島本理生のレビュー一覧
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表紙の写真と『リトル・バイ・リトル』というタイトルからなにか伝わってくる気がした。
主人公の橘ふみは、父親の違う妹の面倒を見る。全く当たり前に。逃げた父や頼りない母に代わり、進学をやめ働くことにも一切ためらいが無い。
今どきでもこんなコが居ると信じたい。疑ったりし斜に構えたりしないでそう信じたい。そう思わせるあまりにも滑らかなサラリとした書き方だ。野間文芸新人賞を獲った作品だというのもうなずける。
『涙そうそう』のDVDをほぼ同時に見たが、こちらも全く血のつなっがっていない「妹」を兄は徹底的に面倒見る、終いには働きすぎで死んでしまうほど。
やはり、こんな若者が居るだろうか -
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読み終わった今、なんだか不思議な体験をした感じ。ドラマを一気見したような、、表現力が相まって映像として脳内再生されていたような、、そんな感じ。
島本理生さんの作品は初めて読んだ。春も亜紀もそれぞれに抱えてるものがあって、お互い見て見ぬ振りをして相手に寄りかかってしまっていて、やってること若いなって思った。だけど、そういう自分の弱いところを認めたり消化したりすることって歳とれば自然とできることではなくて、周りからの声があったり、自分自身と向き合う何かきっかけがないと難しいことだと思う。
銀河鉄道の夜と宮沢賢治の話があることで、よりその部分が強調されていた気がする。
親しい人との距離感は、お互いに -
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父親を刺殺したとして逮捕された環菜。彼女の弁護をすることになった伽葉。彼女の半生を本にまとめるため取材する臨床心理士の由紀。由紀の夫我聞は伽葉の兄。
取材を進める中で環菜に関わる人に会い、その中で彼女の過去が明らかにされてゆく。由紀は事件に至るまでの、彼女自身が封印しようとしていた、歪んだ過去を紐解いてゆく。彼女が受けていたのは、暴力と自覚させない暴力であり、無自覚の暴行だった。そして取材の中で、由紀も自らの過去と対峙することになる。
読み進めるにつれ、事件は思わぬ姿を見せる。予想外の展開を見せるミステリーでもあった。
由紀が夫を我聞「さん」、夫の弟を伽葉と呼ぶことに、ずっと違和感があった。 -
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ネタバレ【あらすじ】
「はじめて」は、いつも痛くて、少し優しい。
日本エンターテインメントの最前線&最高峰!
日本を代表する4人の直木賞作家と、“小説を音楽にするユニット”YOASOBIが奇跡のコラボレーション!
小説のテーマは、「はじめて〇〇したときに読む物語」。
これらの小説を原作としたYOASOBIの楽曲が、2022年中に順次配信リリースされます。
「『私だけの所有者』ーーはじめて人を好きになったときに読む物語」(島本理生)
「『ユーレイ』ーーはじめて家出したときに読む物語」(辻村深月)
「『色違いのトランプ』ーーはじめて容疑者になったときに読む物語」(宮部みゆき)
「『ヒカリノ -
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物語の核心にあるのは、他者に向ける「かわいそう」という感情――すなわち「憐憫」の危うさです。「優しさの正体を突きつけられるようで怖い」という感覚。綺麗な言葉で綴られるからこそ、そこに潜む毒が深く浸透してくる感覚を覚えました。
ただ、主人公の沙良については、どうしても素直に共感しきれない部分が残ります。彼女が抱える空虚さや、他者に依存しながらもどこか冷ややかな視線は、読み手によっては「理解しがたい」「自分勝手だ」と感じさせてしまう危うさがあるのかもしれません。
私自身も、彼女の選択や心の揺れに寄り添いきれないもどかしさを感じながら読み進めていました。
しかし、その「共感できない」という違 -
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第159回直木賞受賞作。
殺人事件を軸に、性加害や虐待、裁判といった重い題材を扱いながらも、文章は驚くほど静かで読みやすい。淡々とした筆致の中に、確かな温度や色が滲み出ており、気がつけば流れる川に身を任せるように最後まで読み進めてしまう。
物語は一つの事件を追いながら、その背景にある人間関係や過去、そして当事者たちの心の揺らぎを丁寧に掘り下げていく。断片的に見えていた事実が少しずつ繋がり、やがて一つの像を結んでいく構成も印象的だった。
扱われているテーマの重さに反して、読後に残るのは過度な陰鬱さではなく、むしろ静かな余韻のようなものだ。人が抱える痛みや歪みを描きながらも、それを声高に訴え -
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子どもの頃のある出来事をきっかけに、実の叔父を愛してしまった女性弁護士永遠子が主人公。
タブーとされる恋愛だから、苦手だと感じる人もいると思う。ただ、この本はドラマチックに書かれているわけではなく、どちらかというと淡々とした、どこか俯瞰的な視点で書かれているので、スルスルと読める気がする。
永遠子は実の父母との関係が希薄な分、優しくしてくれた叔父にのめり込んだ側面はあると思う。そしてこの恋愛がタブーだからこそ、より執着するのかな?とも感じた。どこか人を信じず、ひとりで強がっていた永遠子が、最後の最後、周囲の人と少しずつ繋がろうとしていて、物語としてはハッピーエンドなんだけど、変わり始めた永遠子 -
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読書が初めて、久しぶりの人でも、YOASOBIさんの素晴らしい楽曲と共に気軽に読める、素晴らしいコンセプトの作品です。読書体験というより、エンタメ体験です。
読書慣れしてる人でも短い文字数の中での各作家さんの表現力や個性を味わいながら、音楽とのコラボという新鮮さは他にないので、お勧めしたい。
この本をプレゼントしてくれる人がいたら、死ぬほどセンスが良いと思います。
Ayaseさんが凄すぎることを認識できるのでYOASOBIファンは絶対読むべきです(私はファンクラブ入ってないですが、入りたくなりました)
私だけの所有者は、
島本理生さんが普段重ための恋愛小説で書くような、所有されることを -
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十代にも満たない時から叔父に惹かれ、叔父を欲していた弁護士の永遠子。
合理的な判断で別の男性と結婚したが、夫が別の女との間に子どもができたことを機に離婚。
唯一無二の叔父への愛に気づいた永遠子は・・・
叔父と姪が関係をもつというだけで、生理的に嫌悪感を抱く人も多い題材だと思う。
作中、二人の関係性を何度も「気持ち悪い」と表現されるのがまさにそれだ。
弁護士という職業をもち、社会的に絶対的強者でありながらも、一つの愛に執着し、女性としての生き方を模索して悩み生きる永遠子の姿には、不安定な危うさを感じた。
この内と外の対象的なギャップの根底にあるのは、幼少期に育った環境の影響が大きいと思う。