あらすじ
わたしたちは、いつまで人間でいられるのか?
新しい暗号通貨、分断のないSNS、超小型人工衛星……
宮内悠介が迫る、8つのテクノロジーの新時代!
★掲載作品
「暗号の子」
「偽の過去、偽の未来」
「ローパス・フィルター」
「明晰夢」
「すべての記憶を燃やせ」
「最後の共有地」
「行けなかった旅の記録」
「ペイル・ブルー・ドット」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人とテクノロジーをテーマに編まれた短編集。
理想郷のようなVRワールド、SNSから悪意を除去するフィルター機能、ヘッドセットで体験するVRトリップ、超小型人工衛星などが登場する。表題作と「ペイル・ブルー・ドット」がとくによかった。どちらも失意からの回復、前に進もうとする意思が感じられて読み終えていい気分になる。
Posted by ブクログ
表題作の「暗号の子」を含めて8作。SNSやAIなどのテクノロジー関係の話が多い。唯一「行かなかった旅の記録」だけはソフトウェアの話が出てこないがCOVID-19禍でのバーチャルな旅行として含まれているのだろう。SNSの良い点と、それ以上に荒れている点を踏まえたものも多く「ローパス・フィルター」が特に印象深かった。一方で、暗号通貨と合意形成を扱った話もいくつかあり、暗号通貨をよく知らないままに胡散臭いと敬遠していた私の考えを改めさせられる内容でもあった。(でも、暗号通貨に手を出すつもりはない。)AIに書かせた小説も入っていて、それなりに小説の形を成しているのがすごい。(後書きによるとSFマガジンの企画だったとのこと。)
Posted by ブクログ
4.5くらい。
面白かったけど、技術知識についていけないところもあったので。
でも面白かった。
「暗号の子」
表紙がこのヒロインなんだなとわかった。
技術革新と新自由主義。
主人公のような人間はどうやって生きていくべきか、居場所を作るか、守るか、あるいは距離を取るか、な話かなと感じた。
「偽の過去、偽の未来」
未来予測をするが結局は嫌になってやめる話。
未来にだけ目を向ける娘、過去にばかり目を向ける父が、交差して、互いに調和する。
「ローパス・フィルター」
ツイッターではおすすめ欄があり、アルゴリズムでツイートが流れてくる。
これも一種のローパス・フィルター。
見たいものしか見ないので、見たくないものは取り除かれる。
「明晰夢」
ルーシッドという映像型のVRアプリ。
新たなドラッグとその末路。
一過性のうねりを見守る話だったな。
やる自由、やらない自由。
「すべての記憶を燃やせ」
AIに書かせたという触れ込みが無くても面白いとは思えなかった。
AIは入力した情報に対してそれらしいものを付加して作り出すだけで、物語や思想というものを感じられない、というのがよくわかった。
「最後の共有地」
天才の悲劇。天才に振り回される世界と自分。よくある話だが、経済やIT技術の話で面白かった。
「行かなかった旅の記録」
伯父に絵の具を贈ったエピソードが人間らしくて良かった。
作者も行ってないの読者に行った気にさせる文章で楽しい。
「ペイル・ブルー・ドット」
良い話だった。理想に邁進して疲れはてる。かつての理想を子供を通して思い出す。良い話だ。
Posted by ブクログ
近未来SF。理系すぎてよく分からない用語も多かったんだけれど、その雰囲気も心地よい。お気に入りはZTCという仮想通貨的なものを流通させた男の話「最後の共有地」。スターシステムのキャラ、針生がめっちゃ好き。
Posted by ブクログ
いつの間にか大ファンの宮内悠介氏の新刊が出ていた。
といっても、ここ数年の短編をまとめたものだが、非常に内容が多岐に渡りつつ、一冊の本として非常にまとまっていた。
プログラミング、中央アジアの旅、そして今回はAIや昨今の世界情勢や宇宙開発、SNSの状況、はたまたボスザエムシーのライミングの抜粋など多岐に渡り、相変わらず学びと共感が多かった。
前作の文豪ミステリーものは野心的ではありつつまずまずだったが、今作は短編集でありながら充分楽しめた。
Posted by ブクログ
◎暗号の子
web上のリバタリアン・コミュニティ構築の話。父娘の関係が切ない。
◎偽の過去、偽の未来
ゲームの理論の経済学者がゆき詰まったときの父の言葉「決めるべきことは与えられた時代にどう対処するかだ。byガンダルフ」「愚か者どもの言うことに、いっさい耳を貸すな。」これも父と娘
・ローパス・フィルター
〇明晰夢
LSDに代わるARが開発され一時的にSNSでの紛争や鬱病がやわらぐが。
・すべての記憶を燃やせ AIによる小説
・最後の共有地
・行かなかった旅の記録
◎ペイル・ブルー・ドット
宇宙マニアの少年と宇宙マニアだった人工衛星のSEが超小型人工衛星を作る話。「最後までクレージーでいられた人が最終的には勝つ。」
Posted by ブクログ
テクノロジーの最先端にいる天才たちの物語。それって人類の最先端ってことだよね。ど文系の私にもわかって面白かった。最近のAIは私のような末端まで届いてて、生活が変わっていくだろう予感がある。後書きに書かれていたように、科学技術に対する姿勢は山の尾根に立って右にも左にも滑落することなく歩いていくしかなんだと思う。(時に立ち止まることも必要だと思うけど、立ち止まれないことも恐怖を煽るよね。)
Posted by ブクログ
読みやすさ★★★
学べる★★★★
紹介したい★★★★
一気読み★★★★
読み返したい★★★
たまたま手に取ったことからの初の宮内悠介作品だったが、この読後感。どうしてくれよう、お腹いっぱいだ。
近未来SF、テクノロジーにまつわる短編集らしいが、著者の他のテーマの作品も気になる。
仮想空間、ネット社会の暗部、AIが書いた小説(よくできている)、宇宙開発、と次元を越えた物語が一冊に詰め込まれている。
技術的に細かく作り込まれた設定やイデオロギーの応酬など、なかなかしっかり難解(だが興味深い)な話ばかりで、その点だけでもかなり読み応えがあるのだが、反面、登場人物たちがドライというかダウン系というか、熱が感じられない。
しかし、その退廃的な空気が心地よい、不思議な世界観である。
夜通し飲んだ後に朝焼けを見た感覚に近い。
『暗号の子』は一番面白かった。
ハイスペ父娘のタッグでシリーズ化できるのでは?と実は期待している。
Posted by ブクログ
書かれた時期も掲載誌もバラバラな8つの短編をまとめたアンソロジー。
名前は知っていたが、読んだことがなかった作家さん。パソコンやシステム用語が普通に出てくるため、半分は言葉の意味を想像しながら読む事になった。中にはAIに9割以上書かせたという作品もあった。今ってこうなってるの〜?の世界。
最後の「ペイル・ブルー・ドット」が一番読みやすく、感情移入できた。ワクワクがない仕事はつまらない、という結論には深く納得。
他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
【暗号の子】
〈人から暗号〔クリプト〕へ。あるいは、認知のアナログ・デジタル変換。わたしは一個の暗号体となり……〉
冒頭から掴まれる。
主人公はカウンセラーに勧められてVR空間にあるASD匿名会に参加するが、参加者の一人が無差別殺人事件を起こし、主人公も関係者として取り調べを受ける。
警察には合同会社化を持ちかけられたが、会〔クリプトクリドゥス〕のメンバーは賛同せず、事件やクリプトクリドゥスのことが社会問題となり、主人公の本名や住所などが暴かれる。
主人公は動画配信者とのコラボ企画などで自分の考えを発言するが、無政府主義者と言われる。
そして、クリプトクリドゥスはもう以前とは違ったものになっていた。
生きづらさを抱えていた主人公が、たどり着いたクリプトクリドゥス、守りたいという気持ちはよくわかるような気がするし、お願い、放っておいて、と祈る気持ちにもなった。
やがて、父が、プログラムのバグを利用してクリプトクリドゥスを解散させないようにする手を打つ。
そして、主人公は新たな居場所を作ることにする。
味方は実は身近にいた。
それが冷えた間柄だった父親ということにも、主人公の新しい選択にも希望を感じさせる終わり方。
とても好きな作品。
【ペイル・ブルー・ドット】
地球を観測する人工衛星の会社でその衛星に組み込むソフトウェアの開発をしている主人公が夜の公園で空を観測している少年陽太と出会い、主人公が力を貸し陽太が作ったキューブサット〔小型人工衛星〕を自社の人工衛星打ち上げの際、一緒に打ち上げるという計画が進んだ。
しかし、打ち上げはできないことになる。
その話を主人公がメールでしていたアメリカの誰もが知る宇宙開発企業で働く主人公の後輩彩矢が彼女の会社の会長に陽太のことを話すと興味を持ち、アメリカへ迎えたがっているという。
陽太には学校に友達がいないということを主人公が察する場面があり、仕方ないとは思うものの、辛いと思う。
特性を活かすことが生きることだとしたら、陽太はこれから生き生きと生きていくだろうし、陽太とのことが彩矢や主人公にとっても新しい人生の展開になりそうで、希望を感じさせる。
とても好きな展開。
最後のところもとても印象的。
ほかの作品も、素晴らしかった。
AIが執筆したのは、そう書かれてあったので、そうなのだなと思って読んで、でも違うんだよね、深さみたいなもの、と思ったけれど、そう書かれてなかったら、一風変わったこの作者の、それ自体詩のような作品と思ったかもしれない。
今度は長編を読んでみたい。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。こりゃ、すごい。表題作を読んで舌を巻いた。技術、思想、社会、病理、家族、国家…。様々な問題を無理なく織り込んだ小説。あるいは、小説の形をとって、現代を多面的総合的に描いたものか。今年に入って一番の邂逅だ。
Posted by ブクログ
宮内悠介さんの、金融・ゲーム・メンタルヘルスの知識と、バラード派SF観が惜しみなく詰め込まれたテクノロジー系短編集。おもしろかった。
ひとつひとつのお話しに関して好みの差はあるものの、編集がいい。
前半の4話
「暗号の子」
「偽の過去、偽の未來」
「ローパス・フィルター」
「明晰夢」
は、暗号通貨またはSNS環境と何らかの社会不適合や依存性をからめてあり、新しいテクノロジーに人生の何かを壊された人がテーマになっている。
とはいえ、物語としての完成度は、やはり「暗号の子」がもっとも高いと思った。
「すべての記憶を燃やせ」
は、半分はAIが書いた小説。
悲しい、苦しい、涙が止まらないなどの陳腐な感情表現が何度も繰り返され、正直、AIが小説を書くのは時期尚早、としか思えなかった。が、宮内さんがAIに負けないようにがんばった、と記しているように、なんとか対比が描かれていて、浪漫派の詩の解説くらいに体裁は整っていたと思う……好みではないけれども。
後半、
「最後の共有地」
「行かなかった旅の記憶」
では、テクノロジーの中に生きつつ、ノスタルジックな雰囲気でほの明るい雰囲気になり、最後
「ペイル・ブルー・ドット」
で、いちばん明るく希望的な物語で締めくくられていて、とても読後感がよかった。
暗号通貨やプログラミング言語、ハードウェアの解説部分は多いけれども、分かりやすく書かれていて読みやすい。また、興味のない人はここは読まなくても大丈夫、と書いてあり、実際その部分を読まなくても物語を理解できるところは、ひねくれたSF作家、宮内悠介の面目躍如だなぁ、と楽しかった♪
Posted by ブクログ
割と面白かった。
短編集で、それぞれの話は独立している。
近未来のSFっぽい話かと思ったら、そうでもなく。
ハッピーエンドではないけど、こういう報われない感じやスッキリしない感じって、よくあるな、って思った。
Posted by ブクログ
様々なテクノロジーに関する物語を収めた短編集。「暗号の子」と「ペイル・ブルー・ドット」、この2作がとてもいい。
前者はSNSでの不確かな情報や、そうしたものに踊らされる人々の姿が描かれていて「その内世界では口を噤む事しかできなくなるかもしれない」と思った。ある一節にとても勇気づけられた。
後者は開発者に焦点が当たっている。クレイジーで、普通などという物差しなどハナッから鼻で笑う人の姿に勇気をもらった。
Posted by ブクログ
AIとか暗号資産とか、新しいテクノロジーに私の頭がついて行けてなくて、楽しめなかった部分あり。最後の2作品「行かなかった旅の記録」と「ペイル・ブルー・ドット」なら私的には星4つ。
Posted by ブクログ
短編集で、近未来を感じさせる内容の小説が多かった。今後十分に起こり得る話で唸らされた。これらはITの技術用語に馴染みがないと読み進めるのが辛いと思う。
一方で、画期的なサービスを開発した人が自殺した(する)という設定で書かれている作品が多く、安易だと思った。
それから、ITエンジニアは病んでいる、変わっている人が多いというのが世間の見方なのかなぁと思った。
Posted by ブクログ
分かるようで分からない本だった。
文章の雰囲気とか、主観的に語られているところとかは好きだけど、具体的にどこが面白いかと言われると困る。
全体的には好きな雰囲気です。
Posted by ブクログ
短編集。
プログラミング等の用語が出てくるので、馴染みのない私としては、少し読みにくかったです。ネットが普及し、見知らぬ相手とも繋がれるようになった社会においての、他者との繋がりや関わり方がこの作品のテーマなのかな?と思いました。
いくつかの作品に共通して出てくる針生というキャラは、何だったのか気になりました。
Posted by ブクログ
近い未来…いや、もう現代かもしれない暗号通貨、SNS、VR、AIなどをテーマにした8編のSF短編集。
専門用語が多用されており現代の話なのに理解が難しい(汗)SFに強い人に向いている作品。
「暗号の子」「ペイル・ブルー・ドット」がまだ理解しやすい雰囲気かな?
Posted by ブクログ
※
プログラミング、システム用語が多数で、
合わせてSNSやAI、思想的な要素も絡んでいて
馴染みにくい部分が多く読み進めにくかった。
この分野が得意な人なら、自分とは違って
きっともっと面白く読めるはず。
近未来的な話でありながら、歴史の変遷まで
組み込んでくるところが奥深くてにくい。
『暗号の子』からは、近い将来像を見せられた
気がします。
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暗号の子
偽の過去、偽の未来
ローパス・フィルター
明晰夢
すべての記憶を燃やせ
最後の共有地
行かなかった旅の記録
ペイル・ブルー・ドット
Posted by ブクログ
著者あとがきにもあるように ヘイル・ブルー・ドット が最も読みやすく、あとは難解。手クロノロジー(主にブロックチェーン)とそれに関わる思想が全面にあり、ストーリーは後回しの感あり。
暗号の子:新たな共同体の試みとその蹉跌だそうな。自閉症(ASD)のウェブコミュニティーが世間に敵視され、それを守ろうと主人公が奮闘する物語
偽の過去、偽の未来:暗号通貨を資源配分に結び付ける?
ローパスフィルター:SNSの過激な投稿をフィルターするアプリの顛末。フランクフルト学派・啓蒙は野蛮を発生させるらしい
明晰夢:作者うつ病時に書いたとのこと。薬物依存者更生用アプリの顛末
すべての記憶を燃やせ:98.7 %AIノベリストというアプリが書いたそうな
これが最も判らなかった
最後の共有地:暗号通貨の顛末。暗号通貨が複雑な合意形成を仲介するらしいが良く判らない
行かなかった旅の記録:コロナ時に架空の旅のお題をもらって書いたもの
ヘイル・ブルー・ドット:キューブ衛星を小学生が製作するのをお手伝いする話
アメリカの宇宙企業のCEOは能力が足りないと思ったらあっさり人を切る
Posted by ブクログ
最初はなんだこれって感じで読み進めていましたが、最後まで読んでみるとなかなか面白い作品かと。内容はデジタル社会に対するある種の警告のような、あるいは達観のような。読み人によって違う感想を抱くのかなと思います。私にとっては昨今のデジタル依存社会に対するアンチテーゼなのかなと感じました
Posted by ブクログ
こてんぱんにやられた感。
難解ではない。でもどの話もむずかしく、自分にはついていけない。特に感情面が追いつかない。なぜかどんどん暗い気持ちになっていく。
そんななかでもタイトルの『暗号の子』はわりとすんなり読めた。
AIによる執筆の『すべての記憶を燃やせ』が興味深かった。
Posted by ブクログ
毎度の事ながら、テクノロジーに関する細かいところは私には点で分からないのだけれど、今回読んでて感じたのは、そういうよく分からないものに支えられた世界や社会に自分が生きているんだなという不思議な感覚だった。あるいは不安に似ているかもしれない。「ローパス・フィルター」、次いで表題作「暗号の子」が面白かった。どちらも暗い部分があって、テクノロジーとそういう要素の組み合わせが私は好きなのだと思う(あとがきから引用すればバラード派に惹かれる側なんだろうか)。「暗号の子」は長篇で読んでみたいとも思った。
Posted by ブクログ
どこかで繋がる短編集かなと思ったら、完全に短編集だった。正直ネット用語はちんぷんかんぷんだけど、この世の中は死があまりに近いという事を今更驚きつつ痛感。AIに豊かな表現は難しいと思いきや、あとがきを読んで、確かにあの文章には目を見張ったなと。あとがきが一番楽しかったかも。確かに最後の短編は爽やかだった!