小川哲のレビュー一覧
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購入済み
エッセイっぽい私小説っぽい
冒頭部分 プロローグの哲学っぽい エッセイっぽい語り口に、やや読みにくいその語り口に いつの間にか引き込まれていった。以前数学者のことを書いた本を読んだときに、似たような感想を抱いたのを思い出した。そういえば数学と哲学というのはよく似ているんだ。使う道具が違うだけで。作者の意図に転がされたような気がする。
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Posted by ブクログ
見るもの、聞くもの、その行動のすべてをデータとして提供する代わりにほとんど働かなくても生きていける実験都市、アガスティアリゾートに住むことができる。
というとても単純な舞台設定をベースに、その実験都市の中の人や外の人の人生を描き出す群像劇。
この実験都市はある人にとってはユートピアで、ある人にとってはディストピアとなる。
登場人物それぞれの人生がリズム良く語られた後、最後に「そもそも意識とは何か」という命題を突きつけてくる。もし興味を持って読んでくれる人がいるかもしれないので多くは語らないけど、意識というのはストレスがあって初めて自覚されるのではないかという問いが投げかけられる。
ここはもうサ -
購入済み
あまりに悲惨で
全人口に占める虐殺された人の比率が史上最悪といわれる、あまりに悲惨なカンボジア.ポルポト時代を舞台とした作品である。少しはSFっぽい設定もあるようだが、主体は身近な住人同士による相互監視 親子兄弟同士の密告 秘密警察 強制収容所 そして虐殺である。同じ様な例が、ナチス時代のドイツ スターリン時代のソ連にもあったようだが、カンボジアのほうが時代が近いためによりいっそう悲惨さが実感される。読み進めるのが辛いほどである。
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購入済み
人とルール
カンボジアの歴史。ルールをここまで大胆に根底から覆すゲームは、聞いたことがなかった。そこにどんな崇高な理念があっても、他者を踏みにじるルールが人々に受け入れられるはずがない。過去の日本にも通じるものがあると思う。
ルールは平等をもたらしても、自由を損なう。自由と平等のバランスは集団生活の永遠のテーマなのかもしれない。
個人的には、ルールは誰かから与えられるものではなく、一人一人が育んだものを持ち寄って作れたらと考えるが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ思ってたストーリーと違かったから期待してたよりは…って感じだった。スピラミンがもっとどうにかなるのかと思ってたけどそんな簡単に研究が進むわけもなく…。スピラミンが何か可能性を秘めた物質であるまま物語は終わり地球と火星を繋ぐ希望として締め括ったのがとてもよかったと思う。何十年後何百年後に火星と地球が行き来きすることがこの現実世界にあったとして、それはそれできっとまた何か大きな分裂を生んだりするんだろうか。作中では火星人という言葉を使うのはタブーとされていて、あくまでも火星に行っている地球人である、ということらしいけど住んでる場所が人を作って、でもそれが人々を分断することになるのは危険だよな〜って
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Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて。今年、文章書いてみたいと思ってるから気になった。
「面白い小説」とは何か?
数で測ろうとすると発行部数、重版、売上、、、になるけど、それだけじゃ決して測れないもの
自分の日々の生活のなかにも小説は溢れていて、でもただ出来事を書くだけでは人に読んでもらえる文章にはならず。
読みやすくするには、先が気になる文章にするには、っていろんな工夫がされてるんやと改めて実感
紀行文書いてみたいんやけど、それの参考にもなったかな。末に載ってる小説は、本編で書かれてるテーマが各所に散りばめられてて、なるほどそーいうことかと面白いかつ納得。
いい新書でした -
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Posted by ブクログ
・ちょっとした奇跡が特に好きだった。SF的な世界観で織姫と彦星のような話を展開させるという構造が美しい。千二百年後に死ぬことが分かっているのに決められた計画のためだけに生きることに意味があるのか?という問いには現実社会にも通ずる哲学が内包されていると思う。
・全体を通して、文体が好きだ。理路整然としていて、書き手と語り手人物との距離感が保たれている文章だと思った。泣きながら書いた文章は駄作であるという話を思い出した。一定の距離感で書かれた文章の美しさが体現されていたと思う。とまで考えたときにふと、理路整然って、りじせいぜんで合ってたっけ?と思って調べたらりろせいぜんだった。りじせいぜんの方 -
Posted by ブクログ
「もし、あのとき別の選択をしていたら」。
そんな想像をしたことがある人ほど、本書は深く響く。
『君が手にするはずだった黄金について』で小川哲が描くのは、成功の裏側ではない。創作の過程で生まれ、回収されずに残り続ける無数の可能性や、選ばなかった道へのまなざしである。
編集者とのやり取り、取材で出会う他人の人生、小説家という立場の「安全さ」への違和感。著者はそれらを感情的に語らず、慎重な言葉で掘り下げていく。その誠実さが、読む側の姿勢まで正してくる。
派手な教訓はない。それでも読み終えたあと、「自分はいま何を選び、何を引き受けているのか」を考えずにはいられない。仕事や創作に限らず、人生の節目