宮内悠介のレビュー一覧
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第1回創元SF短編賞選考委員特別賞
第147回直木賞候補
第33回日本SF大賞
の、デビュー作(恐ろしい)
囲碁将棋等の6つのテーブルゲームを軸にした短編集
あくまでSFの空気を纏っているだけで、とても読みやすく、思考に溢れ、身近な卓上遊戯を幹にしている分受け入れられやすい作品
とんでもないデビュー作
まあ、こんなに分かりやすくSFを感じると直木賞は新人紹介枠だった気もするが。案の定宮部みゆきさんが推していて大変納得
囲碁がテーマの盤上の夜では幼少時に四肢を失い、囲碁盤を感覚器として機能するようになった女性の話
この1編の最後の2行はとても美しく
この情景をまるですぐ側で見ているように感じさせるべくそこまでの49ページを書いてきたのではないかと思わせるほど
囲碁が感覚器ってなんぞ、という人も
僕達だってこうやって文字から感覚が伝わることもあるのですよ
読み終えて、話の好き嫌いは人それぞれあるだろうが、この宮内さんの物語に対する言葉選びのセンスは否定しようがないのではと思う
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Posted by ブクログ
戦時中の詩人“竹内浩三”の幻のノートを求めて、中年のバツイチ男が仕事をやめてフィリピンで“自分探しの旅”に出る、そんなイメージで読み始めた。
ところが、案外これが不思議な冒険活劇になっていく。
フィリピンは複雑な歴史をもつ。
もともと複数民族がルソン島とミンダナオ島を中心に多島に散らばって文化圏を形成していた。
そこにイスラム文化が入り続いてスペインがキリスト教とともに入る。
その後独立を約束したアメリカに裏切られ日本に占領される。
あいだで何度も独立宣言するも短期間で消滅し、大戦後ようやく独立を勝ち得た。
そんな複雑な歴史とともに人々の感情も一様とは程遠く渦巻く……そんな印象もちゃんと伝わってくる。
この『遠い他国でひょんと死ぬるや』と言う題名から受ける“軽妙”でありながら“孤独”を感じさせるのが、また、良い。
最後の章では痛烈な戦争批判を感じ、自分探しや冒険だけでは無い読後感を味わうことになる。
「いちど染み付いた死臭は消えない。国もまた……」
意味は深い。 -
Posted by ブクログ
中央アジアを舞台にしているということで、中央アジア旅行の前に空気感を知っておこうと思って読んだ本。中央アジアというより南アジアが主な舞台だったので予習にはならなかったけど、レイとジョンの旅を読んでいると、ラダック旅行をした時の空気感が蘇った。
様々な登場人物がそれぞれの理由で目指す幻の山イシュクト。あらすじを読んだ時は冒険譚かと思ったけど、冒険譚でありつつ、エンジニア的視点が多分に織り交ぜられたSFだった。世界の不具合をデバッグする「世界医」と呼ばれる人たちの仕事やイシュクトに対する捉え方、大量のメタ注釈がとてもエンジニア的で、リアルと空想が混ざり合う不思議な小説だった。
前半は登場人物が多く、あまり話の全体が見えてこないけど、後半になると一気にそれぞれの物語が繋がって面白くなってくる。 -
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読みやすさ★★★
学べる★★★★
紹介したい★★★★
一気読み★★★★
読み返したい★★★
たまたま手に取ったことからの初の宮内悠介作品だったが、この読後感。どうしてくれよう、お腹いっぱいだ。
近未来SF、テクノロジーにまつわる短編集らしいが、著者の他のテーマの作品も気になる。
仮想空間、ネット社会の暗部、AIが書いた小説(よくできている)、宇宙開発、と次元を越えた物語が一冊に詰め込まれている。
技術的に細かく作り込まれた設定やイデオロギーの応酬など、なかなかしっかり難解(だが興味深い)な話ばかりで、その点だけでもかなり読み応えがあるのだが、反面、登場人物たちがドライというかダウン系というか、熱が感じられない。
しかし、その退廃的な空気が心地よい、不思議な世界観である。
夜通し飲んだ後に朝焼けを見た感覚に近い。
『暗号の子』は一番面白かった。
ハイスペ父娘のタッグでシリーズ化できるのでは?と実は期待している。 -
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ネタバレ【暗号の子】
〈人から暗号〔クリプト〕へ。あるいは、認知のアナログ・デジタル変換。わたしは一個の暗号体となり……〉
冒頭から掴まれる。
主人公はカウンセラーに勧められてVR空間にあるASD匿名会に参加するが、参加者の一人が無差別殺人事件を起こし、主人公も関係者として取り調べを受ける。
警察には合同会社化を持ちかけられたが、会〔クリプトクリドゥス〕のメンバーは賛同せず、事件やクリプトクリドゥスのことが社会問題となり、主人公の本名や住所などが暴かれる。
主人公は動画配信者とのコラボ企画などで自分の考えを発言するが、無政府主義者と言われる。
そして、クリプトクリドゥスはもう以前とは違ったものになっていた。
生きづらさを抱えていた主人公が、たどり着いたクリプトクリドゥス、守りたいという気持ちはよくわかるような気がするし、お願い、放っておいて、と祈る気持ちにもなった。
やがて、父が、プログラムのバグを利用してクリプトクリドゥスを解散させないようにする手を打つ。
そして、主人公は新たな居場所を作ることにする。
味方は実は身近にいた。
それが冷えた間柄だった父親ということにも、主人公の新しい選択にも希望を感じさせる終わり方。
とても好きな作品。
【ペイル・ブルー・ドット】
地球を観測する人工衛星の会社でその衛星に組み込むソフトウェアの開発をしている主人公が夜の公園で空を観測している少年陽太と出会い、主人公が力を貸し陽太が作ったキューブサット〔小型人工衛星〕を自社の人工衛星打ち上げの際、一緒に打ち上げるという計画が進んだ。
しかし、打ち上げはできないことになる。
その話を主人公がメールでしていたアメリカの誰もが知る宇宙開発企業で働く主人公の後輩彩矢が彼女の会社の会長に陽太のことを話すと興味を持ち、アメリカへ迎えたがっているという。
陽太には学校に友達がいないということを主人公が察する場面があり、仕方ないとは思うものの、辛いと思う。
特性を活かすことが生きることだとしたら、陽太はこれから生き生きと生きていくだろうし、陽太とのことが彩矢や主人公にとっても新しい人生の展開になりそうで、希望を感じさせる。
とても好きな展開。
最後のところもとても印象的。
ほかの作品も、素晴らしかった。
AIが執筆したのは、そう書かれてあったので、そうなのだなと思って読んで、でも違うんだよね、深さみたいなもの、と思ったけれど、そう書かれてなかったら、一風変わったこの作者の、それ自体詩のような作品と思ったかもしれない。
今度は長編を読んでみたい。
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Posted by ブクログ
宮内悠介さんの、金融・ゲーム・メンタルヘルスの知識と、バラード派SF観が惜しみなく詰め込まれたテクノロジー系短編集。おもしろかった。
ひとつひとつのお話しに関して好みの差はあるものの、編集がいい。
前半の4話
「暗号の子」
「偽の過去、偽の未來」
「ローパス・フィルター」
「明晰夢」
は、暗号通貨またはSNS環境と何らかの社会不適合や依存性をからめてあり、新しいテクノロジーに人生の何かを壊された人がテーマになっている。
とはいえ、物語としての完成度は、やはり「暗号の子」がもっとも高いと思った。
「すべての記憶を燃やせ」
は、半分はAIが書いた小説。
悲しい、苦しい、涙が止まらないなどの陳腐な感情表現が何度も繰り返され、正直、AIが小説を書くのは時期尚早、としか思えなかった。が、宮内さんがAIに負けないようにがんばった、と記しているように、なんとか対比が描かれていて、浪漫派の詩の解説くらいに体裁は整っていたと思う……好みではないけれども。
後半、
「最後の共有地」
「行かなかった旅の記憶」
では、テクノロジーの中に生きつつ、ノスタルジックな雰囲気でほの明るい雰囲気になり、最後
「ペイル・ブルー・ドット」
で、いちばん明るく希望的な物語で締めくくられていて、とても読後感がよかった。
暗号通貨やプログラミング言語、ハードウェアの解説部分は多いけれども、分かりやすく書かれていて読みやすい。また、興味のない人はここは読まなくても大丈夫、と書いてあり、実際その部分を読まなくても物語を理解できるところは、ひねくれたSF作家、宮内悠介の面目躍如だなぁ、と楽しかった♪ -
Posted by ブクログ
私にもっとゲームの知識があれば…と悔やんだ作品。
単なる盤上ゲームを扱った作品ではなく、ゲームそのものの抽象的意味を投げかけるような哲学的な話であったり、そこに掛ける人間の精神性であったりを描いていて、とても読み応えがあった。
正直言って難解な内容。起承転結も掴みにくく、ゲームのルールが理解できないと、本書の魅力は半減すると思う。
それでも静謐たる文章が心地よく、また実在するようにすら感じる人物たち、SFらしい驚きと新鮮さに引き込まれた。
個人的には「人間の王」と、「象を飛ばした王子」が好き。これはどちらもゲームがよくわかっていなくても面白いから、というのもあるけれど。
短編だけど、実は連作小説的にわずかな繋がりもあるお話で、それぞれ独立しているようで、全てがゲームとは何かということに繋がる小説。
深く、そしてあまりにも多様な世界観で、とてもよい読書体験だった。
こんなことを書いたが、内容の10%も理解していないかもしれない。
ゲームのルール以前に、どのようにゲームが動いているのか、なぜその手を打ったのか、そうしたプレイヤー目線ができるようになるには、自分自身も対局を読む力が必要だから…。
盤上ゲームを理解した上で、もう一度挑戦したい。 -
Posted by ブクログ
直球王道、本寸法のバカSF(←褒め言葉ヽ( ´ー`)ノ)。いや、バカSFに本寸法も何もありませんけどねヽ( ´ー`)ノ
地獄の女王にこき使われていた天才SEの青年が、銀河を股にかける金融会社の取立て担当者に助けられ、共に貸付の取り立てをするために宇宙やら地獄やら情報の渦の中やらに飛び込んで大冒険。・・・って話なんですが、みなさん意味わかります?鴨も書いててよくわかりません(笑)。取り立てをするときに主人公が先輩に突かれて発声する企業理念「わたしたち新星金融は、多様なサービスを通じて人と経済をつなぎ、豊かな明るい未来の実現を目指します。期日を守ってニコニコ返済・・・」が水戸黄門の印籠のように登場するのがお約束。周囲に振り回されているように見えても最後はちゃんと着地すべきところに着地する主人公と、自分勝手で横暴ながらもやるべきことはキッチリこなす有能な(?)同僚ユーセフの丁々発止のやり取りが、この作品の定番です。
そんな一見「お笑い」のシリーズですが、でも、相当ハイレベルでハードコアなSFのロジックが、ストーリーの中心にズバッと刺さっているのが、この作品の見どころ。そのハードさを全く感じさせない”フラ”のある筆致が、さすがの宮内悠介節です。
・・・と書き進めて、鴨はふと気づきました。そうだ、これ、落語だわ。
二人の言葉のやり取りでくすくす笑わせつつ同じ枠組みで同じ決め言葉で、最後にストンとオチで決める。落語の「八つぁんと長屋の御隠居」ですね、これ。手練れの作家が全力でバカSFを書くと落語になるという、新たな発見ですわこれは。軽い作品と見せかけて、かなりのSF上級者向けですよ、この作品。