宮内悠介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ありそうでなさそうな、なさそうででもこういう事も起こりそうなお話。とはいえ10代、20代の女の子に大の男(しかも軍人)がホイホイ従ってくれるかなぁ?という辺りでは大分ファンタジーですが…
現職大統領が暗殺され、権力者が逃げ出した後でその場に残った女性陣が踏ん張る、というとても現実になったらいいなぁというお話です。まぁ女性じゃなくても本気でその国の未来を憂いている人なら男性でも良いんですけどね。
面白かったんですが、個人的に主人公の一人に日本人を入れなくても良かったんじゃ…と思ったり。5歳にして両親を亡くしても取り乱さないとか、ちょっと変だし。その割に学生になったら普通の子みたいになっていて違和感を覚えました。どういう設定なんだろうか?
とはいえ日本人が居ないとファンタジー世界みたいになっちゃうかのかなぁ。大分ファンタジーではあるのだけれども。面白おかしいエンタメ作品のような、キナ臭い今の世界に起こっても不思議ではないような、その辺りの調整が上手だなぁと思いながら読み終えました。
ママチャリ君は最後までモブで終わったのでちょっとほっとしました。彼が政権の中枢なんかに入ってきたらそっと本を閉じるところでした。
それにしてもバイクの彼が運命の人だったのは設定盛り過ぎてる気もしないでもないですが… -
Posted by ブクログ
宮内悠介作品の中ではお気に入りの一冊なのです。
単行本も持ってますが、文庫もあらためて購入して再読しましたー。
中央アジアに位置する、架空の砂漠国家アラルスタン。
他国との紛争で居場所を失った少女ナツキが拾われたのは「後宮」。そこは、単なる大統領の側室コミュニティではなく、まさに大学級の教育機関として機能していた。
個人的にはね、アラブを舞台としながら「後宮」を特務機関にしちゃう、この発想が好きなんです……。
ナツキが、アイシャが、ジャミラが、流行ファッションや美味しいご飯を取り巻いてキャッキャと語らう一方で、国を守るための戦略を練り、AIM(アラルスタン・イスラム運動)という反政府組織とも対バン張っちゃうという。
アラルスタンの大統領暗殺という大きな事件の中で、国の力を弱めず存続の道をどうにか体現していこうというテーマ。
そこに絡んでくる「雨」のキーワードも印象的なのですよねー。
砂漠地帯にとっては恵みの象徴、でもチェルノブイリを経験した人々からすると災厄の象徴。
アラブ地域は今なお、力のある国家によって翻弄され続けている。こうしたキーワードから、考えの違いを浮き彫りにすることで相容れなさをうまく表しているようにも思うのでした。 -
Posted by ブクログ
表題作はアメリカのソフトウェア会社で働く日系三世の女性・レイを主人公に据えた物語です。会社から強制休暇を命じられたレイは、かつて祖父母が収容されていた日系人収容所を訪れ、アメリカ人になりきろうとした母と、日本人であることを捨てなかった祖母との間をかつて取り持ってくれたミヤケ氏の名前を見つけます。ミヤケ氏の息子に会いに行ったレイは、祖母と没交渉状態だった母が、レイの学費のために祖母に頭を下げにいったことを知り・・・
レイの会社が製作した「トラック・クラウド」が象徴的ですが、様々な壁、例えば世代であったり人種であったり言葉であったり親子関係であったりを、いかにして乗り越えるかいうところが本作のテーマであると解釈しました。大変読みごたえのある良作ですが、過去のいじめのトラウマをずっと引きずっているっていう設定が安易に思えたのと、主人公にあまり切実さが感じられなかったところは弱いかなとも思えたので、星は4つとさせてください。
同時収録されている「半地下」もアメリカを舞台にした日本人姉弟の物語です。父親が失踪し、食べていくためにプロレスラーとなった姉は、移民孤児の凶悪なキャラクターという、いわば「自分を偽った」形で生き残ろうとしますが・・・
設定自体もそうですが、自らのアイデンティティのありか、言葉の壁といったテーマについても表題作と相通じるところがあり、こちらも面白く読めました。ラストがやや中途半端に感じられたのは純文学フォーマットだからなのかなあ。 -
Posted by ブクログ
「みやつじやくとうぐう」と読むんだそうです。
好みの作家さんが名を連ねていて、その豪華な面々に、思わず即買い。
ミステリーというよりはホラー寄り。勝手にリレー形式のミステリーだと思っていたので、連作短編集のようなものをイメージしていましたが、それぞれが独立したアンソロジーですね。
リレーだと思うと、前の作品を強引に入れ込んだでしょ感が出ちゃってる。でも、宮内さんの作品のラストは秀逸でした。リレー形式ならではの〆だと思います。
アンソロジーって、好きな作家さんの作品を、濃密に、いいとこどりしたような感覚で楽しめるのはもちろん、知らなかった作家さんや、興味はあったけれどまだ読めていなかった作家さんの作品も楽しめるのが好きです。さらに、その作家さんの作風だとか強みを出してくれるので、その作家さんの背景を知れたり。例えば東山彰良さんの作品は、「なんで中国!?」と思いもしたけれど、東山さんご自身が台湾出身だってことを知ったり。宮内悠介さんの、ド文系には何を言っているのか分からなかったプログラミング用語も、宮内さんご自身がプログラマーだったということを知ったり。今回のアンソロジーで、今のお二人の作品がすごーく刺さってきたかと言われるとお答えしにくいのですが、こんな風にお二人の背景や生い立ちを知っていると、次に本屋さんでお二人の作品を目にした時、わたしはきっと、立ち止まってあらすじと舞台を確認してしまうだろう。
他の三名の作家さんも、それぞれ作風と強みがすっっごく現れていて好きです。宮部さんは、わたしはどちらかというとミステリーが好きですが、最後たたみかけてくるところはミステリーとは別の意味でゾクゾクさせられたし、さらにそこでタイトルの「人・で・なし」の意味が激変する。この短いアンソロジーの最初に、ものすごいインパクトと個性を残して去っていく。他の作品が気にならないわけがない。辻村さんは、「母子」という根深いテーマを、このアンソロジーという短い作品の中にぎゅっと詰め込んで、スミちゃんの言葉でいちいち読者を刺してきながらも、「ちょっぴり怖い」を落としどころとしているところはお見事だし、薬丸さんはやはり少年事件を扱っていて、こんな風に、初めてその作家さんに触れる読者への自己PRのようなものも意識してるんだろうな。
で、結局やっぱり、宮部さん辻村さんがダントツ、続いて薬丸さん、という感じかなあ。 -
購入済み
得意分野かな
著者の得意分野の本である。
表題作は。
淡々とした語り口であるが、戦場と埃とゴミの臭いがする部隊をうまく表現している。
その舞台の中の人形との対比が見事である。
そのほかの作品も各々個性はあるが同じ基調を持っている。 -
Posted by ブクログ
SF。短編集。エッセイもあり。
これは良い企画。5年、10年と続いてほしい。
久永実木彦「一万年の午後」
人類絶滅後のロボットたち。綺麗な文章が印象的。
高山羽根子「ビースト・ストランディング」
怪獣を持ち上げるスポーツ。相変わらず奇妙な設定が持ち味。好き。
宮内悠介「ホテル・アースポート」
SF設定でのミステリ。ミステリとしては小粒だと思うが、上手くまとまってる。舞台設定が良い。
秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール」
吸血鬼&マフィアもの。ラノベやマンガぽさが強い。成田良悟『バッカーノ!』風な印象。好き。
松崎有理「イヴの末裔たちの明日」
近未来の技術的失業。リアルなテーマを、静かな文章でコミカルに描く。作者らしい。好き。
倉田タカシ「生首」
かなりの異色作。自分はついて行けなかった。
宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」
SFアクション。『裏世界ピクニック』のイメージが強いが、こんなのも書くのか…。
堀晃さんは、日記風ということでスルー。