小川哲のレビュー一覧
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上巻と下巻でガラッと趣が異なる。
上巻は20世紀のカンボジアの歴史を駆け巡る内容。不安定な政情と政府の弾圧・暴力が容赦無く民衆を攻撃する展開に思わず目を覆いたくなります。多少魔術的な要素を秘めつつも、SF的要素は皆無で、「あれ、この作品、日本SF大賞受賞したんだよな」と思うことしばしば。そんな極めて過酷な情勢下で生まれ育った神童ムイタックと人の嘘を見抜ける不思議な少女ソリヤは運命の糸に絡め取られるように出会い、そして宿命的な決別を遂げます。かなり怒涛の展開のなかで、悲惨なシーンを抱えて上巻は幕を閉じるのですが、下巻はそこから一気に半世紀も時を下ります。
ここからSF的要素が加わってくるのです -
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ネタバレ日露戦争前の満州を舞台にした出だしを読み始めたとき、こういう作品特有の読みにくさがなくて驚いた。
聞き覚えのない固有名詞が大量に出てくるため、どうしてもすらすら読むことはできないのだけど、必要以上の文章の堅苦しさがなく、作者の書いている映像が脳内にイメージできる。
ただし、読み始めたときは日本の軍人であることを隠して中国に渡った、密偵・髙木が主人公の話だと思ったが、彼は上巻の半分あたりでさっくりと戦死し、ロシア正教の伝道師であるクラスニコフ(隠された任務はロシアの満州における鉄道網拡大のために現地人を取り込むことである、元測量士)や、時の権力者に両親や家財の一切を奪われたため、強くあることを -
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小説はコミュニケーション。
小説の「勝利条件」=「面白い小説とは何か」はまだわかっていない。
・作者、読者が持つそれぞれの小説法
・抽象化と個別化:どれも人間がやっていることなので、かならず重なるところがある。それと同時に、どれも個別の人間がやっていることなので、絶対に重ならないところもある
カミュは、戦争を抽象化し、『ペスト』という形で個別化した
・「文体」においてもっとも重要な要素、「情報の順番」。リニアな一次元の文章に圧縮するため
視点人物と読者の情報量の差
最大化:謎解き
最小化:読みやすさ、サスペンス
・作者と読者の関係性、契約、冒頭での行く先の明言(あるいはしないこ -
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小説の書き方の体だが、作家志望者向けということはなく小説作家がどんなことをを考えて書いているのかを教えてくれる。物語の書き方 (テクニカルにどう書くか) なる本はちょいちょい見るが、もう少し広い思想/考え方的な感じ。何を書くか、どう書くかの両面で。著者固有なのか作家全般なのかは分からないけど、読者とのコミュニケーションをいかに大切に考えているのかは分かる。前提知識、流れでの認識gap、時系列・・・。
章が進むにつれて具体から抽象に段々難しくなる感じだが、人気作家が実演を交えながら説明するので説得力が半端ない。一文一文に込める想いや思索が深いのと、自分の読みがいかに浅いかを自覚する。ただでさえ -
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過去に遡ってマルクスとエンゲルスの出逢いを防ぎ共産主義の誕生自体を阻止する計画を企むCIAの歴史改変SFもののストーリーというあらすじを見て、興奮せざるを得なかった。
興奮冷めやらぬまま読み始めてから一気に読み終わった。
過去にメッセージを送るというSF的要素が中心とはなっているが、設定が緻密に練られており、その設定の上でロジカルに話が展開していく。
このディティールへのこだわりと論理性というのが小川哲作品の特徴の一つだとも思える。
読み進めていくうちにロジックが一つずつはまっていくような感覚が気持ちよい。
上述の作品含む短編6作品が含まれているが、どの話もはずれがない。 -
Posted by ブクログ
本書は、SF作家である小川哲がパーソナリティを務めるラジオトーク番組を書籍化したものである。番組には映画監督、女優、芸人、小説家など、ジャンルを横断した多彩なゲストが招かれ、本や映画、さまざまなコンテンツについて語り合う対談集となっている。
印象的だったのは、対談の随所で語られる「本の味わい方」の多様さだ。ゲストたちは、自分がどのように小説を読み、どこに惹かれてきたのかを自然体で語る。その話を追っていくうちに、小説とは単に物語の流れを追うものではなく、言葉の選び方や語りのリズム、構成の妙といった表現そのものを楽しむ読み方があるのだ、ということが繰り返し示される。
正直に言えば、これまでの自