小川哲のレビュー一覧
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個人的には上巻よりも面白かった。
重畳的に奥深く世界感が構成されており、まとめて一気に読みたい作品(途中で時間が空いてしまうと、この作品の世界から離れてしまい、再び奥深くに入り込むことが難しくなる感覚がある。また、一度奥に入り込んでしまうと中々出てきにくいので、一気読みの方が楽しめるように思う)
著者の一作目、ユートロニカのこちら側に続いて読んだが、確かに指摘されている通り、史実をベースとする展開や狂気を孕んだ人の表現の具体性が、ごつごつとした手触りをもたらし、前作に比べて人工的な洗練さからの脱却が見られて、著者の進化を感じられる。
自分自身が研究者であること、またメカニズムデザインを齧っているということもあり、ゲームの王国という設定自体がより面白く感じられた。 -
購入済み
クイズって面白いの究極の言語化
ちょうど少し前からQuizKnockさんの動画見るようになってクイズの奥深さに触れているところで、この作品に出会いました。
動画を見ながら、なるほどそういうふうに考えるのか、そういう部分で勝負するのか、と感覚的に捉えていた部分が明確に言語化されており、「クイズの解答」をもらった気持ちでした。
そういう風に、全編を通してテストの答え合わせをしているような感覚だったので、あまりミステリー感は感じず。どちらかというと三島の人生を追体験するようなヒューマンドラマを見ている気分でした。
作中では多くのクイズプレーヤーを敵に回す本庄ですが、私は悪だとは思えなかったです。戦ってる土俵が違っただけ。立場が違えば物事の捉え方も変わる、価値観はそれぞれ。ということを改めて感じました。それこそ多様性ですね。
この作品を読んだクイズプレーヤーのみなさんの感想も聞いてみたいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「情報銀行」という言葉が出る度に、なんだか生温かい気持ちになるわけですが…面白かったです!一見するとユートピア系ディストピア小説なのですが、第二章などを読むと、単純なディストピア…でもないのかも?という気持ちになります(過去のデータを仔細に見る事で、かえって今に意識がフォーカスできる、というの良かった)。というわけで非常にニュートラルで新鮮でした。群像劇なのも良いです。第二章で出てきたリード刑事が第二章では随分と感傷的なのに、第三章では太々しい後輩刑事然としていて、これこそ群像劇の味わい!データをもとに排除されるのは、危険とレッテルを貼られた人物よりも、不確実性の高い人物…というのも今後あり得そうで、面白かったです!
ひとつだけ気になる点を言えば、マイン社のビジネスモデルがずっと気になって気になって仕方がなかったことですかね(汗)。住民の生活費を支える原資はどこから…?民間が個人情報集める目的って、適切なレコメンド広告をして、稼いだお金を自分たちに使ってもらうことなのかと。それとも行政とタッグを組んで、ベーシックインカムついでに治安の良い国作りを目指しているんですかね?(個人情報は治安維持のためしか使わない?)でも危険人物はリゾートの外に排出しちゃうし…。マイン社のやりたい事がよくわからない…けど、そのあたりは気にせず、個人情報を提供し、AI(サーヴァント)の言う事を聞く代わりに、生活を保証される世界、というのを所与のものとして楽しむのが良いのかな?
ちなみに最後の章の『アガスティア・レポート』のせいで酷い目にあう理由もよくわからなかった(汗)。リゾートに肯定的な書きっぷりなのだろうことは文脈からわかるのだけど…うーん、やっぱりよくわからない。
でも全体通して面白かったです!
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SF最高!
『三体』でSFの面白さを知って、『ゲームの王国』でやっぱりSFっていいなと改めて思った。
『ゲームの王国』は哲学的な思索に満ちたSFとして非常に面白かった。
「感情とは物語」ってくだりが好き。
キャラ設定はクレイジーでめちゃくちゃ異世界。
私もヘモグロビン改善しようと思う。
ただ、表現の一部には男性作家特有の癖を感じるところもあって、一歩引いて読んだ。
村上春樹的な・・・(個人の感想です。ハルキストの皆様、すみません。)
ポル・ポト支配のカンボジアの悲惨な時代を生き、その後の腐敗した政治を変えるために権力を手に入れようとしたソリヤ。
本当にポル・ポトの娘だったのだろうか。
「世の中を変えるためには、多少の犠牲は仕方ない」といって簡単に人を殺すことができる時点で、ソリヤはポル・ポト側の人間だと思う。
洗脳ゲーム、他人事ではない。怖いね。
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上巻と下巻でガラッと趣が異なる。
上巻は20世紀のカンボジアの歴史を駆け巡る内容。不安定な政情と政府の弾圧・暴力が容赦無く民衆を攻撃する展開に思わず目を覆いたくなります。多少魔術的な要素を秘めつつも、SF的要素は皆無で、「あれ、この作品、日本SF大賞受賞したんだよな」と思うことしばしば。そんな極めて過酷な情勢下で生まれ育った神童ムイタックと人の嘘を見抜ける不思議な少女ソリヤは運命の糸に絡め取られるように出会い、そして宿命的な決別を遂げます。かなり怒涛の展開のなかで、悲惨なシーンを抱えて上巻は幕を閉じるのですが、下巻はそこから一気に半世紀も時を下ります。
ここからSF的要素が加わってくるのですが、冒頭のとおり、なんというか歴史の一端を垣間見ていた上巻と大きく展開が変わるので、正直、読み進めは戸惑いました。もはや初老に差し掛かったムイタックとソリヤは、それぞれ強い信念を抱えて前進します。ルールのなかで争うムイタックとルールを変える立場に挑むソリヤ。運命に翻弄された少年少女の行き着く先はなんとも悲しい結末。
善悪二元論で片付けられる話ではないのですが、正しい思いで前進するムイタックやソリヤが退場し、ラディーのような性根が腐った人物が蔓延る結末に、物語に対する多少の不満を抱きつつ、なんだか現実を突きつけられているような気がします。また、正しい思いといいつつも、この正しさを盲信する危うさを感じる場面もありました。物語は終盤、ソリヤが取り巻きに対して行った小さな演説に、ポル・ポトを重ね合わせたのは、もしかしたらソリヤが次のポル・ポトになり得るという警告を表しているのかもしれません。
そんな複雑な感情を抱えて読み終えた本書でした。 -
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ネタバレ日露戦争前の満州を舞台にした出だしを読み始めたとき、こういう作品特有の読みにくさがなくて驚いた。
聞き覚えのない固有名詞が大量に出てくるため、どうしてもすらすら読むことはできないのだけど、必要以上の文章の堅苦しさがなく、作者の書いている映像が脳内にイメージできる。
ただし、読み始めたときは日本の軍人であることを隠して中国に渡った、密偵・髙木が主人公の話だと思ったが、彼は上巻の半分あたりでさっくりと戦死し、ロシア正教の伝道師であるクラスニコフ(隠された任務はロシアの満州における鉄道網拡大のために現地人を取り込むことである、元測量士)や、時の権力者に両親や家財の一切を奪われたため、強くあることを至上とする孫悟空などの群像劇だった。
シーン転換による視点の移動は、物語全体を立体的に把握するのに役立つが、把握そのものに手間取るという弊害もある。
その中で、序章で高木の通訳を務めた細川の存在が大きくなっていく。
物語がどこへ向かって、どこへ終着しようとしているかは、今のところまだわからない。
けれども、きっと大きな満足が得られるのではないかと予想しながら上巻を読み終えた。 -
Posted by ブクログ
過去に遡ってマルクスとエンゲルスの出逢いを防ぎ共産主義の誕生自体を阻止する計画を企むCIAの歴史改変SFもののストーリーというあらすじを見て、興奮せざるを得なかった。
興奮冷めやらぬまま読み始めてから一気に読み終わった。
過去にメッセージを送るというSF的要素が中心とはなっているが、設定が緻密に練られており、その設定の上でロジカルに話が展開していく。
このディティールへのこだわりと論理性というのが小川哲作品の特徴の一つだとも思える。
読み進めていくうちにロジックが一つずつはまっていくような感覚が気持ちよい。
上述の作品含む短編6作品が含まれているが、どの話もはずれがない。 -
Posted by ブクログ
本書は、SF作家である小川哲がパーソナリティを務めるラジオトーク番組を書籍化したものである。番組には映画監督、女優、芸人、小説家など、ジャンルを横断した多彩なゲストが招かれ、本や映画、さまざまなコンテンツについて語り合う対談集となっている。
印象的だったのは、対談の随所で語られる「本の味わい方」の多様さだ。ゲストたちは、自分がどのように小説を読み、どこに惹かれてきたのかを自然体で語る。その話を追っていくうちに、小説とは単に物語の流れを追うものではなく、言葉の選び方や語りのリズム、構成の妙といった表現そのものを楽しむ読み方があるのだ、ということが繰り返し示される。
正直に言えば、これまでの自分の読書は「物語を理解する」ことに重心が寄っていたように思う。本書を通じて、内容だけでなく「どう書かれているか」を意識して読むという姿勢は、ぜひ試してみたい読み方だと感じた。小説が、情報やストーリー以上のものを内包していることを、対談という形式が自然に教えてくれる。
また、芸能人に読書家が多いという点も、改めて腑に落ちた。芸の世界は、言葉や間、構成、感情の伝達といった表現力が厳しく問われる領域である。そう考えれば、表現が凝縮された書物から刺激や影響を受けようとするのは、きわめて合理的な営みなのだろう。
加えて、本書では小川哲自身の小説家としての考え方や書き方にも度々触れられている。創作における姿勢や、言葉との向き合い方がさりげなく語られる場面には、読み手として思わず唸らされるところがあった。単なる対談集にとどまらず、小説を書くという行為の輪郭が、読者にも静かに共有されていく感覚がある。
『StreetFiction』は、本をどう読むか、表現とどう向き合うかを、理屈ではなく会話の積み重ねによって伝えてくる一冊だった。読書の仕方そのものを、少しだけ更新してくれる本だと思う。 -
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ネタバレ拳とは暴力、すなわち戦争のこと。
これは、地図と戦争の物語。
細川〜〜〜!上巻の時から好きなので、活躍(及び暗躍)が沢山見られてとても嬉しい!
安井は今の感覚で見ると愚かに見えなくもないけど、彼は「大日本帝国の臣民、皇民」の象徴だと感じた。彼ほど純粋に真っ直ぐ天皇への忠誠心を抱いている人間が当時どれくらいいたのか分からないけど、当時国民に求められていた「あるべき姿、思想」がこの安井なのだと思うと背筋が凍った。
明男は、登場当初は超機械的な青年、という感じだったけれど、徐々に彼の感情や思想が明らかにされていって、後半どんどん人間くさくなっていったなという印象。建築への熱意や丞琳への淡い感情(?)など。
上巻の冒頭で、小刀を捨てられなかった高木と、最後に感謝しながら小刀を海に捨てた明男の対比も美しい。戦争の始まりと終わり。
戦後10年の明男と丞琳の場面は朝日のような眩くて暖かい希望が感じられてとても素敵。