島本理生のレビュー一覧
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上下巻合わせた感想。
本作品は過去の自分自身の傷から自覚なしに目を背けてきたひとりの少女が現在の自己人格の形成過程と向き合って旅立つ作品。歪んだ愛を受けて育ってしまったから相手に対して真っ当で表面的な愛を求めてしまうのも仕方がないのかなと思った。主人公からしたら目に見える綺麗なモノが正しくて、それ以外は何もかもが信じられない。彼女は親から与えてもらうべき愛情が欠如しており、ずっと子供のまま肉体だけが大きくなっていってしまったのかな。
つらいなぁ。もし自分が黒江の立場だったらおかしくなって死んでるな。いや黒江も実際死のうとしてたけど。
浦賀の存在だけが彼女の心の支えで、逆もまた然り。お互いがお互 -
Posted by ブクログ
ネタバレ島本理生さんが大学在学中に執筆された作品。
当時の島本さんと等身大の主人公の「わたし」に、読んでいる私もあの頃の自分と重ねてしまった。
高校3年から大学1年にわたる、真っ直ぐすぎる想い。
気持ちを巧くコントロールできず空回りしてしまう「わたし」は、暗くて深い森の中をさ迷い続け抜け出すこともできず途方に暮れてしまう。
苦しいくせに平気なふりをして、自分から助けを求めることさえできず、もがき続ける。
「昨日よりは今日、今日よりは明日、日々、野田ちゃんは成長して生きてる」
こんな風に言ってくれる友達がいる限り大丈夫。
いずれ森を抜け出せると確信した。
報われない恋心は、時に少女に新たな絆をもたらす。 -
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ネタバレこれは、、
私は今までずっとナラタージュが大好きで、ナラタージュが出た当初高校生だったんだけど、その頃から私の心に留まり続けて、こんなに読んだあとその世界観から抜け出せなくなる小説はない、と思ってたんだけど、、
綿貫さんに共感しまくった。
完璧に所有されたいという気持ちが自分の中で物凄くしっくりきてしまった。
最後は感動して涙こぼしながら読んだ。
映画のようなドラマチックな描写。
その流れは絶対婚姻届でしょ、と普通ならなるところ、この2人にとっては養子縁組の書類。
この世で一番頑丈で強固な束縛。
ちょっとこう言ってはなんだけど、羨ましい。
実際養子縁組って現実的ではないんだけど、、。
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購入済み
読み返しても面白い
官能小説初めて読みました。
官能的な部分と話の展開としてとても面白く一気に読んでしまいました。
個人としてはとても切ない完結ですが、恋愛と結婚の違いや、二人のすれ違いが妙にリアルで納得させられました。
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Posted by ブクログ
作者の作品は、本作で多分キリ良く十冊目を読み終えたと思う。世間では公開された映画「ナラタージュ」が注目されている(監督とかテレビの番宣による印象)。彼女の代表作に数えられる恋愛小説だが、その大体においての作風というのは、登場人物が何を考えているのかイマイチ分からない。何かしら重いもの(過去だったり立場だったり)を抱えており、その衝突や関係性が物語に影響を及ぼしたりするのだが……。
ただ、本作に関しては、その普段の重さを取り払ってコミカルで今までの作品と比べると分かりやすい行動を取る愉快な人物が殆ど。珍しく主人公が男性で、一人称視点で繰り広げられる。そして何より恋愛小説とは一風異なった青春小説 -
Posted by ブクログ
名所旧跡というものがある。人の口に上るので、自分では特に行ってみたいと思っていなくても、一度くらいは行っておいたほうがよいのではと思ってしまう、そんなようなところだ。古典というのもそれに似たところがあるのかもしれない。学校の歴史の授業で名前だけは聞いていても、『雨月物語』はともかく、色恋や女郎買いを主題とした『好色一代男』や『春色梅児誉美』などは、文章の一部すら目にしたことがない。ましてや山東京伝の名前は知っていても廓通いのガイドブックである『通言総籬』などは作品名さえ教科書や参考書には出てこない。しかし、出てこないから、大事ではないということではない。
「色好み」というのは、日本の文化・伝