島本理生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
紙の本を裁断、解体して、デジタルデータとして取り込んで保存することを「自炊」と言う…というのは、どこかで聞いたことあった。
作家の千紘が、亡くなった鎌倉の祖父の家で、祖父が大量に遺した本を「自炊」しながらひと夏を過ごした記録なのだけど、編集者の柴田と知り合い関わってしまったことで奇しくも不穏な夏になってしまう。
人を傷つけることを何とも思わない、むしろ傷つけることを生き甲斐とする人間がいる。それが無自覚であればあるほど罪深い。
読んでいる間ずっと胸騒ぎがするような作品だった。柴田に振り回され自我を失っていく千紘を見ていて、人間のどうしようもなさを感じてしまって。
千紘には性的なことを嫌悪してしまうような過去があって、そのことが千紘の自信を奪い、人との距離感を適切に保てない。
傷つける側の人間は、そういうターゲットの性質を見抜いた上で近寄るのかもしれない。観察だけでなく、妙に鋭い勘で。
元は「夏の裁断」だけの作品だったものが、その後、秋冬春の短編が書き下ろされて出来上がった短編集らしい。
秋冬春の作品も、主人公が変わらないせいか不穏さがまったく無いわけではないけれど、「夏の裁断」と比べたら穏やかさも見えて希望も感じた。柴田は表面的には消え、清野という新たな登場人物との話が中心になっている。
正直千紘は才能はあるけどダメ女だと思う。けど恐らく不思議な魅力を持つ女性なのだろうということも同時に思う。庇護欲をくすぐるようなタイプなのかもしれない。
人と深く関わるのは怖いことだし、その距離感や在り方も人それぞれだ。過去も性格も何もかもが違うのだから。うまくいかなくてすれ違いながら解り合っていくしかない…と、現実と重ね合わせながらしみじみと考えた。
にしても、柴田のような男って妙な色気があるようなタイプが多いのよね。破綻していて触れたらまずい感じがするのに、なぜか惹かれてしまうような。そういう自分の魅力も分かってて動いてるのかしらと思うと腹が立つわ!と小説なのについ思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
島本さんの作品は「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」以来気になっています。
双子の姉弟・華子と冬治。
言いたいことをポンポン言えて女子力のある華子。一方、幼少から華に振り回され面倒見はいいのに自分に自信のない冬治。
そんな対照的な二人の暮らしに、華子に想いを寄せる男性や冬治の研究室の雪村さんが加わって日常が変わっていく。
冷たくあしらわれてもめげない華の求婚者。
端から眺めている分には、ドタバタしつつも何だかんだ家族ぐるみで仲良くて楽しそう。
恋と進路の間で悩む冬治、華子の恋。
展開にすごくワクワクするわけでもなく、特別甘くもドロドロもしない。悪人が出てくることもない。
でもいつの間にか物語に引き込まれてしまう。
現実にいそうな登場人物に感情の描写。
何とも優しく読み心地のいい恋愛青春小説でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ数年ぶりに恋心みたいなものを抱いて、恋愛小説が読みたくなって手に取りました。
男性二人と女性一人の恋愛小説。恋愛要素以外にも震災の話なども出てきて、読んだ時期がちょうど東日本大震災の時期だったこともあり、少し喉が詰まる感じがしながら読んだ。一人目は女性が途切れたことがないタイプ、二人目は過去の罪から逃れる(許される)ために神に捧げた神父。この二人の恋愛観とか愛情は結構違うように見えたが、結局のところ、惚れた女を幸せにしたいというものが根にあって分かりやすかった。
そして一人の女性が個人的にはどうしても男性である自分には理解できない部分も多く、すぐに体を許すところだとか、憎んでるはずの父親の元へ帰って自ら不幸になることを望んでるようなところがハッキリ言って気持ち悪く感じた。第三者目線で見ているからこそだが、こんなにも男性二人はただただ彼女の幸せを願って、周りの人間も含め、助けようとしてくれてるのにともどかしかった。ただそれは1番幸せな時期に一番大切な人が自分を選んでくれなかった結果、二度と会えなくなったことによる傷や成長してきた環境で歪んでしまったものなんだなと徐々に理解できた。
最初こそ、若い割に俯瞰して、全部諦めて男は利用するだけのものという考え方から過去のことも受け入れ、好きだとか愛とかに素直になっていく過程は女性として魅力的に見えた。
男性視点としては神父側が自分に近いように感じた。なので、正直神父と幸せになってほしかったなぁと途中途中で思ったりもした。いや頼まれたのお前なんだからお前が仙台ついてけや!!!とも思ったけど。ただ完全に肉体関係が最後までなかったこと、異常なまでの献身性があったからこそ彼女は救われたのであって、他の人間ではここまでできなかっただろうなぁと納得。あと紡君が一度も神父様と話すシーンがないというところに真田との明確な差があるのが上手いなぁと感じました。
それでも星4にしたのは、前述したようにヒサヤにはモヤモヤしてしまう部分が多かった。最終的に幸せに向かって歩き出せたことは良かったが、もっと自分を大切にしてほしいと傷つけられる描写があるたびに思って辛くなった。もっと素直に幸せになってほしかった。こんなに苦労して苦労して頑張ってるのにって。いつか女性のことをもっと理解できれば、ヒサヤの心理や考え方にも納得できる日が来るのかなぁ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ主人公たちが非常に魅力的な3人だった。
特に比紗也みたいな女の子はほんとうにいそう。
見た目が良くて、色気もあるけど、少し抜けてるから関係を持ちたいけど、結局気持ちが通じ合えなくて、自分が傷ついてしまうパターン。でもそれは相手はわかってない、みたいな。
表面も金回りもよいが、どこか空虚な真田と、自分で赦せない過去を持つ歓も人間味があって、ラストがどうなっていくのか想像できなかった。
圧倒的悪役の父親がバッドエンドに持っていくパターンも予想されたが、
最後は歓から真田へ渡されるバトンによるハッピーエンド。
これは本当によかった。
島本さんは、エグッてくるよなー -
Posted by ブクログ
島本さん、小説でも初期の作品と今の作品とでは空気が違うけれど、エッセイは真逆の明るさと気の抜けた感じがして好きです。面白かったです。
たくさん食べる作家さんがわりと好みなんだなと気付きました。エッセイなどで拝見するごはんが美味しそうな方の小説は、食べる描写もかなり巧みなので、美味しいものの小説やエッセイを好む時に重点的に選ぼうと思いますこれからは。
島本さん自身がかなり恋愛に重きを置く人なんだなと思いました。一人で行動する事も多いけれど、旦那さんの佐藤友哉さん(2度ご結婚されたのは存じていました)を始め、友人M氏(書籍タイトルググったら海猫沢めろんさんらしい)や柴君、女友達さんたちとのエピソードも面白いです。
一人で行動するのは楽しいし楽だけれど、ごはんは誰かと食べる方が美味しいし楽しい。つくづくそう感じました。出来ればお出かけも誰かとしたいけれども…お出かけは長時間相手の時間を貰わなきゃいけないせど、ごはんなら短時間でも気楽に誘えるからもうちょいやってみよう。
ふふっと笑ってなんだか元気になりました。