島本理生のレビュー一覧
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目次
・シルエット
・植物たちの呼吸
・ヨル
表題作を読んで、やっぱり彼女の才能はずぬけていたなあと思う。
17歳の少女が書く恋愛小説で、きちんと家族を書いている。
あなたと私、二人だけの世界では、ない。
言葉で伝えるものと、体温のぬくもりが伝えるもの。
感情で気になる人と、感覚で恋うる人。
高校生がそこまで生々しい恋愛をするのか、という気もするが、作者が東京生まれの東京育ちということで納得。
だってこれ、東京の高校生だなあって感じがすごくするもの。
雪を見ると母に捨てられた時のことを思い出すという冠くんが長野に行くことを主人公は心配するけれど、この先の冠くんは穏やかに雪を見られるよう -
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幼少期からの心の傷を引きずる少女が、苦しみもがきながらも少しずつ成長していく姿を、中学三年から20歳まで描いた長編。
とにかく、不安定な主人公の行く末が気になって、上下巻を一気に読んだ。
前半は、特殊な家庭環境に思春期特有の未熟さがあるとはいえ、痛い目にあっても取り返しのつかないような過ちを何度も繰り返す主人公に腹立たしささえ感じる。カメラマンを目指してからの後半は、家族や幼少期の出来事が背景として鮮明になるにつれ、彼女の突拍子もない言動にも納得ができた。
それにしても、あれもこれもと要素を盛り込みすぎている。
家庭内での性的虐待や新興宗教、レイプ、自殺未遂、精神病院の入院など主人公を巡る -
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ネタバレ表題作の「シルエット」は最後らへん、泣きながら読んだ。
「そうしたら冠のやつ、どうしてあんなに簡単なことに今まで自分が気付かなかったのかって。おそろしく難しいと思ってたことはすごく簡単なことで解決したのにって。だから俺もそうだなって言ったら、冠が、母親のことだけじゃないんだって呟いたんだよ。
そのことをもっと早くから、あの子はあんなに何度も訴えていたのに僕は理解しようとしなかった。そしてようやく理解したのに、もう理解してもしかたがないくらいに時間が流れたって。あいつは待ってたんだよ。失った時間を取り戻すためじゃなくて、ただそのことをお前に伝えようとして」
どうして、一緒にいる時に気付けない -
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上下合わせて力が落ちなかったですね。
前半のほうがある意味では、未熟だけど真っ直ぐさがあって、好感持てたけど…
十代半ばにありがちな流され方もしていました。
下巻は二年半後。
今は憧れの写真家の助手に見事なって、家事や現像など何くれとなく世話をし、がんばって働いている20前後の女性。
もっとも、ほめられるのは料理だけ。
個人で撮った写真は評価されず、写真の指導はそれほどして貰っているわけではない。
おいおい、それはやめとけ、という所も。
男性遍歴の成り行きには、それなりの意味が。
過去の小さな出来事のようであったことも、本人もわからないでいたことを少しずつ確認していく…
旅立つ方向性があ -
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「ファーストラヴ」で直木賞受賞した作家さんの作品。
十代の娘の遍歴を描きます。
一見普通のようでも、どこかダークな面があり、どう転ぶかわからない展開なので、はらはら。
藤枝黒江(クロエ)は、母子家庭の娘。
もともと勤めている母は忙しく、祖母と父に育てられていましたが、祖母の死後に両親が突然離婚。
小学生の時、母と二人で筑波に移り住んできました。
研究者の母も、最初は娘を遊びに連れて行ったりと努力もしていたのですが。
家事は、主に娘が担当しています。
クロエは廃墟を写した写真集に目を惹かれ、生まれて初めてのファンレターを出します。
写真家の浦賀仁の方も喜んで返事をくれたので、いつか東京に行っ -
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島本さんの本を初めて読んだ。
わたしの愛してやまない作家の共通事項は、
「食」への執着と貪欲さ(いい意味)
「食」にまつわるシチュエーションの表現が上手な作家さんは、
他のシチュエーションでも、これでもかこれでもかと言わんばかりに、こちらをぐいぐいひっぱる力を感じる。
島本さんの作品にも同じものを感じた。
また、わたしの好きなバンドや作家さんの名前がたくさん出てきたことも、
島本さんの他の作品を読んでみようと思ったきっかけになった。
「一緒にご飯が食べられないっていうのはね、心の奥底で相手を拒絶してるからなんだって。美味しくご飯が飲み込めるっていうのは、目の前にいる相手を受け入れ -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街の物語、第3弾。
知らない作家さんの名前も増えてきたが、今回もまた一段と、箱庭世界が充実していった。
自分のコレクションが増えていくような気持ち。
自営業と後継ぎという定番の物語、古くなってしまった業種、逆に商店街にはそぐわないようなおしゃれな店舗のことなど、品ぞろえ多数。
その中、シリーズで一番最初のお話だったカフェ・スルスのその後の様子を知ることができてよかった。
また、店の内情は一つもうかがわせず、舞台として使われている「アイスバイン」は、ちょっと異色で、文学的にして官能的である。
『明日の湯』が一番好きかも。
そして、お店をやってい -
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ネタバレ大好きな明日町シリーズ、第三弾
一軒目「カフェ スルス~一年後~」大島真寿美
平均年齢60歳。老後の楽しみに開いたお店に咲く恋の花。
二軒目「ブティックかずさ」 越谷オサム
三十近いひきこもりがちのバンドマンの一人息子VS昭和の香りプンプンな「ブティックかずさ」を守り続けている父。
三軒目「エステ・イン・アズサ」青谷真未
お互いを思いやるお嫁さんと姑さん、なんて素敵なんだ。
四軒目「明日の湯」秋山浩司
銭湯の壁の絵にまつわるおばあちゃんの恋心に、心がぽかぽか♪。
がんばれ三太郎!
五軒目「ドイツ料理屋・アイスバイン」島本理生
ずっと好きでいたいからと、他の男性と結婚した主人公。
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冬期休暇のため長くて分厚い本が読める!と、気になっていた日本文学全集シリーズ。
現代語訳のため相当読みやすく、休み前半で読めた。
【井原西鶴「好色一代男」 新訳:島田雅彦】
光源氏、在原業平の流を汲む色好みの世之介さん、幼少のころから60歳までに遊びに遊んだ女3,742人と男725人、使ったお金は現在価格で500億近く。
そんな世之介さんの一代記(まさに一代限り。何も続かない、何も残らない)を
7歳から60歳までを1年ごとに54章で書いたもの。
昔増村保造監督、市川雷蔵主演の映画を見ました。
映画での世之介役の市川雷蔵は実に自由で前向きで明くて良かった!
光源氏や在原業平はいじいじグダグダ -
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元ネタのアイアムアヒーローを読んだことも観たこともないのですが、好きな作家さんが多かったので手に取ったら個人的にはあたりのアンソロジー。
朝井リョウくんの話もさみしい青春、恋愛小説ですき。いじめっ子と人気者と一匹狼的なこのカースト。
藤野可織さんの話も久しぶりに読んだけどよかったな。やっぱりさみしい。仲間内って難しい。
最高だったのは佐藤友哉、島本理生夫婦の合作。こんな豪華な作品が辞めるなんて…!!! よかった、かなりよかった。引きこもりと心に傷を負ったシスターの話でよかった
全部にもちろんゾンビのような感染症の元ネタの設定が絡んでいるのですが話を知らなくても面白かったです