宮内悠介のレビュー一覧
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近未来、ディストピア、軍隊、久々にSFを読んだ人間からすると、伊藤計劃以降のSFって似過ぎてる気がする。まぁ別に伊藤計劃が発端ってワケやなくて、攻殻機動隊とかブレードランナーとかからつながってるんやろうけど。
初宮内悠介、最初の感想はそれ。似てるからアカンいうことはなくて、おもしろかったりカッコよかったりすればそれはそれでええわけで、アフガン→イエメンの連作とかなかなか良い。ヨハネスブルグと北東京、降ってくる少女型ロボットを見ている少年少女、というほぼ相似のシチュエーションからどうなるのかと思ったら、それほど虚をつかれた感じはしない。もう少し大風呂敷でもええんちゃう?という印象。どうも頭の中の -
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≪本の感想ではありません≫
東西冷戦が指導者・思想家に引っ張られた対立なら
昨今の紛争は人々の民族、宗教の意識に姿を変えて
湧き上がり、制御不能になった状態なのかと。
そこに米国中心の指導者たちの思想に動かされる
人々、国々と民族の意識がが互いに異なる地平で
ぶつかり、決して交わることない視点で争う。
で、日本はというと機械、技術の面で世界にかかわり、
思想や意識とは距離を置きながら、なんとなく
世界に組み込まれ、覇者側に染まる、と。
いや、この短編とは直接関係がないのだけど、
この本を読んで、場を支配する空気というか、
なんとなく、現代の世界と安倍以前の日本の
立ち位置がそんなかんじだったか -
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ネタバレ5篇全編に渡って、ロボット「DX9」が建築物の上から落下し続ける様子が描かれている。
物語の中には9.11以降、そして伊藤計劃以降の「閉塞感」みたいなものが漂っている。
「そこに留まり朽ちていくか、道を切り拓くべく出て行くか」。物語中で建築物からの落下を繰り返し続けるDX9は「留まり朽ちていく」ものの象徴として描かれていると思う。対比として描かれている作中の主人公たちは最終的には「道を切り拓くべく出て行く」ことになるが、全てがハッピーエンドとはなっていないように思う(シェリルは凶弾に倒れ、ザカリーは死に、璃乃はDX9へ接続するようになる)。
ある意味で「俺たちの戦いはこれからだ」的な展開とも言 -
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日本製のロボットDX9を媒介に世界各国のテロや紛争地区の近未来を描いた連作短編。
民族問題や宗教問題などの歴史的背景と問題の複雑さが各短編で描かれるので、正直作品を理解しきれたかどうかは自信がないのですが、それでもこの作品に備えられている力というものは十二分に感じました。
その力の理由に作品の独創性がまずあると思います。現代においても未だ解決の糸口が見えない民族や宗教の問題、それを近未来とDX9というSFのガジェットを使ってどう描くか。表題作や「ハドラマウトの道化たち」でのDX9の利用法や政治の統治法もすごいなあ、と思ったのですが、なによりすごかったのが「ロワーサイドの幽霊たち」。虚 -
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宮内さん目当てで購入し、やっぱり「空蜘蛛」が一番好みだったし、この短さの中で、物語と人物描写のみならず細かな部分(音楽や服装等々)も「抜かりなし」で満足。
影響されて、しばらくパッサカリアばかり聴いてしまった。
アンソロジーゆえ、他4人の、今まで読んだことがないラノベ系作家さんの作品に触れられたことも良かった。失礼ながら、どなたも存じ上げなかったし、好みはあるものの、購入して損はなかった。(アンソロジー集は、半分以上の作品を気に入らないと、失敗したと思う)
他作品では、椹野さんの軽めの探偵ものが特に気に入った。舞台がイギリスなのも好み。貴族探偵エドワードシリーズを読みたくなった。 -
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1編15分、世界がくるりと裏返る。
ミステリのプロが厳選した、2024年を代表する本格アンソロジー。
本格ミステリ作家クラブ選・編の、2023年発表の作品から厳選された本格ミステリアンソロジー。
倒叙からダイイングメッセージ、日常の謎まで内容もバラエティに富んでいて面白いです。
個人的によく読む、という作家さんも少なかったため、新鮮に楽しめました。
以下、個別の感想を少しだけ。
東川篤哉『じゃあ、これは殺人ってことで』……ドタバタした倒叙ミステリ。どんどん話がややこしくなっていく様に思わずくすっとしてしまいます。以前読んだときも思ったのですが、コメディ強めのノリについていけるかは好みが分 -
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「旅」をテーマに、気鋭の作家陣が短編を寄稿したアンソロジー。とはいえ旅の解釈はそれぞれであり、SFだったりミステリーだったり、各人の特徴が出ている内容となっている。
個人的な好みは藤井太洋さんの「月の高さ」。ご本人の経験を踏まえた舞台芸術の置かれた現状、地方巡業のドタバタ感、枯れたおじさんと若い女性の緩い連帯といった内容が小気味よくロードムービー的に展開されていて面白かった。
一方で石川宗生さんの「シャカシャカ」については正直よく理解できなかった。地表がシャッフルされるという話のメタ構造として、各章の順番もシャッフルされていく流れなのだけど、いきなり話と場所が飛んでしまうためについていけな -
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吉川英治文学新人賞の短編集。僕個人の価値観としてこれがミステリーなのかSFなのかは判断出来ない
全て疑似科学、超常現象が主題なのだが決着はいわゆる、「普通」ではないものをテーマにすることで人間とは何かを考えさせてくれる短編集だった
この語り手もまた、各短編にて読む側と同じ立場を担っていて、そもそもジャンルを決定させないで読む人の捉え方を楽しませる本なのではと感じた
なんというか、1編で考えてみても膨らませたら全然長編になりそうな気もするのに、実にあっさり塩味な描き方に評価が分かれる気がする
(絶対ワザとだが)
表題作は読後感といい、タイトルといい◎でした
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Posted by ブクログ
語り手が痕跡をたどっていくに従って、孤独で繊細で、プログラムすることだけに喜びを見出すラウリの姿が明らかになる。
同時にエストニアの歴史も。
ラウリにはあまり友達はいないが、真面目で繊細な彼にこそ親しみを感じる。
アーロンのことは読んでいて辛かったが、カーテャのすこやかな考え方に救われる思いがする。
ちょっとした謎解きもあって心躍らせる。
偉人の伝記とは別に、ラウリのような市井の人の生き様からこそ伝わる時代の空気感や人との関係のあり方があって、それはまったく別の時代、場所を生きるわたしたちに改めて今という時代や人との関わり方について考えさせる。
さらに、自分の生き方についても、かな。
装丁画も -
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