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Posted by ブクログ
はぇ〜。はぇ〜。
気になってたものの恋愛系かなと思って何となく読み始めたけど全然違った。
心や過去がどんどん解かれていく感覚。他人の家庭環境は友達でも本当のことはわからないよなぁ難しい。由紀が芯を持っていて、人を救うために有名になりたいって、かっこよかった。
Posted by ブクログ
2020年(発出2018年) 367ページ
第159回直木賞受賞作です。
アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が父親殺しの容疑で逮捕される。この事件を題材にノンフィクションの執筆を依頼された臨床心理士の真壁由紀が、国選弁護人の庵野迦葉とともに事件の真相に迫っていく、という小説です。
実は『ファーストラヴ』という題名だけの印象で恋愛小説と思い込み、積読状態にしていたこの本。なんでこんなにおもしろいのに今まで読まなかったのか!と思いました。キャッチコピーに『なぜ彼女は、父を殺さなければならなかったのか』とあるにもかかわらず、この文章も見ていなかったんですね。
小説を読み始め、主要登場人物がみな不安定さを感じさせるのに気づきました。環菜、由紀、迦葉ともにトラウマとなる過去を抱えています。そして由紀と迦葉の間には妙な緊張感があり、過去に口にはできないような関係があったと思わされます。それは由紀の夫・我聞にも秘密にしているような。
そして、物語の中で安心感を与えてくれる人物が、由紀の夫の我聞と担当編集者の辻です。物語の張り詰めたような緊張感が和らぐのです。2人とも誠実さが滲み出ているからでしょうか。
性的虐待や児童虐待、親子関係、家族関係をテーマにした重い物語でした。臨床心理士の目線から語る内容は私にはドンピシャでした。私は実務経験はありませんが心理学の資格を持っているからです。環菜の父親との関係、母親との関係、虚言癖、罪悪感、自傷癖、デッサンモデルをしていた過去、出会った大学生との関係、あらゆる角度から環菜の心理を分析していく過程にのめり込んで読みました。
裁判で、環菜の罪はどうなるのか? 由紀と迦葉の過去の関係とは? 最後は伏線がきれいに回収されて、環菜の心も救われました。
最近は直木賞受賞作品にはまって読んでいますが、芥川賞とは違って自分に合わないハズレという作品は今のところないですね。
Posted by ブクログ
タイトルとあらすじだけ見ると、恋愛が絡んだミステリーなのかな?と思っていたけれど、想像以上に人間の心の複雑さや深い部分が多く描かれた作品でした。
性虐待に関しては、たまに流れてくるニュースを見て「そういう酷いことをする人がいるんだな」と認識していた程度で、被害者が受けた傷や、その後の心理状態等を深く想像をすることはありませんでした。
そのため、本を読むにあたり、いつもはしない想像をしながら読み進めていきました。
私も(性虐待では無いけれど)幼少期に辛い記憶があります。環奈が、言葉にしづらい気持ちを経験しても、「この環境が普通だった」と言うように、幼い頃は自分が嫌な気持ちになってもそれを言葉に変えてくれて、受け止めてくれる大人がいなければ、自分でもどういう気持ちなのかが客観視できないまま大人になります。
そして、その部分は昇華できないまま生き残り、自分の気持ちの不安定さに反映されていくのです。
その不安定さはなかなか厄介で、すぐ治るものでもありません。大人になってもです。
事件がきっかけで由紀や弁護士達と出会い、少しでも自分の気持ちを整理できることが出来たのだとしたら、
今現実に悩んでいる人も、そのような出会いがあって欲しいと願いました。
また、環奈と同じ経験をした由紀のように、我聞のような愛情を与えてくれる人に出会えるように、と。
Posted by ブクログ
幼少期に親から強いられた経験や歪んだ価値観というのは子どもの中で常識としてずっと生き続け、本人も気付かぬうちにその子の精神を蝕んでいくのだと思う。
一方で、環菜が経験してきた性虐待や性行為が彼女にとってどのような意味を持つものだったのか、どれほどの精神的苦痛だったのかを想像することは同性の私でも簡単ではなくて、改めて他人の心情を推し量ることの難しさも感じた
環菜という人物を知れば知っていくほど、人間は一面を見ただけでは決して理解することのできない、本当に複雑な生き物だと思った