宮内悠介のレビュー一覧
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架空の政治の話が絡む、現代アラビアンファンタジー。賢い女の子たちがワイワイ賑やかに集まるお話。ジャミラとアイシャがカッコいい。登場シーンからナジャフはイケメンオーラが漂っていた。イーゴリは最後までうるさくていまいち掴みきれなかった。
架空の国だけど、水の話や政治的な立ち位置など、リアルにかかれてて面白い。乙女の学友会と勢いで突っ走ってしまったけど、もう少し経験したたかなばあさん連中と政治のメンツを取りこんで、議会の内外で組み立てれば、骨太なファンタジーになったのにと思う。
ところどころで挟まれる、ママチャリで世界一周のお兄ちゃんのブログが好き。 -
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作者のあとがきによると、基本バカ話・与太を集めた作品集なのだそうだが、案外生真面目な作品も含まれてはいる。作品の出来も、バカ話系のほうがいいように思う。個人的ベストはミステリガジェットを満載して、クローズドサークルを虚仮にする表題作だが、この短編集のへそは「トランジスタ技術の圧縮」だと思う。しょーもないことに変に凝ってしまうことは、プログラマ系の人は誰でもやる。で無駄な労力を注ぎ込んだ、美麗な仕上がりを見た誰かが、これはもう伝統工芸だなとか、これ地区大会やって、夏に全国大会やったらいいんじゃないとか言い出す。それなら甲子園だな、負けたら砂拾うのかよ、いや四年に一度のワールドカップだ、イタリア代
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全体的な短編の完成度はかなり高かった。
現実から離れた設定だけど、安っぽいラノベと違ってたしかな筆力で読ませてくれた。人物造形もしっかりしてるし、語り手から見える世界に読者の自分は魅了された。
二編目のシェーファーの話が素晴らしくて、一種の歴史小説に近いと思う。こういう徹底さには勝てないなと思う。
でも、それ以上に麻雀の話があまりにもおざなりすぎて、評価が一気に地の底に落ちた。ほかの短編のゲームに精通していない自分にはわからなかったけど、囲碁やってる人でも最初の短編すんなり読めると思うんだよね。ただ、麻雀はさすがに雑すぎ。マジで舐めすぎ。作者もともと麻雀プロだったっていうけど、さすがに傲慢すぎ -
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巻末の解説にもある通り、"歌姫" と称される歌唱用のロボット DX-9 が、本来の用途を離れて転用され「人の死」に密接に関わる場所で落ちる、と言う短編が繰り返される。
女性型で「よくできたペッパーくん」とも言うべき量産品であり、廉価で高耐久なので盛んに目的外利用された、という設定である。
しかし、この「ボディつき初音ミク」が物語上の必然性を持っているかと言うとそうでもない。その点で『南極点のピアピア動画』(野尻抱介)とはかなり異なる。
この物語では「天使たち」は重要なギミックではあるが問題を解決しない。基本的には傍観者であり、そこから外れる時はたいてい死をもたらす。つまり「 -
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沙漠の小国家、アラルスタンで大統領が暗殺された。国の中枢にいる男たちが危険を感じて国外へ逃亡する中、国家の危機に立ち上がったのは教育機関"後宮"の少女たちだった。
様々な民族が集まり、複雑なバランスで成り立っている国家の危機を少女たちが救う。なんと面白そうなストーリー…!
周辺国の圧力やテロリスト、血腥い想像をしながら読むが、あくまで筆致は軽い。その軽さが物足りなく思えて初めなかなか乗れなかったが、おかげで辛くならずに安心して読み終えることができた。
少女たちはもとから優秀であったが、責任を負ってまた更に成長する。試練を経て強くなる姿に胸が熱くなる、これこそ青春冒険譚 -
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少し複雑な構成の話。
主人公・脩の<グレッグ音楽院>の受験と、そこに集まる受験生たちの話。
脩の父親探しと、父が残した<パンドラ>という楽器の話。
二次試験直前に起きた殺人事件と、そこから連鎖する数々の事件の話。
それぞれの話の中で語られる登場人物の出自と境遇が3つの話をリンクして、全体として語られるのは音楽の存在とその意義について。
読み終わってみて整理して見えてきた構図だが、読んでいる時は話がどんどん飛んでいくのでついて行くのが少々大変だった。
音楽院の風変わりな試験に集まるピアニストたちの交情の話だけで十分楽しめるのだが、色々話を繋ぎ合わせて盛り上げていくのは、まあ、これもジャズみたい -
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一話目、「ヨハネスブルクの天使たち」の冒頭数ページからはとてもこんな作品だとは予想できなかった。良い意味で裏切られた。
DX9という味気ない名前しかつけられていない日本製のロボット、通称“歌姫”が流通している架空の近未来が舞台のディストピアSF短編連作集。時代はおそらく2040〜50年代くらいか。
DX9、あるいは天使たち、は作品の軸ではあるけれども、具体的な外見の描写は控えめ。耐久性が恐ろしく高い、ということ以外ほとんど分からない。あえて抽象的に描いている感じ。
海外、特に中東やアフリカの内戦や戦争の記述が非常に詳しい。参考文献が各話の最後に記載されているが、執筆にあたり調査が徹底して