【感想・ネタバレ】ラウリ・クースクを探してのレビュー

あらすじ

1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。

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「むずかしいことは何もない」
放置された年月は、単純なことを複雑にする。

作家の頭の中で作られた物語ではあるが、ルポタージュの様式を取り入れ、大国ソ連に翻弄されたバルト海の小さな国エストニアとそこに生きた子供たちの、小さな、でもとても大切な歴史を描いたドキュメンタリー。

英雄でもなんでもない普通の人こそ世界の大半を占める。
だから、こんなに感動する。
だから、こんなに胸に刻まれる。

これが小説のチカラだ。

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2025年08月09日

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これはなんていうジャンルになるのだろう。
伝記より深く、小説よりリアルで、けれども文章が美しい。

この世界観がすごく美しくて、ラウリの、そしてこれを書いたイヴァンの心の美しさを表していると思う。

ラウリの物語かと思いきや、それを追う記者の視点があって、それがまさかのイヴァンという第一の驚きも束の間、実は数々の伏線が貼られていたなんてっていう第二の驚きが大きくて。

ミステリー系好きからすると、この文章構成はずるい。。。

題名もとってもいいし、、、。

それにまた歴史小説でもあるっていうところが本当にすごくて、こんな薄いものなのに、文章すっっご!!ってなる。。。

これは、すご、、、くね。

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2025年06月02日

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ネタバレ

プログラミングは水晶の精霊に捧げる詩。
のような表現がすごく良くて、歴史小説だけど、少しSF味があって、すごく面白かった…!

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2025年05月28日

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エストニアという国の苦難が垣間見える。しかし、人々の志は高い!!ラウリ・クースクの半生を辿る事で、エストニアの事も見えてくる。同じ時代を生きてきて、日本とこれほどに環境が違うのかと驚いてしまい、エストニアの人々の強さに敬服する。

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2025年01月22日

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コンピュータプロミングに才能を持つエストニアの少年とロシアの少年の話。そこにエストニアの歴史が深く絡んでくる。コンピュータプロミングのことは全くわからないけれど。純粋な少年達が政治に翻弄されていくのが切ない。本当にあった話では無いにしろ 現実に起こりうる、起こった話ではないか。
エストニアの過酷な歴史、独立した今もまだ続いている現状。ロシアと接する国々の緊迫感は島国日本からは考えられないものだろう。
それでも二人が、、、最後の再会の場面に救われる。

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2025年01月09日

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偉人ではないラウリたちの人生を描いていて、理不尽な世界のなかにある友情の純粋さや美しい情景の描写が本当に良かった。
泣けるし、非常に穏やかで前向きな気持ちになれる小説です。

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2024年09月21日

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【2024年ー47冊目】

ラウリ・クースクは何もなさなかった

そんなラウリ・クースクの伝記を書くために取材を続けるジャーナリストの私の話

1980年代のペレストロイカ、ソ連崩壊という大きな渦のなかに生きたエストニアのラウリ・クースク自身の話

この現在《ラウリを探す私》と過去《ラウリ》の2つの視点で物語は進む
私はなぜラウリを探しているのか?なぜ無名なラウリの伝記を書こうとしているのか?
何だか不思議な物語だなぁ~と思いながらも、どんどん物語に引き込まれていく!
そしてある仕掛けに気が付き、びっくりし、納得する
これだから読書はやめられない!

この作品の舞台、エストニアといえば…
元力士の把瑠都がいたなぁ〜とか、バルト三国の人間の鎖を授業で学んだなぁ〜くらいの知識しかなかったが、意外にもエストニアはIT先進国らしい
ほぼ全ての行政手続きがオンライン申請可能であり、選挙も全ての国民がインターネット投票可能なのだ!
それはこの作品を読めば納得…
そしてこの作品のソ連崩壊という歴史の隙間で生きた彼らの生き様に心打たれるはずだ

SF小説が苦手で何となく避けてきたが…
宮内悠介さん!天才!
私、これからは間違いなく読みます〜

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2024年06月21日

匿名

購入済み

ヒューマンドラマ

まっすぐ生きてくれと言ったリホの言葉や、自分のやりたいことをやらなかったことに許せなかったカーティの言葉が刺さるなぁ…
申し訳なさという殻を被った傲慢さが、誰も幸せにはならないはずなのに、ラウリのことは否定できない、自分でもきっとそう思うだろうなという共感性が持てる。
自分にも投影できるようなそんな作品だった。

#深い #共感する

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2024年01月19日

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エストニアがソビエト連邦共和国の構成国から国家として独立していく、そんな時代に翻弄された少年ラウリの夢やかけがえのない友情が崩されていく様子は、克明であった。旧構成国は、今でもロシア原住民とも共に暮らしながらも、常に隣国ロシアを警戒しているという、複雑に絡まった歴史を背負って生きていかねばならない、そんな実情まで言及している。また、この小説では、幼い頃一つの事(コンピューター)にしか集中できなかったラウルは、発達障害だったのだろうが、紆余曲折を経ながらも、デジタル国家を発展させていく要員となれる、という、大人になると社会的に対応できるようになる一つの道筋も示してくれている。

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2025年03月10日

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第11回高校生直木賞受賞とのことで、高校生に響く作品はどんなものとの好奇心で読んでみたら面白かった。私の感性は高校生なのかも。
構成も登場人物も良い。コンピュータお宅の伝記かと最初は思ったが、第二章の最後で驚きがあり、第三章で暖かい気持ちにさせてもらえた。ラウリとイヴァンがつくるコンピュータゲームの描写も楽しいし、カーチャと3人で過ごすダーチャも素敵だ。
エストニアに行ってみたくなった。大人になって、再会したい幼馴染がいるのは良いことだ。定年後はなおさら・・・・

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2025年03月01日

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二人の天才少年達が、エストニアのソヴィエトからの独立という時代に翻弄され、離れ離れになってしまう。
とあるジャーナリストがラウリの伝記を残すために彼を追いかけるという形をとっているが、ノンフィクションと思わせるほど生々しく、どんどん引き込まれた。

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2025年01月02日

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エストニアのソビエトからの独立の歴史。その中で生きてきた40代の男性。同世代だ。エストニア神のラウリ・クースクという人を追いかけるジャーナリストの手記のような体裁をとった本。プログラミングの天才少年だったラウリの人生を通してみるバルトの国の歴史がみえた。それと彼をとりまく友情など。軽やかな文体で爽やか、なのに内容は濃い。

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2024年12月09日

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感想
今を生きる人の伝記ってすごい。しかもなんでエストニア?と思いきやフィクションだったのね。途中までノンフィクションかと思っちゃった。

リアリティ溢れる温かい話。


あらすじ
デジタル国家と言われるエストニアに1977年に生まれたラウリ・クースクの一生について綴る。

ラウリは小学三年生の頃に、プログラミングで鉄屑集めのコンピュータゲームを作る。

中学に入り、コンピュータゲームのコンペで1位を取ったイヴァンと出会い、お互い切磋琢磨する。バルト三国の独立の機運が高まり、ロシア人のイヴァンはレーニングラードに帰る。

学生時代にロシア側に加担し、親友のカーティが独立運動で怪我をしたことでプログラミングから離れて、卒業後は紡績工場の機械工として働く。

昔、いじめられていたアーロンと同僚になる。アーロンと仲良くしていたが、彼は、女性にフラれたことから自暴自棄になり、自殺する。

アーロンの死をキッカケに、プログラミングの世界に戻ったラウリは大学に通い、国家の情報を守るためにブロック・チェーンに近い考えを生み出し、サイバーセキュリティの会社に勤める。

最後はラウリを探していたイヴァンと無事に会い、カーティと3人で語らい合う。

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2024年12月01日

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SL 2024.11.14-2024.11.16
何もなさなかったラウリ•クースクを探す物語。
世界に民主化の嵐が吹き荒れて、ソ連が崩壊しバルト三国が独立した時代に出会ったラウリとイヴァン。国家と政治と歴史に翻弄された何者でもないただの一市民たちの生きた証を描き出す。
こういう終わり方が好き。

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2024年11月16日

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第11回 高校生直木賞 受賞

支配国から独立をすることが必ずしも美談なわけではないのだと思い知った。
名もない一般市民が時代に翻弄され、突然立場が逆転したり、夢を奪われたり。
もしラウリとイヴァンが変わらず一緒に居れてプログラミングを続けていたら、イヴァンが思うように世界を変える技術が生まれた可能性もあったかと思うととても惜しい。
失われたものもあるなかで、大切な仲間と過ごしたかけがえのない時間は消えることなくそれぞれの胸の中にあり、最後のシーンは胸に迫るものがあった。

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2024年09月24日

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2回「え?気づかなかった!」といううれしい驚きを挟んで、結末はすっきりしていて良かった。
暗い歴史が背景なので「ラウリ・クースクを探して」も会えないのではないかと思っていた。
ラウリ・クースク、イヴァン、カーチャそれぞれに国の歴史、現状によって(と言ったら言い過ぎか)不自由さを抱えている。大人になった今、それはそれとしてできる範囲で自分の能力を活かし、社会で活躍している。大人になるというのはそういうことなんだと感じた。かけがえのない子供時代がそれを支えているとしたら、この3人はそういう意味では恵まれていた。
とはいえ、国の運命で自分の人生が変わってしまうのは嫌だ。大きな圧力にさらされないで生きていきたい。

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2024年08月24日

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バルト三国のエストニアはIT 先進国とは知っていましたが
どのようにしてIT先進国になれたのかは知らなかったので
うまくまとめられていて面白かったです。

同じ国に住みながらも立場の違いにより翻弄される3人
ラウリのその後の人生を追いながら
世の中に平凡な人生はない、
この世に生まれたすべての人がスペシャルだと思いました。

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2024年08月12日

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ネタバレ

2024/03/05予約 78
読むまで、エストニアがIT先進国だと知らなかった。エストニアのマイナンバーカードは、ほぼなんでもできる、故にそのデータベースを使って個人的な興味本位の調べ物はできない。という認識のもと仕事に就いている人が多いのか?
日本でここまでのデータを正しく運用できるのか心配に思う。

エストニアで生まれたラウリ・クースク。プログラミングを通して親友になったロシア人イヴァン。エストニアの独立を夢見るカーテャ。
3人は出会い、尊敬しあえる友人になる。

数字だけが友だちだったラウリ。
そうでなくなって、本当によかった。
本の最初から最後まで、爽やかな風を感じられた。

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2024年07月18日

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ネタバレ

新聞の書評で面白そうだったので読んでみる

自分より少し若い世代が主人公 第一部ではMSXやBASICの話題が盛り沢山で、プログラミングの話を懐かしい気持ちで読む

第二部 バルト三国の独立についてはニュースでなんとなく聞き流していたけど、こんな歴史のことだったのか 自分の不勉強を自覚
歴史的には大きな事件でも、その渦中にある個人には目の前のことしか分からないし、その先のことは分からない 
その時に突きつけられた選択、選んでしまった選択肢は自分とは遠い世界のことのはずなのに、誰にでも突きつけられる、他人事としては読ませない流れがとても不思議

第三部 少しドキドキする展開
導入がバッドエンドを予測させて、重い気持ちで読み進めたけど、特語感は悪くなかった

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2024年06月23日

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時代に翻弄された友情の物語。ソ連とエストニアの確執と紛争と独立の流れの中で、同じものを見ていた少年少女たちはそれぞれの道へと分かれていく。そして時を経てのその邂逅。
主人公のラウリがひたすらに実直で素直なので、嫌味なく読み進めることができる。
最後まで普通に面白く読んだけれど、せっかくの邂逅シーンが思ったよりも盛り上がらずに淡々とした描写になってしまったのが残念だった。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

語り手が痕跡をたどっていくに従って、孤独で繊細で、プログラムすることだけに喜びを見出すラウリの姿が明らかになる。
同時にエストニアの歴史も。
ラウリにはあまり友達はいないが、真面目で繊細な彼にこそ親しみを感じる。
アーロンのことは読んでいて辛かったが、カーテャのすこやかな考え方に救われる思いがする。
ちょっとした謎解きもあって心躍らせる。
偉人の伝記とは別に、ラウリのような市井の人の生き様からこそ伝わる時代の空気感や人との関係のあり方があって、それはまったく別の時代、場所を生きるわたしたちに改めて今という時代や人との関わり方について考えさせる。
さらに、自分の生き方についても、かな。
装丁画も切なくて好き。

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

ジャンル分けがしにくいながらも文体が綺麗であっという間に読み終わってしまった。ラウリの話だけではなく、その周りの登場人物もまた個性的で楽しめた。

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ページを繰るのを止められずに、一気に読んでしまった。才能あふれる人が、紆余曲折の後仲間を見つけて切磋琢磨し…でも、途中で彼らは色々な事が原因で、うまくいかなくなり…。この展開の作品、他にもあったなあ。でも、やっぱり羨ましい。こういう天才の人生は自分とはかけ離れているから。そして、彼らのようにひと時でも心から競い合い、尊敬し合う、そんな友情や、人間関係を築いている人が羨ましい。
ソビエト時代はもう歴史の教科書の世界で、自分にはほとんど知識がないが、本作を読んで、もう少し当時の様子を知りたいな、と思った。エストニアという国についても、可愛い北欧雑貨があるというくらいのイメージしかなかった。読書を通じて、他の国についてもっと知識を深めたり、想いを馳せるようになれるとはこういう事だよな、と思う。

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2025年04月04日

Posted by ブクログ

[こんな人におすすめ]
*「エストニアってバルト三国のひとつだよね」以外の情報を持っていない人
 エストニアについて私と同じくらいの感想しか出てこない人、さらに言えばソ連崩壊についても若干記憶があいまいな、というかそもそも生まれてない人に是非おすすめします。最近はロシアやウクライナに関するニュースを見ることが多いですが、この本を読み終わった後にはさらに西の国々についての情報が目に入るようになり、見える世界が広がります。

*ライフスタイルが変わったことで昔なじみに会う機会が減った大人たち
 仕事が忙しそうだから、お子さんが小さいからなどの理由でLINEを送ることすらためらう人たちがこの本を読むと、会える時に会っておこう、話せる時に話しておこうと考えさせられるかもしれません。

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

1977年、現在のエストニアにあたる地に生まれたラウリ・クースクは幼い頃にコンピュータと出会い、プログラミングに熱中するようになった。
学校の授業でもその才能を認められたラウリは、村の外にある学校へと編入する。
その先で仲良くなったイヴァン、カーテャとともにプログラミングに明け暮れながら、楽しい学校生活を送っていた。
そんな中エストニア独立に向けて革命の動きが起こり、その影響はラウリたち3人の人生にも広がっていく。
記者がラウリ・クースクの伝記を書こうとしているところから始まり、彼の軌跡を辿っていく形式で物語が進んでいく作品。

ソ連やエストニアのことについて全然知らず、プログラミングについても知らないことばかりなので入り込みにくさはあった。
けれど、「国」というものが大きく変わる動きが起きた時代の中で、それに翻弄される思春期の子どもたちの揺らぎとその影響が分かりやすく描かれていて良かった。
普段考えることがなかったけれど、国の独立や併合等で国が変わるということは、そこで暮らす人たちの根幹が大きく揺らぐ出来事なのだろうと思う。
そしてそれは子どもたちの方がより大きく、訳も分からず巻き込まれ、揺らぎのままに影響を受けてしまうのかもしれない。
一方で全体を通して静かに淡々と物語が進んでおり国のことを知らない自分には、もう少し詳しく国の動きについて描写があると物語に入り込みやすかったかなと思う。
また今作はラウリの人生を外側から辿っていく形式だったため、ラウリ自身の葛藤や心の動きをもう少し知れると良かったなと感じた。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

紛争の最中にいる子供達の成長譚。
絶対全滅だと思って暗澹とした気持ちで読んだがそんなことなかった。最近触れてきたものがそちら寄りだったので…
戦争ものを読むと、戦争って本当に最悪…の気持ちで他の感想をキャッチできなくなる。子供が主人公だと特に!
でも稀有な才能を持ったもの同士が出会って、わくわくするようなものを一緒に作り出す、という輝きを感じられて良かった。エンジニアの人が読んだらもっと面白いのかな。

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2024年11月29日

Posted by ブクログ

夢中になれることがあり、それを一緒に考えられる仲間に出会ったラウリの満たされた高揚感にわくわくした。ソ連とバルト三国の関係により、そんな仲間にも亀裂が入る。こうしたことで人々が分断されるのはもう終わりにしてほしい。

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2024年11月26日

Posted by ブクログ

舞台はエストニア。
多くの日本人読者にとってはあまりなじみのない国だろう。
バルト三国の1つであり、3つの国のうち、最も北にある。
土地柄、大国であるロシア・ソ連に翻弄されてきた歴史を持つ。
首都タリンは不凍港を擁し、バルト海交通の要衝でもある。
ソ連崩壊に伴って、1991年に独立を回復した。IT先進国として知られている。

主人公ラウリ・クースクは、1977年、ソ連時代のエストニアに生まれた。
幼いころから数字が好きだった。父親が職場で入手した旧式のコンピュータに熱中し、プログラミング言語、BASICを習得。就学前に簡単なゲームを作成することができるようになった。
学校に上った彼はいじめっ子のアーロンに目を付けられ、必ずしも楽しい学校生活は送らなかったが、プログラムの才には目を見張るものがあった。折しも、国の方針で、情報教育に力が入れられるようになり、子供たちは幼いうちからコンピュータに触れる機会を得ていた。
プログラミングのコンペティションに応募した彼は、上位に入賞した。優勝したのは別の少年、モスクワに住むイヴァンだった。小さな村から、町の中学校に進学したラウリは、その学校に編入してきたイヴァンとともに学ぶことになる。絵のうまいカーテャという少女と、ラウリ、イヴァンは友達となり、3人は一緒に多くの時を過ごすようになる。
だが、ソ連崩壊が3人の友情にも暗い影を落とし、輝かしい日々は終わりを告げることになる・・・。

ラウリとは何者か。
「序」では、
ラウリ・クースクは何もなさなかった。
と述べられる。つまり、歴史の中で何かをなし、何かを変えた人物ではないということである。
彼に才はあったが、それは世界を動かすようなものではなかった。
どちらかといえば歴史に翻弄され、漂ってきた人物である。
しかし、私たちの大部分はそうであるとするならば、これは「彼」の物語であると同時に、「私たち」の物語であるのかもしれない。

物語はラウリの目から、そしてラウリを「探して」いる誰かの目から語られる。
その誰かは、途中まで作者自身なのかとも思わされるのだが、実は意外な人物であることがわかる。いや、よく考えれば意外ではないのかもしれないが。

エストニアという国の特異な歴史も興味深い。
なぜ日本人がエストニアを舞台にした物語を書くのか、という疑問は生じうるが、それを言い出すと、極端な話、自身に近い人のことしか書けないということになってしまう。
作者は実際、幼少期にはラウリを思わせるような「数字オタク」の少年だったそうで、ある点では主人公は著者の投影ともいえる。

230ページほど、さして長くない。
しかし、その中に一国の現代史、歴史の波にもまれた人たちのそれぞれの人生、そして少年期のかけがえのない友情のきらめきまで落とし込んだ、なかなかの佳品である。

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2024年09月16日

Posted by ブクログ

ジャーナリストがラウリを探す現在と、過去のラウリの時制が交互に展開される物語。日本にいるとない国や人種で友人関係に亀裂が入ったり、将来を壊される世界。常に世界は紛争があり、平和についても考えされられる話

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

こういう伝記系フィクションは夢中に読めちゃう。
ラウリの人生を淡々となぞりつつも、途中に大きな物語の転換で抑揚もついて、とても楽しく読めました。

そういう時代だった、としか言えない、時代に翻弄されるってやりようのない悲しさや虚しさがあるなと思った。

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2024年07月14日

Posted by ブクログ

時代に翻弄されるのはどの国でも一般人なんだな。素敵な青春を翻弄されてどん底まで行く。
人は知らないところでとても思いやってもらえてることがあるのかもしれないな。

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2024年07月09日

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