島本理生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレめちゃくちゃ好き。最初はいまいちのれないな〜と思ってたけどだんだん「良いかも」と思い始め最後には「良い……」となるスルメイカのような小説だった。
正直この作品が世間で大ヒットといかなかったのは納得だけど私はめちゃくちゃ好き。解説にあったように「恋」を描いているので若干文学の香りが強いような気がするしキャラクターの濃さみたいなものとか二人の過去についてとかはあまりないので、まあ一般ウケはしなかったんだろうなと。そこまで劇的な出来事もないしね。
けど私はめちゃくちゃ好き。切なくて切なくて、島本理生さんの本を読むのはこれで五冊目だけどこの本はかなり切ない。
ままならねえ二人の切ない恋といえばナラタージュもそうなんだけど、あっちのほうが社会的な立場とかもあってわかりやすかった。この作品は本当に二人だけの世界、二人にしかわからない事情って感じで、「人間と人間」を描いてる感じで本当に好きだ。島本理生さん謹製の「自分を大事にしない女×悪い人じゃないのにどこかずるい穏やかに見えて曲者の年上男」はマジで「そうそうこの味!」って感じだった。これ食べに来てたんですよ。
登場人物が全員不器用で、普通の暮らしをしているように見えてどこか歪んでて、とにかく「人間」って感じで良かった。みんな苦しんで生きてる。なんだかうまくいかない。
結局主人公はずっと本音を言えないままだったのだと思うし、男の人の側も好きだけど弱さを抱えてて、好き同士ではあるけど本当に色々な事情がありすぎてどうしようもなかったんだと思う。本文中にあったようにまさにボタンを掛け違えたような恋だ。切ない。
いつもながら文章全体の雰囲気がおしゃれで、華美すぎないのにハッとさせられたり見惚れちゃうような地の文は最高だ。島本理生さんは地の文からセリフまで全部味わい深くて良い。世界観の統一っぷりが凄まじい。
うまく言えないがとにかくよかった!好き!!
世間での評価と自分にとっての価値は必ずしもイコールではないということをしっかり再確認できた本!! -
Posted by ブクログ
青少年のための手引き
北海道から東京に大学進学のために上京した大和君。
清潔な視線
椿さんと八重子ちゃんは恋人。
シスター
鯨ちゃんは大和君に恋する。荒野先輩は鯨ちゃんに恋する。
海へむかう魚たち
大和くんは大学の先輩絵麻さんと駆け落ちする。
押し入れの傍観者
晴雨(せう)さんと大家の綿貫さんの嵐の始まり。
真綿荘の恋人
綿貫さん目線の晴雨さんへの想い。
真綿荘の住人は、大和君、椿さん、鯨ちゃんに
晴雨さんと大家の綿貫さん。
それぞれの人物が主人公となり、話に出てくる。
大和君の存在が独特で、最初は何でも言っちゃう
天真爛漫タイプに思えてたんだけど、
だんだん真綿荘で生活していって、大人になってきて
最初の頃と違う大和君になっていくのがよかった。
そして、「大和」ではなく毎回表記が「大和君」と
なっていることに、作者の意図を感じたよー(。-∀-)
けっこう好きな作品だったなぁー!! -
Posted by ブクログ
ネタバレ傷つけ、傷つけられ、縋り、縋られ。
どの作品の主人公も痛ましくもがいているけれど、それでいて神様はそんな彼女たちを救ってくれるわけでもない。読んでいて苦しい。夜がおしまいになった朝、目の前に広がる景色はどんなものだろう。
神様と対峙するというのはこれほど苦しいものなのかな。
「夜のまっただなか」
神様とは何者なのか。
「サテライトの女たち」
神の側に立って子を裁く親から逃れるには。
「雪ト逃ゲル」
主人公の「私」自身が自分自身を捉えられいないので読み解くのがかなり難しく感じました。
「静寂」
この一冊の最後にこの話があるから救われた。なかったらもうどうしようっていう読後感だったかも。
島本さんはこの作品で純文学を卒業されたそうです。ジャンル「島本理生」でどんどん作品を生み出してほしい。 -
Posted by ブクログ
紙の本を裁断、解体して、デジタルデータとして取り込んで保存することを「自炊」と言う…というのは、どこかで聞いたことあった。
作家の千紘が、亡くなった鎌倉の祖父の家で、祖父が大量に遺した本を「自炊」しながらひと夏を過ごした記録なのだけど、編集者の柴田と知り合い関わってしまったことで奇しくも不穏な夏になってしまう。
人を傷つけることを何とも思わない、むしろ傷つけることを生き甲斐とする人間がいる。それが無自覚であればあるほど罪深い。
読んでいる間ずっと胸騒ぎがするような作品だった。柴田に振り回され自我を失っていく千紘を見ていて、人間のどうしようもなさを感じてしまって。
千紘には性的なことを嫌悪してしまうような過去があって、そのことが千紘の自信を奪い、人との距離感を適切に保てない。
傷つける側の人間は、そういうターゲットの性質を見抜いた上で近寄るのかもしれない。観察だけでなく、妙に鋭い勘で。
元は「夏の裁断」だけの作品だったものが、その後、秋冬春の短編が書き下ろされて出来上がった短編集らしい。
秋冬春の作品も、主人公が変わらないせいか不穏さがまったく無いわけではないけれど、「夏の裁断」と比べたら穏やかさも見えて希望も感じた。柴田は表面的には消え、清野という新たな登場人物との話が中心になっている。
正直千紘は才能はあるけどダメ女だと思う。けど恐らく不思議な魅力を持つ女性なのだろうということも同時に思う。庇護欲をくすぐるようなタイプなのかもしれない。
人と深く関わるのは怖いことだし、その距離感や在り方も人それぞれだ。過去も性格も何もかもが違うのだから。うまくいかなくてすれ違いながら解り合っていくしかない…と、現実と重ね合わせながらしみじみと考えた。
にしても、柴田のような男って妙な色気があるようなタイプが多いのよね。破綻していて触れたらまずい感じがするのに、なぜか惹かれてしまうような。そういう自分の魅力も分かってて動いてるのかしらと思うと腹が立つわ!と小説なのについ思ってしまった。