小川哲のレビュー一覧
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小川哲のラジオ番組でのゲストとの対談をまとめた本。
様々なジャンルのゲストが登場するが、その度にゲストが読んできた本について何かしら返事ができる小川哲の読書量と豊富な知識に驚かされた。
さすが、「地図と拳」巻末の参考文献を全て頭に入れて小説を書き続けた人だ。
個人的には「しろがねの葉」などを書かれている千早茜との対談が興味深く、当時の直木賞を生中継で見てたこともありとても楽しく読めた。
あとは「カイジ」などの作者、福本伸行もよかった。漫画は知っているが作者の人となりは知らず、興味が沸く話ばかりだった。
ゲストは小説家が多かったが、どなたも頭が良くあらゆることにアンテナを張ってる方ばかりで、話がどれもおもしろかった。 -
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ネタバレ満洲という激動の土地を舞台に、理想と暴力、計画と衝動がせめぎ合う壮大な物語。その完結編である下巻は、上巻で張り巡らされた思索と葛藤を、より深く、より鋭く掘り下げていく。
読み進めるうちに感じるのは、この作品が単なる歴史小説ではないということだ。そこにあるのは、「国家とは何か」「理想はどこまで暴力を正当化するのか」「人は歴史の歯車なのか、それとも抗う存在なのか」という根源的な問いである。登場人物たちは皆、巨大な時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念を握りしめて立ち続ける。その姿は、英雄的というよりもむしろ痛切で、人間的で、だからこそ胸を打つ。
タイトルにある「地図」と「拳」。地図は未来を描く理性と設計図であり、拳は現実をこじ開けるための力だ。しかし本作が鮮やかに描き出すのは、その二つが決して単純な対立ではないという事実である。理想は時に暴力を孕み、暴力はまた新たな地図を描かせる。下巻ではその循環がより露わになり、読者は登場人物と共に「正しさ」の揺らぎを体感することになる。
特筆すべきは、群像劇としての完成度の高さだ。複数の視点が絡み合いながら進行する物語は、ひとつの結論に収束するというよりも、歴史そのもののように重層的に広がっていく。その構造は決して易しくはないが、読み終えたとき、世界の見え方がわずかに変わっていることに気づく。これは物語が読者の内面にまで踏み込んできた証だろう。
上下巻に分かれる分厚いページの重みは、そのまま思索の重みでもある。しかし決して読みにくいわけではない。むしろ文章は静謐で力強く、理知的でありながら、確かな熱を宿している。読み手を信頼している筆致だ。
読み終えた後に残るのは、単純な感動や爽快感ではない。もっと静かで、しかし深く沈み込む余韻だ。歴史を振り返ることは、過去を裁くことではなく、現在の自分を見つめ直すことなのだと、この作品は教えてくれる。
『地図と拳』下巻は、物語の完結であると同時に、問いの始まりでもある。理想を描くことの責任と、力を振るうことの代償。その両方を真正面から見据えた、重厚にして誠実な傑作である。 -
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ネタバレ難しかった~
「スメラミシング」
ずっと「すみません」と謝っているのが印象的だった。
高校生の時に、クラスメイトの長田と小海線に乗りに行こうと計画を立てたが、
結局行けず、長田とはその後、疎遠になるのだけれど、あの時、一緒に行けていたら、
また違った関係になっていたのではと、そんなことを何度か考えたという話。
本筋とは関係ないけれど、こういう感じ、感覚が僕はとても好みでついつい繰り返して読んでしまう。
「何度か」という言葉に、「ああ、何度か考えたんやな」などと思ってしまうのだ。
自分の癖なのかもしれないです。
「神についての方程式」
数学的なことはさっぱりわからんが、物語の構造がおもしろかった。
「ちょっとした奇跡」
最後よかった。
あと、川名潤さんの装丁がめちゃかっこいい。 -
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ネタバレ普通サイズの上下巻の本なのに、大河小説を読んだくらいには体力を失った。
長い年月「地図」を仕事としていたので、書名に「地図」という文字が入っていると、つい手に取ってしまうのだが、重苦しい本である確率が結構高い。
この本も、日露戦争を前にした時期から第二次世界大戦後までの長い年月を、ほぼ満州を舞台に書かれている。
最初から最後まで通して細川という男が出てくるところから、いかに短い期間に立て続けに日本が戦争という大きな波に翻弄されていたのかが、恐ろしいほどにわかる。
満州の東側の海に浮かぶ青龍島(チンロンタオ)が描き込まれた地図。
ないはずの島が、どうしてその地図に描き込まれたのか。
それを探るミステリだと思ったのだが、どっこい、テーマは時間で場所は仙桃城という街だった。
けれど、わかりにくいのだ。
パーツパーツは面白いのに、あまり有機的に組み合わさっていないというか。
その他の登場人物として括るには背負っているものが大きく、主たる人物にしては掘り下げが浅い。
そんな登場人物が結構中盤に多くて、共産主義者が、その挫折者が、憲兵が、中途半端に物語に介入してくる。
個人的にはその部分も面白く読んだけど、でもこの本の分量なのだったら、書くべきことはここではないだろう。
逆に、もっと長く深く全6巻くらいで書くべき作品だったのかもしれない。
でもたぶん、出版社がそれに応じることができなかったのだろうことも、想像に難くない。
何なら青龍島をめぐる謎も出版社から「ミステリ要素を入れてくれ」と言われたのかと思ったぐらいなのだが、解説を読むとミステリではなくSF要素を入れるよう要望があったらしい。
SF部分というか、まったくのフィクションとしては戦争構造学研究所という存在なのだけど、そのような組織が日本国内にあったということはあるらしいし、細川が作ったこの機関がさほどフィクション部分を強調しているわけでもないので、いかにも中途半端。
仙桃城における孫悟空とその娘孫丞琳の愛憎。
都市における建築物の意味――明男の半生。
高木と細川が夢見た満州の未来。
これらを別の作品として書いて、サーガのようにゆるく繋げたほうがわかりやすかったのではないかなあ。
実はこの物語の最初(ないはずの島を描いた地図の謎)も、最後に戦火の中ずっと仙桃城になる前の町――李家鎮の地図を描き続けたのも、クラスニコフ神父だった。
もともとは測量士だったのだが、ロシア正教の伝道師として満州に派遣された(満州の地図を作るため)神父の存在は、長く続いた物語の中であまりにも控えめだ。
参考文献のリストの膨大な量に比して、作者の思いが存分に投影されたとは思えないので、いつかきっと、もっと深く静かに沁み込むような長大な作品が書かれることと期待する。
その時まで私の体力が残っているかは…自信ないけど。 -
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ネタバレ地図と拳(上巻)は、一つの都市を舞台に、人間の理想と暴力、知性と欲望が交錯するさまを壮大なスケールで描き出した、まさに圧巻の歴史群像劇である。
物語は、まだ何ものでもない「土地」に、人が線を引き、名を与え、意味を刻みつけていく過程を丁寧に追っていく。地図とは本来、世界を理解するための道具のはずだ。しかし本作では、その地図がやがて支配や野望の象徴へと変質していく。理性の結晶であるはずの“地図”と、衝動や暴力の象徴である“拳”。その対比が、時代のうねりの中で否応なく絡み合っていく構図が胸を深く打つ。
登場人物たちは誰もが単純な善悪では割り切れない。彼らはそれぞれの正義と信念を抱きながらも、時代という巨大な奔流に飲み込まれていく。その姿はあまりにも人間的であり、だからこそ痛ましく、そして愛おしい。理想を掲げることの気高さと、その理想が現実に踏みにじられる残酷さ。その両方を真正面から描き切る筆致は、静かでありながら凄まじい熱量を帯びている。
上巻は、いわば大河の源流である。物語は緩やかに、しかし確実に流れを広げながら、やがて避けがたい衝突へと向かっていく予感を孕む。読み進めるほどに、土地の匂い、空気の乾き、時代の緊張が立ち上がり、単なる傍観者ではいられなくなる。歴史とは、抽象的な出来事の羅列ではなく、名もなき個人の選択と葛藤の積み重ねなのだという事実を、本作は力強く突きつけてくる。
重厚でありながら決して観念的に沈まない。知的でありながら血の通った物語として読者を揺さぶる。その筆力は圧倒的で、上巻を閉じたとき、すでに次の展開を求めずにはいられない自分に気づくだろう。
壮大な歴史の中で、人は何を信じ、何を守ろうとするのか。
その問いを、雄弁かつ誠実に描き出した作品。 -
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50年前のカンボジア。
共産主義革命前夜の秘密警察の暗躍と、革命後のクメール・ルージュによる数々の虐殺の時代。
クメール・ルージュのやり方に疑問を覚え、ロベーブレソンに理想郷を作ろうとしたフオン。
フオンの目論見を利用し、元秘密警察のラディが力を持ち始める…
孤児であり、ポル・ポトの娘・ソリアもまたクメール・ルージュの疑問を覚える。
そして、ロベーブレソンは…
ムイタックは…
なかなか長かった…
特に前半は、登場人物が多すぎて。
それぞれの視点からの話で…
ようやく登場人物が交わり始め、話が動き始める。
そこからは、怒涛の展開で進み始める。
ポル・ポト時代のカンボジア。
共産主義とはいいながらの恐怖政治。
ポル・ポトの登場はほぼないが…
ソリアはマットレスとともに、ポル・ポトを倒すことができるのだろうか…
ムイタックは…
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全部読み切り短編というのが、すごくいい。
今までの文芸誌は、連載ばかりなので、なんだか蚊帳の外感があって、書い続けないと仲間に入れてあげないよーと言われてるみたいで寂しさを感じることしばしば。
しかも豪華ラインナップに、いいの?この値段で?と問いたくなる。赤字だよね。
ともあれ、西加奈子「デヴィアン」市川沙央「音の心中」小川哲「嘔吐」をまずは読む。
全部面白い!
小川哲は、朝井リョウと仲良しになって影響受けてるような笑。
西加奈子も仲良しの村田沙耶香となんか似てるような。
互いに影響しあって、短編だから、肩の力を抜いて自由に書いてる感あり。
葉間中顕「五十歳,ロスジェネ、ギバー落ち」も,どこかで読んだようなテーマだけど、軽く読めた。
既視感あるけど、作家たちが実は書いてみたかったもの、というハードルの低い短編が多いなと思う。(悪口ではない)
一般の文芸誌はそこのところは、厳しそうだけど、それだけに全体に肩の力が入っていて小難しくてハードル高い作品がズラリ。で、なんかしんどい。
その点、初心者向けで、読書の裾野を広げようとしてるこの雑誌なら許されるというか、むしろ積極的にキャッチーな短編を載せていこうということなのかな。
こちらも肩の力を抜いてパラパラ読めるのでいい雑誌だ思う。読めなかったところがあっても,このお値段なら惜しくないし!