宮内悠介のレビュー一覧
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未来の火星を舞台としながら、精神医療史を総括したうえで精神医療というものをクリアな目で見てみる試みのような性質のある小説でした。この分野の知識がない人には内容はむずかしいと思いますが、それでもすっきりとして無駄のない文体なので、すらすら読めてしまう。知識をかみ砕いて読者に伝えるワザにも長けた書き手という感じがします。
地球帰りの精神科医・カズキが働きはじめる火星の精神病院・ゾネンシュタイン。「突発性希死念慮(ISI)」と「エクソダス症候群」という、未来世界で問題となっている架空の精神疾患が物語のカギとなっています。
物語世界を築き上げるのには骨が折れそうな舞台設定なのですが、序盤からぐいぐ -
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人工衛星もGoogleマップも寄せ付けない神出鬼没の山、イシュクト。バックパッカー、刑事、世界医、さまざまな思惑を抱いた奴らが〈世界のバグ〉であるイシュクトを目指して動きだす。大量の注釈を施したメタSF。
円城塔の『プロローグ』と『エピローグ』をお話的に混ぜちゃって、『烏有此譚』の形式を後付けしたみたいな感じだな、と思ってしまうのは許してほしい。宮内さんは完全にエンタメにチューンナップされていて抜群にわかりやすいけど。注も読者をケムに巻くためには使わず、「ああ、これはね」とポテチ片手に横から話しかけてくるような親密さが楽しい。
いろいろ盛り上がりそうなバトルシーンはすっ飛ばすのに、世界医バ -
Posted by ブクログ
ネタバレ読後感は良い。
たくさんのメッセージが詰められていた。空襲の現場を子供に見せるのは教育としてでも良くないとか、共同体では話し合うことが大事とか。
真木の存在は不思議な安心感があった。趣味が同じ他人が自分に興味を持って近づいてくる嬉しさ。書棚を見て「やっぱりニーチェあるじゃん」みたいな。
あと、ディレイ・エフェクトが起きた時に、社会にどういう影響があるかっていうのの描写の細かさ、良かった。動物園では戦時中に殺処分がされたらしいけど、時系列的にその出来事より後の出来事が再生されてるから、動物たちが殺処分をみて動揺することはないから安心、とか。 -
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宮内悠介の代表作の一つは「盤上の夜」であることは間違いないが、それ以外に知っているのは「ヨハネス」「エクソダス」「超動く家」。最近購入したのは本書「国家」と「金融道」文庫版、そして「ラウリ・クークス」。という中、単行本として読むのは本書が初めてである。読まず嫌いにも程があるというもの。本書を読むまで宮内悠介と言う作家はSF作家だと思っていたが、実はSFの他にミステリー、冒険小説、純文学と多方面で活躍しているとのこと。大森望の話では、今はSFからは離れているらしい。確かに、本書を読んでみたが、SF色は極めて薄い。とはいうものの、せっかく買ったのだから最後まで読み切ることを心に誓った。
13の短 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「超動く家にて」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」「クローム再襲撃」「星間野球」が特に印象的です。面白かった。
表題作、「ミステリでは謎解きしようと思わないで読んでいても、先入観持って読んでしまうとこあるんだ…」と改めて思いました。そして誰もいなくなった系だなと思うと全員人間だと思うし(少なくとも3人違う)、そもそも何故マニ車?というところからなので、ツッコんではいけない。楽しみました。
「クローム再襲撃」は「パン屋再襲撃」が未読なので春樹っぽさはわからなかったですが、乾いた感じは受けました。
SFは哀愁漂う世界観があるものが好みなんだな…とわかったのは掘り出し物でした。でもバカSFも好き。