小川哲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『君が手にするはずだった黄金』を読んで、個人的に最も感情を揺さぶられたのはプロローグだった。
本来はサラリーマンに向いていないであろう主人公が、必死に就職活動に取り組み、ふと「なぜ自分はこんなことをしているのか」と我に返る。そしてそれが彼女との約束のためだったと気付き、泣きそうになる場面が一番胸に迫った。なぜここまで心に響くのか、作中の主人公自身も明確な理由を掴めていないが、自分の生き方や将来を曲げてまで誰かのために一生懸命になれる、その想いの尊さに強く打たれたのだと思う。
収録されている他の短編では、等身大の自分以上に大きく見せようと見栄を張る人物たちが次々と登場する。そうした虚栄心が剥がれ落ち、没落していく様にはどこかすっきりするような感覚を覚えたのも正直なところだ。また、主人公ほどの該博な知識はないにしても、古典や哲学的な名著へ憧れを抱くような、誰もが少なからず持っている俗っぽさや意外性が描かれている点も非常に興味深かった。
作中の主人公は自分と年齢が近いこともあり、小学生時代の友人と今もなお密に連絡を取り合っている姿が印象に残った。自分自身を振り返ると、小学校はおろか高校の同級生ともほとんど連絡を取っていない。人間関係にはメンテナンスが必要だと頭では分かっていても、自分から動くことはできずにいる。ちょうど今日、高校の同窓会の誘いがLINEで届き、なんとも言えないもやもやした気持ちを抱えていたこともあって、人間関係のあり方についても深く考えさせられる読書体験となった。
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Posted by ブクログ
著者と同名の小説家・小川哲を主人公とした短編小説。
プロローグで取り扱われていた可能世界の僕のノンフィクション話なのか、もしくは本人の話なのか錯覚が生じてくる。
途中で出てくる主人公が考える小説家についての考えは著者の経験からなる話なのかと思うと、エッセイっぽくも思えてくる。
しかし、あくまで誰しもあるはずの手に入れることができなかった無数の可能世界の話であると再度考え直させられる。
こんなように考えが行ったり来たりさせられるほど面白かった。
朝井リョウのPodcastなどで著者の話が出てきて気になっていた作家の話が読めて良かった。
SF小説はほとんど読んだことがないが、次は長編を読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
初めての文芸誌?ムック本?
普段は絶対読まない時代小説っぽいものとか、知らないラッパーのエッセイとか、ここでしか読めないものが読めて嬉しい
ゴートくんかわいい
佐原ひかりの『出せなかった手紙』が好きだった
七年前、あっちゃんに出会った人魚
会う約束をしていたけどあっちゃんは忘れちゃってるみたい
あっちゃんに教えて貰った文字で書き残しておく手紙
小さい頃、母がオバQに扮して、利き手じゃない方で書いてくれた手紙を思い出してちょっと泣いた(ずっと信じていた)
人魚の書いた文字が、オバQの文字にそっくりだった気がしたから
私はそのころからマメだったので、貰った手紙は全て残している、マメでよかった
ひとりひとりの記憶と繋がって本は面白くなるから、楽しみ方がみんな違うっていうのを強く実感した作品だった -
Posted by ブクログ
ネタバレ途中まで小川さんの実体験かと思って読んでいました。
後半に出てくるババリュージなる漫画家さんは果たして現実ではどのような方なのか調べたところウルトラマンに出てくるばばりゅうじというキャラクターがひっかかりました。
今作は小川哲という作者と同名の語り手によるフィクションでした。
小川哲が思い出を振り返っていくと、そこには嘘で塗り固められた人たちによる、自分の身近にもありそうな体験がリアルに描かれていました。
特に印象に残ったのが、あの3月11日の出来事は思い出せるけれど、前日は何をしていたのか思い出せない話。確かに存在していたし、何もしていないなんてことはない1日。印象に残るか残らないかで同じ記憶でも引き出しやすさが違う。
こんなことを伝えたいはずではないけれど、1日をもう少し丁寧に、大事に生きようと思いました。 -
Posted by ブクログ
クイズ番組に出演している人たちはみんな私からは遠い存在で、クイズに熱を注ぐ高校生たちはやっぱりどこか変わっている子達だ。そんな風に私はクイズというものを捉えていた。
こんなにもクイズという世界が熱で溢れているとは知らなかった。
ピンポンという正解を告げる音は人生の肯定
私たちは日々クイズに挑戦し、答えを迫られている。
この小説をミステリーと題するのはよく理解できなかったけど、思っていた想像以上に面白い内容だった。
答えが必ずあるという前提でクイズというものが成り立つのだと思ってきたけど、三島のクイズと本庄のクイズが根本的に噛み合わないというズレが話の根幹にあって、でもそれはダメなことじゃないんだと
こんなことを書きながら「君のクイズ」という題の意味に気づいた -
Posted by ブクログ
最初の「東京」というゲームが存在する、という発想からして面白い。現実にある東京を、ひとつのゲームとして捉え直すことで、普段なら見過ごしてしまう社会の仕組みや、人が当然のように受け入れている価値観が違って見えてくる。
屁理屈のようでいて、考えてみると妙に筋が通っている。その屁理屈を突き詰めていくうちに、いつの間にか哲学的な問いに変わっていくのが面白かった。
現代社会へのアンチテーゼもかなり強く、単に「変なことを言っている本」ではなく、当たり前だと思っているものを一度疑ってみるきっかけをくれる作品だった。
何より、「東京をゲームとして遊ぶ」という発想が好き。現実を少しだけ異なるルールで見てみることで、普段見えていなかったものが見えてくるような体験であった。
著者の他の作品も読みたいと思った。