宮内悠介のレビュー一覧
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2018年末に刊行された新しめの日本SFアンソロジー。短編8編+エッセイ2編が収録されています。
アンソロジーを読むこと自体、ちょっと良い(と見込んだ)食事処にぷらっと入って「おまかせコース」を頼むようなもので、満足したい気持ちと、意外なものを味わいたい気持ちが同居していると思います。
個人的には両ポイントともにちょうど良い感じの1冊でした。編集者の匙加減の素晴らしさもあるんでしょうが、SFというジャンルの中での振れ幅もなかなか心地良かったと感じました。
(正統派SFもありつつ、一見ファンタジーでは?日記では?となる作品や、突き抜けたシュールさの作品があって、色彩豊かでした)
1編挙げると -
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シリアスからユーモラスを通り越して(良い意味で)バカみたいな短編まで、宮内さんの引き出しの多さ、アイディアの多彩さに驚き、そして時に呆れる短編集です。
シリアス路線では「アニマとエーファ」がよかった。少数言語を操って小説を書くロボットを描いた短編。革命や紛争、消えゆく文化への郷愁、数奇な人間たちの運命、小説、そして物語の意味……、ロボットの繊細な語り口と、どこか虚無的な作品の空気感とテーマが何とも言えない余情を残す。『盤上の夜』『ヨハネスブルグの天使たち』など、初期の宮内さんの空気感の強い作品でした。
宮内さんというと、どちらかというと上記したような文学的な雰囲気と、人間の拡張やロボット・ -
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失踪した音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽大学を受験した主人公の脩。
型破りな試験が行われる中、会場でアメリカ最初の実験と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。
やがて、第二、第三と連鎖し...
音楽に身を捧げる若者たちの青春冒険譚と思いきや、どういうジャンルに分けて良いのか分からない。アメリカそのものに対するアンチテーゼなのか。音楽とは何か。主たる軸はそこなのだろうが。
ピタゴラスによって音律が作り出されたのが、紀元前六世紀。そこから音を重ねあわせる和声や調性が発見されるまでには、およそ1500年の歳月が費やされた。元は呪術や田畑の豊穣を祈るものであったものが、やがて芸術へと昇 -
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ありそうでなさそうな、なさそうででもこういう事も起こりそうなお話。とはいえ10代、20代の女の子に大の男(しかも軍人)がホイホイ従ってくれるかなぁ?という辺りでは大分ファンタジーですが…
現職大統領が暗殺され、権力者が逃げ出した後でその場に残った女性陣が踏ん張る、というとても現実になったらいいなぁというお話です。まぁ女性じゃなくても本気でその国の未来を憂いている人なら男性でも良いんですけどね。
面白かったんですが、個人的に主人公の一人に日本人を入れなくても良かったんじゃ…と思ったり。5歳にして両親を亡くしても取り乱さないとか、ちょっと変だし。その割に学生になったら普通の子みたいになっていて -
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ネタバレなんだこれはいきなり都市伝説が出てきたぞそんな話か…? と悪い意味で意表を突かれた書き出しだったが、物語が進み始めるとその第一印象もどこかに飛んでしまうほどで、やっぱり上手かった。
「それでも、二人の棋士は、氷壁で出会うんだよ」という由宇の言葉に、読み手は相田とともに涙する。
他の収録作も、それぞれ盤上遊戯において異能を持つ者たちの尋常でない世界を巧みに彫り上げていると感じた。
が、表題作のエピローグ的な一面も持つ、最後に収められた書き下ろしの「原爆の局」については、あるいは若干の蛇足だったかも…「盤上の夜」のラストが美しかっただけに。 -
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表題作はアメリカのソフトウェア会社で働く日系三世の女性・レイを主人公に据えた物語です。会社から強制休暇を命じられたレイは、かつて祖父母が収容されていた日系人収容所を訪れ、アメリカ人になりきろうとした母と、日本人であることを捨てなかった祖母との間をかつて取り持ってくれたミヤケ氏の名前を見つけます。ミヤケ氏の息子に会いに行ったレイは、祖母と没交渉状態だった母が、レイの学費のために祖母に頭を下げにいったことを知り・・・
レイの会社が製作した「トラック・クラウド」が象徴的ですが、様々な壁、例えば世代であったり人種であったり言葉であったり親子関係であったりを、いかにして乗り越えるかいうところが本作のテー -
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「みやつじやくとうぐう」と読むんだそうです。
好みの作家さんが名を連ねていて、その豪華な面々に、思わず即買い。
ミステリーというよりはホラー寄り。勝手にリレー形式のミステリーだと思っていたので、連作短編集のようなものをイメージしていましたが、それぞれが独立したアンソロジーですね。
リレーだと思うと、前の作品を強引に入れ込んだでしょ感が出ちゃってる。でも、宮内さんの作品のラストは秀逸でした。リレー形式ならではの〆だと思います。
アンソロジーって、好きな作家さんの作品を、濃密に、いいとこどりしたような感覚で楽しめるのはもちろん、知らなかった作家さんや、興味はあったけれどまだ読めていなかった作家さ