【感想・ネタバレ】ヨハネスブルグの天使たちのレビュー

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初めて手に取った宮内作品。
正直言って難しかったです。
それでもすごく宮内悠介らしい作品で、何度も読み返す一冊。
どうにもならない現実と愚かな人々を描きながらも、希望と慈しみに溢れている。

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2018年09月20日

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読解力の問題かもしれないが、少々読みにくさがあるものの伊藤計劃の再来かと思える内容で、近未来SFではあるがSFは舞台装置でしかなく、人間的というか生身の物語だった。

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2016年10月30日

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登場する歌唱ロボットは初音ミクを意識していると思いますが、DX9はシンセサイザーのベストセラー機DX7の廉価版。あまり売れなかったようでちょっと残念な感じがイメージにあってるのかもしれませんね。?

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2021年11月18日

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廃墟から少女型ロボットが落下する連作短編集。ヨハネスブルグで何千もの天使が空から降り注ぐ。表題作がセンセーショナルで心を掴まれた。紛争、民族、宗教に深く切り込む、伊藤計劃を彷彿とさせるテーマ性。作中での外見描写はほぼ皆無だが、歌姫ロボットDX9は某ボーカロイドを連想させる。 最後の短編、北東京の片隅で歌い続けるDX9に、海に沈む夕陽のような美しいものを感じた。

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2021年07月14日

購入済み

得意分野かな

著者の得意分野の本である。
表題作は。
淡々とした語り口であるが、戦場と埃とゴミの臭いがする部隊をうまく表現している。
その舞台の中の人形との対比が見事である。
そのほかの作品も各々個性はあるが同じ基調を持っている。

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2019年11月26日

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SFは現在と地続きなんだと実感させられる作品。紛争地帯、テロの現場、そして斜陽の北東京の団地が描かれます。そう遠い未来ではないですが、実感を持って迫ってくる。

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2019年07月18日

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DX9という日本製の歌唱ロボットが落下するという共通設定を持った、主に世界の紛争地帯を舞台にした短篇集。
解説にもあるように本書はこの主役ともいうべきロボットについての描写(容貌・落下状態など)が割愛されており、それ以外の世界描写が緻密な分だけ妙に幻想的。

「ヨハネスブルグの天使たち」4
「ロワーサイドの幽霊たち」3
「ジャララバードの兵士たち」3
「ハドラマウトの道化たち」4
「北東京の子供たち」4

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2019年07月08日

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難しいし重いし暗いが、発想の面白さと奇抜さが良い意味でとっぽくて抜き出ている。
解説を読むと、自分の見たものや趣味を反映させているようだが、それもまた非常にディック的でヤバくて良い。

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2020年12月04日

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個人的にすごく好きだった。
多分実際に海外で育っているから、
取材旅行だけで適当な雰囲気の作とは違う
リアリティが好き。
文章の涼やかなとこも好き。

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2018年09月19日

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解説が素晴らしすぎて感想を書くのが恥ずかしいというか、何を書いても、うん、解説にそう書いてあったよね!ってなる(笑)
それにしても嘘みたいな事実と、事実よりもありそうな嘘が混じり合った世界観に脳が騙されてく感じがたまらなく快感。SFの論理性って科学的に正しいかどうかじゃなくて、ありえるって思えるかどうかなのかもと力づくで納得させてくる感じ、好きです。

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2018年08月19日

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短編集であるが、DX9という歌うロボットが共通なガジェットとして登場する。DX9は日本が開発した楽器扱いの玩具ロボットである。本来の目的は人を楽しませるものだが、この作品では、高性能であるがゆえに、兵器として使われたりする。さらに、DX9は高所から落とされることを運命つけられたように扱われる。この落ちるDX9をどう解釈するか、どう共感するのか、読み手は自由である。ただし、明るい結論は出てこない気がする。本作は直木賞候補だったようだ。ただし、人を楽しませるエンタテインメントではなく、読者に考えさせるエンタテインメントである。純文学に近いかもしれない。

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2017年12月13日

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素晴らしい。何でもっと早く読まなかったんだ、あたし。
今生きている世界について自分が何も知らないってことを教えてくれた。

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2017年08月28日

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文章が詩的過ぎるな、というのが気にかかっていたが、それは自分がSFとして期待をしていたからであって、意図していたのはSFチックな設定を借りた文学だったのだろうなと、読み終える段になって気付く。

DX9に仮託されているものは明記されないが、いずれの短編でも死後の永遠性と、肉体と現実を超越した普遍的な「意識」の世界の象徴として描かれている。宮内が描きたかったのは911以後の血生臭い世界において、脱臭された世界を目指す人々の思いと、それを実現し得る技術の存在であり、ここで数々描かれるその他ガジェットや設定は、そのための装置でしか無いように感じる。

そしてDX9を経て人々が得るものは、そのモデルたる「初音ミク」によって、ここ10年の日本音楽界が経た過程と酷似する。だからこの物語が夢想であるとも、浮足立ったSFだとも思えず、ただ愚直にこの世界線の先にある未来として、心の通わせられる文学の世界として読み取ることができた。傑作と呼んで良いのではないか。

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2017年03月19日

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前作『盤上の夜』以上にハードなSFであった。ストライクゾーンはものすごく狭いけど、好きな人にはたまらない作品になっていると思う。

テロ・紛争・格差などの今日的な問題を想起させる世界各地の建物から、少女の外見をして甘ったるい声で歌う初音ミクをモチーフにしたような日本製ロボット・DX9の雨が降ってくるお話が5編続く。9.11の再現と思われる「ロワーサイドの幽霊たち」を筆頭に、よくもまあこんなアクロバティックな作品を描いたなあというのが率直な印象。

一話一話はそれほど長くないけど、結構大事なことがさらりと書いてあったりするので、惰性で読んでいると物語についていけなくなる。細心の注意を払って読む必要がある、読み手の読解力が試される作品だと思う。そういう自分にとっても結構難しかったのだけど。

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2015年10月31日

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近未来、ディストピア、軍隊、久々にSFを読んだ人間からすると、伊藤計劃以降のSFって似過ぎてる気がする。まぁ別に伊藤計劃が発端ってワケやなくて、攻殻機動隊とかブレードランナーとかからつながってるんやろうけど。
初宮内悠介、最初の感想はそれ。似てるからアカンいうことはなくて、おもしろかったりカッコよかったりすればそれはそれでええわけで、アフガン→イエメンの連作とかなかなか良い。ヨハネスブルグと北東京、降ってくる少女型ロボットを見ている少年少女、というほぼ相似のシチュエーションからどうなるのかと思ったら、それほど虚をつかれた感じはしない。もう少し大風呂敷でもええんちゃう?という印象。どうも頭の中のSFが小松左京だの筒井康隆だの星新一だので止まってるおっさんからすると、誠実かつ繊細過ぎる。もっとええ加減でええのにもったいない。

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2015年09月30日

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≪本の感想ではありません≫
東西冷戦が指導者・思想家に引っ張られた対立なら
昨今の紛争は人々の民族、宗教の意識に姿を変えて
湧き上がり、制御不能になった状態なのかと。
そこに米国中心の指導者たちの思想に動かされる
人々、国々と民族の意識がが互いに異なる地平で
ぶつかり、決して交わることない視点で争う
で、日本はというと機械、技術の面で世界にかかわり、
思想や意識とは距離を置きながら、なんとなく
世界に組み込まれ、覇者側に染まる、と。
いや、この短編とは直接関係がないのだけど、
この本を読んで、場を支配する空気というか、
なんとなく、現代の世界と安倍以前の日本の
立ち位置がそんなかんじだったかと。

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2015年09月30日

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ネタバレ

5篇全編に渡って、ロボット「DX9」が建築物の上から落下し続ける様子が描かれている。
物語の中には9.11以降、そして伊藤計劃以降の「閉塞感」みたいなものが漂っている。
「そこに留まり朽ちていくか、道を切り拓くべく出て行くか」。物語中で建築物からの落下を繰り返し続けるDX9は「留まり朽ちていく」ものの象徴として描かれていると思う。対比として描かれている作中の主人公たちは最終的には「道を切り拓くべく出て行く」ことになるが、全てがハッピーエンドとはなっていないように思う(シェリルは凶弾に倒れ、ザカリーは死に、璃乃はDX9へ接続するようになる)。
ある意味で「俺たちの戦いはこれからだ」的な展開とも言えなくもないが、未来への希望を描いているようにも感じる。
作中では史実と架空が交差して、フィクションとノンフィクションの間をゆらゆらと揺れるような浮遊感も読む人を不安にさせるのかもしれない。

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2015年09月23日

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 日本製のロボットDX9を媒介に世界各国のテロや紛争地区の近未来を描いた連作短編。

 民族問題や宗教問題などの歴史的背景と問題の複雑さが各短編で描かれるので、正直作品を理解しきれたかどうかは自信がないのですが、それでもこの作品に備えられている力というものは十二分に感じました。

 その力の理由に作品の独創性がまずあると思います。現代においても未だ解決の糸口が見えない民族や宗教の問題、それを近未来とDX9というSFのガジェットを使ってどう描くか。表題作や「ハドラマウトの道化たち」でのDX9の利用法や政治の統治法もすごいなあ、と思ったのですが、なによりすごかったのが「ロワーサイドの幽霊たち」。虚実を織り交ぜて語られる壮大な物語に心を奪われました。

 そしてそうしたアイディアだけでなく文章も独特の詩情があります。だから理解しきれなくても、これは力のある作品なんだな、というのが分かるのです。

『盤上の夜』を読んだ時も思ったのですが、宮内さんは今までのSF作家とはまた違った世界を目指しているように思います。作中のSF要素もその世界を表現するために一番都合がいいのがSF的な世界観なだけであって、そのうち分類不能な新しい文学が宮内さんの手から生まれるのではないか、読み終えてそんな考えがふと湧いてきました。

第34回日本SF大賞特別賞

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2015年09月21日

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日本製ホビーロボット・DX9と世界各国の巨大建築物を主軸とした短編集。物語の舞台は南アフリカ、アフガニスタン、イエメン、NY、そして日本と多岐に渡るが、全て戦争(民族紛争やテロ)を題材とする。当初の目的をとうに見失い、終わりの見えなくなった勝者無き争いの戦火を生きる登場人物たちの虚無感が重くのしかかってくるが、それでもしぶとく生き抜こうとする彼らの意志に胸を打たれる。SFではあるが、あくまで味付け程度に留められ、文学作品に限りなく近い質感の作品。直ぐに答えは出せずとも、人は歩み続けることが出来るのだから。

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2022年12月04日

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巻末の解説にもある通り、"歌姫" と称される歌唱用のロボット DX-9 が、本来の用途を離れて転用され「人の死」に密接に関わる場所で落ちる、と言う短編が繰り返される。
女性型で「よくできたペッパーくん」とも言うべき量産品であり、廉価で高耐久なので盛んに目的外利用された、という設定である。
しかし、この「ボディつき初音ミク」が物語上の必然性を持っているかと言うとそうでもない。その点で『南極点のピアピア動画』(野尻抱介)とはかなり異なる。
この物語では「天使たち」は重要なギミックではあるが問題を解決しない。基本的には傍観者であり、そこから外れる時はたいてい死をもたらす。つまり「死の天使」なのだ。

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2021年02月16日

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一話目、「ヨハネスブルクの天使たち」の冒頭数ページからはとてもこんな作品だとは予想できなかった。良い意味で裏切られた。

DX9という味気ない名前しかつけられていない日本製のロボット、通称“歌姫”が流通している架空の近未来が舞台のディストピアSF短編連作集。時代はおそらく2040〜50年代くらいか。

DX9、あるいは天使たち、は作品の軸ではあるけれども、具体的な外見の描写は控えめ。耐久性が恐ろしく高い、ということ以外ほとんど分からない。あえて抽象的に描いている感じ。

海外、特に中東やアフリカの内戦や戦争の記述が非常に詳しい。参考文献が各話の最後に記載されているが、執筆にあたり調査が徹底していると感じた。

文体は少しクラシックというかスノッブ気味に感じるところもなくはないけど、読みにくいとまでは言えない。ただ、短編連作というスタイルが効果的に発揮されているかは少し疑問だった。一つ一つの物語が少し物足りなく感じられたので、一本の長編という形を取った方がより面白く読めたかも。

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2020年11月07日

Posted by ブクログ

全体的に内省的で様式美に溢れてる作品。現代人の苦悩とかクソどうでもよくて、さすがに「北東京の子供たち」だけは読むに耐えなかったけど、「ジャララバードの兵士たち」、「ハドラマウトの道化たち」はエンタテインメントとして面白く読めた。事実の調査や盛り込みはすごいと思う反面、wikipediaを並べた小説(もちろん、この作品は違うけど)のように見えてしまって、やり過ぎはあまり好みじゃない。事実は小説よりも奇なりのフックを超えたやっぱり小説の方が奇なりを期待して、著者の近作を読もうと思う。

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2020年08月21日

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日本の某メーカーが愛玩用として開発した少女型ロボット「DX9」。歌うことが主な機能の彼女らは、安価で改造しやすい低スペックの製品であったことから、世界各地で大量に購入され、本来の用途とは異なる目的のために改造・使用され、世界各地で降り続ける。ヨハネスブルグの高層ビルから、ニューヨークのツインタワーから、アフガンの戦場から・・・DX9が「降る」光景を共通項に、不穏な世界情勢の中でもがく人間像をリリカルに描き出す連作短編集。

少女型ロボットが、空から降ってくる。それも、時によっては雨のように大量に。
SFとジャンル分けするには、あまりに詩的で幻想的な世界。その一方で、舞台となるのは戦場であったりテロの現場であったり、現実の国際情勢を強烈に意識せずにはいられない設定となっています。読後感は「かなり伊藤計劃」ヽ( ´ー`)ノ伊藤計劃以降、こういうムードの世界観が流行っているんですかね。ただし、未来に多少なりとも希望を残すストーリーが多いところが、伊藤計劃との大きな違い。

確かに面白い作品です。洗練された筆運びにはただならぬセンスを感じます。この世界観が好きな人には、たまらない作品だと思います。
が、鴨的には残念ながらどうしてもしっくりこないところがあり、手放しで絶賛するには至りませんでした。しっくりこないところとは、語弊を恐れずに言えば「SFとしての説得力」です。耐久性の試験をするためだけに高層ビルを買収して毎日数千体もロボットを落っことすって、その会社はどんなコスト管理してるのか?安価で低スペックが売りのDX9に、どうやって人格転写できるだけの容量が確保できるのか?あの「9・11」をロボットを使って完全再現する意味って、結局何?・・・などなど、イメージ重視の人にはおそらくどうでも良い細かいことなんでしょうが、鴨にはそのリアリティの無さがどうしても引っかかってしまい、せっかく現実社会と地続きの舞台設定を採用しているのに何だかもったいないなぁ、という印象を得るに至った次第です。

と、ここで鴨がくどくどと述べるまでもなく、巻末の解説で大森望氏が「最後のところで論理よりも美を優先する反SF的な作風」と端的に表現しておられました。正にその通りの作風で、SFとして評価すること自体が筋違いなのかもしれませんね。気になる作家であることには違いないので、これからもチェックして行こうと思います。

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2016年04月30日

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