宮内悠介のレビュー一覧
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圧倒的巧さで書かれる、異常にクオリティの高い馬鹿作品、大好物です。同筆者の「盤上の夜」とのギャップが凄まじいですね。面白かった……!
とりあえず表紙ページの「メロスは激怒した」のくだりだけで噴き出し、最後のあらすじも面白く、こういった本に出会うと作品のみならず作者本人まで好きになりますね。
個人的なお気に入りは、ともに男たちの熱い真剣勝負が描かれる「トランジスタ技術の圧縮」と「星間野球」。こういう本格的に全力で馬鹿をやるお話、大好きです(笑) 「今日泥棒」のテンポのよい掛け合いや、「超動く家にて」のボケツッコミの応酬も最高でした。
他の作品もそれぞれに独創性が光り、奇想天外さにぶっとんだり、想像が追いつかないながら勢いで読めてしまったりと、一冊で大満足の短編集でした。 -
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11月にテレビで放映された『世にも奇妙な物語』の『トランジスタ技術の圧縮』が面白かったのでったので、原作を読んでみました。
時は2036年。雑誌『トランジスタ技術』の広告ページを除いて圧縮する競技の最後の大会が開催された。『アイロン派』 (アイロンで背表紙の表紙を溶かして広告ページを取る派)関本のもとで修行した梶原は、『毟り派』(アイロンを使わずむしり取る派)の坂口と対戦する。
もう、しょうもないネタなのに熱く、お約束の「こんな修行、何の役に立つ?」ネタあり、笑いっぱなしでした。
16の短編があり、かぎ括弧で殺人事件が起こる世界など(かぎ括弧職人、山際の存在がいい)、設定が面白いものから、お父さんが楽しみにしている日めくりカレンダーを勝手にめくったのは誰だ、という日常の謎解きまであります。
物語生成人形と少女の友情物語『アニマとエーファ』は、おふざけナシの心温まるお話。
母国語の物語を聞くことの大切さ、物語生成人形が作った創作物は物語を作らせた人を映す鏡であること、など、考えさせられることがいっぱいでした。 -
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ネタバレ碁、将棋、麻雀、チェス、ボードゲームを題材にした短編集。ゲームを巡る人間の執念や狂気がおもしろい。
■盤上の夜
囲碁の話。四肢を失った女流棋士が研ぎ澄まされた感覚と純粋な勝負心から連勝を重ねるが、より感覚を研ぎ澄ますために取り組んだのが外国語という点が面白い。一つの事象や感情も言語によって表現の仕方は多様で、宇宙にも例えられる囲碁の魅力とのつながりがオカルトちっくでありSFっぽくもある。
■人間の王
チェッカーの話。半世紀負け知らずの人間と機械の闘い、そして数学による完全解が証明されてしまったゲームにおいて、人間の王者は何を見たのか。
計算上は完全解明されたゲームであっても、人間がプレイするときには考える楽しさや負けたくないという思いは変わらないのだな。
■清められた卓
麻雀の話。麻雀は運の要素が非常に強く、プロであっても交通事故のような負けに遭ってしまう。何かを賭ければ必然と狂気じみたものになる。
オカルトと数理と度胸がぶつかり合う勝負が面白い。
■象を飛ばした王子
チェスや将棋のルーツとも言われる古代インドのチャトランガの話。教えは易しく、時とともに変遷し、底知れなさがあることで伝承されるという一説に納得。
■千年の虚空
将棋の話。実務派の兄のAIと天才派の弟の頭脳の対決、その間にいるのは魔性の女。データ処理で歴史を正しい一本の道にする量子歴史学というエセ学問に魅力を感じた。
■原爆の局
囲碁の話。他の話のスピンオフのようにもなっている。
碁とは何か、五割の抽象と五割の具体か、九割の意志と一割の天命か。 -
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『Another side of 辻村深月』で辻村深月先生が解説を書くならば、その物語をきちんと読まなくては、という心持から手に取った本。
タイトルから、純和風な舞台を想像していましたが完全に裏切られました。
架空の中東の国が舞台ですが、独特の固有名詞や後宮の仕組みなど設定が練られているので薄っぺらいということはないです。
まるで獣の奏者を読んだときのような気持ち。異世界に触れるような。
舞台は架空の国かもしれないけれど、そこで描かれる政治的かつ外交問題なんかは現代の世界でもどこか通ずるものがあると思うので他人事とは思えない。
悲しいかな、議会の男が逃げそうなのは今の日本では想像つくけれどうら若き乙女が政を取り仕切るのは想像できない。でも、だとしても、自分がこの国を、と思えるくらいにまじめに考えるのもアリなのではないか?と思った。
自分が、ではなく、読者それぞれが。
小難しい言葉が出てくるラノベ(ラノベ読んだことないのですが)というような気持ちになったのは、ご都合主義的なハッピーエンドだからかもしれないですが、一生懸命行動する人が報われたり、運が向くのは希望が湧きます。
あーこの人死ななくて良かった、というのがあって、読後感もすっきりできて良かったです。 -
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バカSFと呼ばれているのか。徹底したくだらなさにニヤニヤした。一話目の「トランジスタ技術の圧縮」でやられた。
他で印象に残ったのは、「文学部のこと」「超動く家にて」「犬か猫か」「かぎ括弧のようなもの」
■トランジスタ技術の圧縮:トラ技といえば、私にとっては読んだことないけどよく見かける雑誌の筆頭。一見薄そうだけど、そんなに広告があるのか。トラ技の広告ページだけを削って薄く保存しようとする勇者たちの物語。アイロン派と毟り派の二大派閥の伝説と栄枯盛衰と対戦バトルが描かれている。こういう訳の分からないバッドノウハウを極めたくなる理系オタクっぽさにニヤニヤしてしまった。
■文学部のこと:内容云々よりも、5行に一回くらいしか句点の無い意図的な文体に著者さんの悪意を感じて、ニヤニヤしてしまった。
■超動く家にて:タイトルと見取り図からお察しの内容ですが、後から後から出てくる情報にニヤニヤしてしまった。
■犬か猫か:犬か猫か、これは大事なこと。たいていのことよりも。
■かぎ括弧のようなもの:バールのようなもの、みたいな話。日本語版だから成立する話。 -
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宮内悠介は、「盤上の夜」という短編集で初めて知ったのだけれども、大変シリアスなSF短編集でまじめな人なのかと思っていたらこの短編集。
最初から最後まで笑いが止まらなかった。
トランジスタ技術という実在の雑誌をいかに圧縮できるかを競う様を描いた「トランジスタ技術の圧縮」、もうなんて表現したらいいかわからない「超動く家にて」、ウィリアムギブスンの代表作「クローム襲撃」をメタ小説的に村上春樹的にアレンジしてもう何言ってるかわからないけど明らかに村上春樹な「クローム再襲撃」。ほか、本当にくだらない短編ばかり16編を集めている。
この人がすごいのは、発想がくだらないだけではなく、くだらない発想をきちんとこちらに伝える圧倒的な筆力。笑いながら感心してた。
一応SF小説の部類だし、一部元ネタがわからないと「?」ってなるところもあるとは思うけど、それを差し引いてもSFファン以外でも十分楽しめると思う。 -
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囲碁、将棋、チェス、麻雀などのボードゲームを題材にしたSF短編集なのですが、史実に基づいた描写も多く、いわゆる「SF要素」が薄めな作品も多いです。
ただこの「史実」と「フィクション」の織り交ぜ方や、独自の解釈が非常に読ませる作者さんで、ゲームのルーツや歴史についても飽きずに読めます。
人間プレイヤーVSコンピューターの視点はやはり、現代の観点からボードゲームを見るに当たっては、避けられない話題なのでしょうか。
麻雀を題材にした「清められた卓」なんかは麻雀のルールを知らずとも引き込まれてしまったし、「三角関係」という表現では生ぬるい、倒錯した性関係・愛情関係がもつれる「千年の虚空」も良かったです。 -
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これまで数々の将棋小説に手を出しておきながら、灯台下暗し、なぜこの一冊を見逃していたのだろう……。
囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋。
ボードゲームと哀しき天才の掛け合わせが、ドラマを生む。
個人的に「象を飛ばした王子」が良かった。
釈迦の息子、ラーフラ〈蝕〉の物語なのだけど、釈迦のようにはなれない自分、という劣等感の中にいても、自分の民に対する最適解を考え続ける、誠実さがグッとくる。
そして、人の好戦的な感情を、ゲームの中に押し込めようとした、その着眼点も良いと思う。
人間を超える機械と、人間のイマジナリーの力がぶつかりながら、ゲームが解かれていく様子は、なんだか恐ろしい。
そして「完全解を見つけられては困る」と思う人々の気持ちも、分からないではない。
単なる遊戯に、これほどの「名誉」が生まれるのは、それもまた人間の限界を試すものの一つであるからなのかもしれない。 -
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「人・で・なし」
宮部みゆき上手いよねえ。
極めて普通の(もしかしたら宮部自身が遭遇したかもしれない)居酒屋の、よくある話から、「人でなし」のワードを引き出して、ひとつの現代の「怪談噺」が始まる。まあ、やり過ぎ(ありきたり)のオチだったけど。リレー・アンソロジーどうなるんだろ?
「ママ・はは」
宮部からバトンを受け取ったのは、辻村深月。話の導入方法と「表題」「写真」というキーワードを引き継いだようです。果たして何処を引き継いで何処を引き継がないのか。ちょっと推理したくなりました。
「わたし・わたし」
辻村からバトンを受け取ったのは、薬丸岳。初めて読む作家。確か実際にあった犯罪に取材した小説が多かったかな。今回も見たような犯罪。ショートなんで捻りが足りない。コレ、結局写真繋がりのホラーということなの?
「スマホが・ほ・し・い」
薬丸からバトンを受け取ったのは、ホラーなんて書いたことがないという東山彰良。しかも写真が出てこない!なんなんだ?でも、東山さんらしく、なんかの冒険小説の序章に思える。現代台北の話というのも大変魅力的。
「夢・を・殺す」
東山からバトンを受け取ったのは宮内悠介さん。AI繋がり?初めての作家さん。本来SF作家で、ホラーを書くような人でない。だけど、PCに取り憑いたバグが機械の幽霊なんではないか、という展開から、まさかの宮部みゆきさんにバトンを渡したのでした。
因みに、宮部みゆき文庫本は一部例外(絵本とアンソロジー、ボツコニアンシリーズ)を除いて、コンプリートするというマイルールを設定している。だから本書は除外してもいいんだけど、彼女はどうも本作品を自分の短編集に組み込む意思は無さそうだ。よって、いつかは読まなくてはいけないとは思っていた。
果たして、記念写真は撮れたのでしょうか?
無理だろうな。みんな忙しいから。 -
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斜線堂有紀の上智卒なるほど!と思わせる英語力も見せつけられました。斜線堂ファンなら、この短編だけのために読むべき一冊です。
・石川宗生「うたう蜘蛛」
死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延したイタリア。総督の前に、「この流行り病を収束させてみせましょう」とホーエンハイムなる錬金術師が現れる。
性描写あり、中学生には微妙ライン。
好み的には合わず。
・宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
一九六五年の日本。そこには「ピーガー」というSNSが存在した。
一番心が乗らなかった作品。発想は面白い。
・斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
和歌を詠むと同時に“詠訳”する平安時代。“詠語”が苦手で人前では歌を詠まない式子内親王の前に現れた一人の女房、帥(ソチ)によって詠訳の力を得る。
いやー、面白かったです。シスターフッドっぽいところは斜線堂有紀らしいけど、それ以外はこれまでにあまり見なかったような(平安だし!)世界観。
・小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」
江戸には巨大な石壁「大廓」が横たわっていた。
一体、その石壁は“何”から江戸を守っているのか――? 明暦三年一月。燃え上がるあの日の真実が紐解かれる。
これはなかなか話の展開が楽しかったのと、江戸の治水や防火の史実との絡みなどはもっと知識あればより楽しめたかな。
・伴名 練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
ジャンヌ・ダルクは今まさに火刑に処されたのに、処された朝にループするお話。しかも20001回。
短いループでどんな運命変化あるのか、というところに焦点当たっていればもっと楽しめたかも。何故ループするのか、の方が私にはあまり入って来なかったので。でも、印象に残る作品でした。