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弁護士の永遠子は33歳。結婚3年目の夫と問題のない関係性を保ちながら、18歳年上の実の叔父・遼一としばしば逢瀬を重ねている。しかし信じていた夫が浮気相手を妊娠させ離婚し、その後、惰性で付き合った若い恋人とも別れてしまう。子供の頃から抱く自らの叔父への歪な欲望に向き合った永遠子が気付いた唯一無二の愛とは。
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Posted by ブクログ
予想外のハピエンだった。 これをハピエンというかどうかは人によって分かれそうだけど、鎧を脱いでいられる人とちゃんと向き合えたことがすごく大事。そしてしっかり腹括って受け止めてくれたことがハピエン。なんか上っ面じゃないハピエン。もちろん現実的にこの先も簡単ではないんだろうけどさ。 萌にちゃんと吐き出せ...続きを読むたことも良かった。 最後の萌とのやりとりは本当に感動した。 彼女みたいなバリキャリでもないし、こんなに想える人がいるわけでもないけど、通ずるものがあって、結構感情移入できたな。 永遠子の元ダンはじめ、強い女が好きな男って理解力あるようで思考回路結構マッチョだよなぁ。いやマッチョ、じゃなくて、キャパが狭いのか。 2025.9.6 173
弁護士の主人公永遠子、叔父さんの遼一を好きになってしまう、衝撃的。相手の素性を知れば知るほど自分が想像していた人物像と違っていく様子から偏見とは恐ろしいつくづく感じた物語。この人はこういう人と決めつけてはいけないという学びが得られた。人としての成長もあるし、自分の知らない過去もあるのだから。
展開が全然予想できないし読みやすいし自分とは関わりのないテーマとは思わせない、社会課題として切り出すのは安全圏から思考停止だと指摘する鋭さよ!!キレキレすぎて一気読み 距離を縮めたと思ったら全然違った、ということなんて酷い人なんだと思ったら背景にこんなことがあった とか、正しさなんて人間の感情の前...続きを読むでなんの物差しにもならない 主人公と関係を持つ男たちがみんな完全無欠ではない善良な人であることが切実さにリアリティを持たせてたと思う 主人公がモテるのがめちゃくちゃ納得できる 何よりも萌ちゃんとのラストシーンで締めるのがハッピーエンドだったな 全てがハッピーに転ばなくても、これだけ分かり合えたいと思える友達がいることが救い
表紙もとても素敵だと思う。永遠子さんぽいなと思う。 結局、本当に好きな人の所に戻ってきてしまう。執着なのかもしれないけど、それが一番幸せなのだと思う。強くあれるのだと思う。 自分達だけがわかっていれば良いなんても思うけど、周りに認めてわかってほしいという気持ちもあるよなと思う。 そうだよな〜!、すご...続きを読むい!!と思う表現や言葉や文章がたくさん出てきた。島本理生さんの凄さだよね。すごいよね。ドキドキしました。
永遠子と遼一さんの関係、そして永遠子と両親の関係、夫や恋人との関係に、悩んだ。そして同じように苦しんで読んだ。近親であるが故の気持ち悪さはわたしにはわからなかったけど、当事者の葛藤は痛いほど伝わった。でも、愛すと決めたもの、そして自分を大切に生きられる決断がちゃんとできてよかった。最後の最後の結末を...続きを読む読むまで苦しかったけど、永遠子や遼一さん、そして萌にとっていい結末を用意してくれて、本当にありがとう。これこそ小説だ。 p.128 「いや、まあ、依頼人はその元奥さんのほうだから、私と直接の関わりがあったわけではない けど」 「おまえは謙虚に見せてるつもりでも鼻っ柱が強いから、怒りを買ったのかもしれないな。そういうのは、真の意味で仕事ができる奴の顔じゃないんだ。自分ができると思い込んでる顔って言うんだよ。俺の勤め先の県庁でも、若い人間ほどそうだから、まだ仕方ないのかもしれないけどな」 弱っているときに核心を突かれるようなことを言われて、たしかに省みるところもあったが、心配よりも説教が先だったことには腹が立った。 「仮に、その元夫が犯人だったとして、そもそもの離婚の理由は奥さんに対するDVだからね。 その奥さんは私と違っておっとりして家庭的な専業主婦だったけど、少しでも自分の思い通りにならない女は怒りの対象なんだったら、結局、闘うしかないんだよ」私が今夜のショックと疲労に任せてまくし立てると、父は軽く押し黙ってから、なるほど、と相槌を打って 「他人なんか、思い通りになるわけがないんだ」 と締めくくった。父にしては俯瞰的な結論だったので、内心少し戸惑う。議論になると私が口うるさいので、面倒になったのかもしれない。 「飯は食ったか」 「ううん、まだだけど」 「どこか寄っていくか」 と父はひとりことのように呟いた。私は、コンビニでいいよ、と答えた。 「コンビニか。しかし都心は駐車場つきのコンビニなんて、あるのか。まあ、いいか。俺もこんな時間で軽く小腹が空いたな。帰り道にラーメン屋の一軒でもあるだろう。見つけたら寄ろ う」 痩せているわりには昔から大食いだった父らしい提案ではあったが、蒸した夜に疲れた胃に入れるものとしてラーメンはまあまあ不適当だった。 「都内のコンビニも駐車場くらいあるよ。私はそこまでお腹空いてないから軽く買うだけで大丈夫だし」 「あるのか。でも探すのが手間だし、やっぱりラーメン屋にしようか。どうだ、どうする?」私はもう意見しなかった。 父は昔からこうだ。一応、私の意見を尊重するように質問する。けれどそれをすんなり採用してくれたことはない。さらには自分の意見を押し切った後で、かならず納得させるように念を押す。 それで私が「そんなことは言ってないから、同意できない」と正論を吐いて揉め始めると、娘のくせにうるさい!と激昂するのだ。 私がもう少し可愛げがあるか、適当に受け流せる性格だったら、そこまでの問題ではなかったのかもしれない。だけど私は、「私はお父さんとどこどこに行きたいのにな」と笑顔ですり寄ることなどできなかった。理解されるための正論しか言えず、そのせいでかえって理解されることを拒まれた。 p.215 「虎太郎さんは、お母さんが病気になれば、妻よりもそちらを優先して介護する。萌のお母さんが風邪をひけば、子供たちのことを考えた場所選びを優先する。そのとき一番困っている人や弱い者を優先して気遣う。人としてはとても正しくて美しいと思う。だけど、私は強いんだよ。彼にとって私はむしろ後回しにされる側なの。私が強くても弱くても、常に一番じゃなければ嫌だよ。もちろん他人にだって優しくあってほしい。けど、その優先順位が入れ替わったときに、理由が納得できるものであるほど、私はなにも言えなくなる。私は弁護士だから、正備も良心も差し出されたら、否定できないよ。だからせめて恋人だけは私を常識の外側で一番にしてほしいんだよ」 p.222 「私は、遼一さんから離れられない。だけど遼一さんがどれくらい私を必要としているかは今も分からない。たとえば千葉に住むことだって、それを遼一さんが求めていると思ってなかっ た」 彼は重たい息を吐くと、曲がっていた背を少し伸ばした。そうすると身長差がより際立った。 「永遠ちゃん」 今度は私が、うん、と頷く番だった。 「あなたは昔から負けん気が強いわりには、ちょっと意見が違ったら、話し合うことを投げ出すくせがあるよ」 「はい」 「たしかにあなたは強いよ。けど、それはあなたが弱いところを見せるのを嫌うからっていうのも、あるよ。そうやって自分の結論ばっかり先に用意していたら、他人のいる意味なんてないよ」 「私は遼一さんの言うことはちゃんと聞いてるつもりだった」 彼は後頭部を掻くと、寝室に入った。私がついていくと、彼は化粧台の引き出しを開けた。 引っ張り出したのは、水色の錠剤のシートだった。 「これ、どうして俺に黙ってたの?」 私は途方に暮れて、彼が手にした錠剤のシートを見つめていた。 「だって、子供ができる可能性はほぼないとはいえ、一応は」それは婦人科で三ヵ月分もらってきた避妊用の低用量ピルだった。 p.235 お母さん。世界の半分は女性で出来ているんだよ。そして女性はべつに男性に気分良くなってもらうために存在しているんじゃないんだよ。 p.240 「むしろ奪い続けてほしいよ。私の、一人で背負い込めばいいと思っている傲慢さも、視野の狭い強さも。子供のときから弱い女の子になる余裕なんてなくて、そんな中で遼一さんだけに見せられる弱さが、私にとっては泣きたいほど大事で、だから私は対等なんてそもそも望んでないし、遼一さんだけのやり方で肩じ続けてほしい」 「なにを」 「私が、遼一さんを死ぬまで好きだって」その瞬間、遼一さんが「うん」 と認めるように頷いたので、私は呆れて噴き出した。永遠子のことを誰よりも分かっているような顔、という萌の指摘に納得する。そして、自分の気持ちを通すために周りの声に耳を塞ぎすぎていたかもしれないと悟る。 今の萌とは生きる世界が違うという一言で片付けようとしていた。そう決めつけてしまえば、疎遠になっても仕方ないと切り捨てられるから。だけど最終的に否定されたとしても、私は彼女に理解されることを願って言葉を尽くすべきだったのではないか。遼一さんのことは自分だけが分かっていればいいと、端から割り切るのではなく。 p.242 千葉でも東京でもこっちでも、ちゃんと住むなら、明日あらためて兄貴に話そう」提案ではなく言い切った。思わず訊き返す。 「恋愛関係だってことも?」「それは言わない」 という答えが返ってきたのは、予想外だった。 「一緒に住むってことだけで説得するつもり?」 「俺は永遠ちゃんと逃避行したいわけじゃないし、それでなんやかんや罵られてあなたが無意味に傷つくことも望んでない。普通に働いて、生活して、色々勘繰られたり疑われたりしつつも、いつか、なあなあになってこちらの状況に周りが慣れて諦めるまで、一緒に耐えてくれますか?」 遼一さんが私の目を見た。耐える、という言葉を生まれて初めて甘く感じた。 「はい」 と私は答えた。
冒頭から主人公の不倫相手が実の叔父で、近親相姦関係という嫌悪感を抱かずにいられない設定だけど、読み進めるうち不思議とこの二人の関係を肯定してしまいたくなります。 主人公、永遠子の心理描写や内省がとても切ないし、「なんかわかる気もする」とどんどんひきこまれました。 許されない関係だからこそ見えてくる...続きを読む 「人を好きになることは到底理屈なんかじゃないんだよね」 と、とことん深く考えてしまいました。 でも本を閉じ冷静になってくると、この関係はやっぱりダメなんじゃないかと我に帰ります。
禁断の恋と呼ぶにはあまりに浅はかに感じる関係について いけないとわかっていても抑えようのない気持ちと人間はどう向き合えば良いのか 彼女には相談できる人が数人でもいてよかった
叔父との恋愛、世間一般的に認められるものではないし、私も実際に起きたら嫌悪感を抱くであろうけど「気持ち悪いことが、なんで、駄目なの?」「あなたの、気持ち悪い、が、私にとっては幸福だから」この一連の永遠子の言葉がすごく印象的だった。私は銀のフォークでもそうだったけど、島本さんの心理描写が本当に好きです...続きを読む。
久しぶりの島本理生さん。 18歳年上の叔父の遼一と姪の永遠子の葛藤がとても丁寧に描かれていて。 最初は戸惑いがあって、理解が到底及ばない範疇だったけれど、ページを繰る手が止められなかったのも事実。夫との関係や親友の萌さんとのやりとりから新しい人間関係まで深くえぐっていく様にひきこまれるようにして読ん...続きを読むだ。根底にある遼一さんの覚悟も、弁護士の仕事を通して強い女性である永遠子の弱さも親との関係も読み進めるうちにどんどんのめり込んでいったように思う。 ハッピーエンドという章題は個人的にはいただけなかったなぁ。ふたりの行方を最後までドキドキしながら見守りたかった。
おいおい、勘弁してくれよと思った。 感じたことのある気がする幸福のようなものと、それとセットで常にどこかにある不安、人を疑う気持ちと好きな相手の前では饒舌に素直でいたい気持ち。 それらすべてを文章にされていて、参った。
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島本理生
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