小川哲のレビュー一覧

  • 火星の女王

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    いやー面白かったです。

    SFなので化学・科学的な要素も多く読み進めるのが難しいかもと思ったけれど、どの登場人物も決してヒーロー的ではなく、どちらかというと人間的にどこか欠落している人が多くて、その分共感しやすくて感動も深まった気がします。

    オススメです。

    12月にNHKでドラマ版を放送するのだけれど期待(ハードル)はかなり高くなりました笑

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    2025年11月04日
  • 火星の女王

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    エンディング美しすぎてガチ泣きした。SF作品だけど、今まで読んだどんな作品よりも人がしっかりと描かれていて、火星という環境に住むことが鮮やかに書き出されている。火星の歴史と傷とその中に生きる人たち。その中で描かれる本当に美しい物語。小川哲さんすごいっす。

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    2025年11月04日
  • 火星の女王

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    ネタバレ

    人類が火星への移民を開始し、複数のコロニーが鉱山採掘等で火星上での生活を送っている近未来。宇宙開発を主導する国際機関ISDAが、突然「地球帰還計画」を発表した。しかし、地球と火星を往復する宇宙船のペイロードは極めて限定されており、かつチケットは高額。この計画は、火星開発を見限った地球側政府による、事実上の「棄民政策」だった。一方、火星で地球外生命を研究しているリキ・カワナベは、不可思議な動作をする謎の結晶体「スピラミン」を発見する。この物質が、地球・火星間の政治的緊張に大きく関わることになるとも知らずに・・・

    ざくっとまとめると、火星に移民した人々が、地球政府に反旗を翻す(より正確に言うと、

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    2025年11月03日
  • 地図と拳 上

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    途中から急激に面白くなっていく印象
    明男と丞琳の出会いとか、細川の思想とか。

    満洲が今後どうなっていくか、関東軍がどんなことをするか、という大まかな歴史を知っているからこそ、副題の年号が1932,1937,1941年に近づいていくほどドキドキした。

    今後満洲がどうなるのか、細川や明男、丞琳やクラスニコフはどうなるのか、下巻も見守りたい。

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    2025年11月02日
  • 嘘と正典

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    6篇の短編で構成される短編集。
    時間スケールは異なるけれど「歴史」が横串のキーワードではないかと思う。

    共産主義の打倒を目指し時空間通信で歴史改竄を企てる表題作の「嘘と正典」は伏線の回収で何度もゾワッとさせられるし、過激な正義や短絡的な介入は歴史や状況を変えないということを再確認させてくれる。他の作品もそれぞれ毛色が違ってどれも面白い。

    個人的にはひとすじの光が好きだ。名馬スペシャルウィークの血統を遡りながら自分の血筋が明らかになっていくが、その過程がなんとも不器用な父親からの愛に感じられてホッコリする。やはり小川哲、侮るなかれだな。

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    2025年10月29日
  • 火星の女王

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    火星への移住が日常のことになった100年後の未来。ある出来事を背景に様々な事件が絡み合い一つの結末へと向かってゆく。未来世界を舞台にした群像劇、社会全体を包む革命の熱気とそこにある日常の手触り、歴史の大きなうねりの中で冷静にその先を見つめる人物達、大衆の世論さえも手に取るように乗りこなす飄々としたトリックスターのような男。著者のこれまでの作品のエッセンスを蒸留しながら、現代の人々の分断やコミュニケーションの問題を描いた真骨頂。

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    2025年10月28日
  • ユートロニカのこちら側

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    直木賞作家、小川哲氏のデビュー作ということで読書開始。
    壮大な世界観と近未来の倫理が、美しい比喩表現で描かれていて、終始圧倒された。
    ビックテックに個人情報が握られる監視資本主義や、防犯カメラだらけの現代が描かれていると感じる。
    最後が読みにくいという意見もわかる。最終章は、哲学書のような文体になっている。
    ただ、全体を通じて傑作としか思えない。

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    2025年10月21日
  • 地図と拳 上

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    とても面白かった。
    登場人物それぞれの視点で戦争が進んでいくので、1人の人物に肩入れせず客観的に戦争が考えられる物語。

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    2025年10月20日
  • GOAT

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    神文芸誌が誕生。
    もうGOATなしでは生きていけない身体になってしまいました。
    私にとって何が神だって、基本的に読み切りを前提とした作品集になっているところ。

    ずっと文芸誌というものに憧れはありつつも、でも文芸誌って連載ものが基本で、途中参加したい新参者はちょっと入りにくい仕組みになっていると思うんです。

    かといって、バックナンバーを漁ろうにもそこにはやっぱり過去の連載作品が絶え間なく続いているのであって、その続きを読むためにバックナンバーを、、、という夢幻スパイラルに陥ってしまう。

    そんな中で新文芸誌の誕生に、ついに一から連載を追える、文芸誌に手を出せるぞ、と思ったらそれ以上の衝撃、す

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    2025年10月19日
  • GOAT

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    ネタバレ

    ふだんなかなか文芸誌を読むことがないのですが、どのお話もとても面白くて興味を惹かれました。
    特に気になったのは市川沙央さんの「音の心中」です。
    ふだん読まない系統の作品なので、うまく感想を言えないのですが惹きつけられる内容でした。作中に出てきた芸術館、実在している場所なのですね。
    私にとってはまだ難しい「愛」でしたが、
    こういう愛もあるのか、と知ることができた作品です。

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    2025年10月13日
  • 地図と拳 下

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    日中戦争の泥沼に突っ込んでいく日本軍。
    混迷を極める中国戦線の前線近くに日本が満州国の理想郷となるべく作った人口の都市、仙桃城はあった。
    計画に携わった天才建築家の明男は理想とはかけ離れた建築を要求する関東軍と自らの思想の乖離に苦しみながら、街のシンボルとなる公園の建築を手掛ける。

    しかしそこも戦乱の兆しがすぐそこまで迫っていた。

    日本、中国、ソ連がいずれも現代につながる形で変貌していく。

    意外と知らなった日中戦争がなぜ米英との関係悪化につながったのか、そしてそうなる事を知りながらなぜ日本は南方を攻めたのかが理解できた。

    後半でぞっとしたのは八路軍の自国民に対する振る舞い。敵は日本軍で

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    2025年09月28日
  • 地図と拳 上

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    国家間で弱肉強食の掟がまかり通った19世紀~20世紀前半の中国東北部が舞台。

    伝統的な大国ロシアと技術的な新興国である日本は一触即発の危機にあった。その上、清政府は力を無くし、中国東北部は誰のものでもない空白地帯であった。

    そこに日本からの密偵として2人の男が送り込まれる。

    という所から始まる。
    現地中国人やロシア人の蛮行も描いているが、特に日本軍による蛮行も凄惨に描かれているのが珍しい。

    と、凄惨な暴力の時代を経ながら時代は下っていき
    義和団事変が起きた後に、日露戦争が起きる。
    その後、戦勝した日本は満州鉄道の権利を得て実質的な植民を始める。
    そして何も無かった土地に欲に駆られて街を

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    2025年09月11日
  • ゲームの王国 上

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    面白いというと不謹慎な気がするが、非常に興味深い本だった。

    カンボジアの革命 クメール・ルージュを題材としていて、革命 大虐殺の歴史を学ぶ上で、非常に学びの多い内容だった。
    それだけでなく独特のキャラが際立っており、物語として読み応えのある面白い内容だった。ファンタジーと実話を掛け合せたような感じだった。
    話の展開も上巻の半分過ぎくらいから、どこを読んでも急展開で、読むのが楽しかった。この怒涛の展開で下巻が続くのだとしたら、下巻は相当に面白いと思うため、下巻を読むのが非常に楽しみである。

    物語の視点がコロコロと変わるため、始め読むのに苦労したものの、慣れれば苦では無かった。

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    2025年09月10日
  • 君が手にするはずだった黄金について

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    おもしろーい!君のクイズの人か!君のクイズは正直そこまで刺さらなかったが、この作品は淡々とした語り口の中にあるユーモアと物事の見方、日常にある違和感と共感の切り出しが面白くてのめり込むように読めた。

    主人公の人間ぽくなくて人間ぽい、等身大だけど客観的な視点が入りやすいのだと思う。

    初めはエリート感強めの、学歴高い人が書いてるのがひしひし感じられる本だなと思ったが、友人からの小説をレビューするくだりでは面白くてニヤニヤしてしまった。

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    2025年09月09日
  • GOAT

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    大好きな尾崎世界観の名前があったから買ったんだけど、まずはありがとう。このご時世にこの価格でこんなに素晴らしいものを出してくださって。今まで読んだことないジャンル、読んだことない方の作品を知れて良かった。昨日の夜、悪の方も買いに行った。ゴートくん可愛い。
    『終末の愛』、すごくよかった。そしたら次に来た『五十歳、ロスジェネ、ギバーおぢ』でもっと持っていかれた。なんだこの衝撃は…

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    2025年09月05日
  • GOAT

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    初文芸誌!カルチャー要素がたっぷり詰まった新世代文芸誌って感じなんかな?
    短いながらに猛烈な印象を残す文章たち。
    言葉を紡ぐ人たちに脱帽。

    特にコンビニアイスの話好きだったな〜♪
    1個目はスーパーカップのチョコで2個目はサクレな私。本命は濃厚で王道なガッツリメンで、浮気相手はサクッと爽やかで後味を残さない人かぁ〜(とかね

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    2025年09月02日
  • 君が手にするはずだった黄金について

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    紙書籍がもつ独自の神秘性を教えてくれる本でした!

    電子書籍という便利な媒体が登場してもなお、紙の書籍がその存在意義を発揮し続けていることに興味があった私にとって、一つの回答を見た感覚。

    本(紙書籍)と読者は1対1。
    誰かとそれを共有できるわけではなく、孤独。
    映画やTVのように受動的に話が進むのではなく、
    本は読者の「能動性」にかかっているのだ。
    私には、本というものがたまらなく我儘な恋人のように見える。
    「私だけを見て」と。

    この著者は、哲学的感覚の持ち主なんだろう
    共感できて所々笑える

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    2025年09月02日
  • 君が手にするはずだった黄金について

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    主人公の思考が好きすぎてこんな人が身近にいたらいいのにと思った。
    まず就活の、人生を円グラフに描くことでクリプキを出してくるところが好きだし、彼女が『谷崎の初版本を渡されて喜ばない人とは付き合う価値がないよ』と本好きの好きだった先輩に言われた話をしたことでなんとなく付き合ったのも好きだし、3月10日に何をしていたか思い出そうとするのも好きだし、自分も含め記憶を改竄していることに気づくのも好きだし、気になっている人にアピールするために本の内容や映画の予約状況を脚色するのも、それをあとから認めるのも好きだし、占い師を詐欺師と言い切るところも、策を練って占い師を暴こうとするところもそのくせ『その瞬間

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    2025年08月31日
  • 地図と拳 下

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    最高に面白かった。

    なんという参考文献の量!
    戦後80 年ということもあって、
    太平洋戦争や日ソ戦の本を
    読んでいたことも、
    この本を手にするきっかけだった。

    総力戦研究所は「日本必敗」の
    結論を出していたし、
    東條も米国との戦争は回避したかった
    かもしれないが、
    もし米国と戦わなければ
    中国の利権は失っていただろうし、
    ましてや満州からも手を引かなければ
    ならなかっただろうから、
    いずれにせよ日本は戦争への道を
    突き進んでいたはず。
    勝てる見込みのない日露戦争に勝ってしまい、
    やっとの思いで手にした満州に固執したことが、破滅の元凶だったんだ。
    あの頃我々リーベンクイズが
    大陸でやった蛮行

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    2025年08月31日
  • 君が手にするはずだった黄金について

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    小説家としての「私小説」を連ねた短編集で、それぞれの短編が響き合い、リンクしていく構成がとても面白い。自分の歩みや創作への葛藤を率直に書き出すことで、まるで決意表明のようにも受け取れて、その誠実さが印象に残った。

    以前読んだ『君のクイズ』に続いて二冊目。どこか肌に合う感覚があって、もっと他の作品も手に取りたくなった。積読中の『ゲームの王国』もそろそろ読み始めたい。

    小説家という存在に興味がある人には特におすすめの一冊。

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    2025年08月27日