小川哲のレビュー一覧
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去年から、私の中で小川哲氏がとにかく熱い。
小説作品も完読を目指して読み進めているところだけれど、こちらは小川哲氏による“小説論”的な一冊。
新書の形をしているものの、書店では文芸コーナーに置かれていることが多い(ご本人も動画で「脱法新書」と言っていた)。
小川作品を読んでいると、物語の随所に哲学的な思考が顔を出し、著者の論理的な頭の動きが垣間見える。
この本では、その思考の過程そのものをじっくり見ることができた。
とくに伏線に関する話には、なるほどと何度も頷かされた。
だからこそ、一文一章すべてに読み応えがあるのか、と腑に落ちる。
『地図と拳』も、また読み返したくなった。 -
Posted by ブクログ
全部読み切り短編というのが、すごくいい。
今までの文芸誌は、連載ばかりなので、なんだか蚊帳の外感があって、書い続けないと仲間に入れてあげないよーと言われてるみたいで寂しさを感じることしばしば。
しかも豪華ラインナップに、いいの?この値段で?と問いたくなる。赤字だよね。
ともあれ、西加奈子「デヴィアン」市川沙央「音の心中」小川哲「嘔吐」をまずは読む。
全部面白い!
小川哲は、朝井リョウと仲良しになって影響受けてるような笑。
西加奈子も仲良しの村田沙耶香となんか似てるような。
互いに影響しあって、短編だから、肩の力を抜いて自由に書いてる感あり。
葉間中顕「五十歳,ロスジェネ、ギバー落ち」も -
Posted by ブクログ
ネタバレ遅ればせながら、2026年初読破。題名に惹かれて購入。作者も知らない、完全ど素人だが、小説なんとなく好きだな〜と公言しているので、できればいろんな知識を得ておきたいと思い読んでみた。
前半は、「あ、私この作者の書き方、読みづらいかも」と思ったが、終盤から案外すらすら読めた。知識がとんでもなく少ない私は、小説を読むのに前提説明が本当に必要としている人物なのだ。だから、読者が事前知識ある前提で書かれているものじゃないとほんとに読めない。丁寧に書いてくれる作家さんって、私との相性だと思ってた。けど、これある意味あってるかも。読み手を考えてくれる作者って、きっと読者に対して優しい気持ちがあるんだよね -
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ネタバレ本作は、競技クイズ界において今最も強いプレイヤーとされる社会人クイズプレイヤーの主人公、三島玲央が、テレビのクイズ番組にてタレントの本庄絆に負けるという場面から始まる。それも、クイズの問い読みが始まる前に。「0文字押し」なんてありえるのか。「ヤラセ」とも「魔法」とも形容されたそれは、クイズプレイヤーだからこそ否定したいものであり、クイズプレイヤーだからこそ否定できないものだった。一般に「魔法」と言われるような早押しは、実は競技クイズの競技性によるものであり、ロジックとテクニックの賜物である。もちろん知識や経験も必要である。クイズ番組に出るだけのタレントに、それらが備わっているはずもなく、備わっ
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個人的には上巻よりも面白かった。
重畳的に奥深く世界感が構成されており、まとめて一気に読みたい作品(途中で時間が空いてしまうと、この作品の世界から離れてしまい、再び奥深くに入り込むことが難しくなる感覚がある。また、一度奥に入り込んでしまうと中々出てきにくいので、一気読みの方が楽しめるように思う)
著者の一作目、ユートロニカのこちら側に続いて読んだが、確かに指摘されている通り、史実をベースとする展開や狂気を孕んだ人の表現の具体性が、ごつごつとした手触りをもたらし、前作に比べて人工的な洗練さからの脱却が見られて、著者の進化を感じられる。
自分自身が研究者であること、またメカニズムデザインを齧っ -
購入済み
クイズって面白いの究極の言語化
ちょうど少し前からQuizKnockさんの動画見るようになってクイズの奥深さに触れているところで、この作品に出会いました。
動画を見ながら、なるほどそういうふうに考えるのか、そういう部分で勝負するのか、と感覚的に捉えていた部分が明確に言語化されており、「クイズの解答」をもらった気持ちでした。
そういう風に、全編を通してテストの答え合わせをしているような感覚だったので、あまりミステリー感は感じず。どちらかというと三島の人生を追体験するようなヒューマンドラマを見ている気分でした。
作中では多くのクイズプレーヤーを敵に回す本庄ですが、私は悪だとは思えなかったです。戦ってる土俵が違っただけ。立場が違 -
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正解のある問いはつまらないから、小説のテーマとならないっていう感覚よくわかる。
小説を探すためにまず捨てないといけないのは、自分の価値観!
視点人物と読者の距離感を縮めると読みやすい。
文章を正しく理解させるための読点
読んでいて、著者の人となりに好感を覚えた。ロジカルに話を進めていく感じと、取りこぼしや例外になるところを括弧内で何度も示すところなど、たぶん誠実な人なんだろう。
美容院でのエピソード、無口な職人気質な美容師が他の客とは軽口をたたいているのはよくありそうな話だけれど、最後のLINE登録も聞かれないところで本当に笑った。手元でLINEを開く用意をしてあるのもわかる。こうい -
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なんだこれは……面白すぎる。
完全に一気読み。
クイズ番組の決勝戦。
対戦相手・本庄絆は、問題文が一文字も読まれないうちに回答し、しかも正解する。
── 不可解な「ゼロ文字正答」。
これはヤラセなのか。
それとも、天才のなせる魔法なのか。
最終問題で敗退した僕・三島は、その謎を追いはじめる。
クイズ番組は「賢い人が知識を競う」娯楽。
たまに正解できると、画面のこちら側で小さくガッツポーズをしてしまう。
そんな“楽しい世界”で戦う回答者たちの並大抵ではない努力をまざまざとみせつけられる。
「確定ポイント」「読ませ押し」
〝技〟の凄み。
演出家と回答者の底知れぬ駆け引き。
そして、テレビと -
Posted by ブクログ
ネタバレ「情報銀行」という言葉が出る度に、なんだか生温かい気持ちになるわけですが…面白かったです!一見するとユートピア系ディストピア小説なのですが、第二章などを読むと、単純なディストピア…でもないのかも?という気持ちになります(過去のデータを仔細に見る事で、かえって今に意識がフォーカスできる、というの良かった)。というわけで非常にニュートラルで新鮮でした。群像劇なのも良いです。第二章で出てきたリード刑事が第二章では随分と感傷的なのに、第三章では太々しい後輩刑事然としていて、これこそ群像劇の味わい!データをもとに排除されるのは、危険とレッテルを貼られた人物よりも、不確実性の高い人物…というのも今後あり得