島本理生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
叔父とのタブーな恋愛を描いたもの。
その上に不倫でもあるので、どんなドロドロした作品かと思って身構えていたらとても純粋な愛を感じる作品でした。
弁護士の永遠子は、家庭環境の影響もあって小さい頃から大人になるまでずっと誰にも頼らない強い人間でいたけれど、唯一弱さを見せられるのが叔父で、そこが自分の拠り所になっていったんだなぁと分かる過程が切なくて、どうか幸せになって欲しいと思いながら読みました。
「不快に感じる人が見えないところまで離れてくれればいいんだよ。どうして気持ち悪い方が改善しようと無理したり、逃げ隠れしなきゃいけないの?」という、誰にも認められない恋愛を他者に訴えかけるシーンが印象 -
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ネタバレ面白かった…!
身体について言語化することは難しいと思いながら、言語化欲求もあって、そこをストレートに表現してくれている言葉は、ポジティブなのかネガティブなのかは分からないが震動を伝えてくるようで、ちびちび読み進めました。
わかる、わかるよ…となるところもあれば、こんな身体感覚を持つ人もいるんだ〜と知るところもあって、何かしらそれが身体にフィードバックされて、終始不思議。
島本理生「Better late than never」
…直後よりも、むしろ二、三日目から、不安定さを伴った執着心はピークを迎えて、その最中には激しい恋をしているようにも感じていたが、その後、十日間かけて緩やかに下降した -
Posted by ブクログ
臨床心理士の主人公が依頼のあった父親を殺した女性の動機や背景を探っていく物語。女性は最初、理由が自分でも分からないと語るが、主人公や周りの人との交流を通じ、自分の心と向き合うように変わっていく。主人公もまた、確執のあった周りの人と和解や折り合いをつけつつ変わっていっていた。
ある程度、知識のある人なら対象の女性が境界性パーソナリティ障害に近しい性格だと感じるものの、それをそういうものだからと決めつけずに、より根っこを探る過程や姿勢は見習いたいとさえ思えた。
以前から思っていたことだが、この作者さんは会話から透けて見える考えや性格、関係性を示すのが上手く、一言では言い切れない人の不気味さや -
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女性の書き手が綴る、「身体」についてのエッセイたち。
私がこれまでの人生誰にも言わずに、日記にすら書かずに閉じ込めてきた経験や思想や感情に近しいことが書かれていたりして、私だけじゃなかったのか……!という発見がいくつもあった。
私みたいに、自分の中に閉じ込めている人も沢山いるであろう内容をこうして書いてくださったことに感謝したい。
生理や身体の変化のこと、妊娠のこと、性自認のこと、性欲や自慰について、ルッキズム、性癖、尊厳などなど……
女性の体と30年付き合ってきたからこそ、どれも興味深い内容だった。
金原ひとみさんの「パリの砂漠〜(略)」を読んだ時にも思ったのだけど、
金原さんの文章だ -
Posted by ブクログ
ちょうど自分もパートナーと別れた時期に読みました。お互い好きでしたが思い描く未来図がいつまでも別々で平行線のままでした。
泉ちゃんのような偶然や奇跡はなくそれっきりですが、想い合うことが必ずしも幸せな結果を招くのではないんだと痛感しました。
それでも何かの拍子に、過ごした日々は温かくて穏やかで鮮やかなものとして蘇ります。
どうにもならないことだと頭では分かりつつも、どうにかなったんじゃないか、どうにかなっても結局こうなっていた、と堂々巡りを繰り返しています。
きっとそれは後悔とか未練などの感情ではなく、新しい出会いがあっても変わる事なく自分の一部としてこれからも生き続けるのだと思います。
恐れ -
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久しぶりの島本理生さん。
6編少しずつ繋がっていて
とても読みやすい小説であったことはいつものこと、
2作目の『蛇猫奇譚』の
1行で大泣きしてしまった。
主人公の出産によって変化する気持ちと
それにただ純粋に寄り添いたいチータの
気持ちの両方が、痛いほどわかって、
時に鬱陶しく思ってしまう自分に対して
真っ直ぐな目で見つめる我が子と重なり
ただただ号泣でした。(笑)
表題作である、
『あなたの愛人の名前は』は
購入を決めた時に察した意味とは
全く違って、6作目の主人公藍の
過去の自分に問いかけるような一言
だったんだな、と納得。
どうして島本さんの小説は
シンプルで真っ白なのに痛くもない -
Posted by ブクログ
大人の少し歪んだ愛の話。僕にとってはまだもう少し先に納得できるようになるものかもしれない。特に、浅野(兄)が嫌いだった。
でも、どこか穴の空いた大人たちが満たされたくて、受け入れられたくて、愛されたくて、誰かに何かを求めていて、切なかった。忙しい日々の中で巡り合うものに自分の存在を委ねていたのかもしれない。
心が疲れていて、すり減っていて、その時にはその人じゃないと駄目だった。その行為をしなければ駄目だった。未来から見れば愚かなことでも、当時はその不純な恋が必要だったのだろう。
とはいえ、愛人というものが、これからも僕にとって縁のないものでありますように。笑 -
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Posted by ブクログ
恋愛小説は読まない方だ。何も考えず読んでいて、「あ、これ恋愛小説だったの!?」みたいなことは往々にしてあるが、自発的に読むことはめったにない。読んでも痴人の愛とか(笑)
「著者、若き日の絶唱」といううたい文句そのまんまだったと思った。私は結婚して、一生一緒にいる人と過ごしているが、この小説の主人公のようになることが現実でもままあって驚いた。そりゃそうか、俺だけじゃないよなと感情が共有された気持ちになって感激した。もちろん、妻のことは大好きだし、一生離さないつもりでもある。だからこそ、あの頃を思い出す瞬間がたまらなくなる時がある。ナラタージュという一人語りだからこそ、他者への思い違いやあやふやな -