小川哲のレビュー一覧

  • ゲームの王国 下

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    ネタバレ

    クメール・ルージュへの迫害から、そのクメール・ルージュによる大虐殺までが描かれていた上巻は打って変わって、下巻では、2000年ごろから現代にかけてを舞台に、いまだ腐敗が続くカンボジアを救うために権力を求め、首相をめざすかつての少女ソリヤと、ソリヤが権力の中枢に近づいていく過程で、村の仲間や両親を見殺しにされたかつての天才少年ムイタックが(間接的に)戦う話が中心になっている。

    ソリヤはカンボジアを救うという大きな正義を実現するため、腐敗した現実という「ゲーム」の中で権力を得ようとする。つまり、現実を操る。
    一方、教授となったムイタックは、そんなかつての少女に対抗するヒントを、脳波を用いて仮想現

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    2025年03月29日
  • ゲームの王国 上

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    ポル・ポトの隠し子かもしれない少女ソリヤと、科学も教養もない村に突然変異のように生まれた天才少年ムイタックを(いちおうの)中心人物として、おおむね時系列で、いろいろな人の視点から、それぞれの見た世界が語られる。

    上巻の舞台は、フランスから独立したカンボジアの、汚職や賄賂が続く状況を共産主義によって変えようとするクメール・ルージュが政府によって敵視され、関係者とされる人々が冤罪で次々と殺されていった時代から、そのクメール・ルージュの統治が始まり未曾有の虐殺が行われた時代である。

    ポル・ポトの大虐殺についての前提知識がほとんどなく、馴染みのない固有名詞に苦労はしたが、わりと細かに切り替わるそれ

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    2025年03月28日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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     君のクイズ、スメラミシング、嘘と正典、君が手にするはずだった黄金について等、小川哲の本が大変面白く、作者について気になったことから手に取った。
     様々な業種(皆クリエイター)と対談をしていく形式となる本書は、とても読みやすく、作者と対談者との接点のなかで、作者と対談者の核(仕事の流儀?)を確認し合っていた。作者の小説への考え方等が分かり、より小川哲の書いている小説を読んでみたいと思える本であった。
     
     追記、様々な種類の本がおすすめされており、読みたい本がたくさん増えました。

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    2025年03月25日
  • スメラミシング

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    ネタバレ

    自転が止まった地球を2つの船が昼と夜の境目をぐるぐる回ってる話が一番好き

    ネットの陰謀論者のオフ会の話は反政府的な思想を持ってる人が自分が信じてる人の言葉は何も考えずに鵜呑みにしてるセリフがあって、こういうのあるよな〜ってなった

    嫌われてる上司のネット右翼アカウントを晒す計画のキベノミクスがどうなったのかも気になる(木辺さんはその上司から一目置かれてる主人公の事も陥れようと計画していた感じでかなりイヤだった)

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    2025年03月25日
  • スメラミシング

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    なかなか尖ったコンセプトの短編集。
    どの作品もまず設定が面白い。「スメラミング」「ちょっとした奇跡」が好き。設定は「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」が好き。

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    2025年03月19日
  • スメラミシング

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    神にまつわる短編集。
    作者のこの手の話はコントの台本みたいで面白い。(ツッコミがなく置いてきぼりにされるところも新しい感じ。)小ネタも散りばめてるし。特に「神についての方程式」なんか、令和ロマンの漫才かよ。
    最後の「ちょっとした奇跡」はラブストーリーで素敵だった。ちょっと雪舟えまみたいで。

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    2025年03月15日
  • GOAT

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    寝る前に、ちょっとずつちょっとずつ読んだ。

    偶然目にして、なんかすごく惹かれて。
    「愛」をテーマにしてるなんて素敵だな。
    エッセイとかインタビューなんかで構成されてるんだけど、それがまた良い。
    あーこの人の言葉好きだなって、未読の小説家との出会いもあったり。

    文芸誌ってほぼ手に取らないんだけど
    好印象。


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    2025年03月05日
  • スメラミシング

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    6つの短編。それぞれ別の話。だが共通した感じが。宇宙や歴史や神などの深遠な世界と、卑近で具体的な世界が併存する奇妙な感じ。一番好きなのは第6話の「ちょっとした奇跡」。

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    2025年02月25日
  • GOAT

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    小説と小説にまつわるインタビューやエッセーで構成されている文芸誌。純文学も一般小説も同列に掲載していて、小説が好きな人はジャンルの幅を広げられるし、これから小説を読もうとする人にとっては好みの作家や作風を知るきっかけになると思う。創刊号の今回は、「愛」をテーマにした作品を掲載している。こういうテーマで様々なジャンルの小説を横串を通す試みは新しいと思うし、こんな作風の作家がいるんだという発見にもなるし、とても面白かった。次号がちゃんと出ることを期待する。

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    2025年02月24日
  • これが最後の仕事になる

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    ネタバレ

    一生本を読んで暮らせるなら、
    人生と引き換えでもよいか?

    そこで得た報酬を娘たちに残し
    サラッと宇宙へ旅立てる?

    ふとそんなことを考えた。

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    2025年02月14日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    直木賞受賞など、今勢いのある作家の一人である小川哲さんと、各界の方々との対談が収録された本。

    音楽のライナーノーツを読むのが好きなので、作品の意図や裏側がズラリと並んだ内容に終始ワクワクしながら読んでました。装丁かっこいい!

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    2025年02月01日
  • GOAT

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     小説を、心の栄養に。

     表紙をめくると、真っ赤な紙の上に銀色の文字でそう書いてありました。

     ことばの下には、ハートを胸に抱えるゴートくんのイラストが。

     そのページの裏には、こう書いてあります。やっぱり銀色の文字です。

      この秋、新たな文芸誌「GOAT」が誕生しました。
      誌名の由来は、紙を愛してやまない《ヤギ》。
      表紙にいるのは、”ゴートくん”。
      物語を栄養にして生きています。
      さあ、一緒に、物語を探す旅に出かけましょう。

     518ページ+綴じ込み7ページの厚い雑誌の価格は熱い攻めの510円!

     巻頭のカラーページ、写真ページ。
     本文ページの紙の色は、濃いピ

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    2025年02月01日
  • ゲームの王国 上

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    「日本SF大賞受賞作品」という帯のタイトルに惹かれて買った。久しぶりにSF、日本のSF物を読みたくなったのも手に取った理由の一つ。
    読み始めるとカンボジアの革命の話から始まった。「え?歴史物なの?」と戸惑いながら読み進めるとこれが面白い。登場人物も多くそれぞれの物語が交差しながら話が展開していく。SF?なのかな?と思いつつ下巻の展開がとても楽しみ。

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    2025年02月01日
  • ユートロニカのこちら側

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    著者のデビュー作。荒削り…みたいな書評を見かけたことがあるけど私は結構好きだと思った。最近彼の作品は難しい短編集が多かったが、この近未来都市のSFは、エンタメよりの楽しみ方をした。数年前の、情報銀行などか話題になっていた頃に書かれたのかなという内容。一応ディストピア小説というジャンルだと思う。

    あらゆる個人データや生体データ、行動データをその会社に提供することに同意し、「あまり深く考えない質」であることで情報ランクが高いと評価された人間は、その会社が運営するカリフォルニアの実験都市の住人になれる。そこでは仕事をしなくても平均以上の生活が保障されるユートピア。トイレ以外の場所はカメラで監視され

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    2025年01月30日
  • これが最後の仕事になる

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    ネタバレ

    見たことのある名前の作家さんがたくさんの、ぜいたくな1冊。
    私は呉勝浩さんのお話が1番印象的だった。他の本にもあたりたいと思う。
    多崎礼さん、岸田奈美さん、米澤穂信さんは何作か読んだことがあり、短編でも“っぽさ”が出るなと感じる。様々な「これが最後の仕事になる」が読めて良かった。

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    2025年01月21日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    小川哲さんのラジオ番組でのゲストとの対談を本にまとめられたもの。影響を受けた小説、面白い小説が紹介されていて読んでみたい本が増えた。

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    2025年01月19日
  • ユートロニカのこちら側

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    ネタバレ

    久しぶりに結構しっかり目のSFを読んだ。

    内容としては、個人情報やプライバシーを切り売りすることで働かずして暮らせるようになるという実験都市、アガスティアリゾートにまつわる人物たちを描いた作品。

    サーヴァントと呼ばれるAI?の指示通り動けば大きな間違いや苦悩にぶつかることなく過ごせるというところから人々は徐々に思考(作中でいう意識)を放棄していく様に妙にリアリティを感じる。久々に「言葉で感想を上手く言えないけどなんか面白い…」と感じる作品。

    ユートピア×エレクトロニカという造語も納得できるような作品。

    ただし、かなり小難しい。

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    2024年12月12日
  • 嘘と正典

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    「この表紙のおじさん誰だったっけな……見たことあるんだよな~!」
    というレベルの人間も夢中で読んだ表題作だった。

    どれも面白かったけど、お気に入りは表題作と「時の扉」。
    場所や時間を引っ張りまわされながら懸命についていく感覚が良かった。

    表題作のオチについては、どっちになればよかったんだろうと考え込んでしまった。
    そして、物語というのは“正解”に辿りつくためのものじゃないんだよな……と改めて思った。

    小川さんの作品はこの本が初めてだったけれど、物語を誠実に紡ぐ作家という印象。
    登場人物たちの意志が確かに感じられて、「ここがこうなればこうなるし、あそこがああなればああなるよな」という納得が

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    2024年12月07日
  • 嘘と正典

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    直木賞作家・小川哲の、以前直木賞受賞候補作になったSF短編集。6篇が編まれている。どれも独立した話だが、共通項に、過去と未来、父と息子、血脈、歴史改ざん、などを持つ。少し小難しく、気品があり、魅力的だ。謎めいた話の立ち上がりから注意深く読み進め、その短編の世界観を徐々に把握し、やがて筋はクライマックスを迎え…ホーっ、そういう展開ですか…。どれも複雑に構成された物語で、これぞ短編という味わいがあった。

    「魔術師」は、かつてメディアで人気を博したマジシャンが再び表舞台に立ったとき、ステージ上でタイムトラベルのマジックを披露し、消えてしまった。そのステージの動画を何度も何度も見返す大人になった息子

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    2024年11月17日
  • これが最後の仕事になる

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    最初の1行は全員同じ、人気作家さん達の短編集。様々なテイストの短編があり楽しい。また色々な作家さんを知ることも出来るので、今後の作品選びの参考にさせてもらっている。

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    2024年11月09日