小川哲のレビュー一覧
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日中戦争の泥沼に突っ込んでいく日本軍。
混迷を極める中国戦線の前線近くに日本が満州国の理想郷となるべく作った人口の都市、仙桃城はあった。
計画に携わった天才建築家の明男は理想とはかけ離れた建築を要求する関東軍と自らの思想の乖離に苦しみながら、街のシンボルとなる公園の建築を手掛ける。
しかしそこも戦乱の兆しがすぐそこまで迫っていた。
日本、中国、ソ連がいずれも現代につながる形で変貌していく。
意外と知らなった日中戦争がなぜ米英との関係悪化につながったのか、そしてそうなる事を知りながらなぜ日本は南方を攻めたのかが理解できた。
後半でぞっとしたのは八路軍の自国民に対する振る舞い。敵は日本軍で -
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国家間で弱肉強食の掟がまかり通った19世紀~20世紀前半の中国東北部が舞台。
伝統的な大国ロシアと技術的な新興国である日本は一触即発の危機にあった。その上、清政府は力を無くし、中国東北部は誰のものでもない空白地帯であった。
そこに日本からの密偵として2人の男が送り込まれる。
という所から始まる。
現地中国人やロシア人の蛮行も描いているが、特に日本軍による蛮行も凄惨に描かれているのが珍しい。
と、凄惨な暴力の時代を経ながら時代は下っていき
義和団事変が起きた後に、日露戦争が起きる。
その後、戦勝した日本は満州鉄道の権利を得て実質的な植民を始める。
そして何も無かった土地に欲に駆られて街を -
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面白いというと不謹慎な気がするが、非常に興味深い本だった。
カンボジアの革命 クメール・ルージュを題材としていて、革命 大虐殺の歴史を学ぶ上で、非常に学びの多い内容だった。
それだけでなく独特のキャラが際立っており、物語として読み応えのある面白い内容だった。ファンタジーと実話を掛け合せたような感じだった。
話の展開も上巻の半分過ぎくらいから、どこを読んでも急展開で、読むのが楽しかった。この怒涛の展開で下巻が続くのだとしたら、下巻は相当に面白いと思うため、下巻を読むのが非常に楽しみである。
物語の視点がコロコロと変わるため、始め読むのに苦労したものの、慣れれば苦では無かった。 -
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最高に面白かった。
なんという参考文献の量!
戦後80 年ということもあって、
太平洋戦争や日ソ戦の本を
読んでいたことも、
この本を手にするきっかけだった。
総力戦研究所は「日本必敗」の
結論を出していたし、
東條も米国との戦争は回避したかった
かもしれないが、
もし米国と戦わなければ
中国の利権は失っていただろうし、
ましてや満州からも手を引かなければ
ならなかっただろうから、
いずれにせよ日本は戦争への道を
突き進んでいたはず。
勝てる見込みのない日露戦争に勝ってしまい、
やっとの思いで手にした満州に固執したことが、破滅の元凶だったんだ。
あの頃我々リーベンクイズが
大陸でやった蛮行 -
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初めて小川哲の作品を読まれる方にはおすすめしません。なんだこいつ、って感想になりかねない。そういう本でした。
「ユートロニカのこちら側」を読まれると良いと思います。そうして水が合った方向け。
一歩引いて飄々とした作風から一転して、熱量のある作品たちでした。
いつも根底に哲学的な姿勢を取られますが、それがいつになく強く、キャラクターより構造を重視したものになっています。ですので読後感はすっきりしません。しかし咀嚼していくに従って、この単行本そのものが小説のていをとった哲学論だという理解をすると、腑に落ちる気がします。
虚構を信じる力に善悪はない。貨幣経済や信仰をはじめとした道徳という実体のない -
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小川哲著『嘔吐』(文芸誌GOAT Vol.1収録)
遅ればせながら『宇垣・片桐の踊る!ミリしら会議』でGOATを知り、Vol.1&2を購入。その中の『嘔吐』がとにかく衝撃だった。
テーマは「愛」なのに「嘔吐」?と思いきや、読めば納得。
これは“推しへの愛”を描いた物語。でも、ただの美談じゃない。
最初は語り手に共感すら覚えた。
けれど、じわじわと距離感がズレていく違和感。
少しずつ歪んでいく気持ち悪さと、応援がいつの間にか自己正当化にすり替わっていくリアルさ。
「こういう人、ネットにいるよな…」と他人事のように読んでいたけど、どこかで自分にも刺さる。
終わり方もさすがのひと言。 -
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ネタバレ小川哲の最新短編集。表題作「スメラミシング」を含む歴史、SF、数学、宗教を縦横に駆使した、言葉と物語による創造と救済、支配と欺瞞の世界の記録。
面白かった。表題作「スメラミシング」をはじめ、「なぜ人は理由や物語を求めるのか」というテーマが通底する短編集だった。中でも「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」が印象的。
科学至上主義を掲げる国家・理国を舞台に、神や信仰を否定する体制のなか、叙事詩の矛盾を暴く書簡形式で物語が進行する。
ヴォネガット『タイタンの妖女』を思わせる壮大な構成と、理性と感情、客観性と直感が人間を形づくるという主題が胸を打つ。科学も信仰も“物語”として人を導くのだと感