島本理生のレビュー一覧

  • ナラタージュ

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    島本理生の本はこれでまだ2冊目だけど
    複雑な心理描写に長けているのは勿論のこと
    登場人物の1つ1つの仕草や表情
    その場の温度や空気感までもが
    意識せずとも想像出来るほど
    繊細に描くことにも長けているのだなぁっと感じた。
    映画を観たのはもう随分と前のことだけど
    序盤からすっ飛ばすような激しいラブストーリーだと
    記憶が勝手に塗り替えられていた。
    原作は後半まで良い意味で淡々と静かに進んでいき
    後半で一気に熱烈さを帯びて
    前半よりも深さを増し再び静かに終わっていく
    そんな印象だった。
    葉山先生と小野くん、対照的な2人だけどどこか共通する部分を感じた。
    もしも私が泉の立場だったら...
    私もきっと葉山先生に惹かれてしまうのだろうなぁっと。
    どこまでも優しくて、どこまでもずるい、そんな葉山先生に。
    後半の"この人からなにも欲しくない。
    ただ与えるだけ、それでおそろしいくらいに満足なのだ。"っという泉の気持ちが
    わかるようでわからなくて、というかわかりたくない気持ちさえあって。
    温かいのに痛々しくて苦しくて、こんなふうに私も心から思えるようになりたくて、どうしようもなく愛おしかった。
    恋愛においての不安定さ、その中にある幸福と絶望を葉山先生という元教師との泉視点で描かれているストーリー故に
    一般的に共感性はそこまで高くないのかもしれないね。

    0
    2026年07月12日
  • やるせない昼下がりのご褒美

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    どのお話もとても素敵でした。
    それぞれの登場人物が抱えている陰を、おやつたちが彩り、背中を押してくれる。
    ほっこりするし、こんなおやつが食べたいなと思える作品でした。

    0
    2026年07月08日
  • あなたの愛人の名前は

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    愛人は今は何号まで居たかな⁡
    ⁡⁡
    ⁡ってなことで、島本理生の『あなたの愛人の名前は』⁡
    ⁡⁡
    ⁡足跡⁡
    ⁡蛇猫奇譚⁡
    ⁡あなたは知らない⁡
    ⁡俺だけが知らない⁡
    ⁡氷の夜に⁡
    ⁡あなたの愛人の名前は⁡
    ⁡⁡
    ⁡の短編集。⁡
    ⁡⁡
    愛人って事で、ドロドロとした感じの内容かと思いきや、割と純愛(個人的感想)な感じの内容かな❓⁡
    ⁡⁡
    ⁡男女それぞれの目線で、猫ちゃん目線もありで、それぞれ清い愛人な話じゃったかな。⁡
    ⁡⁡
    ⁡島本理生さんの作品は何か『品』を感じて好きなんよね。自分には無い上質な品が心地良さで酔わせてグレーな心が白く清くなる様な感覚になるね⁡
    ⁡⁡
    ⁡ 2026年20冊目

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    2026年07月05日
  • ノスタルジア

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    不思議な世界をたゆたう。大きなテーマがたくさん出てくるのに、ずっと同じくらいの温度で、でもすごく美しい文章が羅列している。浮世離れした話なのに、なんだかすごく人間らしくて、目を背けたくなった。

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    2026年07月04日
  • ファーストラヴ

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     恋愛じゃないけど大事な人。
     恋情でしか人を大事にする方法を知らなかったから当てはめてみたけど、それによって大切なものを自らの手で壊してしまった気がする。傷つけることでしか自分の跡を残せなかった。

    0
    2026年07月02日
  • 天使は見えないから、描かない

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    叔父と姪の恋愛という、世間からは「気持ち悪い」と言われる関係性。確かに文字だけを見れば、そう思ってしまうのも無理もないと思う。しかしそこに至るまでの切実な経緯を知ると、周囲が外側から「気持ち悪い」という言葉だけで簡単に糾弾していいはずがない、と感じさせられます。
    主人公の永遠子は一見強い女性でありながら、時折のぞかせる弱さや嫉妬心に人間らしい生々しさがあり、とても魅力的に映りました。

    0
    2026年06月29日
  • ナラタージュ

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    付き合えそうで付き合えないような関係になった人がいたから同じような状況を何度も味わっていて、懐かしくて苦しいなと思いながら読みました。
    その人に会えそうな場所に行ったりいそうな時間帯を合わせたりしてたなあって、恋愛って難しい

    0
    2026年06月24日
  • Red

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    まぁ、なんて言うんだ、
    重ねる部分はとても多いから一気読みしたけど
    結局若い女性が読んでも、男性が読んでも
    理解してもらえないような気もする。
    官能っぽい部分もなんだかちょっとリアルでもなく
    もっと直接的な表現が好きかな!
    どエロ!
    でも結果良かったよね!
    真くんは最後まで世間知らずで良かった!
    最後が成長した翠ちゃんなのも良かった!
    小鷹くんは違う絡め方が良かったなー
    塔子ちゃん、地味女設定なのに、無理あるわーみたいな?

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    2026年06月23日
  • やるせない昼下がりのご褒美

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    ネタバレ

    ほっこり短編集。
    一番最初の島本さんのだけ不倫ネタで、好きなジャンルじゃなかったけれど…他の話はほっこり読めた。
    織守さん、友井さん、名取さんの話が好き。

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    2026年06月23日
  • 2020年の恋人たち

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    ネタバレ

    母の突然の死、母が開くはずだったお店を葵がオープンすることをきっかけに、葵の人生は動き出す…

    葵の人生を規定してきた存在、すなわち母とその周りの人々からの脱却。そして、なににも縛られず生き方を自らの手で選べるようになっていく。…

    葵の義理の妹・瑠衣の人生は多くは語られないが、彼女も葵と同じくらい傷ついてきているのだと思う。でも彼女は青年期ですでに「葵を慕う」という自らの意思を選択することができているのは、育ちの環境もあるのかもしれないが彼女の強さなのかもしれない。

    ほかにも魅力的な登場人物がそれぞれ蒼に脱却のためのヒントを与えていく。部長は一見ガサツなのかもと思いきや、その人の奥深くのもやっとした部分を察して重くはならない程度のちょうどいい言葉を送ることができる。芹さんはわずかな登場にもかかわらずどこか葵の生き方の手本的な存在な感じもある。障がいを隠しつつも明るくさわやかに葵を支える松尾くん、深く疲れたときに葵に優しく手を差し伸べることができる海伊さん。
    全てがうまく回るわけではないけれど、葵の新しい人生の周りに残った人々は、みな彼女自身の自分で選択した生き方をを尊重できる人だと思う。

    0
    2026年06月21日
  • ご本、出しときますね?

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    言葉を扱うプロたちのトークはおもしろく、
    意外な一面や交友関係が知れたのも読んでいて楽しかった。
    作家さんたちがお勧めしている本がどれも本屋さんで入手するのが難しそうなものばかりで思わずにやにや。いつか出会いたいと思いながら読みたいリストに書き連ねた

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    2026年06月20日
  • ファーストラヴ

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    就活中の女子大生が父親を刺殺したという事件を、臨床心理士が本にまとめるために取材するお話

    アナウンサー志望で就活の面接中に体調を崩した女性大生の聖山環菜
    その帰りに包丁を購入し、画家の父 聖山那雄人が勤める学校に赴いて刺殺したという事件
    環菜は救急車を呼ぶでもなく実家に帰り、母と口論して家を出た後に警察に逮捕される
    その際に、「動機はそちらで見つけてください」というような事を言ったという

    臨床心理士の真壁由紀が出版社からの依頼で事件を本にまとめるために取材をする事になる
    環奈の国選弁護人である庵野迦葉は由紀の大学の同期で、夫 我聞の弟(実際は従兄弟で養子の兄弟)でもある
    由紀と迦葉の間には過去に何かがあったように思われる

    発言に一貫性がないように思われる環奈、そして環奈の事を嘘つきと断じる母

    何故、環奈は父親を殺さなければならなかったのか?を巡る物語



    嘘つきというレッテル
    確かに、発言の内容が一致していないと思われたり、世間の認知とは異なった発言をしているところもある
    でも、子供の頃に間違った認識をしてしまっていたら、何か違和感がを覚えても自分の方がおかしいと思ってしまうかもしれない
    自分を守るために、外部の事を否定するか、逆に自分の認識を歪めるかという選択の結果だろうか


    この本を読んで一番感じたのは、「性的虐待」の基準の難しさ
    「視線」は加害になるのか

    由紀の言葉
    「幼い女の子には性的な視線を受けているという自覚はない。ただなんともいえず不快で気持ちが悪くて、身の危険を感じて安心できない。つねに緊張を覚えてしまう」
    実体験として、私は娘にそんな目を向けた事はないけれども
    娘の視点ではもしかしてそう感じていた事があったかもしれないし
    これは自分の娘に限らず、世間の女性に対しても同じ事
    こちらの認識ではなく、その人がどう感じたかという基準だと、私も知らず知らずのうちに性的加害をしていた可能性も考えられる

    視線に限らず、被害を受けた側の主張に対し
    「そんな事で」「思い込み過ぎ」「自意識過剰」という言葉が投げかけられる事がある
    果たして、そんなに軽い認識で済ませてよいのかという疑問

    内心を推し量ることを出来ても、実際はどうだったかは確かめようがない
    だからこそ客観的な行動のみを基準に判断すべきなのだろうけど
    視線という見えないものの証明は難しい


    子供の頃から、間違った認識を植え付けて本人の常識をずらすのはグルーミングだし
    それに対して母も助けにならないとなれば、本人の心は壊れていくしかない

    まぁ、お母さんの昭菜さんにも何かありそうとは感じていたけど
    お母さんもお母さんで、過去に何かあったのだろうなと終盤で明らかになる

    家族というユニットのブラックボックス
    それが芸術家という父権の下に築かれた、さらに世間の常識とは違った環境だから成立してしまった闇に思える


    作中で環菜が迦葉のことを「男メンヘラ」と評する場面がある
    由紀は「そんな言葉は、使うものじゃない」とたしなめている
    環菜は恐らく自分は医者にこそかかっていないけれども、メンヘラ的なものであるという自覚があって
    迦葉も同類だと思ったからこその「男メンヘラ」という言葉が出てきたのでしょうね

    環奈、迦葉、由紀
    三者三様に子供の頃に特異な体験をしている
    親というものへの不審感

    迦葉と由紀は同類だから惹かれ合った側面があるのだろうか
    環奈は迦葉に対して嫌悪感を抱いたようにも思える
    環奈に対して由紀は親近感というか、本人に近しい視点で捉えられた面があるかもしれない


    私は実感のしようがないけど、世の女性の中で、「視線」という被害を受けたと思っている人は少なくはないのだろうなと思う
    そんな健在化されないもやもやしたものを描いている

    解説の朝井リョウも、島本理生が芥川賞にノミネートされてきた過去と、この作品が直木賞を受賞した事に触れている
    ミステリではなく、人の内面のぐにゃぐにゃしたところを描いているのは芥川賞っぽい純文学的な要素を多く感じた


    あらすじはミステリっぽい煽りだけれども純文学的側面を持ち
    また、この物語はラブストーリーでもある
    だからこそのタイトルなのだろうな
    誰から誰へのファーストラヴかはいくつか考えられるけど
    環菜のものと考えると、タイトルがミスリードになる
    あれは決して初恋と呼べるようなものではない

    由紀と迦葉の関係とも考えられるし
    由紀と我聞とも考えられる

    我聞という存在にかなり救われた
    彼がいなければ読み進めるのももっと辛かったろうし、読後感ももっと悪かったと思う

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    夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
    彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
    環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
    環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
    なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
    臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。
    そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
    「家族」という名の迷宮を描く長編小説。
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    2026年06月18日
  • ファーストラヴ

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    恋愛ものの話ではないと知っていて読んだが(恋愛ものだったら買ってない)ミステリー感な小説。
    めちゃくちゃ読みやすく、自分が本読むのが得意だったのか?と思える本。
    辻堂ゆめの今日未明をよんだばかりだったからか、
    人の事件の裏にはこんなことが隠されてんだよな。
    殺害の真意など、知りたくてハラハラしながら読み進められる。
    ミステリー小説で、盛り上がって犯人わかってどんでん返し!!(完)って、見事に騙された。ラストで度肝を抜かれた。ような小説大好きなんだけど、ここから先も読みたいなと思う事多い。
    でもこれは、スッキリする最後まで話が進むので、本当に良かった!!

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    2026年06月16日
  • 私の身体を生きる

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    こんなに赤裸々に描かれているのか、と思うのは、それもまた性を隠す大人の無意識に引っ張られているのだろうか。作家さんによって「身体」に対する感じ方がこんなにも違うのだなと興味深かった。

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    2026年06月08日
  • 私の身体を生きる

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    性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。

    「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
    面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。

    面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
    本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわけですが、それはどういう心境なのだろうか、とも思ったり。
    他にもこの手の本はあるのかな?と探したくなったほど。
    男性作家版も出して欲しい所存です。

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    2026年06月07日
  • 私の身体を生きる

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    いつも読んでる大好きな作家さんたちの身体にまつわるエッセイ。作家さんたちにも過去や苦しみや葛藤があると知ってしまった。

    「誰かから指弾される前に、違う、お前は違うと「私の中の世間」が言ってくる。」

    ☁️ 世の中には女性であることで苦しんでる人がいないわけないのに、言語化されてしまうと本当にいると見えてしまう、なんて、自分勝手さに嫌になりながら読み進めました。

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    2026年06月02日
  • ナラタージュ

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    喪失と再生と喪失の繰り返し

    島本理生先生の作品を数冊読んで、ずるい大人が出てくることが多いということが分かったが、今回の作品のずるい大人は、読み進めていくうちに結構な嫌悪感があった。一見、よい人のように振る舞って可愛がって自分を頼れる大人と刷り込ませて手懐けて、近寄ってきたら守りに入る、という手法によい印象は受けなかった。
    物語自体は、主人公だけでなく、それぞれの登場人物の思いが伝わり、これまでの作品以上に感情が揺さぶられた。

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    2026年05月30日
  • やるせない昼下がりのご褒美

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    ネタバレ

    【あらすじ】

    あの人と過ごす「おやつ」の時間が、
    今日を乗り切る力をくれる。
    おいしいものを愛する作家陣が、
    心とおなかの空腹をあたたかく満たす短編小説集。

    ●作品紹介
    妻子ある政治家と逢瀬を重ねる画家の朱莉。
    マスコミを避けるため延泊した伊豆の山奥のホテルで回想する、
    これまでのこと。
    ――島本理生「楽園の代わりのカッサータ」 

    なりゆきから、派手めギャルとして高校生活を送る陽子。
    クラス替えで再会した関優征は、かつて放課後をともにした相手だった。
    ――織守きょうや「ファースト・アンド・オンリー」

    両親の交通事故がきっかけで瀬戸内海の島に住む叔父に引き取られた碧。
    果樹が茂る庭の手入れをし、
    その恵みをいただく中で回復していく少女の物語。
    ――友井羊「春とマーマレード」

    アイドルグループの一員として活動している泉水。
    テレビ番組のお題で、まもなく卒業するメンバーの大地と一緒に、
    スイーツをプロデュースすることに。
    ――畑野智美「アンパッサン」

    息子の大学進学にあわせて上京した尋乃。
    そっけない息子の隣で思い返すのは、
    幼い彼とふたりで東京に滞在したときの記憶で……。
    ――名取佐和子「ドーナツ息子」

    休学中の高校を中退して、食の仕事に進もうかと悩む美也。
    東京で郷里の友達、瀬里が暮らすシェアハウスに滞在するなかで、
    食事とスイーツづくりを担当することになり――。
    ――伊吹有喜「ストロベリーの歌」

    【個人的な感想】
    どの話もほっこりするだけじゃない、深い悲しみや辛さが描かれていて読んでいて飽きなかった。

    0
    2026年05月28日
  • Red

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    ネタバレ

    私が最も強く感じたのは、「女という性を内包したまま、母親という役割を生きることがどれほど危ういか」ということだった。

    この作品は、単なる不倫の物語ではないと思う。
    家庭があり、子どもがいて、周囲から見れば安定した生活を送っているように見える塔子が、その内側でどれほど孤独を抱えていたのかが、とてもシビアに、そしてリアルに描かれていた。

    安心を与えてくれる恋と、刺激を与えてくれる恋。
    その二つのあいだで揺れ動いたことがある人にとって、この物語はとても共感する部分が多い内容だったのではないかと思う。


    レビューを読んでいると、塔子の気持ちが分からないという人もいれば、強く共感したという人もいる。
    私自身は、塔子に共感する部分が多かった。
    では、なぜここまで受け止め方が分かれるのだろうか。

    私はその理由の一つに、自分の中の辛さや苦しみを、自分だけで消化できるか、それとも誰かに頼ってしまった経験があるかどうかが関係しているように感じた。

    塔子側の人間は、自分の苦しみをそのまま相手や物事にぶつけることができない。
    ある意味で繊細で、弱い人間なのだと思う。自分が苦しいと声に出せず、周囲に助けを求めることもできず、けれど一人では抱えきれない。
    その危うさが、小鷹の「家族もいるのに一人で生きているように見える」という言葉に表れているように感じた。
    家族がいることと、孤独でないことは必ずしも同じではないのだと思った。


    人間は誰しも、上手に生きられるわけではない。正しい選択ばかりできるわけでもない。
    塔子のように、弱さや寂しさから誰かに寄りかかってしまうこともあるのだと思う。
    しかし、それでも人を傷つけてはいけない。特に最終章の翠の話は、読んでいてとても胸が痛くなった。
    大人たちの不倫や感情の問題に、子どもを巻き込んではいけない。
    どれだけ本人たちに理由や苦しさがあったとしても、子どもが背負わされる痛みは別の問題として考えなければならないと感じた。

    『Red』は、恋愛の美しさやときめきだけではなく、その裏にある孤独、弱さ、罪悪感、そして人を傷つけることの重さまで描いている作品だった。
    だからこそ、簡単に塔子を責めることも、完全に肯定することもできなかった。

    今の私は、この作品に強く共感した。
    しかし、数十年後にもう一度読み返したとき、この共感の感情がどう変わっているのかも気になる。
    そのときには、塔子の苦しみを今と同じように感じるのか、それとも過去の自分の感情として少し距離を置いて読めるのか。

    いつかまた読み返して、今の自分との違いを確かめたいと思う。

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    2026年05月27日
  • ファーストラヴ

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    感情の機微の言語化が静かに響いた。

    人の心ほど難しいものはないなぁ。
    傷は癒えないと無意識に連鎖してしまう。
    環境の大事さよ。

    解説も好き。


    *断片的な物語を、頭の中で一本に編み直す。考える。整理する。まとめる。残りの謎と問題はなんだろう。
    *さかのぼって原因を突き止めることは、今を変えるために必要な整理。見えないものに蓋をしたまま表面的には前を向いたようにふるまったって、背中に張り付いたものは支配し続ける。なぜなら、「今」は、今の中じゃなくて、過去の中にもあるものだから。
    ーーーーーーーーーー
    *想像することをサボれば、自分とは別の肉体が生きる景色を知ることはできない。目に見えない爆発の存在を知ることすらできない。
    *簡単に理解できないものに出会ったときこそ、断絶を感じ距離を取るのではなく、想像するスイッチを授けられた幸運を噛み締めたい。

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    2026年05月23日