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進化を、科学を、未来を――人間を疑え!百匹目の猿、エスパー、オーギトミー、代替医療……人類の叡智=科学では捉えきれない「超常現象」を通して、人間は「再発見」された――。デビューから二作連続で直木賞候補に挙がった新進気鋭作家の、SFの枠を超えたエンターテイメント短編集。
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Posted by ブクログ
疑似科学というテーマは、思ったより僕らの身近なものらしい。 かなり好き。 たまたま最近読んでた『謎解き カラマーゾフの兄弟』に、匿名会(AA)についての話が少し出ていて、思わぬシンクロ。
疑似科学を扱ったルポ形式の短編集で連作っぽくなっています。スプーン曲げ、火を使う猿、ロボトミー手術、ホスピス、新興宗教といったテーマ。疑似科学そのものよりそれを取り巻く人々の考えや行動が物語られています。後半、重いテーマが続きますが、最後はすっきり終わった感じですね。
非常に魅力的なタイトルの本作ですが、連載時は「疑似科学シリーズ」と銘打たれていたそうです。はて「疑似科学」とは何ぞや?と思ってWikipediaを見ると、日本語の意味としては「科学性をうたっているが実際には非科学的であるもの」を、本来の意味としては「うわべだけの科学や、誤った科学のこと」を指している...続きを読むようです。 本作では放火猿、共時性、スプーン曲げ等の非科学的な題材が扱われますが、それらに対する科学的真贋についてはほとんど触れられていません。一方で、非科学的な事象をもとに起こる様々な事件については論理的な解が導かれるようになっており、言い換えるとミステリを読む際に構えるであろう「論理性」およびそれと対をなすであろう「非科学」がともに齟齬をきたさないよう、うまくバランスをとった描かれ方がされています。SFミステリ作品ではよく使われる手法ですが、それを「疑似科学」という観点でアプローチしているところがユニークであり特徴的であるように感じました。 色々と読みどころはあると思いますが、個人的にはライターを生業としている主人公が、傍観者の立場から徐々に疑似科学の世界の側へ堕ちていってしまう様が読んでいて面白かったです。一方で、作品全体を通した印象はクールというか低体温というか、ここは気合をいれて盛り上げるところだろうという箇所が意外にさらっと書き流されていたりして、やや物語への感情移入が難しい面があったようにも思えました。 とはいえ、日本を舞台にしていることもあるのでしょうが、過去作と比べるとかなり読みやすく、文庫の帯にあるように著者の入門書としては最適な一冊ではないかと思います。
世界観がすごい。疑似科学なんだけど、淡々とした、突き放したような、感情を排除した語り口に、まるで真実が語られているような気にさせられてしまう。認知が歪む、不思議な感覚がある。 だからと言って面白いかっていうとまた別問題なんだけど、私は好きです。
平和への切なる願いを抱いた人類は、その自由意志によって おのれのエゴイズムを去勢することさえできる ところが、エゴを捨てたあとには自由意志すら残らない 人間らしさを失って、社会に適応できなくなってしまうということだ このジレンマ これを打開するべく設定されたまやかしの希望こそ すなわち宗教であり、物...続きを読む語であろう まやかしの希望でも、あらたな人のつながりを生んでくれるなら なんの問題もないように思えた ところがそれは 価値観の異なる人間どうしに、あらたな軋轢をも生み出したのだった 軋轢は、またあらたなエゴと争いを生み さらに人々の罪悪感と現実逃避で過激になっていくだろう あくまで争いを嫌う人々は、社会の片隅に隠れ いつしか死の世界へと迷い込んでいくだろう そのように、死の欲動に抗おうとする人間の理性は 敗北を宿命付けられているわけだ しかし、僕は思うのだけど ファウストが最後それを見出したように 死の欲動に直面してなお、揺るがない生の喜びというものも 自己満足のそしりは免れないにせよ、あるのではないだろうか 疑似科学シリーズと銘打っておきながら どうも本物のエスパーとしか思えない人物を出してきたところに ある種の詭弁性を持った連作短編集 SFということにはなっているんだろうが… 修業して、超能力が身につくと信じた集団は実際いたからなあ
吉川英治文学新人賞の短編集。僕個人の価値観としてこれがミステリーなのかSFなのかは判断出来ない 全て疑似科学、超常現象が主題なのだが決着はいわゆる、「普通」ではないものをテーマにすることで人間とは何かを考えさせてくれる短編集だった この語り手もまた、各短編にて読む側と同じ立場を担っていて、そもそも...続きを読むジャンルを決定させないで読む人の捉え方を楽しませる本なのではと感じた なんというか、1編で考えてみても膨らませたら全然長編になりそうな気もするのに、実にあっさり塩味な描き方に評価が分かれる気がする (絶対ワザとだが) 表題作は読後感といい、タイトルといい◎でした
短編集でした。 後半になってようやく主人公が同じだったことに気づきました。 淡々とした語り口。 しかも、登場人物が重ねて出てきていた。 悪くはない。
過去にテレビでスプーンを自由自在に曲げ、エスパーとして名を馳せた千晴。結婚した夫はマンションから転落死してからは、外との交流を遮断して、愛犬のテルミンと暮らしていた。その千晴がインタビューに応じるという…。 サルの習性、超能力(スプーン曲げ)、ロボトミー手術、『水からの伝言』問題、ホメオパシー、洗...続きを読む脳といった、現代ネットで受けそうな話題を題材に、最大限の皮肉を交えながら描くSF短編集。 最後の作品を除いて、ほとんどが雑誌の記事のような俯瞰した視点で描かれ、テーマがテーマなだけに、現象も読者も突き放すような、ニヒルと言うよりはスノッブと言うか冷笑が似合うスタイルである。 そのせいか、誰かがどうにかするのだろうと1作目を読みかけて、つらつらと(作品内の)事実を垂れ流しているという印象を受けてしまい、どこに視点を置くかが分かりづらくて、最初はかなり読みにくい。 『水からの伝言』あたりから、人が見え始めてわかりやすくなってきたものの、のめり込んでしまう前に終る印象だな。最後の作は、人に視点を置かれてしまって逆に読みにくかった。 実際にあった事件や問題をうまく絡めており、いろんな資料に当たって書かれており、それらが作品中で単なる引き写しにならずに血肉になっているところは素晴らしい。 ただ、のめりこめない。なぜか。 おそらく、どの現象も信用できないという作者のスタンスにあるのではないかと思われる。批判なら批判側に徹底的に感情移入させるように書かれていればよいのだが、そういう書き方もされないので、単にバカげた現象を第三者として紹介するような小説になってしまった。 単品としてはそれぞれ読むところがあるが、その冷笑をまとめて読むと、まあ胸焼けするのである。 この人は、長編を読んでみるべきかな。
あってもなくてもいいけれどもオカルトと医療に造詣がある方がすらすらと読める作品。 信仰による奇蹟と科学の進歩、倫理と道徳の大きくふたつのテーマが禅問答や反証実験のように繰り返されながら進んでいくストーリーに感じた。 読みながら思ったのが「信仰による奇蹟」はいくら科学が発展したところで無いものにはな...続きを読むらない。現存する科学をもってしても、ましてや「科学の進歩」を底上げしても、信仰による奇蹟は完全にはうち消せない。 ましてや天秤の両端に信仰と科学をのせたところでどちらとも言えない現象は存在するので、科学と信仰の中間を線引することもできない。 この作品に関して著者は読み手に好きなように取ってもらえるように書いてあるものの、個人的には「好きなようにとってもらって構わないが僕自身のひとつの結論を隠しています」みたいな風であった方が読み返したい欲が高まったかなあと思う。 SF成分は最低限で、あくまで近未来に起こりうることとして描こうとしていたのかなと思う。バチバチなSFが読みたい!っていう人には肩透かしを食らうだろうけどあくまで手法としてSFを使っているだけで無駄がないのでこれはこれで良いと思う。かといって事件が暴かれること自体が問題では無いようなウェイトで描かれていて、ミステリ色もそこまで強くない。 哲学とか思想とかそういうのが好きな人はまあアリだと思う。
普通の情景を読んでいるつもりが、気がつけばビューンととんでもないところに連れていかれている感が。 あいかわらずすごいな。
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