あらすじ
女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠(かん)くん。冠くんと別れ、半ばやけでつき合った遊び人の藤野。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を強く求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人賞優秀作の表題作と15歳のデビュー作他1篇を収録する、せつなくていとおしい、等身大の恋愛小説。
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Posted by ブクログ
島本さんが15〜17歳に書かれた3つの話が収録されてます。高校生でこの文章が書けるなんて、ほんと作家さんはすごい。少ない経験をすべてだと信じ、泣いて絶望したり、少しの希望を見つけて喜んだりする十代の危うい世界が恋愛を通して描かれています。
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やっぱり島本理生の巧みな描写を読むのが好きだ。主人公の着目する心情のセンスが好き。すごく心地よい。
思春期って孤独で誰かに触れてほしいけど、周りのみんなはみんなで大変そうで、頼ることが難しい。だからこそ新しい存在として“恋人”というところに行こうとするのかな。自分の思春期の頃の気持ちをなぞられた気がした。
冠くんが気づくように勇気を持って触れて、近づいて、包み込む、そんなことができればもっともっと思春期の子供たちも、少し遅れた思春期に悩む大人も救われるのにな。コロナになってそれは難しくなって、きっと孤独をさらに感じる人は多いだろうな、と思った。
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『10代作品とは思えないこの情景描写、必読です!』
「ヨル」15歳、「植物たちの呼吸」16歳、「シルエット」17歳執筆の短篇集。10代の思い通りにいかない恋愛のもどかしさが瑞々しく繊細に描かれる。15歳で【水みたいな女】なんて表現、すでに才能が滲み出てる…すごい!
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17歳のデビュー作であるという「シルエット」。特に刊行年関係なく島本理生さんの作品を読んでいたこともあり、いい意味で何処か磨く前の石のような粗さがあるような作品で。(雑でという意味ではないです。)でも確実にそこに島本理生さんの原点があるような(烏滸がましいけれど)そんな印象を抱いた小説でした。こんな感情の機微を、登場人物たちと同世代のときに書けてしまうなんて。でもそんな彼女だからこその葛藤とかがあったのだろうか。なんて、勝手に想像してしまった。
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透明感があって、静かで、そして切ない感じがする3つの短編。
それぞれ15才、16才、17才の時に書かれたものだそう。
作品の中に、ブラッドベリ、宮沢賢治、ヴォネガット、カポーティ、といずれも短編の名手の作品が書かれているのも興味深い。
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島本理生さんの作品。
本当に大好きな人。でもその人は女性に触ることに嫌悪感があり、徐々にすれ違うようになる。
のちに出会った彼の愛情に包まれて幸せなのに、昔の彼のことが心のどこかでは引っ掛かってる。
お互いに今更近づけない感じ、想いの描き方、最後の彼の様子を聞いた時の感情の動きが、嘘っぽくなくてスッと入ってきた。
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主人公の誰も報われる気がしないのはなぜ。mol-74を聴きたくなった。特に瞼。
その人の口から語られることがなければ一生その出来事は日の目を見ることができない。それが相手を自分とは異なる人だと否応なく感じさせる。その通りだと思った。
ところで17歳でこの作品を書く著者はどんな四半世紀を送ってきたの?単純に気になる。
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目次
・シルエット
・植物たちの呼吸
・ヨル
表題作を読んで、やっぱり彼女の才能はずぬけていたなあと思う。
17歳の少女が書く恋愛小説で、きちんと家族を書いている。
あなたと私、二人だけの世界では、ない。
言葉で伝えるものと、体温のぬくもりが伝えるもの。
感情で気になる人と、感覚で恋うる人。
高校生がそこまで生々しい恋愛をするのか、という気もするが、作者が東京生まれの東京育ちということで納得。
だってこれ、東京の高校生だなあって感じがすごくするもの。
雪を見ると母に捨てられた時のことを思い出すという冠くんが長野に行くことを主人公は心配するけれど、この先の冠くんは穏やかに雪を見られるようになるんじゃないかな。
冠くんのお母さんも。
「植物たちの呼吸」は普通にショートショートとして面白かった。
どんでん返しが面白いはずのショートショートでまさかのリドルストーリー。
私は怖い結末を想像しましたが、さて…。
「ヨル」の神谷くん、脳内イメージは「セトウツミ」の内海でした。
神谷くんも何か昏いものを感じさせる存在でありながら、温かくもある。
これ、15歳で書いたのか…。
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表題作の「シルエット」は最後らへん、泣きながら読んだ。
「そうしたら冠のやつ、どうしてあんなに簡単なことに今まで自分が気付かなかったのかって。おそろしく難しいと思ってたことはすごく簡単なことで解決したのにって。だから俺もそうだなって言ったら、冠が、母親のことだけじゃないんだって呟いたんだよ。
そのことをもっと早くから、あの子はあんなに何度も訴えていたのに僕は理解しようとしなかった。そしてようやく理解したのに、もう理解してもしかたがないくらいに時間が流れたって。あいつは待ってたんだよ。失った時間を取り戻すためじゃなくて、ただそのことをお前に伝えようとして」
どうして、一緒にいる時に気付けないんだろうね。ようやくわかった頃には遅く、もう伝えるすべもない。切ないなあ、十代の恋。
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【シルエット】
食べ物を美味しそうに描く作家さん大好きで。
その上 『冠くん』 って。いー名前‼︎
カンくんって、かんくんって。呼んでたり。
簡単なこと、気がつけば…
でも、難しい…スレ違い⁉︎
アタシも泣いちゃった。
高校生‼︎アタシには、眩しすぎます。
【植物たちの呼吸】
【ヨル】
短編集の書き出しどれもよくって。
入りやすく。読みやすい。
優しい【あとがき】も良かったぁ。
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群像新人文学賞優秀作の表題作を含む、3編の恋愛短編集。
個人的に島本 理生さんは、女性作家の中でとても綺麗な文章で情景を描く方だなぁと思っています❗️
収録された3編は15、16、17歳の時に創作された作品らしく、とても十代の方が書いたとは思えない、非常に完成度の高い作品だと感じます。
恋愛小説で再読したいと思う作品は少ないのですが、この作品は再読したいと思う数少ない一冊です❗️
好きな話しは、表題作の『シルエット』で、冠くん、せっちゃん、はじめそれぞれの思いを見事に描いていると思います❗️
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島本理生さんの作品をもう少し開拓してみたいと手に取った1冊。表題の「シルエット」は、時間が経ってしまって気付いたときにはもう遅い、みたいな感じが、秒速5センチメートルに似ている気がした。
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島本さんの本はそんなに読んでないけれど相性が良いのか、言葉がするすると流れていて気持ちがいい。
シルエットの最後はなんとも言えない気持ちになる。
あのときこうしていればと思っても、時間が経ち過ぎていることがほとんど。
傷つくのも傷つけるのもこわくて
もう恋から離れようとは思わないたのだろうか
それでも落ちてしまうのが人の性か
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私が読むには少し若くて気恥ずかしいな、と思ったら著者17歳の時のデビュー作なのですね。17歳でこれか、と逆に感心してしまいました。彼女のことを「あなた」と呼ぶ感じがとても素敵だな、と思いました。
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主人公の女子高生が過去の恋人、冠くんと別れたいきさつは、同じ女としてせつない。そのあとフラ〜っと関係を持ったしょーもない男、そしてその後に出来たなかなか良さそうな恋人せっちゃん。主人公は変わりゆくものに抵抗せずいつも心が流れるままに身を任せて生きている感じがします。
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暖かい絶望だな、と思う作品。
気持ちに寄り添って分け合いたいと思っていた主人公。
過去のトラウマから女性に触れることができない、恋人の冠くん。
大切な人に、1ミリも触れてもらえない切なさは計り知れない。それが拒絶でないとしても、誰かに縋りたくなるのはひととして自然な現象に思える。
雨がつきまとう作品だから、冷たく感じるかもしれないが、全員がずっと暖かい。だけど、だからこそ苦しくて絶望的なんだと思う。
Posted by ブクログ
一番印象に残ったのは最後のはじめの台詞の中での冠くんの気づきの言葉でした。
人生ってそういうことがよくあるよねと共感できたのと、その気づきはきっとその時でないと気づけなかったであろう冠くんの成長を読めたことが私は印象に残った。
主人公とその彼氏の描写も言葉には表せない感情、感覚がとても面白く書けているなぁと私は感じた。