ最後の実験(新潮文庫)

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    事件云々はあっさりとしているので、タイトルから想像すると話は重さがない。けれども音楽とそれに纏わる背景や精神の動きについては精緻で面白い。いい意味で論文的な何かを読んでいる気分だった。

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    2021年10月12日
  • 超動く家にて

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    最高!
    あとがき もいいね
    あのシリアスな作品を書く人が!と、まんまと思わされました

    クスっと笑えるところが満載で楽しい

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    2021年10月07日