朱野帰子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
レビューを拝読して読みたくなり、手に取った作品。
家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ詩穂。彼女の前に現れるのは、性別や立場が違っても様々な現実で苦しむ人たち。関わることのなかった人たちが家事・育児をきっかけに関わっていく。
話し相手がほしい、子どもの一食一食に気を抜けない、子どもを連れて公園に行くから日焼けしてしまう、子連れでのお出かけが緊張する…など
主人公の詩穂には共感しかなかった。
…というのも、私が専業主婦だから。
子どもも詩穂の子どもと同い年。
詩穂の子どもが生後7ヶ月の時の回想の場面は、涙が止まらなかった。
私も子どもが同じくらいの時、しんどかったなぁ。
詩穂と同じく、私も産後誰にも手伝いを頼めなかった。
話し相手がいなくて、育児に自信が持てなくて、不安で孤独で辛かった。
読みながら、久しぶりにそんなことを思い出した。
家事・育児の捉え方は人それぞれ。
立場が変わるとこんなにも見方が変わるのかと改めて驚かされた。
結婚していても、していなくても
働いていても、いなくても
子どもがいても、いなくても
他人からは見えなくても、それぞれの生活にそれぞれの大変さがある。
分かり合えなくても、お互いに受け入れて、助け合える世の中になればいいのに。
専業主婦に寄り添ってもらえたような、気持ちを代弁してもらえたような…私にとって大切な作品になった。 -
Posted by ブクログ
生活残業問題。時間かけなくても終わる仕事をわざと時間かけて残業をして終わらせるなど、生活費のためにあえて残業を行う問題のことだそう。
初めて知ったけど、かなり深刻そうで、身近な人が多い印象。
残業代が支払われればその分会社からお金がなくなり、結果として基本で支払われる給与を増やすことが難しくなる。残業をしないで早く仕事を終わらせるように工夫すれば良いが、会社全体が取り組まなければなくなりづらいのが厄介。自分は頑張っているのにあいつは残業して残業代稼いでいるのずるい、と思ったことがある人も少なくなさそう。
取り扱いが難しい、でも社会人からしたら身近にある問題をテーマに物語が繰り広げられていく。しかも厄介な上司がセットになって。
この問題に東山結衣が立ち向かっていく姿は誰もが応援したくなるし、読む手が止まらない。 -
Posted by ブクログ
もやもやするーー!!そして、わかるーー!!
って感じ。
オムニバス形式で8話からなる短編集。
ポップで可愛い表紙からは想像できない、ちょっとゾゾっとしてしまうようなお話ばかり。
どんな怖さっていうかというと、強いものに虐げられて踏みにじられてしまう女性たちの本音が、淡々としてて、だけど静かな炎のように熱く揺らめく感じ。
諦めとか、でも堪え切れない憤りとか、愛情とか。
ある種の怨念?みたいなものを感じるんだよねー。
しかも、男性側は悪意がないと思ってるところがまた...。
あたしが印象的だったのは「花嫁衣装」
結婚したら当たり前のように夫の姓を与えられて、嫁にもらわれたとの名目のもと、まるで「モノ」のようにされてしまうのではないか、という不安と嫌悪感がものすごく怖い。
妊娠中、義父にお腹を触られ、「いつから私は勝手に身体を触られてもいいような人間になったのだろうか?」(本が手元にないので、ニュアンスです。)
ってところは、ほんとにわかりすぎて、気持ち悪すぎて倒れそうになった...。。
そして夫は「悪い風にとらないでよ。」って、わかってくれない。。
怖いよーー。
でも各編、最後は希望があるラストだったりもするので、ズーンとはならないかな。 -
購入済み
お仕事小説
たまに利用する東京駅をこういう視点から見れるのは面白い。私自身あまり鉄道に詳しくないので知らない言葉も多々あったけど、お仕事系小説としてしっかり楽しめた。
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「比較優位と月をさす指」
フォローしている読書家さんの本棚に面白そうな本を見つけて早速購入。こういう出会いがあるのも屹度SNSの醍醐味なのでしょう。
主人公の紙屋くんは仕事ができない。
唯一の特技、文章を書くことも中学の読書感想文コンクールで佳作を取った程度である。しかし他に何もできないが故に言葉を紡ぐことに一切の妥協がない。
だから面接の想定問答でも嘘をつくことができなかったし、安易な代筆もしない。
真摯に書くことに向き合っている。
周りの人とか、組織とか、社会とかを変えるのはそういう人間なのかもしれない。
紙屋くんの優秀な兄は、優秀であるが故に却ってこれだけはという取り柄を磨き上げることはなかった。兄は紙屋くんのことを羨ましいと思っていたと吐露する。
そして「会社はやりたいことをやる人間のためのものなんだから」と言い切り「そういう奴のやりたいことをさ、俺みたいな、特技はないけど、度胸と図々しさだけはある奴が、あちこち走り回って実現させる。それが会社だよ。」と続けた。
それが「どんなつまんない取り柄でも一つでもあれば会社でやっていけるもんだ」と兄が云っていたことの含意なのだろう。
紙屋くんのような生き方は難しいけれど、惹かれるところがある。
思想と生き方が一致している人を、インテリゲンチャというらしい。そんなところ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごい面白かった〜!!でも読んでる間は胃がぐるぐるしました。パワハラもセクハラもほんと勘弁してほしい。
限られた時間で策を考えて相手を説得できるゆいちゃんはほんとえらい。フォースも風間も本当に気持ち悪い。傷ついたり逃げたりしながら立ち向かっていけるゆいちゃんにすごくパワーがもらえる一冊でした。あと王丹ほんと何者。
でも定時に帰る管理職ってほんと今の社会風当たり強そうで負けないでほしい。この辺り変えないと管理者になりたいって人が減るよね…
ラストの種田さんの思い切りの良さはめちゃわらいました、幸せになってほしい笑
3巻も楽しみです! -
Posted by ブクログ
タイトル通りのお話だけど、イメージしていた展開とは違った
想像した展開としては、理系が最初は職場の無理解に苦戦しつつ、最終的には似非科学信者をぶっ倒す物語だと思っていたけどね
とりあえず、以下は公式のあらすじ
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「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は、廃止すべきです」
大手電器メーカーに勤める科学マニア、羽嶋賢児は、
自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、
最も行きたくなかった商品企画部に島流しに…。
空気を読まずに正論を言う。そんな賢児はやがて部の
鼻つまみ者扱いになってしまう。
賢児のまっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか!?
自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、
すべての働く人に贈ります。
ドラマ化もされた『わたし、定時で帰ります。』で話題の著者が描く、お仕事小説。
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子供の頃から科学は好きだが、大学は有名私立の文系に進学した主人公の羽嶋賢児
論理的故に主張は正しいが、他者や家族と上手くコミュニケーションが取れない
特に非科学的な主張をする人を見下す傾向がある
科学は今も好きで、特集動画やロケット発射の生中継を見たり、シンポジウムにも参加している
しかし、鉱物のお店をしていた亡き父は自分には科学の道に進む事の是非を問うたが、友人には好意的な対応をしていた
結果、研究者になる事はなく、科学とお金儲けの狭間で苦悩する
賢児は似非科学の機能を売りにすべきではないと考えるが
商売としては似非科学の方が消費者の要望と売上と合致する
果たして、自分は何故何のためにお金を稼ぐのか?
STAP細胞は発表された当時はもてはやされたものだけど
再現性について懐疑的な状況になっても信じている態度はどうかと思う
ねつ造問題では未練タラタラと言うところがキャラブレというか、本質的な科学的思考ではないのだと理解した
科学の論理性ではなく、科学がもたらすロマンに魅力を感じているだけに見える
だから、「知りたい」という欲求ではなく、「いくらするのか?」という発想になるのではないかと
科学って実は泥臭い側面はかなりあるからなぁ
今までの定説がひっくり返るようなパラダイムシフトも起こるし、それに対してまた論理を再構築しないといけないしね
現在、世間で科学的に正しいと思われている事も、「今のところ矛盾はなく妥当と考えている専門家が多い」という程度で、恒久的な信頼情報ではないしね
しかしまぁ、科学とお金の問題なぁ
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科学は万能ではない。しかも科学にはカネがかかる。科学は使い方によっては不幸も生み出す。しかし科学を捨て去って生きることはできない。
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という文章ですべて説明されていると思う
人類には様々な課題が山積しているし、科学の発展が引き起こした課題もあるけれど、科学なしで解決できる問題はそうそうない
もし科学リテラシーが上がったらもっとよりよい社会になるのかとも思うけど
紛いなりにも義務教育を受けた人達が、似非科学やスピリチュアルなものに大金を払う商売が成り立ってる現状を見るに望み薄だろうか?
タイトルのマイナスイオンだけでなく、水素水、化粧品のコラーゲンやビタミンC、最近なら反ワクチンとか
人は自分に理解できないものでも、盲信する事ができるんですよねー
何とも厄介な……
似非科学でも稼げればいいという考えに対して
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本物の科学で金を稼ぐ。できるだけ稼ぐ。その金を科学にまた注ぎこむ。それができるのは商人だけだ。
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というところはカッコいい
ま、実際にそれを実現できればいいんですけどね
賢児に「未開人」とされている姉の美空
ある意味で科学的リテラシーがなくても幸せに生きていけるという証左なのかもしれない
ただ、作中の母乳問題とかでわかるように、自分の信じたいものだけを信じるとコロっとその幸せがひっくり返るけどね
あと、父が入院していたときの叔母とかには読んでいて本当に怒りを覚える
本人は良かれと思ってなんだろうけど、賢児と母の確執の要因だし、その後の掌返しにも不快感を覚える
標準医療をもっと信じようよ……
それにしても、朱野さんは文系出身なのに、理系の解像度が高い小説をかけて凄い
理系出身作家はこの手の理系リアリティのある作品を書きがちなのはわかる
蓼科譲が吐露する科学研究の置かれた立場というのはとてもよくわかる
価値のある研究である事を示さないと科研費は取れないし
そのためにデータを捏造する可能性とかまで言及されると、物悲しいけどそれが実態なんだよなぁと思ってしまう
博士でも、博士だからこそポストと職がないというのは何とかしないといけないと思う -
Posted by ブクログ
海に降る
潜水調査船のパイトットを目指す女性と、亡き父が目撃したという未確認深海生物を発見したいと思っている男のお話
以下公式のあらすじ
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JAMSTEC(海洋研究開発機構)に勤務し、女性として初めて、有人潜水調査船〈しんかい6500〉のパイロットを目指す天谷深雪は、〈しんかい6500〉の建造に携わった父への不信から閉所恐怖症を発症し、船に乗ることができなくなってしまう。そんな時、広報部に中途採用の新人・高峰浩二がやってきた。高峰は、深海生物学者だった亡き父が18年前に日本海溝の海底で目撃したという未確認深海生物〈白い糸〉を自ら発見したいと公言する。そんな高峰に反発を覚える深雪だが、互いに父親への複雑な感情と、「〈しんかい6500〉に乗って深海に行く」という共通の想いを持つ二人は、次第に接近し、惹かれ合う。やがてついに、二人が〈しんかい6500〉に乗って深海に潜る日がやってくる。そこで待っていたのは、誰もが予想していなかった事態だった……。
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深雪が閉所恐怖症になった原因は、「世界で一番深い海に行く船を造る」と約束した父 厚志がアメリカで再婚してできた息子の陽生から「パパ、もう日本に帰ってこないよ」と言われたから
それまで、父が守ってくれていたような感覚が瓦解したため
多岐司令から、何故深海に行きたいのか?を問われた際の受け答えを見るに、やはり動機は「浅い」なぁと思う
設計思想も大事だけど、結局は運用に携わる人達の意識も必須ですからねぇ
神尾さんの意識も共感が持てる
一番好きなキャラは目山さんだろうか
セクハラ・パワハラが満載なので社会人としての評価はどうかと思うけど、研究者としてのあり方が正に理想ではある
深海についての魅力が所々に織り込まれている
「全海洋のわずか一割にも満たない日本近海が、生物のホットスポット。日本列島はあらゆるタイプの海に囲まれている。そういう希有な環境が世界有数の生物多様性をもたらしたんだ」
という日本列島の地理的特異性は希少でしょうねぇ
あと、深海はいつも食糧難だとか、古生物の存在や鉱石の可能性など、研究の対象はいくらでもありますしねぇ
こーゆー科学をベースに、人の想いを絡ませた物語は大好きだ
理系出身の作家さんならそんな話は書けるだろうけど
朱野帰子さんは理系ではないのに、ちゃんと科学の裏付けとロマンのバランスを取った作品に仕上げてるあたりに感服
皆川理事の閉会の挨拶の前のやり取りも、たしかに仮説に過ぎないんだけど、仮説はいくらあってもいいし、それを実証するのに必要なのは何か?どうすればよいのか?を考えるのには必要なものですからね
最後の展開に関しても、都合のいいものになってはいるものの、それまでに説明されてきた過程があるので、フィクションの結末としてはありですね
いやぁー、やはりこの手の話は好きだ -
Posted by ブクログ
作家、朱野帰子さんの作品でドラマにもなった「わたし、定時で帰ります」3部作は、IT企業働く労働者の辛労辛苦を、インパール作戦、忠臣蔵、女工哀史を対比しながら現在のクリエイティブなIT企業の光と闇を小気味よい展開綴り、会社組織で働く女性の活躍を描いた。
本作は、帯のキャッチコピーによると総務部の男性ダメリーマンと開発部の人気ブロガーOLの会話を中心に、杓子定規の総務部上司、営業のハラスメント課長、器の小さい3代目社長、などを交えた会社あるあるの作品である。自称冴えないダメリーマンが、出来る兄の助けで企業に就職したものの入社即戦力外通告を突きつけられ、総務部でのコピーやスキャンすらままならない。その一方で唯一の取り柄である文書力で、会社を綴っていく。入社時に65年社史を熟読して入社し、社長や上司を誰よりも知りつくし、会社の良い面と伝統でがんじがらめになる矛盾に悩み抜く。いよいよ会社が資本業務提携で飲み込まれるなかで、65年史の続きの2年間の社史を綴る。会社とは組織における文書の重要性とは、伝統と職場風土とは、会社、職場、組織を振り返る、さすが朱野帰子さんらしい作品に脱帽。