あらすじ
夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。
第159回直木賞受賞作。
※この電子書籍は2018年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
オーディブルで聞く読書でした。
ナレーションもよく、物語に引き込まれました。
半分ほど読んだあたりで
ちょうど、Huluで、映画も見ました。
映画も、本もとても良かったです。
子供への虐待、ネグレクトなど
重い内容なのですが
全体にはあたたかいものが
ありました。
映画を見てからは
本を読んでいても
俳優さんの顔が浮かんできましたけれど
本と映画が混ざり合って
スムーズに読むことができました。
島本理生さんの本を
もっと読みたくなりました。
Posted by ブクログ
自分が普通だと思っていた・経験が多数の人からすると普通じゃないって怖いだろうな、と思ったし、何より怖いという感情を遠回しに否定されると、自分の感情ひいては自分自身まで否定されたと感じるだろうとも思った。
自分自身に向き合った彼女と、そこに正面から向き合った主人公たちはすごいと月並みな言葉ながら思ったし、個人の感情が誰にも否定されるべきでないと戦うことがどれほどしんどくて大変なのか。
知らない人の目に晒される環境下で、自分の意見を述べることがどれほど怖いか。人間としての感情のあり方を考えさせられたし、私の周りの人たちはどうなのだろうかと思った。
そして普通ってなんなんだろう、最近よく思う。
あと、我聞さんみたいな人いたら救われる人は多いだろうなあ
Posted by ブクログ
展開にページを捲る手が止められずいっきに読んでしまった。
終盤の裁判にて事件の真相が明らかになり晴れてすっきりした気持ちになったかと思いきや、最初から環菜が殺人に至った元凶のような印象で描かれていた環菜の母親の腕に傷を見つけたところで、最後の最後にさらなる深みと痛みが残された。
Posted by ブクログ
親からの愛情について深く考えさせられる本だった。人格形成おいて、愛情を受けて育ってきたかって大事だよなと実感することも多かったのでしっくりくる本だった。
Posted by ブクログ
数年ぶりに再読
この人の本は見なくてよいことにしてきたものたちに目を向けさせて対面させようとする。主人公は頑ななまでに素直で真面目で、その過程は痛みを伴うが、でもそれでいいんだよと思わせる安心感もある
みんなが実は少しずつ嘘ついている。自分のコンテクストでしか語れないから。そして弱いと思われていた人は本当は何より全てを体験してて、それを見られるようになった時に全てを語れる。腑に落ちないジャンプや思考の過程には、そうしなければいけなかった自分を守るための盾が隠れていて。でもだからこそ、それを知った時に辻褄が合い、自分の物語として現実を受け入れて生き直すことができる
Posted by ブクログ
とても良い。性被害って本人も気づかないうちに当たり前に行われていたりするけど、歳を重ねてもまとわりつく不快感と心の傷由来の満たされなさが尾を引く感じがすごく明瞭に描かれている。
Posted by ブクログ
2018年直木賞(上半期)受賞作
父親殺しの容疑者、環菜に
臨床心理士の由紀が本の執筆者として関わる話。
人間誰しも闇は抱えているもんだと思うけど、その深さ?濃さ?は人それぞれ、人格や個性に反映されていくんだなーと考えさせられる。
恋愛、ミステリーの要素もあり想像力を掻き立てられる作品。
終始重く暗い雲の中にいたのに、ラスト一気に晴れ間にでた気分になる
Posted by ブクログ
重かった。
我聞さんがステキすぎる。
愛情は、尊重と尊敬と信頼。
親なんて完璧じゃない。
親の年齢になって、自分の苦しさの向こう側に、親の苦しみや葛藤を感じるようになる。
でも、自己中心、自己防衛の親に育てられるのは大変。
1番大切な存在で、いつでも味方である。それがちゃんと伝われば、子どもは幸せなのかもしれない。
子どもにも愛情をもてる存在を見つけ、幸せになってほしい。
どんなに辛い環境でも、きっと愛情深い人に出会えれば、人は幸せになる力をもってると思う。
Posted by ブクログ
美術を生業にする父を殺したアナウンサー志望の女の動機を、臨床心理士の女性と夫、その夫と血縁のない弁護士である弟らが探る。その女性視点で。性虐待への理解を促す本。冒頭で、NTRか?との心配は取り越し苦労でよかった。その女性も、女児買春をする実の父の目に怯え、夫やその弟と出会うまでは大苦労していた。弟も母の愛情を知らない。オチは幼少期からの性虐待、自傷行為が原因の事故による殺害だった。そしてその母もまた体に傷が。家庭問題は繰り返す。
Posted by ブクログ
【人間関係は人生を良くも悪くも左右する】
自分はどんだけ恵まれた環境で生きているのだろうと実感した
環菜と周りを取り巻く環境を精算していき、環菜が前を向くことができてよかった
由紀と我聞さんと迦葉の関係も最後にスッキリした
改めて本って、自分で想像しながら読み進めていくから面白いと思えた
Posted by ブクログ
父親殺害事件の加害者として映っていた環菜が、「なぜその行動に至ったのか」を探っていく中で、生い立ちや家庭環境が徐々に明らかになっていく。その過程で事件の印象も環菜自身の印象も大きく変わっていき、真相が少しずつ整理されていくのがとても興味深かった。
環菜の事件に向き合う由紀と迦葉の物語も切なく、二人の過去や心の傷が静かに浮かび上がる描写が良かった。全体として大げさなミステリーではなく、どこか現実にありそうな家庭や人物像が丁寧に描かれていて、リアルで読み応えのある作品だった。事件そのものはやるせないが、人物の心情描写が繊細で、引き込まれる一冊。
Posted by ブクログ
女性が受ける性被害が及ぼす影響、心理的に支配する何とも言えない恐怖。それがいつまでも続いてしまうこと。呪縛から放たれるためには信頼できる人の存在や自分の事を大切にする事が大事のような。
Posted by ブクログ
重くて、深い物語。
環奈の周囲の人に取材をしながら環奈の過去を掘り下げていくとともに、由紀と迦葉の過去についても明らかになっていったので読み飽きることなく読めた。
由紀と迦葉の過去もつらいものだった。
何が真実なのかわからないモヤモヤ感が常にあって、読み終わった後の達成感がすごかった。
Posted by ブクログ
迦葉や我聞、由紀の関係性がとても人間らしくて、うまく言葉にできない感情が残った。
環菜の幼少期の経験は読んでいてつらかったけど、だからこそ彼女の心の動きに共感できた。
読み終わったあともしばらく余韻が消えない作品。
Posted by ブクログ
4.2/5.0
ミステリー小説ではあるけど、それよりも人間の「心」の強さと脆さが真正面から描かれている。
「助けて」の一言が言えない辛さに苦しむ人が、世の中にはたくさんいるのだと思う。
Posted by ブクログ
迦葉の存在が大きかった。
迦葉の生い立ち、環奈の生い立ちが読んでいて胸が苦しかった。
環奈の本を出版するため由紀が臨床心理士の立場からヒアリングをしていく中で、由紀自身が自分のこれまでの人生を振り返る。そこで見えてきたもの。由紀の過去、環奈の過去。2本の柱で進んでいく。環奈の母親のような話し方をする人はどうしても苦手である。環奈はむしろ無罪になるより有罪になって、法律上の罪を償ってから世の中に出た方が過去と決別できるように思う。
直木賞作品だからという理由で読んだが、さほど心に沁みる話ではなかった。面白かったけど。
印象に残った、セリフは文章を記録しておく。
↓以下ネタバレです。
「深刻なことでも受け流してくれて、何でも笑ってくれて、そういう場所にいたくなるんだよ、時々。俺、育ち悪いからさ」BY 迦葉
「兄貴がまだ実家にいた頃さー、よくオセロとか将棋とか二人でやってたんだよ。ところが兄貴がめちゃめちゃ弱くてさ、それなのに毎回誘ってくんの。こいついいやつだけど馬鹿だなー、と思いながらコテンパンに倒してたら、キレるどころか喜んで」
「迦葉は頭いいから、医者か弁護士になればいいって。単純だろ。だから俺がつい、人助け興味ねーって言ったらさ、だからいいんだ!っていきなり力説されて」BY 迦葉
「人助けしたいやつはたいてい同情できる人間しか助けたがらない。助けたくない人間を助けなきゃいけないのが医者と弁護士だ。だから迦葉くらい引いている人間のほうが向いてるって」BY 迦葉
「人はもう一度生まれることができる」
「人前で客観的事実や自分の意見を、相手に不快を与えない形で話す訓練をしていた」
「離婚とか、最近はみんな平気で言うけど、あたしの時代は考えもしなかったわよ。だって子供はやっぱり両親揃っているほうがいいじゃない。由紀にだって十分な事してあげられなくなるし。」
「答えは知りたくないと思った。とっさにそう思った事で、自分がなによりも知りたかったことはそれだったのだと悟った。」
Posted by ブクログ
見えない、自覚できない被害がどんどん被害を拡大させていったことが悲しかった
救えるひと、タイミングはあったはずなのに全部見過ごされてしまったように感じた
Posted by ブクログ
性虐待、性被害に、なぜNOを言えないのか。そもそもどこから性虐待、性被害と言えるのか。若い女性だけでなく、子どもも年齢を重ねてからもずっとつきまとう。この作品では女性に視点をあてていたけれども、男性も一緒だろう。
編集者の辻くんがよかった。常に聞き手として、心の傷を想像してくれた。
読後、ありとあらゆる過去を思い出した。明らかな性被害から、性被害と呼んでもいいのか躊躇するものまで。躊躇するのは、環菜と同じように自分が悪かったからではないかという気持ちがあるからだ。人通りの少ない道を歩いたあなたがいけないと言われたからだ。または、ただ視線を感じただけだったからだ。由紀と同じように部屋に二人でいるならしないといけないと思っていた頃もあった。
でも、性被害と名付けてもいいのだ、と嫌だったと言ってもいいのだと、分かった。まだ気持ちの整理はついていないけれども。そして、性的なことも含めて、気持ちを尊重してくれるからこそ、夫と結婚できたのだと、今更。
性的同意という言葉が広く認知されてきた昨今。全ての女の子に、女性に読んで欲しいと思った。
Posted by ブクログ
臨床心理士の主人公が依頼のあった父親を殺した女性の動機や背景を探っていく物語。女性は最初、理由が自分でも分からないと語るが、主人公や周りの人との交流を通じ、自分の心と向き合うように変わっていく。主人公もまた、確執のあった周りの人と和解や折り合いをつけつつ変わっていっていた。
ある程度、知識のある人なら対象の女性が境界性パーソナリティ障害に近しい性格だと感じるものの、それをそういうものだからと決めつけずに、より根っこを探る過程や姿勢は見習いたいとさえ思えた。
以前から思っていたことだが、この作者さんは会話から透けて見える考えや性格、関係性を示すのが上手く、一言では言い切れない人の不気味さや違和感が読んでいて伝わってきた。また、描かれる出来事も明らかに犯罪とまでは言えないけれど、禍根を残すようなものになっており、読者自身の市民感覚をも問われるような絶妙なものになっていた。
それぞれが抱える傷の生々しさやそれに対する身につけるしかなかった処世術が痛々しく、多少救いのある着地になったことが心からよかったと思う。
Posted by ブクログ
自分のトラウマも掘り起こされた。見ないようにしていた過去が、今でも残っていた。過去ではなく今の1部だったことを読んで理解した。p261
Posted by ブクログ
被告環奈と臨床心理士由紀の人生それぞれ振り返られる。親の教育で子の人格形成が決まっていく怖さ。放任な環奈の母もまた自傷していた怖さ。ぶつ切りじゃなく一気に読めばよかった。
心理士の由紀は執筆の為父親殺害容疑の環奈と面会する。環奈は思い込みで感情を蓋し自分が悪いと繰り返す。親友や過去の恋人、父の開くデッサン会参加者に会う。デッサン会で環奈は裸体の男と小学生の頃からモデルをさせられていた。自傷すれば父から休ませてもらえ、自傷を繰り返す。事件の日もアナウンサー面接でデッサン会と同じ視線に苦しくなり、失敗を反省して父に傷を見せに行った。そこで誤って父に包丁が刺さり、環奈に殺意はなかった。救急車を呼ばなかったこと、けれど生育の過程に問題があったことで懲役8年となる。
由紀は弁護士迦葉と同じ大学で、恵まれない境遇で関係を築くが傷つけあって離れる。迦葉の義兄我聞の個展で知り合い、結婚。
迦葉母から暴力を受けていた。由紀の父は海外で児童買春をしていた。母は、それでも家庭の為に離婚なんて考えなかった。
読み手側の意見を聞きたい
この本を読んだ感想を話し合いたい
これで良かったのか
最後までよんでスッキリした人はどのくらいの割合なのか、
知りたいなーって思う作品
Posted by ブクログ
性被害に遭うと、その過去を「あんなこと大したことじゃない」と思い込みたくて性に奔放になる人がいる、という話はどこかで聞いたことがある。心の傷を守るための防衛本能だと。
読んでいて、そのことを思い出した。
レイプや痴漢だけが性被害ではない。
幼い頃に受けた「気持ち悪かった」「怖かった」という漠然とした感情がトラウマとしてずっと心の中で燻り続け、その後の人格形成にも大きく関わってくる可能性があるのだということを目の当たりにさせられた。
言いたくても言えないし、
言ったところで理解してもらえないかも知れない。
理解してもらえなかったら、もっと傷は深くなる。
性被害者の多くは、ひとりで抱え込んでいるとどこかで読んだ。
わたしも、誰にも話せない思春期時代のエピソードがある。
誰かに打ち明けたとしても傷が癒えるわけではないし、相手の反応次第では余計傷口が広がるかもしれない。
自分の過去を思い出してしまい、読んでいて辛くなった
だけど、読んで良かったと思う。
父親を刺してしまった女性の心に共感できるか否かで、この作品の評価が分かれる気がする。
Posted by ブクログ
父親殺害の容疑で逮捕された女子大生の心情を描くために取材する臨床心理士の由紀と国選弁護人として弁護する義弟の伽葉による物語。
こう書くとバディものの小説っぽいが実際は2人は訳ありの関係。
直木賞ということで割と期待してたが個人的には刺さらず。
ハッピーエンド的な人間関係に振り切っているかといえばそうでなく、一方で扱うテーマも小児性愛とか買春とか、ネグレクトっぽい感じで寄り添いにくいからだろうか。
恵まれた環境で育ったからこそハマりきれない読み手の感受性が足りず、ということだろうか。総じて女性目線の感覚の小説。
Posted by ブクログ
想像することをやめない、自分の気持ちも含めて。
ふとしたときに忘れてしまうこと、意識し続ける努力を怠りたくない。私が小説を読み続ける理由のひとつだと思った。
Posted by ブクログ
本を閉じて何時間も経つのに、いまだにどきどきしている。そのくらい私の心をとらえる物語だった。臨床心理士と聞くとついカウンセリングを想像してしまうけれど、面会室での環奈と由紀の関わりはあくまでもインタビューであり、セラピーではない。あと、環奈については異なる見立てもできる。たとえば「慣れてはいるけど」(p. 242)は分離不安じゃなくて見捨てられ不安では?とか。読むほどに編み直しの可能性を感じる物語。
Posted by ブクログ
めちゃ面白いのに、主人公がバディみたいな関係だった男と実は昔性行為してて、その男の兄と結婚したって言うエピソード出てきてゴリつまらんくなった。でもこういうのが幼少期の性的な虐待や嫌な思いをした経験の裏返しになるのかなーー面白いけどこれだけ引いた。なくてもよくないか。
Posted by ブクログ
自傷行為についての記述は、誤解をうむように感じた。見られるためにやるのがふつう、というような。
世代間での虐待遺伝等、何となく、わかりやすい話だった。
由紀と我聞、迦葉の関係が明らかになっていく過程は興味がもてた。
Posted by ブクログ
親からの性的虐待は直接的ではなくても、心理的にもあるんだと思った。
人の捉え方が、見る視点によって全く違うこと、結局何が真実かは それぞれの中にある。
あまりスッキリはしなかったけれど、彼女が父を殺していなくて良かった。
私の父や母も、色々と子供に言えない事はあっただろうし、今の私が思い巡らせてみれば もしかするとあの時、父の浮気を母は疑っていたのでは…と思い当たる節がある。
親も人間。悩みや葛藤 生きていれば辛いことや悲しいことはある。
子供には関係ないけれど、やはり一緒に暮らしていれば無関係とはいかない。
しかし、我聞さんが素敵すぎて羨ましい。
私にも我聞さんのような人と巡り合わせてください。
何卒…。
Posted by ブクログ
よくある恋愛物かと思いきや、ミステリー、芸術、性虐待、いろんなジャンルの話がうまく交錯し、社会性の強い一冊だった。主人公と夫の弟との関係、環奈と母、父の関係。人間関係の表現が多彩な作品でした。