【感想・ネタバレ】ヨハネスブルグの天使たちのレビュー

あらすじ

ヨハネスブルグに住む戦災孤児のスティーブとシェリルは、見捨てられた耐久試験場で何年も落下を続ける日本製のホビーロボット・DX9の一体を捕獲しようとするが──泥沼の内戦が続くアフリカの果てで、生き延びる道を模索する少年少女の行く末を描いた表題作、9・11テロの悪夢が甦る「ロワーサイドの幽霊たち」、アフガニスタンを放浪する日本人が“密室殺人”の謎を追う「ジャララバードの兵士たち」など、国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇。才気煥発の新鋭作家による第2短篇集。 解説/大森望

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Posted by ブクログ

ネタバレ

5篇全編に渡って、ロボット「DX9」が建築物の上から落下し続ける様子が描かれている。
物語の中には9.11以降、そして伊藤計劃以降の「閉塞感」みたいなものが漂っている。
「そこに留まり朽ちていくか、道を切り拓くべく出て行くか」。物語中で建築物からの落下を繰り返し続けるDX9は「留まり朽ちていく」ものの象徴として描かれていると思う。対比として描かれている作中の主人公たちは最終的には「道を切り拓くべく出て行く」ことになるが、全てがハッピーエンドとはなっていないように思う(シェリルは凶弾に倒れ、ザカリーは死に、璃乃はDX9へ接続するようになる)。
ある意味で「俺たちの戦いはこれからだ」的な展開とも言えなくもないが、未来への希望を描いているようにも感じる。
作中では史実と架空が交差して、フィクションとノンフィクションの間をゆらゆらと揺れるような浮遊感も読む人を不安にさせるのかもしれない。

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2015年09月23日

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