宮内悠介のレビュー一覧
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『あとは野となれ大和撫子』を読んでから、気になっている作家さん。(その割に『ゲームの王国』の小川哲と記憶混同していたけど。)
以下、ネタバレ有。注意。
「百匹目の火神」がサルによって火を熾す話なら、「水神計画」では原発事故によって汚染された水を、人が言葉で浄化する話があったり。
ロボトミーならぬオーギトミーという脳手術で、暴力衝動を破壊する「ムイシュキンの脳髄」は、ミステリーとして面白く読めた。
今作の推しは「彼女がエスパーだったころ」からの「佛点」。
スプーン曲げアイドル千晴ちゃんが、後の作品にかけて変わっていく姿が、愛おしい。
科学と非科学。科学者と宗教とエスパー。
後作は世界の転換点である「沸点」を、人為的に創り出そうとする話なのだが、その中で性と倒錯を伴うカルトにおける救いは果たして是が非か、という非常に微妙な問いに語り手と千晴がぶつかっていくシーンが出て来る。
どの話(疑似科学シリーズという名称らしい)にも、それをペテンと一蹴出来ない、純粋な危うさが混じっている。
そして、私の勝手な考えだけど、人は高度な知能を持ってしても、それを見破らせない本能すら兼ね備えているような気がする。
だって、それが本当に信じて良いものかどうかを完璧に見分けてしまったら、恐らく救いが訪れないから。だから、時に大きく間違う。(つまりは、多数の人がそれは間違いであったという判断を下す)
「佛点」では、いわゆる正義と呼ばれる前向きな行動によって追い詰め、「救われていたはずの人々」の破滅をもたらす。その結末に、レーニン、スターリンを持ってくる所がすごい。
孫引きになるけれど、宮沢賢治の引用文が鳥肌過ぎるので、載せる。
「けれどもしおまへがほんたうに勉強して実験でちゃんとほんたうの考とうその考とを分けてしまへばその実験の方法さへきまればもう信仰も化学と同じやうになる。
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治(第三次稿より、第四次稿にて削除)」
あとがきより。
「暴くのは簡単だ。むしろそこには、なんらかの快楽さえ宿ることだろう。しかしこの快楽を、ぼくは排したかった。そうでなく、科学的な知見を大切にしながら、かつまた、あの静かな空間を引き戻すことはできないか。ついでに、スプーン曲げがあるともないとも定まらない世界でミステリを成立させることは可能か。こうした一連の実験を、SFとして仕立てあげることは可能か?」 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのジャンルは辛くなるのがイヤであまり読まない。ただ、自分の中でのタイミングが合って、読んでみてよかった。
すれ違い疎遠になっていた息子リョウが、ウクライナで義勇兵となって死亡したー突然の知らせを受けた70代の母親キョウコ。少しでも息子のことを知りたくて、単身ウクライナへ。
現地で出会った同じ境遇で同年代のアメリカ人、ミラとともに、国際免許を偽造したり、検問を突破したりしながら、息子達の跡をたどる。
ようやくリョウと同じ隊にいた男性に話を聞き、まさにリョウが死亡することになったシーンの動画を見せてもらうことに。そこに映っていたのは、ロシア軍ーリョウを殺した側ーのミラの息子だった。
太平洋戦争や大震災の物語を読んでも、大変だったんだなとは思うが、それは済んだことで、本作のようにページをめくるたびに「今」なんだ、と足元に穴が空いて落っこちそうになるような心持ちにはならなかった。
現地で取材をされたのか気になったので、潮出版社さんのホームページを見ると、小川哲さんとの対談記事があって、これがまたいい。
「もし行って、何も感じなかったらどうしよう」と不安だったそうな。
「一般的に取材をすると情報が増え、書けることは増えると思われがちです。でも小説家が取材をするとそれが枷となり、書けることの選択肢は、むしろ減る。現地を知ってしまったがゆえに、自由に書けなくなるんですね。私は現地取材に行く理由を問われると、いつも「視野を狭めるため」と答えています。今回、現地で市井の人の話をたくさん聞きましたが、聞いてしまった以上、それについて否定できない何かが生まれる。自分が書かなければ、この人の物語は語られないままになりかねない、といった気持ちが生じます。」
他にも印象的なお話がたくさんだったので、是非小説とセットでおすすめ。 -
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戦時中、誰もが知ってるような、酷い話がたくさんある。ユダヤ人迫害、神風特攻隊、沖縄戦、原爆。日本人目線での例が多くなってしまうが、世界にこのように広く知られている話がたくさんある。
もちろんその渦中にいた人たちは、言わずもがな、計り知れない苦しみを味わったと思う。
でも同時に、そういった人たちよりわかりやすくないけれど、知られていないけれど、戦争によって苦しんだ人たちがたくさんいたのだろう。
それを考えさせられるお話だった。
今平和に暮らせている私たちからすると、ベルリンの壁が崩壊したり、国が独立したりすることは、良いことだったのだろう、人々は救われたのだろうと漠然と思ってしまう。けれど実際は、それが起こったことによって、環境が変わり、周りの人が変わり、良いとされる考えが変わり、戸惑い、苦しみ、時には命を投げ出してしまう人々がいたのだ。
まとまらないけれど、この本を読めて本当に良かった。全く見えていなかった歴史を知ることができた。大切な友達とずっと連絡を取り合えたり、すぐに会えたりすることが、当たり前のことではなかった時代もあるのだと知ることができた。
3人の青春時代がすごくきらきらと描かれていたからこそ、バラバラになった時の悲しみがより深かった。
今の世界情勢を見ていると、他人事ではないと思う。
一緒にいたい人たちと、当たり前にずっと一緒にいられる世界であれますように。
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四肢を失うも碁盤に感覚を接続し碁を打ち続ける少女。
無敗の世界チャンピオンの座を投げ打ってまでプログラムとの対戦に身を投じるチェッカーの王者。
新興宗教の教祖やサヴァンの少年たちによって繰り広げられる異形の麻雀。
ひとりの少女を巡る共依存の果てに、将棋盤を挟み片やゲームを殺すことを、片や神の再発明を夢見る兄弟。
囲碁、将棋、麻雀など、テーブルゲームを題材とした連作SF短編集。
石黒達昌を思わせるジャーナリスティックな文体のルポルタージュ風SFから物語はファンタジックに飛翔し、ゲームに取り憑かれ囚われた者たちが異様な高みへ達していく様を描く、熱気あふれる怪作。
個人的には「清められた卓」がダントツで、かつて麻雀小説も麻雀マンガも相当読んだが、その中でも最高峰に近い出来映え。
ついつい購入から数年ほど積読してしまったが反省しきり。これは著者の他作品も読まねば。 -
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ネタバレ最近読書欲が落ちているので、ミステリーを読みたくて手に取りました。
「スプリット」という話しだけはスポーツ系の感動もの、という印象。他はミステリーだけど、色んな個性があって面白かったですね。
「どうして今夜の彼女は魅力的に映るんだろう」はミステリーの内容はまずまず予想できましたが、タイトル回収と、キャラの個性が出てて面白かったです。読んだことはないと思うのですが、噂通りの東川篤哉作品!って感じでした。
「笑う君影草」は途中ホラー系!?って思ってしまったけど、ちゃんと読めば予想できた事で(笑)でも、私の好きなちょっと人怖系の落ちだったので良かったです。
「名探偵名前が適当」はタイトルからはオチが予想できませんでしたが、物凄く納得出来たし、着眼点が面白くて、最後は似鳥鶏先生らしさもあって好きでした。
「夏を刈る」 : 太田愛さんの作品は人気もあって、本を持ってはいますが積読したまま、まだ読めておらず。ただ期待して読みました。ちょっと切なげな、王道のミステリーとゆう印象でした。でも、良く出来ているなぁ、と正直思いました。
「最後のひと仕事」これもまたタイトル回収が秀逸でした。しかも最後の1文に一番痺れました!
短編集はだいたい好きな物が何個かあるっとゆう印象で、やはり好みでないものもあったりする中、今回全部好きでした! -
Posted by ブクログ
1977年、ソ連統治下のエストニアに生まれたラウリ・クースク。
幼い頃より数字に強い興味を持っていた彼は、次第にプログラミングの才能を発揮していく。
周りに同レベルでプログラミングについて話せる人もおらず、孤独感を抱える中で、もう一人の才能・イヴァンとの運命的な出逢いが訪れ、まさに切磋琢磨の関係で、互いにプログラミングの能力を磨いていく。
やがて新しい友人・カーテャを加え、3人で充実した時間を過ごす。
が、ソ連からの独立を求める機運、その後のソ連崩壊という時代の流れに翻弄される形で、3人の運命は別々の方向へ動き出し…
ラウリの人生を追う記者の取材(現在)と、ラウリ目線のエピソード(過去)が順番に綴られ、立体的に話が展開していく。
過去のしがらみや後悔を一部は自分なりに乗り越え、一部はどこかで引きずり、激動の時代をなんとか生き抜いていく姿に、いろんな感情が揺さぶられる。
ラストは温かい気持ちで読み終わることができた。
最初思っていたより遥かに深みのある素晴らしい作品だった。