宮内悠介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アンソロジー作品『Jミステリー2023 FALL』を読みました。
全篇書下ろしの短篇を収録した贅沢なアンソロジー作品です。
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ミステリー界の最前線で活躍する作家陣による、全編書き下ろしの超豪華アンソロジー「Jミステリー」。
この秋も誰もがよく知るあの作家たちが競演! 大好評だったあの作家の再登板も……これを読まずして日本ミステリーを語ることなかれ。
『Jミステリー2023』もお見逃しなく。
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2023年(令和5年)に刊行された作品で、以下の6篇が収録されています。
■どうして今夜の彼女は魅力的に映るんだろう 東川篤哉
■スプリット 逸木裕
■笑う君影草 長岡弘樹
■名探偵名前が適当 似鳥鶏
■夏を刈る 太田愛
■最後のひと仕事 宮内悠介
読み味、色とりどり……これぞ日本ミステリーの醍醐味! 東川篤哉、宮内悠介、長岡弘樹らミステリーで確固たる地位を築く作家から、着実にファンを集める逸木裕、昨年秋号が大好評につき再登板となった太田愛と似鳥鶏まで、大人気ミステ リー作家たちの新作書下ろしを収録した贅沢なアンソロジー第4弾。
初めて読んだ作家の作品が多かったので新鮮だったですね……そんな中でイチバン面白かったのは、烏賊川市シリーズのユーモアミステリで、公園の女子トイレで消えてしまい、その後、別な場所で殺害されて発見された少女の謎を解く、東川篤哉の『どうして今夜の彼女は魅力的に映るんだろう』ですね、、、
その他では、
超短時間で容疑者5人の中から犯人を「坂田である!」と推理して名探偵は立ち去ってしまうが、容疑者の中に坂田という名前の人物はおらず残された警察は困惑する……名前を間違えたことことにも合理的な理由が説明される似鳥鶏の『名探偵名前が適当』、
アルバム収録中のスタジオで、ロックグループのコースティック・タングスのメンバが殺害されたにも関わらず、その死体を放置したままレコーディングを続けたヴォーカリストの謎を解く宮内悠介の『最後のひと仕事』、
が印象的だったかな……プロ野球のドラフト会議を背景にしたスカウトと高校球児の物語を描いた逸木裕の『スプリット』は、ミステリというよりもスポーツ小説として愉しめましたね。
たまにはアンソロジーも良いですね……。 -
Posted by ブクログ
帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範囲内での気持ちの揺れ動きが小さい所が逆に心に引っ掛かる。
〇 月の高さ/藤井太洋
劇団の舞台美術スタッフと星座との関係でほんのわずかながらにSFのにおいがするが、話の流れは至って普通の話。
〇 ちょっとした奇跡/小川哲
既読。初めて読んだ時にはかなりインパクトを受けたが、2回目ともなるとインパクトは皆無。逆に言うと、もう完璧に完成された作品であるとも言える。
〇 水星号は移動する/深緑野分
設定は宇宙旅行も簡単にできる未来社会。その未来社会でも下層社会で生きる人もいる。キャンピングカー、いや移動式の旅館「水星号」に搭乗、いや宿泊する人達とのなんでもないやり取りが実に面白い。
〇 グレーテルの帰還/森晶麿
立派な推理小説。「旅」というイメージよりも、人生の旅のようなイメージ。最大の賛辞を述べるならば、ミニ松本清張っていう感じ?
〇 シャカシャカ/石川宗生
まずは「シャカシャカ」が何であるか考えることから始まる。最初のシンガポールが何故4番なのか判らないまま読み始める。その後、それらの意味が判る。山田太一の「終りに見た街」が激しく連続して起こると言えば良いのだろうか・・・結末は全然違うけど。この作品が一番SFっぽくてとても楽しめた。素晴らしい作品だ。
裏表紙の解説で知ったが、この文庫本は「Voyage想像見聞録」の改題だった。そういうことか。 -
Posted by ブクログ
第1回創元SF短編賞選考委員特別賞
第147回直木賞候補
第33回日本SF大賞
の、デビュー作(恐ろしい)
囲碁将棋等の6つのテーブルゲームを軸にした短編集
あくまでSFの空気を纏っているだけで、とても読みやすく、思考に溢れ、身近な卓上遊戯を幹にしている分受け入れられやすい作品
とんでもないデビュー作
まあ、こんなに分かりやすくSFを感じると直木賞は新人紹介枠だった気もするが。案の定宮部みゆきさんが推していて大変納得
囲碁がテーマの盤上の夜では幼少時に四肢を失い、囲碁盤を感覚器として機能するようになった女性の話
この1編の最後の2行はとても美しく
この情景をまるですぐ側で見ているように感じさせるべくそこまでの49ページを書いてきたのではないかと思わせるほど
囲碁が感覚器ってなんぞ、という人も
僕達だってこうやって文字から感覚が伝わることもあるのですよ
読み終えて、話の好き嫌いは人それぞれあるだろうが、この宮内さんの物語に対する言葉選びのセンスは否定しようがないのではと思う
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Posted by ブクログ
戦時中の詩人“竹内浩三”の幻のノートを求めて、中年のバツイチ男が仕事をやめてフィリピンで“自分探しの旅”に出る、そんなイメージで読み始めた。
ところが、案外これが不思議な冒険活劇になっていく。
フィリピンは複雑な歴史をもつ。
もともと複数民族がルソン島とミンダナオ島を中心に多島に散らばって文化圏を形成していた。
そこにイスラム文化が入り続いてスペインがキリスト教とともに入る。
その後独立を約束したアメリカに裏切られ日本に占領される。
あいだで何度も独立宣言するも短期間で消滅し、大戦後ようやく独立を勝ち得た。
そんな複雑な歴史とともに人々の感情も一様とは程遠く渦巻く……そんな印象もちゃんと伝わってくる。
この『遠い他国でひょんと死ぬるや』と言う題名から受ける“軽妙”でありながら“孤独”を感じさせるのが、また、良い。
最後の章では痛烈な戦争批判を感じ、自分探しや冒険だけでは無い読後感を味わうことになる。
「いちど染み付いた死臭は消えない。国もまた……」
意味は深い。 -
Posted by ブクログ
中央アジアを舞台にしているということで、中央アジア旅行の前に空気感を知っておこうと思って読んだ本。中央アジアというより南アジアが主な舞台だったので予習にはならなかったけど、レイとジョンの旅を読んでいると、ラダック旅行をした時の空気感が蘇った。
様々な登場人物がそれぞれの理由で目指す幻の山イシュクト。あらすじを読んだ時は冒険譚かと思ったけど、冒険譚でありつつ、エンジニア的視点が多分に織り交ぜられたSFだった。世界の不具合をデバッグする「世界医」と呼ばれる人たちの仕事やイシュクトに対する捉え方、大量のメタ注釈がとてもエンジニア的で、リアルと空想が混ざり合う不思議な小説だった。
前半は登場人物が多く、あまり話の全体が見えてこないけど、後半になると一気にそれぞれの物語が繋がって面白くなってくる。 -
Posted by ブクログ
読みやすさ★★★
学べる★★★★
紹介したい★★★★
一気読み★★★★
読み返したい★★★
たまたま手に取ったことからの初の宮内悠介作品だったが、この読後感。どうしてくれよう、お腹いっぱいだ。
近未来SF、テクノロジーにまつわる短編集らしいが、著者の他のテーマの作品も気になる。
仮想空間、ネット社会の暗部、AIが書いた小説(よくできている)、宇宙開発、と次元を越えた物語が一冊に詰め込まれている。
技術的に細かく作り込まれた設定やイデオロギーの応酬など、なかなかしっかり難解(だが興味深い)な話ばかりで、その点だけでもかなり読み応えがあるのだが、反面、登場人物たちがドライというかダウン系というか、熱が感じられない。
しかし、その退廃的な空気が心地よい、不思議な世界観である。
夜通し飲んだ後に朝焼けを見た感覚に近い。
『暗号の子』は一番面白かった。
ハイスペ父娘のタッグでシリーズ化できるのでは?と実は期待している。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【暗号の子】
〈人から暗号〔クリプト〕へ。あるいは、認知のアナログ・デジタル変換。わたしは一個の暗号体となり……〉
冒頭から掴まれる。
主人公はカウンセラーに勧められてVR空間にあるASD匿名会に参加するが、参加者の一人が無差別殺人事件を起こし、主人公も関係者として取り調べを受ける。
警察には合同会社化を持ちかけられたが、会〔クリプトクリドゥス〕のメンバーは賛同せず、事件やクリプトクリドゥスのことが社会問題となり、主人公の本名や住所などが暴かれる。
主人公は動画配信者とのコラボ企画などで自分の考えを発言するが、無政府主義者と言われる。
そして、クリプトクリドゥスはもう以前とは違ったものになっていた。
生きづらさを抱えていた主人公が、たどり着いたクリプトクリドゥス、守りたいという気持ちはよくわかるような気がするし、お願い、放っておいて、と祈る気持ちにもなった。
やがて、父が、プログラムのバグを利用してクリプトクリドゥスを解散させないようにする手を打つ。
そして、主人公は新たな居場所を作ることにする。
味方は実は身近にいた。
それが冷えた間柄だった父親ということにも、主人公の新しい選択にも希望を感じさせる終わり方。
とても好きな作品。
【ペイル・ブルー・ドット】
地球を観測する人工衛星の会社でその衛星に組み込むソフトウェアの開発をしている主人公が夜の公園で空を観測している少年陽太と出会い、主人公が力を貸し陽太が作ったキューブサット〔小型人工衛星〕を自社の人工衛星打ち上げの際、一緒に打ち上げるという計画が進んだ。
しかし、打ち上げはできないことになる。
その話を主人公がメールでしていたアメリカの誰もが知る宇宙開発企業で働く主人公の後輩彩矢が彼女の会社の会長に陽太のことを話すと興味を持ち、アメリカへ迎えたがっているという。
陽太には学校に友達がいないということを主人公が察する場面があり、仕方ないとは思うものの、辛いと思う。
特性を活かすことが生きることだとしたら、陽太はこれから生き生きと生きていくだろうし、陽太とのことが彩矢や主人公にとっても新しい人生の展開になりそうで、希望を感じさせる。
とても好きな展開。
最後のところもとても印象的。
ほかの作品も、素晴らしかった。
AIが執筆したのは、そう書かれてあったので、そうなのだなと思って読んで、でも違うんだよね、深さみたいなもの、と思ったけれど、そう書かれてなかったら、一風変わったこの作者の、それ自体詩のような作品と思ったかもしれない。
今度は長編を読んでみたい。