小川哲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ変わり者の日常譚
自分も変わり者と自負しているが、同系統の別人の変わり者が書いた本だと思った。
冒頭から全力の自己表現をしていて少し羨ましかった。この変わり者具合で人生を友達を持った状態で送れている著者に希望と絶望を感じだ。
著者と自分の間には、どのような違いがあるのかと考えた。1つ目はメタ認知の能力の差だ。自分の発言が相手に及ぼす影響というものをより深く思考することが大事だと考えた。
2つ目は余裕の量だ。余裕の量というと、定量的に聞こえるが、これは定性的な話である。嫌な事があったら逃げる、嫌な事には出会わないように努力する。どれもこれも世間一般で言われている、人生を楽しく生きるコツだが、それを実践できるかと言うと話は別物になる。言語化能力が高い著者は、うまく逃げ回るコツを掴めたのではないかと思った。
一番心に残ったフレーズは、メンタル神経である。これは運動神経を準えたものであり、どの程度自分の心や気持ちを自在に動かせるかという考え方だった。この考え方から、しなければならないなどの強制がいかに無力であるかに気づいた。
勉強をしなければならない時、勉強に興味がなかったり、嫌いな人は強制的にやろうとする。だがしかし、それでは多くの人が続かない。それは、メンタル神経が低いからである。多くの人はメンタル神経高くないのではないかと考えた。なぜなら、メンタル神経とは言語化能力と分析能力を自己の中に持っていなければならないからである。自分の心を分析し、その結果からどのように自分の心に言葉をかけたらいいか言語化する。これは、他者の介在することの出来ない事であり、両方の能力を必要とするメンタル神経は、高めていくのが難しいと感じた。
だが、1つ発見もあった。興味を維持する事よりも、興味を無くす方が実は人間にとって簡単な事なのではないかと考えた。自分は、ゲームや漫画などが、勉強や日々やるタスクの障壁となっているのだが、嫌いなものをやるために、興味を創出し、維持するよりは、ゲームや漫画を嫌いまではいかなくても、無関心の状態に持ち込むように、心を動かすことは出来そうだと感じた。
斜め45度の処世術とは、今後一般的な処世術になる可能性の秘めたタイトルだと感じた。 -
Posted by ブクログ
さすが天才、小川哲さん。今回もすごすぎました。まだ下巻を読んでいないのでストーリーの全容については見えてないものの、題材の設定と、構成と、キャラクターの置き方と、ト書きやセリフの秀逸さがすごい。ポルポト政権の少し前からのカンボジアを舞台としたフィクション小説。テーマ設定や視点の置き方に「地図と拳」に似たものを感じます。キャラクターが多種多様なんですが、どの人も必要。物語に有機的に作用しているのが素晴らしい。そして、ところどころ、ト書きやセリフにめちゃくちゃ笑える…www。残忍で胸が痛くなる展開も多分にありつつ、シュールさで笑えるところもありつつ、読んでいて感情がすごく渦巻く。活字のエンタメでここまで読む側の気持ちを引き込めるのは本当に素晴らしい。下巻も楽しみです!
-
Posted by ブクログ
小川哲さんの本は「スメラミシング」がハマらなかったので、しばらく読むのはやめようと思った。
そう決めたのに、この本は小川哲さんの初めてのエッセイ集だから手にしてみたのだ。
エッセイを読むと、その作家の人となりが分かるような気がする。
エッセイが面白いと、その作家さんに親近感が沸く。
このエッセイは面白かった。
誰もが考えたことがある些細な事をグダグダと考えていて、自分と同じような結論に達していることが多かった。
例えば、「失敗したら"なにくそ"と思い、見返してやれ」などと言う人がいるが、共感しているのは、それができる人。
多くの人は失敗したらあきらめて努力をやめてしまう。
「小説を読む人は、自分の知らないことや、想像もしなかった世界を見せてもらいたいと思って本を手にする」
と小川哲さんは言っていて、「そのとおり」だなと思った。
そこで、生成AIに「小説を読む人は、何を求めて本を手にするのか」と聞いてみたら、次のように答えが返ってきた。
「小説を読む人は、自分の人生だけでは足りない何かを補うために本を手にする。
その“足りない何か”は、刺激かもしれないし、癒し、理解、逃避、希望、あるいはただの美しさかもしれない。」
自分が思うに、
「自分では選ばなかった人生の疑似体験ができる」
「自分は何を大事にしているかの確認ができる」
が、小説を読みたくなる大きな要因のようだ。
また小川哲さんの小説を読んでみようかという気になった。
候補作はSF小説の「嘘と正典」 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの内容・構成で¥510!すごい!!
自分には★評価が高くない話もあるけれど、全体として満足感がある。よかった。
デメリットは、この中で紹介されている本を読みたくなり買ってしまうこと(とは言え初めての作家さんは不安もあるので中古本を探した)。また、読み終えるのに時間がかかること。自分の場合、話を読み終えた後に時間を置かないと次に行けないので、短編で構成されているこの本は1日2話進めばよい方だった。
----------
「ディヴァイン」西加奈子 … ★3.5。完璧で盤石な「君」と活動家の娘。「あー、こんな聖人君子みたいな話は居心地悪い」と思ってたら、それを覆すオチが来てよかった。ただ、最後の結びはきれい過ぎるかな。タイトルがDivineだから仕方ないか。
「私たちは愛を失ったことがあるだろうか?」チョン・セラン … ★3.5。理解したと言えないけれど、引かれる内容だった。大恋愛TVドラマ終了の喪失感から抜け出すにつれ「一度も所有したことがないものをどうして失えるというのだ。ほとんどの人は命懸けの、文字通り断崖絶壁から飛び降りるような恋愛をすることはない」で始まる著者の考察。自分が恋愛小説が苦手な(読んでもあまり胸に刺さらない)理由がおぼろげに見えた気がする。
「音の心中」市川沙央 … ★3.5。よくわからないが余韻が残ってよかった。心臓の音を記録する芸術館を初めて知った。著者は心臓の音を芸術作品とする(?)という発想を知り、この話ができたのだろうか。
「彼」に向けての「私」の気持ちは同意できる。「戦争反対!」と叫ぶ人が、叫ばない人へ向ける憤り。でも、そういう憤りがそもそも戦争の元では? 「私」から「彼」への「あなたは戦争を消費しているだけだ」は的を得ている。あなたと同じ行動をしていないからと言って、それは平和ボケしているわけではない。あなたのしていることだけが正解ではないのだよ。
「嘔吐」小川哲 … ★3。このオヤジの一人よがりがきつく、読んでいると「嘔吐」を誘う。その一人よがりは「愛」ではなくその反意として、「愛」がテーマのこの本に載ったと思う。でも、今はそんなヤツが多くいる状況、その中でわざわざこの内容にした意味は何?と頭に「?」が浮かんだ。この状況を変えなくては!というメッセージ?
「【ア】【イ】」尾崎世界観 … ★2。??? わからない。
「念のため」芹沢央 … ★2.5。??? なんてことない日常にも裏があり、それに気付かなかったり気付かせないことが優しさ(愛)ってこと?
「二番目のアイスを教えてください」ワクサカソウヘイ … ★3。自分は一番がチョコモナカジャンボ、二番がピノ。…てことは本命はピノ?
「違う海にいる」麻布競馬場 … ★2.5。僕(木村)は松島との思い出(海)に生きていくということ? もう少し説明して欲しい気持ち。
「愛することを知らない子は」島本理生 … ★2.5。女子生徒の玉川と彼女の弟との行為、それを平然と「私」に話せる関係、「私」に芽生えた新井市への思い… などのシチュエーションについていけなかった。自分には苦手な感じ。
「終末の愛」冲方丁 … ★3。人類が終末へ向かうことになった理由はE2関連薬による博愛の心。人類の終末を救うのはアンチE2薬による愛の駆除。物語としてちょっと厳しいかな…
「五十歳、ロスジェネ、ギバーおぢ」葉真中顕 … ★2.5。因果は巡る…?
「ポルト」パク・ソルメ … ★2。空想の世界でのドライブ? 話が見えてこない。こういうのが純文学?
翻訳者の解説が印象に残った『韓国語にも「彼女」と「彼」にあたる言葉があるが、近年女性作家の間では「彼」に一本化し「彼女」を使わない人が増えている』その背景は何? 翻訳者は外国語を知るだけでなく、その外国語とその国の最新事情を知らないと翻訳の質が上がらないのだろう。
「わたしの愛しいもの (エッセイ)」町田そのこ … ★4。息子が素晴らしい!「何で? 好きに着けた方が楽しいじゃん」「だいたい、誰に対して恥ずかしいと思ってんのさ」
「ある階段からの風景~小説『老いと建築』」長塚圭史 … ★2。???わからない。すべてを見てきたこの家は今までを刻んだ家になっているということ?
「牛田家とわたし」嶋津輝 … ★3.5。何がよいのかわからないけどなんかいい。その瞬間は楽しいことだけを楽しめた子供時代を思い出させる感じ?
哲学対話「愛」って何? … 対話についての3つのお約束『①人の話をよく聞く ②偉い人の言葉を使わない ③「結局人それぞれ」であきらめない』がよかった。 特に③。
「未来のかけら」チェン・ヨンス ⋯ ★3.5。『未来はどこにでもある。失敗した過去の中にも。だから未来形で存在する限り、僕はその言葉を信じる。信じることにする。』
「愛はどこから(エッセイ)」アフロ ⋯ ★4。『一生の友達は一生一緒にいる友達だけじゃない』
「かつて私のものだった男の子たち」戸田真琴 ⋯ ★2。合わない。ある日の父の行動ががっかり。母もそうなのか?と思わせるところもあるし。(Web「Story Box」にある続きは期限切れで読めなかった)
「愛と再生」(詩) ⋯ ★2。自分に詩はわからないようだ。
「出せなかった手紙」佐原ひかり … ★3.5。ほんわかした手紙だけど悲しくなる手紙。
「手紙に味なんていらない」高遠みかみ … ★4。おもしろかった。問題作のラブレター、全部を読みたい。
「チキンピアノ」丸山春乃 … ★3.5。いいんだけど、古川がいいやつ過ぎるかな。
「出せなかった手紙」彩瀬まる … ★2.5。ちょっと重い。特に心を乱した「貴方」の文章。
「そんなに好きってわけでもない友達」安壇美緒 … ★2.5。自分には後味悪い話だった。学生の頃、気は乗らないのにその場の流れを変えることができず、友達の誘いにそのままついてったことを思い出した。一部の人には自分がこの話のミミだったかもしれない。ただ、この話の主人公は、最後にミミを自分の部屋から追い出している。よくやった!
「御伽の国のモアとトト」大木亜希子 … ★2。芸能界に入る子どもたち、その母親と父親の行動など、設定が好きになれず。母ちゃん、最後は長崎の実家に逃げていくってなんだよ。子どもたちが乗ったルートはあなたが望んだものだったのに。もっと早く解決策を考えるべきだったし、「もう遅い!」と気付いたらそこですべきことがあったのでは。あなたが望んだルートの中で家族が壊れていっているんだから。
「BOOM BOOM TAIPEI」金原ひとみ … ★3。台湾での気持ちの盛り上がりを伝えたかったんだろうな。
「ガマズミの花」八木詠美 … ★2。よくわからない話。幽霊の意味は何? それで夫とのすれ違いが出たのに、最後「家族も一人増えてさ」と子どもができたことをほのめかす意味は何?
「北見から」乗代雄介 … ★3。ホラー?ファンタジー? 嫌いじゃない。が、最後のオチがもう一つ。あの小説家がどのように書いて親子を鎖塚から連れ出すのか、そのヒントだけでも欲しかった。
「朝霧のチョイ」蝉谷めぐ美 … ★3.5。紋寿郎と容の関係、それに絡む朝霧がおもしろい。朝霧はこの先も人形と人間に行き来できる朝霧でいるのだろうか? -
Posted by ブクログ
中村文則さんとの対話「社会の危機になにをできるか」と魚豊さんとの「自分の立場を描かない強さ」に、私が密かに抱いている「小川哲は小説で社会を変えようとしている説」を勝手に読み解き、痺れてしまった。(どこかにファンは推しに対して勝手な幻想をつくりあげる的なことが書いてあって、これ私じゃんってもなったけど)
でも最後にリチャード・ローティーを出して締めくくるあたり、小説の力でリベラル・ユートピアを実現しようとしてるんだよね、うんうん(涙)って胸熱だった。
とにかく読みどころ満載でページをめくる手が止まらない!
どの対談も濃厚で熱量が高い。読んだことのない作家、一作だけ読んで苦手意識があった作家、フィルターをかけて見ていた作家たちへ急に愛情とリスペクトがむくむく。もし自分が書き手だったら、さらに楽しめたのだろうなぁ。とりあえず読み手の私は、登場する作家の作品や課題図書を読み漁るとしたい。ブックガイドとしても素晴らしい。メモメモ。 -
Posted by ブクログ
第4号が出たのに、遅ればせながら文芸誌『GOAT』第1号です。躊躇していた文芸誌ですが、思い込みの殻を破る価値ある魅力が満載でした。
評判通り、いやそれ以上に、読んでよし(内容・質)、買ってよし(安価)、見てよし(装丁・紙)の三拍子揃いでした。
内容について。エンタメや純文学などのジャンルや国境も越えて…コンセプト通りでした。未読作家さんも多く、視野が広がり新たな関心対象も得られました。既知の作家さんも攻めてる印象で新鮮でした。特集の「愛」企画、愛を感じた「私のGOAT本」紹介もグッドでした。さらに全編「(次号へ続く)連載なし」の読み切りのみ…これ大きい!
安価なこと。ゴートくんだけに、約510ページの文量なのに税込510円って、あり得ない! この物価高のご時世に採算度外視? 文庫本だって千円超えがザラですよね? 言っちゃなんですが、その辺のアンソロジーよりずっといいです。
装丁について。SDGsを考慮した紙を考慮しながら、紙の色、装丁のビジュ良好で、とてもカジュアルです。唯一、ホントに一点だけ「まいったなぁ」と感じたのが、紙面構成の段組。ジャンルに関係なく上下二段組や三段組はいいのですが、随所に文字ポイントの小さい五段組があって…。正直お目目がしんどかったです泣。
並行読書が苦手な私ですが、他の小説等を読みながら、少しずつ(拾い読みすることなく全部)約1ヶ月超を要し読み切りました。達成感がありました。
時々行く書店にバックナンバーが置いてありラッキーでした。この後もゆっくり追いかけたいと思います。遅きに失することなし!です、ホント。 -
Posted by ブクログ
『一人 小川哲さんフェア』の締めくくりにピッタリの一冊だった。
それぞれの小川作品のプロセスから、自分の解釈と小川さんの意図の答え合わせをしているようで楽しい。
小川さんは「どんな読者が自分の作品をどう読んでいるか」を論理的に分析している。
だからこそ生まれるギリギリ読者が置いてけぼりにならないぐらいの攻めた作品に、自分は強く惹かれる。
対談で読んでみたくなったのは、佐藤究さんの『テスカポリトカ』。でも、テーマを知ると自分には無理そうで悔しい。
中村文則さんの『列』も読んでみたい。
ちょうど読んだばかりだったテッド・チャンの『息吹』に触れられているのも嬉しかった。
また、葉真中顕さんが語るファミコンの懐かしいゲームに関する話題も。
確かに物語性があるあの殺人事件ゲームは大きな衝撃だった。
子ども時代にあのゲームへ没入したことが、物語を体験する楽しさと、ミステリの魅力を知るきっかけだったのかもしれない。
今思えば、あの時の没入体験が今の自分の読書スタイルにもつながっている気がする。
印象に残った話はたくさんあるけど、特に小川さんが語っていた、
・「純文学作家のキャリアとサッカー日本代表の共通点」
・「本格ミステリを読む人と純文学を読む人では、作品を読むコードが違う」
という話は、どちらもなるほどと面白かった。
これですべての小川作品を読み終わったので『一人 小川哲さんフェア』も終了。
今は、どの作品をBEST3にするか、贅沢な悩みを楽しんでいる。 -
Posted by ブクログ
この本を読んで小川哲の脳は宇宙だと思った。
その複雑な論理的なパズルに創り上げる創造力は圧巻だった。
気を抜くと落ちてしまうような綱渡りをしているような気分でこの本を読んだ。
ここに載っている作品はどれもわたしの心を鷲掴みするような内容だった。
収録作は全て素晴らしい短編小説だったが『嘘と正典』はやはり素晴らしかった。
歴史を構成する上で代替可能なピースとなる存在と代替不可能なピースの存在という考え方がとても面白いと思った。
時空間通信技術を使って、未来を変えようとする存在に対し、正しい歴史に戻そうとする未来人。
そもそも、正しい歴史とは何なのか?未来人がなぜ正しい歴史がわかるのか?正しい歴史とはその未来人にとって都合の良い歴史ではないのか?
この本の最初に載っている『魔術師』のテーマは「真実と完璧な嘘の境界は、客観的には存在しても、人間がそれを認識できるとは限らない」というものだった。
この世は真実なのか、嘘なのか、判断ができないことがたくさんある。
誰かの都合の良い歴史が今もなお築かれているのではないだろうかと感じた。 -
Posted by ブクログ
戦争では、なぜ人はここまで人間性を失ってしまうのだろう。
下巻で、その理由が少しわかった気がした。
とても印象的だったのは、死と隣り合わせの時にある人物が、戦争とは何の関係もないことを思い浮かべる場面。
あまりにも何気ないその思考が胸に残った。
もし自分が同じ状況に置かれたら、きっと私もそんなことを考えている気がする。
極限状態では、人はそうやって自分を保つしかないのかもしれない。
小川さんは、あえて戦争を劇的なドラマとして描いていない。
普通なら感動的な言葉が出てきそうな場面でも、あえてそう描かない。
そこにリアリティがあると思ったし、ドラマチックに感動させようとしないところが小川作品の好きなところでもある。
一人ひとりに人生があるはずなのに、戦争では消耗品のように失われていく。その現実が、恐ろしいほどリアルに感じた。
読み終えて、この一文の重みを改めて感じた。
「必要なのかわからぬ戦いのために、必要に違いない命を懸けて。」 -
Posted by ブクログ
歴史に疎く、これまで戦争を扱った作品はほとんど読んでないので、この作品は敬遠していた。
でも、高木という男の戦争に対する心情を読んだ瞬間から、物語の中へ完全に没入した。
そこからは面白くて途中でやめられず、朝方まで一気に読んでしまった。(それでワールドカップは起きられず…)
「満洲」の架空の都市を舞台に、理想の国家や都市を築こうとする人々と、その裏にある戦争の狂気が描かれている。
「自分の命よりも重要。でなければ滅びる」という高木の心理が心に突き刺さる。
自分の命より国が大事だなんて今の時代にはとても理解できない。
歴史の知識としては知っていたつもりだったけど、一人の人間の切実な思いとして読まされると、その異様さに改めて言葉を失う。
戦争の中で、なぜこんなにも人間性を失ってしまうのか。おかしいと思ってる人もいたはずなのに。
まさか事実であってほしくないと思っていた作中の出来事が、検索してみると日本人が実際に行っていたことだと知り、大きなショックを受けた。
本物の歴史の中に、架空の街や、架空の人々が必死に生きている。
この史実と虚構のブレンドが絶妙で、気づけば私のような歴史に疎い人間でも夢中になっていた。
さらに、私の大好きな「クセの強い変な人間」もしっかりと登場するので、純粋に面白くてページをめくる手が止まらなくなる。
気づけば『一人 小川哲さんフェア』も12冊目。小説ではこの作品が最後になってしまった。
歴史ものということで最後まで避けてきたけど、これまで読んできた小川作品の魅力がたくさん詰まっていた。
寝不足だけど、早く下巻を読みたい。