島本理生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大切な存在だったAを失ったことから書けなくなった作家の紗文は、週刊誌記者である川名くんを介して知り合った、創という身寄りのない宗教二世の若者を居候させることになった。
創作のヒントになれば、という目論見の下に受け入れたはずが、やがて二人は惹かれ合い恋愛関係となる。
しかし彼との生活はどこか浮世離れしていて、ふとした瞬間、並行世界に落ちるように紗文は不思議な事象にでくわしてゆく——。
久しぶりに一文一文をじっくり丁寧に読んでいる自分がいて、私がいま読みたい本だったのだと気づいた。
島本理生が書くものには、はっとさせられるような物事への触れ方があって、本作からも、きっと今後何度も脳裏を過ることに -
Posted by ブクログ
感情の機微の言語化が静かに響いた。
人の心ほど難しいものはないなぁ。
傷は癒えないと無意識に連鎖してしまう。
環境の大事さよ。
解説も好き。
*断片的な物語を、頭の中で一本に編み直す。考える。整理する。まとめる。残りの謎と問題はなんだろう。
*さかのぼって原因を突き止めることは、今を変えるために必要な整理。見えないものに蓋をしたまま表面的には前を向いたようにふるまったって、背中に張り付いたものは支配し続ける。なぜなら、「今」は、今の中じゃなくて、過去の中にもあるものだから。
ーーーーーーーーーー
*想像することをサボれば、自分とは別の肉体が生きる景色を知ることはできない。目に見えない爆 -
Posted by ブクログ
すごく難しかった。紗文と創の話かと思えば、異常現象が起こって、かと思えばまた戻る。だいぶついていけなかった。それに、年上好きな女性を書きがちな島本さんは、ついに年下か…と、呆れのようなものも抱いた。
ただ、帯にも記載がある「愛とは、なにか、一瞬の点滅のような、常に失われていく、ノスタルジアみたいなものかもしれません」も然り、同じ時に創が父親に言われた「許さなくていいし忘れていい」も、すごく刺さった。幸福や愛は一瞬だと私も思うし、親に対して愛情や感謝を抱けないところがあるからだ。
また、安心感があるからこそどんな挑戦もできる、といった趣旨の発想も納得。自分の将来について考えるきっかけになった -
-
Posted by ブクログ
女子高生時代、周りと上手く関係を築けずにいた工藤泉、そんな彼女の支えになっていた既婚の葉山先生。精神的に深いところでしっかり結びついていった二人だが、その後のその時々の立場、置かれた環境、取り巻く人々との関係性など、様々な因果で阻まれたり、理性に従って自制しながらも、結果的には互いの想いは断ち切れるものではなく、お互い他の人との結婚生活を円満に過ごすという表面上の幸福の内側で、これからも燻り続けるしかないのであろうという、何とも切ない物語であった。
全410頁のラスト4頁の展開にはやられた。ここまで泉の高校生、大学生、社会人時代の出来事が細かく描かれてきたのはこの為だったかと思われるくらい、ラ -
Posted by ブクログ
ネタバレ島本理生さんの作品、最近続けて読んでいます。
書けなくなった作家の女性と、犯罪加害者を母に持つ青年。
ふたりが引き寄せられるように同じ家で暮らし始めるところから、この物語は動き出します。
ふたりが抱えているのは、誰にも話せなかった傷。恋、というより救済。
救済、というよりもっと切実な何か…。
お互いを大切に思っているのにすれ違ってしまう場面が多々あって、読んでいてすごく苦しかったです。
大切だからこそ言葉にできなくて、それがのちの後悔につながっていく。
その様子を俯瞰しながら読むのが、またしんどくて。
非現実的な場面もたくさんあって、感想をうまく言葉にできない部分もあるのですが、それで -
Posted by ブクログ
ネタバレ愛していた人と離れてから小説が書けなくなってしまった40代の女性が、犯罪加害者の母を持つ1人の青年と同居をし、お互いがこれまで抱えてきた傷口と向き合っていく話。
島本さん新作!
珍しく女性が年上設定で驚き。
島本さん自身、小説を書けない時期があったと仰っていたので、年齢も含め設定が島本さんっぽいな~と思った。
主人公女性の、強さと弱さや依存と拒絶の共存や、学生時代の不安定な家庭環境からくる愛着障害みが描かれていたところは共感が出来てとても好きだった。
ただ、個人的に現実味のある物語が好きなので、SF要素はちょっと微妙だったかな。(完全に好みの問題)
これまでも、あられもない祈りとか、イノセ -
Posted by ブクログ
ネタバレ裁判のシーンは特に印象的で、怒涛の展開だった。
ただでさえ幼少期に当たり前として刷り込まれた価値観は、他者と関わらない限り、それが「おかしい」と気づくことが難しいもの。環奈は自分の幼少期を隠していたから尚更気づくことができなかった。
今回は虐待がテーマだったけれど、これは他の場面にも当てはまると思う。自分自身も大学進学を機に上京し、それまで当たり前だと思っていたことが少しずつ塗り替えられていく経験をした。そうした新しい価値観に触れることで知見が広がっていく。
だからこそ、心を閉ざさずに他者と関わることの大切さを改めて感じさせられる作品だった。
また我聞さんからは、「大人になる」ということ -
Posted by ブクログ
タイトルから恋愛小説を想像していたけれど、まったく違った。
父親を刺した女子大生・環菜。動機は不明のまま、臨床心理士の由紀が取材を重ねていく。少しずつ明かされていく家族の歴史は、読んでいて胸が痛くなるものだった。
誰かにとっては「大したことない」出来事が、ひとりの少女の人生を長い時間をかけてこわしていく。その描かれ方が静かで丁寧で、だからこそ重く響いた。
島本さんの文章は、心の柔らかな部分にじわりと入ってくる。派手な展開があるわけじゃないのに、ページをめくる手が止まらなかった。
読み終えてから、タイトルの意味についてしばらく考えた。これって誰の、何の「初恋」なんだろう。答えは書かれてい -
Posted by ブクログ
女性はなにに支配されているのか。
まず女性の対となる存在である男性。彼ら(もちろん全員ではないが)は、女性の脆弱さ(ヴァルネラリビティ)につけこみ性の尊厳を搾取していく。
ほかにも、親としての権力を振りかざし子の領域に踏み込んでくる両親。あるいは同じ女性からも抑圧されることだってあるのかもしれない。
そんな支配から脱却し、独立を勝ち取るために、強さ(レジリエンス)を獲得しようと悩みもがく女性たちを見守っているのが、神父の金山。(彼も男性であるが、過去に支配されている)
強靭に生きるというのは難しい。でも、そのためのヒントとなるかもしれないことを神話と照らし合わせて、本書は伝えてくれる。