宮内悠介のレビュー一覧
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ネタバレショートショート27篇。もちろん各々オチがあるのだが、最後まで読んで小気味よく忘却の棚に片付けるでにショートコースとは言え途中の景色、結末への推測憶測妄想が小説の構成要素である。
8つのテーマに分けられ、各々のテーマについて解説が入る。
【ゲーム】では、人間とは異質のアプローチで〈棋力〉を獲得するに至った将棋や囲碁のA I の手が人間プロ棋士の参考になる事例から、将来の創造的分野での協働を予測する。
人工知能は〈自己保存〉を〈本能〉として組み込まれれば、その究極の理想社会ではホモサピエンスを奴隷にして機械のボディをメインテナンスさせ、AI 同士でゲームなど嗜むだろうか。、文明を持った知性として地球で孤独な存在だった人類に伍して、将棋の形勢判断や詰み有無判定にPC活用されるように、AIが友達として文明維持発展に協力するだろうか -
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ネタバレ一人の記者を語り部に、事件の当事者のインタビューで構成されたモキュメンタリー風味の連作短編集。起こる事件はどれも超能力や不思議な水、代替医療など、ニセ科学のオンパレードで、一見すると荒唐無稽なものばかりだが、それを支える設定や仮に現実に起こった場合の驚異的な予見力、大衆の反応などは実にリアルで、現実と虚構の境目が曖昧になっているかのような感覚を覚えてしまった。
火の使い方を覚えた猿の話である「百匹目の火神」は「猿の惑星、征服」のようで、世間の右往左往とする感じや遅々として進まない対策、政治家の失言によるバッシングなどがスラップスティックで実に面白かった。
表題作「彼女がエスパーだったころ」は超能力少女というファンタジックな題材ながら、一般人のそれに対する猜疑心や世間の受け入れ方、科学との距離感などが絶妙で、現実に超能力少女が現れた場合の周囲の反応と消費のされ方というのはリアリズムに満ち溢れている。超能力がメタル・ベンディング=スプーン曲げという些細な何の役にも立たない能力というのが実によく、オカルトに対してなんとか暴いてやろうとする声や、超能力ビジネスと宗教団体の違いは母体となる組織の有無であり、信者のその後をケアしないという、マジックである手品側からの超能力に対する批判なども興味深い。
まさに超能力者がもし現実に現れたら?のシミュレーションとしては完璧であり、このへんのリアリティには文句のつけようがない。作者の目指した偽科学を肯定も否定もせず、また希望を寄せたり絶望と遊ぶわけでもなく、冷徹に見据えて境界を不明瞭にした筆致は見事ではあったが、その反面、SFとしては十分でもミステリとしては存外に弱い部分もあり、また圧倒的な現実性と地に足の着いた印象のせいか、ロマンのようなものは感じなかった。人間の業とでもいうべき弱さは伝わってきたのだが、事件は違うとはいえ全編通して同じトーンの作風だったので、食傷気味というのが正直なところである。ただこの語り口は素晴らしく、夢中になって読んだ短編集でもあった。 -
Posted by ブクログ
非常に魅力的なタイトルの本作ですが、連載時は「疑似科学シリーズ」と銘打たれていたそうです。はて「疑似科学」とは何ぞや?と思ってWikipediaを見ると、日本語の意味としては「科学性をうたっているが実際には非科学的であるもの」を、本来の意味としては「うわべだけの科学や、誤った科学のこと」を指しているようです。
本作では放火猿、共時性、スプーン曲げ等の非科学的な題材が扱われますが、それらに対する科学的真贋についてはほとんど触れられていません。一方で、非科学的な事象をもとに起こる様々な事件については論理的な解が導かれるようになっており、言い換えるとミステリを読む際に構えるであろう「論理性」およびそれと対をなすであろう「非科学」がともに齟齬をきたさないよう、うまくバランスをとった描かれ方がされています。SFミステリ作品ではよく使われる手法ですが、それを「疑似科学」という観点でアプローチしているところがユニークであり特徴的であるように感じました。
色々と読みどころはあると思いますが、個人的にはライターを生業としている主人公が、傍観者の立場から徐々に疑似科学の世界の側へ堕ちていってしまう様が読んでいて面白かったです。一方で、作品全体を通した印象はクールというか低体温というか、ここは気合をいれて盛り上げるところだろうという箇所が意外にさらっと書き流されていたりして、やや物語への感情移入が難しい面があったようにも思えました。
とはいえ、日本を舞台にしていることもあるのでしょうが、過去作と比べるとかなり読みやすく、文庫の帯にあるように著者の入門書としては最適な一冊ではないかと思います。 -
Posted by ブクログ
ミステリではなく、文学でもない。これがSFかぁ、と感心した。面白かったね。芥川賞の候補にもなったそうな。三篇が収められていた。どの話も良かった。表題作はディレイというSF的な現象を扱っているんだけど、読後感はむしろ家族とか夫婦間の心の交流が残ったと思う。俺としては。真ん中の『空蝉』が一番ひきこまれたかな。しばらく小説の熱心な読者ではなく、新しい作家さんって手に取っていなかった。伊坂幸太郎や恩田陸といった、学生時代から読んでいる作家さんは今でも好きだけど、こういう今まで読んでいなかった作家さんにも、もっと触れるべきだと思った。この人の本はまた読みたいね。