島本理生のレビュー一覧
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ワガママで女子力前回の華子と、その暴君な姉に振り回されて、人生優柔不断ぎみな理系男子の双子の弟冬治。そんな二人と、めげない求婚者熊野と、挙動不審の才女雪村さんの四人で織りなすストーリー。
四人での楽しい日々と、決断のとき。
一千一秒の日々に続き、島本さんの青春ストーリーです。
登場人物の言葉には、みんなそれぞれの思いがあって、どの人の言葉にも心が動かされました。
冬治が雪村さんに対してかわいいと感じた場面がすごく印象に残っています。
「来たかったところに連れてきてもらって、冬治さんも一緒で、そんなの楽しいに決まってるじゃないですか」
こんなの笑顔で言われたら、たまんない -
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表紙の写真と『リトル・バイ・リトル』というタイトルからなにか伝わってくる気がした。
主人公の橘ふみは、父親の違う妹の面倒を見る。全く当たり前に。逃げた父や頼りない母に代わり、進学をやめ働くことにも一切ためらいが無い。
今どきでもこんなコが居ると信じたい。疑ったりし斜に構えたりしないでそう信じたい。そう思わせるあまりにも滑らかなサラリとした書き方だ。野間文芸新人賞を獲った作品だというのもうなずける。
『涙そうそう』のDVDをほぼ同時に見たが、こちらも全く血のつなっがっていない「妹」を兄は徹底的に面倒見る、終いには働きすぎで死んでしまうほど。
やはり、こんな若者が居るだろうか -
Posted by ブクログ
恋の終わりって…
激しいイメージがあったけど
こぼれ落ちていくものなのかも…
余韻を残す終わり方が素敵でした
映画と原作では終わり方が異なっていて…
どちらもグッときたけど
私は原作の終わり方が好きだったな
マザコン気味だけど誠実で不器用な夫
優しすぎて気を遣いすぎるほどの義理母
自分の居場所はここにあると思っていたのに…
ふと遠くから自分を見つめなおすと
妻や母親の役割だけ求められて
家族の中では本当の私は必要と
されてなかった現実…
むかし大好きだった人が現れたら
燃え上がってしまうかもしれないな…
愛を綴った描写が色濃く描かれているけど
ひとりの女性の心の成長の物 -
Posted by ブクログ
なるほど低評価になっても仕方ない、万人受けするタイプの作品ではない。わたしには合ってた。おもしろかった。話の流れとしてはありがちかもしれないけど、ひとつひとつの紡がれる言葉が美しかった。
主人公の視点で繰り広げられる、「わたし」と「あなた」の苦しい恋愛。
西加奈子さんの解説を読んでとてもしっくり来たけど、主役であるはずの「わたし」と「あなた」の輪郭は常にぼやけていて、その他の登場人物のほうが線が濃い。でも、それこそが恋というものなんだろうなと思う。相手のことを考えて考えて、相手の存在があって初めて自分があるような、そういうものが本気の恋なのかもしれない。
だからこそ、恋が終わりを告げると途端 -
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静謐な空気を感じる短編集だった。
「あなたは知らない」という話が特に好き。主人公の瞳さんは唯一感情移入できた人物だった。
「それでも浅野さんと抱き合ったら重さを胸のうちにおぼえてしまった。情が生まれてしまうやつだ、ととっさに察した。そう思った時点ですでに生まれていたことには気付かぬふりをして。」という一節が印象深い。重さを感じてしまった時にはもう知らなかった頃には戻れない。初めからどん詰まり、いつか突然終わる日が来る相手。関係性としての名前は与えられない、一見して不安定なつながりにある彼は、自分の求めているものを感じる与えてくれる、安心できる存在。その背にもたれてはいけないけれど、寄りかかり寄 -
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綿矢りささんの「深夜のスパチュラ」は、現代っぽくて入ってきやすい。でも文章が続いていて読みにくい。主人公がかわいい。
一穂ミチさんの「カーマンライン」は、表現できないけれど良さがあって好きだと思った。双子って素敵だなあ。
遠田潤子さんの「道具屋筋の旅立ち」は、いかにも昭和的な男と、女の話で最初は嫌だなあって読んでた。でも、八角魔盤空裏走(はっかくのまばん、くうりにはしる)という言葉を聞いてからの優美の自分自身と向き合っていく姿が清々しかった。最後の誠とのシーンがなんかいいなあって。
窪美澄さんの「海鳴り遠くに」は、紡がれている物語の雰囲気がなんだか好きだなあ。最後ちゃんと結ばれてよかった。 -
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父親殺害事件の加害者として映っていた環菜が、「なぜその行動に至ったのか」を探っていく中で、生い立ちや家庭環境が徐々に明らかになっていく。その過程で事件の印象も環菜自身の印象も大きく変わっていき、真相が少しずつ整理されていくのがとても興味深かった。
環菜の事件に向き合う由紀と迦葉の物語も切なく、二人の過去や心の傷が静かに浮かび上がる描写が良かった。全体として大げさなミステリーではなく、どこか現実にありそうな家庭や人物像が丁寧に描かれていて、リアルで読み応えのある作品だった。事件そのものはやるせないが、人物の心情描写が繊細で、引き込まれる一冊。