【感想・ネタバレ】あとは野となれ大和撫子のレビュー

あらすじ

――沙漠の国で奇跡が起きる――

第157回直木賞候補作にして、第49回星雲賞受賞作!
受賞歴多数、最注目の新鋭・宮内悠介が描く、爽快すぎる冒険譚!

沙漠の小国家、アラルスタン。日本人少女ナツキは紛争で両親を失い、国の教育機関“後宮”に引き取られることに。
同じ境遇の仲間と気楽な日々を過ごしていたが、大統領が暗殺され情勢は一変。
国の中枢のほとんどが逃亡、反政府軍が襲来する絶体絶命の危機に陥ってしまった!
ナツキは仲間の立ち上げた臨時政府に参加し、自分たちの居場所を守るために奮闘するが……。
どんな困難も笑い飛ばして明日に進む、乙女たちの青春冒険ストーリー!

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

この本の良さは、文庫版の辻村深月さんの解説に語り尽くされている気がする。以下、恐縮ながら抜粋:
「架空ーーではあるものの、その設定におけるリアリティの厚みにまずは驚愕する。」
「中央アジアのシビアな現実の緊張感と、彼女たちの関係性からいずる青春小説さながらの楽しさの緩急に、ページをめくる手が止まらなくなる。そして期待は裏切られない」
「この軽さが意図的でないはずがない。」
「…いつ沈むとも砂に呑まれるともわからないギリギリの場所で踏みとどまる彼女たちの歌劇と青春がこんなにも愛おしい。私はこれを、宮内悠介のフィクションの勝利だと思う。著者がフィクションの力を信じていなければ、この物語は絶対生まれなかった。」
「自分と同時代に宮内悠介のような作家がいて、私はとても幸せだ、と。」

フィクションをこよなく愛する人に、お薦めです。

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2023年04月27日

Posted by ブクログ

――

 この国の名は、アラルスタン。かつて、アラル海とよばれた場所だ。


 移住してきた多民族による新興国。油田とイスラム系反政府組織を内部に抱え、隣接する国々とその向こうの大国とが利権を争う小国。

 独立記念日に大統領が演説中に暗殺され、議会がまるごと逃げ出した爆発物みたいなその国で、大統領直下の特殊教育機関“後宮《ハレム》”に属する少女たちは、自分たちの場所を守るために国家の運営に乗り出す。


 ……なにこのあらすじ(笑

 この物語はフィクションです、って何処へ向けてるか解らない注意書きとはまるで違う、これぞフィクションだ! と胸を張っているかのような強度と速度。
 立ち向かうものは大き過ぎて、根深過ぎて、
 それでいて、いやそれだからこそ? 
 少女たちの物語は、軽やかに進む。


 読み終わって、この物語が内包する(というか、この物語が成立するための要素であるところの)中央アジア情勢、議会政治の堕落、国家・民族間の確執、大人と子供…などなど、そのどれに方が付くわけでもないし、何か大いなる教訓が得られるわけでもない。

 それでも、前を向いて考えて歩いてりゃ、悪いことばっかりじゃねぇし、悪い奴ばかりでもないんだよなぁ、という、
 本当に恥ずかしいんだけど、そんな感想がいちばん大きい。


 あるいは民族的、宗教的問題の中で、ナツキという日本人はある種浮いた存在に見えかねないのだけれど、
 個人的にはそれもプラスの要素に感じられました。
 ナツキみたいな日本人こそが、本当に旅人になれるのかもしれない。
 ちょっと言い過ぎか? まぁ影響力無いからいいだろ←

 そもそもナツキも日本育ちってわけじゃないしね…なんていうか、ニュートラルな存在?
 国籍や民族で性格が定まるとは思わないけれど、
 民族的な遺恨や禍根、してきたこと、されたこと。
 そこから離れて、それを深く理解しながら、けれど問題は個人のものとして捉えられるニュートラルさ、というか。
 そこにいる、ということを受け容れて、そこにあるものを繋いでいける強さ、というか。

 何かが欠けている、から、そこを埋めることができるんじゃないか。
 そんな、希望というにはあまりにも手前勝手な、
 でも輝いて見える、何かが、あります。


 あらゆるひとに、読んでほしい一冊。☆4.6




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2020年12月30日

Posted by ブクログ

タイトルがめちゃ好き。
単行本持ってたけど、辻村深月解説につられて文庫のほうも買ってみた。

久しぶりに読んだけど、やっぱり面白かったぁ

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2020年12月21日

Posted by ブクログ

『Another side of 辻村深月』で辻村深月先生が解説を書くならば、その物語をきちんと読まなくては、という心持から手に取った本。

タイトルから、純和風な舞台を想像していましたが完全に裏切られました。
架空の中東の国が舞台ですが、独特の固有名詞や後宮の仕組みなど設定が練られているので薄っぺらいということはないです。
まるで獣の奏者を読んだときのような気持ち。異世界に触れるような。

舞台は架空の国かもしれないけれど、そこで描かれる政治的かつ外交問題なんかは現代の世界でもどこか通ずるものがあると思うので他人事とは思えない。
悲しいかな、議会の男が逃げそうなのは今の日本では想像つくけれどうら若き乙女が政を取り仕切るのは想像できない。でも、だとしても、自分がこの国を、と思えるくらいにまじめに考えるのもアリなのではないか?と思った。
自分が、ではなく、読者それぞれが。

小難しい言葉が出てくるラノベ(ラノベ読んだことないのですが)というような気持ちになったのは、ご都合主義的なハッピーエンドだからかもしれないですが、一生懸命行動する人が報われたり、運が向くのは希望が湧きます。
あーこの人死ななくて良かった、というのがあって、読後感もすっきりできて良かったです。

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2023年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

深刻さと軽さ、爽快さのバランスが絶妙。面白かったです。
アラルスタンという中央アジアの架空の国で、高等教育機関「後宮」で学んでた女の子たちが、大統領が暗殺されて議員たちが国外逃亡してしまったために「しょうがないから、国家をやることにしようかなと」と国政を執り行う。
アラルスタンが割と緊張感ある情勢で、周辺国からは侵攻されてるしAIMというイスラム系の反政府組織はあるし、政治系の教育受けてきたとはいえ20代くらいの女の子たちに出来るのかと思ったけど、なかなかどうして惹き込まれました。大の大人の軍部男性が割とすぐ従うのはご愛嬌で。
命がけの場面もたくさんあってヒヤヒヤしました。でも女子高ノリでひたすら爽やか。文化祭()もそれはそれで……。
よく考えると、アラルスタンは旧ソビエトでウズベキスタン領だった自治区なのですが、油田出たから独立する!となったら欧米の協力を得たウズベキスタンが侵攻してくるの、、今の世界情勢に似たとこあると思いつつ東西逆ですよね。
アラルスタン平定したら議員たちが戻ってきて、大統領代行のアイシャの弾劾を始めるの胸糞。まさかのウズマが…となったのは胸熱でした。
ナツキとナジャフは少女漫画的でした…良きです…。。
嫌いになれないイーゴリ。皆さん、ソビエトの被害者というのもそれはそうです。映像化しても映えそうな物語でした。

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2022年04月30日

Posted by ブクログ

星雲賞だっけか?で読んだと記憶している。
舞台設定は確かにSFだけど、登場人物たちがみんなまっすぐで、さわやかな青春モノのよう。実際は結構えげつない状況なのにどことなく希望が見えてしまう。
読みやすいけど軽すぎず面白かったです。

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2021年07月12日

Posted by ブクログ

中央アジア、干上がったアラル海に位置する小国、アラルスタンで繰り広げられた壮大な宝塚歌劇、みたいな・・・。

歴史と現状を踏まえた丁寧な舞台の設定と過酷な環境を経て各地より集まってきた少女達が葛藤しながら自らの信じるもののために向かっていく成長のドラマを、悪役が登場せず、かつ誰も死なない、安心安全なエンターテイメントに仕上げています。

ダムの決闘や劇中劇の学芸会には流石にちょっと萎えたけど、狙撃に動ぜずカリルを庇ってすっくと立つアイシャに思わずカッコいい!と萌えたのも事実です。

かなり好き。面白かった。

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2021年01月08日

Posted by ブクログ

ありそうでなさそうな、なさそうででもこういう事も起こりそうなお話。とはいえ10代、20代の女の子に大の男(しかも軍人)がホイホイ従ってくれるかなぁ?という辺りでは大分ファンタジーですが…

現職大統領が暗殺され、権力者が逃げ出した後でその場に残った女性陣が踏ん張る、というとても現実になったらいいなぁというお話です。まぁ女性じゃなくても本気でその国の未来を憂いている人なら男性でも良いんですけどね。

面白かったんですが、個人的に主人公の一人に日本人を入れなくても良かったんじゃ…と思ったり。5歳にして両親を亡くしても取り乱さないとか、ちょっと変だし。その割に学生になったら普通の子みたいになっていて違和感を覚えました。どういう設定なんだろうか?
とはいえ日本人が居ないとファンタジー世界みたいになっちゃうかのかなぁ。大分ファンタジーではあるのだけれども。面白おかしいエンタメ作品のような、キナ臭い今の世界に起こっても不思議ではないような、その辺りの調整が上手だなぁと思いながら読み終えました。

ママチャリ君は最後までモブで終わったのでちょっとほっとしました。彼が政権の中枢なんかに入ってきたらそっと本を閉じるところでした。
それにしてもバイクの彼が運命の人だったのは設定盛り過ぎてる気もしないでもないですが…

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2020年12月24日

Posted by ブクログ

この辺りが舞台の話を読んだことがないのではじめは入り込みにくかった。
重たいテーマなのに物語が進むにつれて軽くなっていくなと思っていたけど、辻村深月の解説読んで納得した。

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2024年02月09日

Posted by ブクログ

中央アジアの架空の国アラルスタンで、利発な少女たちが自国の危機を救うために大奮闘する活劇。
巻末の主要参考文献からもわかるように舞台設定のリアルさと、ラノベ的な展開のミスマッチさが肝。
相変わらず文章は巧いし、設定もすごいし、面白いことは面白いんだけど、限りなく4に近い3にしちゃったのはなんでだろう…。
ラノベ的ドライヴ感が小難しいリアル設定説明のくだりで失速してしまったのかもしれない。

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2023年06月10日

Posted by ブクログ

架空の国で大統領が暗殺されて、後宮(といっても妻としてではなく教育機関)にいた女性たちが逃げ出した政府上層部たちに変わって政治をする話。
架空の国ですが、世界情勢や宗教観は現実に沿っていました。(ただ、イスラム圏のいざこざの知識がなくてあんまり理解できてなかったですが)
「あとは野となれよ」と”ままよ”の精神で切り抜けていくのでわりとあっさりからっとしたトーンで進んでいきました。普通に面白く読めました。

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

架空の政治の話が絡む、現代アラビアンファンタジー。賢い女の子たちがワイワイ賑やかに集まるお話。ジャミラとアイシャがカッコいい。登場シーンからナジャフはイケメンオーラが漂っていた。イーゴリは最後までうるさくていまいち掴みきれなかった。
架空の国だけど、水の話や政治的な立ち位置など、リアルにかかれてて面白い。乙女の学友会と勢いで突っ走ってしまったけど、もう少し経験したたかなばあさん連中と政治のメンツを取りこんで、議会の内外で組み立てれば、骨太なファンタジーになったのにと思う。
ところどころで挟まれる、ママチャリで世界一周のお兄ちゃんのブログが好き。

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2021年06月10日

Posted by ブクログ

沙漠の小国家、アラルスタンで大統領が暗殺された。国の中枢にいる男たちが危険を感じて国外へ逃亡する中、国家の危機に立ち上がったのは教育機関"後宮"の少女たちだった。

様々な民族が集まり、複雑なバランスで成り立っている国家の危機を少女たちが救う。なんと面白そうなストーリー…!

辺国の圧力やテロリスト、血腥い想像をしながら読むが、あくまで筆致は軽い。その軽さが物足りなく思えて初めなかなか乗れなかったが、おかげで辛くならずに安心して読み終えることができた。

少女たちはもとから優秀であったが、責任を負ってまた更に成長する。試練を経て強くなる姿に胸が熱くなる、これこそ青春冒険譚の醍醐味…!

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2021年01月11日

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