小川哲のレビュー一覧
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帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範 -
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日露戦争前後から第二次大戦終了後までの満州の地を巡る人々、国々のが絡み合った歴史を力強く再構築した歴史改変もの。孫悟空という人物が出てきたり戦争構造学研究所と仮想内閣という要素があることで歴史改変SF的ではあるのだけど、史実のifを描くことが主題ではないので満州を巡る歴史や戦争、それらにまつわる人々の人生や感情に深く引き込まれる。
全編に渡る大きなテーマはタイトルにもなっている「地図」と「拳(暴力、戦争)」。戦後80年となる現在も世界では多くの拳が振るわれていることはもちろんだが、この物語ならではということでいうと「地図」の現在についても色々と考えることになった。日本国内に限れば「拳」と共に並 -
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面白かった。とにかく圧倒的なスケール感。
多くの人物が交差する群像劇が、下巻で一気に広がりと深みを見せ、息をのむような物語の密度に引き込まれた。
10頁にも及ぶ参考文献リストにも驚かされる。
架空の物語でありながら、史実に裏打ちされた圧倒的なリアリティがあり、物語に説得力と重みを与えていた。
決して読みやすい作品ではない。登場人物の多さや専門的な描写もある。
でも一度世界に入ると、ページをめくる手が止まらなくなる。
読み終えたあとには、深い余韻とともに、歴史を“どう描くか”“どう見るか”という視点を問い直される感覚が残る。
歴史小説でも戦争文学でもない。これは、歴史を語る“構造”そのもの