あらすじ
結婚を控えた恋人と同棲している瞳。バーで浅野さんと出会い、生まれて初めて、ただひたすらに彼が欲しいと思って……(「あなたは知らない」)。月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない彼女との関係は、とても楽だと思っていたが……(「俺だけが知らない」)。今、この瞬間に深く、深く、理解されていればいい。たとえ恋じゃなくても……。繊細な筆致ですれ違う大人の恋愛を描く全6編の恋愛短編集。直木賞受賞第一作!
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Posted by ブクログ
少しづつ読んでいた。
実る事がない男女の愛、不器用な家族愛、愛せない愛…。
6編それぞれ、違う人物の視点で描いているが、どこかで繋がり合っている。
向き不向きは、あるけれど私は好きだなぁ。
島本理生は、不器用で刹那い恋愛を書くのが上手い。
Posted by ブクログ
大人の恋愛を切り取り、繊細な心理描写とともに描いた短編集。
素敵だった、、。まっさらな純愛が語られているわけじゃないのに、純粋に素敵だなぁと思えてしまうのは、作者の品性が情景の切り取り方や言葉選びに表れているからだと思う。
好きだから付き合おうよ、とはストレートにいかない複雑な感情の揺れ動きがいろんな登場人物の視点から見れてよかった。島本さんの他の本も読んでみたい!
Posted by ブクログ
結婚を控えた恋人と同棲している瞳
月に一、二回会う関係の女性がいる浅野さん
痛かった。
すべてを手に入れることなんてできなくて、
きっとたぶんいつまでも何かが足りないと思いながら生きる。
それは恋愛に限らず地位も名声もそうなのに
どうして恋愛はこんなにままならないのだろうな
「浅野さんとセックスした罰は、誰にも寂しいと言えないことだと悟った。」p111
「友達を作ろう、なんでもいいから仕事も見つけよう、と思った。」p213
Posted by ブクログ
「氷の夜に」バーで働く友人が、いつもきてくれる常連の女性に似ていると思った場面があり、その後本人にあった時大して似てなかったことに気づき、この人を思い出す理由が欲しかっただけだったのだ。と思うシーンが好き。そういうのってありますよね。「あなたは知らない」「俺だけが知らない」の2人の話も好きでした。
Posted by ブクログ
どうしてこの瞬間に隕石衝突とか地球爆発が起きないのだろうと思った。こんなに好きな人とセックスなんてしたら、地球が真っ二つに割れるくらいじゃないと到底取れないじゃないか。採算とか、バランスとか、代償とか、そういうぜんぶが。
この言葉、作者が女性じゃなければ書けないのでは?とまでも思う。
そして身に覚えがありすぎるこの物語、瞳の気持ちが痛いほど分かってしまった。
罪悪感、論理感、この刹那的な幸せの代償。
自分を取り巻く環境やしがらみを全部捨てて、今この瞬間死んでも良い、そうしたら楽なのにと思う気持ち……。
そこまでの瞳の想いとは対照的に、浅野さんが
瞳への気持ちは恋でも愛でもない…と思っていること。
この気持ちは恋でも愛でもない、愛着はある、けどどうこうしようと思わない。確かにそう言う関係性もあるだろうけど、2人のギャップがしんどいなぁ。
瞳が最後に手紙に書いた 嫌い が本音なのかどうか。嫌いとまで書いて、お金を包んで手切金みたいに渡さないと切れないぐらい好きだったのか。瞳サイドの終わり方もしっかり見てみたかった。
Posted by ブクログ
「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」
が特にいい。好きになるはずじゃなかった相手を本当に好きになってしまった人とか、好きにならないようにと思いながらも好きになってしまった人にすごく刺さると思います。
Posted by ブクログ
とっても好きな一冊だった。短編だけど登場人物は重なっている。事実はひとつでも、それぞれの思いや受け取り方は違う。題名から想像するドロドロ系の不倫小説とはちがった。人って生きていく上でたくさんの他人と関わっていて、その出会いはぜんぶ運命で、その出会いや経験の全てがその人を作ってるんだなぁと。もっと大人になって読んだら感想が変わるような気がする。
猫目線の物語も入っていてほっこり。"氷の夜に"の大人なしっとりした恋愛もハッピーエンドでよかった。
「自分がなによりも欲しかったものはこの罪悪感だったのだとようやく気付いた。」ー足跡
「その昔あなたのことが大好きでそして今では嫌いになった」ー俺だけが知らない
Posted by ブクログ
私は本当にこの人の文が現実の言葉での切り取り方が好きだなあと思わされた作品。
長編よりも短編の方が好きで、何より登場人物が繋がっていく描写が1番好き。
だって、それぞれの人にそれぞれの人生があるって気づかせてくれるから。
私の人生だけど、それには色んな沢山の人の人生が関わってきてるんだって思い知らせてくれる。
感情に素直に生きるって簡単そうですごく難しいことな気がする。
そうやって生きられたらどれだけ楽かもしれないけど
この世界って色んな人の考えと色んな人の人生が絡み合ってるからそんなの無理な話なんだよね。
だから人間は必ず苦悩するし死ぬまでに何度も何度も悩んで落ち込んで壁にぶつかる。
でもそれを解消する方法って案外沢山あって。
不意に見た景色が綺麗だったり、どこかから聞こえてきた音が綺麗だったり、味見してみたものが美味しかったり。
そうやって人生って回っていって生きていくんだな。
感受性が豊かな人は悩んでも立ち直るのがきっと早い。
だから私は本を読む。
Posted by ブクログ
静謐な空気を感じる短編集だった。
「あなたは知らない」という話が特に好き。主人公の瞳さんは唯一感情移入できた人物だった。
「それでも浅野さんと抱き合ったら重さを胸のうちにおぼえてしまった。情が生まれてしまうやつだ、ととっさに察した。そう思った時点ですでに生まれていたことには気付かぬふりをして。」という一節が印象深い。重さを感じてしまった時にはもう知らなかった頃には戻れない。初めからどん詰まり、いつか突然終わる日が来る相手。関係性としての名前は与えられない、一見して不安定なつながりにある彼は、自分の求めているものを感じる与えてくれる、安心できる存在。その背にもたれてはいけないけれど、寄りかかり寄り添いたくなる相手、自分をわかってくれる相手。過去と重ねていたいくらいに刺さった。
Posted by ブクログ
島本さんの作品を読ませていただくのはかなり久しぶり。
恋愛のお話を読みたくて思いついたのが島本さんでした。
ちょっと心が苦しくなる男女のお話。
恋愛とか人を好きになるってすごくややこしいなぁって感じました。
人を好きになるのはどうしようもないし、同時に色々な人を好きになるけど、順番とかないし、好きな理由も違うし、恋愛もあれば、恋愛じゃないけど好きになることもある。
ひとつひとつの『好き』という気持ちには確かに違いがあるけど境界があるわけでもないし、濃淡もその時その時の気持ちによって変わってくる。
不倫や浮気はダメやと思うけど...。
そんな自分の気持ちを解説してくれてるようなお話が多かったです。
ありがとうございました。
Posted by ブクログ
短編と思っていたら、連作短編集でした
読む前と後ではタイトルの意味が全く違っていた。
この作家さんの本は時々無性に読みたくなる。
読んでよかった。
Posted by ブクログ
2章ごとでセットになっている本作。とても読みやすかったと思いました!
中でも興味深かったのは、あらすじにもあった『あなたは知らない』『俺だけが知らない』でした。
社会的に見たら許されない関係であっても、瞳と浅野の互いが互いを思いやっている姿をみたら何でそんなにすれ違うのかなと切ない気持ちでいっぱいになりました。2人がそれぞれに幸せになってくれればと願うばかりな2章でした。でも次に続く章では主人公の黒田が結ばれて良かったなって思えました。
Posted by ブクログ
久しぶりの島本理生さん。
6編少しずつ繋がっていて
とても読みやすい小説であったことはいつものこと、
2作目の『蛇猫奇譚』の
1行で大泣きしてしまった。
主人公の出産によって変化する気持ちと
それにただ純粋に寄り添いたいチータの
気持ちの両方が、痛いほどわかって、
時に鬱陶しく思ってしまう自分に対して
真っ直ぐな目で見つめる我が子と重なり
ただただ号泣でした。(笑)
表題作である、
『あなたの愛人の名前は』は
購入を決めた時に察した意味とは
全く違って、6作目の主人公藍の
過去の自分に問いかけるような一言
だったんだな、と納得。
どうして島本さんの小説は
シンプルで真っ白なのに痛くもない傷を
いつも心につけるんだろうと思っていた答えが
解説を読んで少し解決した。
いつも過去にフェーズを当て、
家族の因果関係や男女の関係によって
引き起こされる物語にひどく共感するから、だ。
Posted by ブクログ
大人の少し歪んだ愛の話。僕にとってはまだもう少し先に納得できるようになるものかもしれない。特に、浅野(兄)が嫌いだった。
でも、どこか穴の空いた大人たちが満たされたくて、受け入れられたくて、愛されたくて、誰かに何かを求めていて、切なかった。忙しい日々の中で巡り合うものに自分の存在を委ねていたのかもしれない。
心が疲れていて、すり減っていて、その時にはその人じゃないと駄目だった。その行為をしなければ駄目だった。未来から見れば愚かなことでも、当時はその不純な恋が必要だったのだろう。
とはいえ、愛人というものが、これからも僕にとって縁のないものでありますように。笑
Posted by ブクログ
目の前にいるのに心が見えない。不安で苦しい...だから惹かれてしまう。すれ違い続ける2人、誰にも打ち明けられない恋愛とは__
女性視点の「あなたは知らない」と男性視点の「俺だけが知らない」がほろ苦さの中にある微かな幸福を味わうようで好きでした。
Posted by ブクログ
大人な恋愛小説ではあるけど
意外とピュアなところも多くて
不倫のドロドロ感は薄かった。
自分に寄り添って理解してくれる人がいると
そこが自分の帰るべき場所じゃなかったとしても
吸い寄せられるように
会いたくなってしまうもの。
でもそれは足跡みたいなきっかけ一つで
ぷつんと切れてしまうような脆い繋がりで…
シチュエーションは違うけど
心の移り変わりにはものすごく共感。
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Posted by ブクログ
「あなたは知らない」が好き。
島本理生さんは長編ばかり読んでいたけど短編集も余韻があって大変良い。元々読後感がじんわり沁みて来るタイプの作品を書かれる方なので、短編だと余白ゆえにそれが際立つなーと思った。
なんだろう、語りすぎないがゆえの雄弁さというか。とにかく好きだ。島本理生さん最高。
Posted by ブクログ
思うまま、自分の意思だけを通して生きることは難しい。というか、ほとんどの人は不可能だと思う。
自分の選択が、誰かの人生にも影響を与えてしまうことも、多々あるから。
大人のままならない感情や恋愛を綴った6篇の短篇集。作品の登場人物が共通している連作めいた要素もあり。
「罪悪感」って時にとても便利でずるい感情で、それを持つことによって、自分がしていることが多少赦されるのではないかという思いが無意識の片隅にあったりする。
不倫しながら「パートナーには悪いと思ってるんだけど」などと言う。
知られないように配慮するのは、けして「罪悪感」が痛むから、ではない。自分にとって都合が悪いからだ。
愛情が伴わなければ不倫ではないのか、それともあくまで身体の関係だけでも不倫と言えるのか。
…と、それを論じるほどドロドロした内容ではなくて、不倫(のような関係)を描いていても、さらっとしている。
大人の感情のままならなさと哀しさ。
連作要素が強い「あなたは知らない」「俺だけが知らない」はとくに、そういうものを感じた。
本当に好きな人と一緒にいられて触れ合えるって、奇跡に近いのだと思う。大人になっても、老いても、それはおそらく変わらない。
猫目線の「蛇猫奇譚」、表向きはマッサージ屋である女性用風俗のお話「足跡」など、少し変わり種のお話もあり、幸福感が感じられる「氷の夜に」もとても良い。
すべてに通じて、人の孤独感だとか、近しいはずの人と解り合えない哀しさだとかがあって、不幸ではないし充分幸福だと思わなければいけないのだけど…という苦悩が滲む。
島本理生さんの小説を1冊読むと連続してもう1冊読みたくなる。一筋縄ではいかない、女性だからこそ解ってしまうような、業の深さも潜んでいる。
Posted by ブクログ
愛とは〇〇だと明確にわかればいいのにと思っていた頃があった。
今は不明確だからこそ自分で育てていかないといけない感情なんだと思ってる。
来年、5年後にはまた変わってるのかもしれないけど。
激情の関係にも、
静かな関係にも、
自分本位に伝えてしまった日も、
ぴたりと会う人に出会えたときも、
その時々で愛はあったけれど
誰とどんな自分を重ねてゴールを見つけたいのかを考えたら
平気でサヨナラできる関係もあった。
結婚(異性愛)が一番わかりやすい。
この人だと決めて選んだ最善の道だったのに、
うまくいかないことなんてよくあること。
どの物語にも共通してるのは、
結局は自分自身を育てるしかないってこと。
誰かを通して見える自分の弱さや柔らかさを大切にして
自分を大切にして、大切に大切に守ってきた自分の中から出せる
その時の愛を伝えて受け取って貰えたらすごく幸せだな。
Posted by ブクログ
ちょっと重たい気分になった。婚約したから、申し分のないパートナーがいるから、愛情というものが満たされている訳では無いと感じさせられた。自分も本当は満たされていないのではないか?と胸に手を当てて考えてしまうような、けれどちゃんと充実していると実感できるような。人妻や婚約者がいると、倫理観的に絶対踏み出せない、踏み出してはいけないけれど、興味を持たずにはいられない一歩をこの本は踏み出してくれて、経験できない気持ちを経験させてくれる。ただ、約束されたパートナーがいることを、とても嬉しくて満たされたことなのに重たいことだと感じてしまう一冊でした。
Posted by ブクログ
島本理生は男女のうだうだを書くのがとても上手い!
「あなたは知らない」「俺だけが知らない」がものすごく好き。
最初は庇護される存在だった瞳さんが自立するのがとてもいい。
決して交わらない気持ちっていうのがよかったー。
それ以外は読み終わって一ヶ月経つ今、ほぼ記憶に残っていない。
Posted by ブクログ
うーん難しい…
みんなそれぞれ抱えているものがあって、それは当たり前なんだけど、それゆえに他人とのすれ違いが起こる。
男女の性差やもやもやした心理状況をまざまざと見せられた作品です。
Posted by ブクログ
別れを決意した心情は語られないが、自分の経験からなんとなく想像して胸が苦しくなったり自由に身を震わせたりした。蛇猫奇譚の「二つ同時には愛せないの」は真理。
Posted by ブクログ
2024.4.15
大人たちの複雑な恋愛感情。
心理描写、言葉の紡ぎ方が上手すぎる。
猫目線の話や純粋な恋愛の話、対になる話もあって良かった。
登場人物が少しずつ繋がっていく短編集好き。
Posted by ブクログ
浅野さんと瞳さんの話は読み入っちゃいましたね。
本気で思っている人ほどその人に本音が言えなかったり、上手くコミュニケーションが取れなかったりするよね、、その人のことについて色々知りたくても聞けなかったりね、、、
見事にお互いにすれ違ってましたね、、