あらすじ
1932年、満洲国建国。明男が建築学徒として携わった仙桃城は、立派な都市に発展した。一方、乱暴な支配に苦しむ地元住民との対立は激化。明男がダンスホールで出会った孫丞琳も、抗日軍の一人だった。細川は、リットン卿の調査を受け、戦争構造学研究所を設立。十年先の未来を予測しようとするが・・・・・・。人はなぜ拳を振りあげ、戦争へと向かってしまうのか? 圧倒的スケールで描き切る歴史×空想巨編! 第13回山田風太郎賞受賞作。第168回直木三十五賞受賞作。
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大作すぎる
天才?
ずっと飽きないし、面白いし
こんな言葉しか出なくて情けないが
本当に素晴らしい
戦争、歴史についてもっと知りたくなった
登場人物が多くてこんがらがるが、読み進められる
ずっと意表をつかれるのすごいわ
実際にこんなだったのかな
満州鉄道の話は興味深い個人的に
中国の歴史知りたいー
Posted by ブクログ
日中戦争の泥沼に突っ込んでいく日本軍。
混迷を極める中国戦線の前線近くに日本が満州国の理想郷となるべく作った人口の都市、仙桃城はあった。
計画に携わった天才建築家の明男は理想とはかけ離れた建築を要求する関東軍と自らの思想の乖離に苦しみながら、街のシンボルとなる公園の建築を手掛ける。
しかしそこも戦乱の兆しがすぐそこまで迫っていた。
日本、中国、ソ連がいずれも現代につながる形で変貌していく。
意外と知らなった日中戦争がなぜ米英との関係悪化につながったのか、そしてそうなる事を知りながらなぜ日本は南方を攻めたのかが理解できた。
後半でぞっとしたのは八路軍の自国民に対する振る舞い。敵は日本軍であるはずなのに、仲間であるはずの同国民に対して再教育という名の拷問と洗脳を繰り返すさまが恐ろしかった。
戦争ではどの国が悪辣だったという話になりがちだが、戦争という極限状態ではちょっとしたことがきっかけでいかなる集団も驚くほど残酷になれると思ったので、覚えておきたい。
最後の最後の終わり方は見事。
Posted by ブクログ
最高に面白かった。
なんという参考文献の量!
戦後80 年ということもあって、
太平洋戦争や日ソ戦の本を
読んでいたことも、
この本を手にするきっかけだった。
総力戦研究所は「日本必敗」の
結論を出していたし、
東條も米国との戦争は回避したかった
かもしれないが、
もし米国と戦わなければ
中国の利権は失っていただろうし、
ましてや満州からも手を引かなければ
ならなかっただろうから、
いずれにせよ日本は戦争への道を
突き進んでいたはず。
勝てる見込みのない日露戦争に勝ってしまい、
やっとの思いで手にした満州に固執したことが、破滅の元凶だったんだ。
あの頃我々リーベンクイズが
大陸でやった蛮行から目を逸らしてもいけない。
そんな因縁の地の歴史を下書きにしながら
これだけ壮大な物語を創作できるなんて、
まさに天才の仕事としか言いようがない。
執筆に3年かかったというのも頷ける。
小川哲の著作、全部読もうと決めた。
Posted by ブクログ
圧巻だった。世界大戦下の満州で、明男や細川、そして石本までもがこんなにも必死に生きていた。戦争とは?都市とは?地図とは?多くの思考のもと練り上げていく事象に、ただただ惹き込まれた。『ゲームの王国』も実際の歴史を背景としてフィクションを盛り込む手法だったが今回はさらに洗練された印象だ。満州を舞台にSF要素もあり、ジャンルを飛び越えた作品だった。
ラストが物語の印象的な出来事とリンクして感動を誘うのだが、これだけの長い物語を読んできたからこそ感動できるのであり、読者に対するご褒美だと感じた。
Posted by ブクログ
上下巻の下巻。
とにかくすごいものを読んだという実感が
頭を覆って言葉がうまく出てこない。
人がいる。
建物が立つ。
街ができる。
国が興る。
どれもが人の営みだけれど。
どれもが人の営みだから。
さまざまな思想がそこには宿る。
いろいろな人物が登場したけれど、
個人的には安井が深く印象に遺った。
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地図と拳、それぞれの役割や人間がそれらを把握しきれていないこと。制覇しきれていないこと。人物が多く視点も様々だけど、だからこそ飽きない大作だった。面白かった。
Posted by ブクログ
ここでの「地図」とは街を作ること.「拳」はもちろん暴力であり戦争.
満州を舞台に19世紀末から太平洋戦争後までの50余年を描く大河ドラマ.そこで「地図」を体現するのは,満鉄,あるいは謎の研究所を主催する小川,そして主人公である明男(須野家)であり,一方の「拳」を体現するのは関東軍や孫親子.ある者は自ら運命を切り開こうとそれに抗い,しかし多かれ少なかれ,全員が運命に翻弄される.
結末は虚しいものともいえるが,全ての発端でもある「青龍島」の謎が明らかになる.
Posted by ブクログ
小川哲『地図と拳 下』集英社文庫。
第168回直木賞受賞作、第13回山田風太郎賞受賞作と各界から絶賛された歴史空想小説。
歴史という真実の中で描かれる空想の街。消えては産まれる空想の街。戦勝を信じて、最後まで皇国を胸に軍人であり続けた者も居れば、最初から敗戦を知り、敗戦の先にある未来を描きながら、戦火の下をのらりくらりと掻い潜った者。
兵どもが夢の跡……
虚しさだけが残る結末。
今、まさにこの瞬間も、プーチン率いるロシア軍はウクライナ侵攻を続けている。まるでソ連が崩壊したにも関わらず、それを信じようとしない愚かな指導者の姿を見るようだ。
日本は戦後80年を迎えても、なおアメリカに支配され続けている。愚かな日本の歴代首相はアメリカを同盟国と呼んでいる。支配されていることに気付かないのか、鈍感なのか。
戦争とはそういう愚か者の暴走の結末なのだろう。
1932年、満洲国建国。須野の息子の明男は、細川に命ぜられるまま建築学徒として仙桃城の創設に携わり、仙桃城は立派な都市に発展した。一方、リットン卿による満州国の調査結果を受け、細川は戦争構造学研究所を設立し、十年先の未来を予測しようとする。
未来を創る者と目の前の現実にすら目を閉じて、不毛な闘いに身を置く者。戦火の先に広がっていたものとは……
本体価格830円
★★★★★
Posted by ブクログ
読み終わった時、帰ってきた、という気持ちになった。
満州は仙桃城を舞台にした50年がこの中にはあった。
初めこそ視点が移り変わり読み進めるのに時間がかかったが、点と点が繋がり始めてからは夢中になって読んだ。
小川哲さんの作品はこの快感が病みつきになる。
巻末の解説にあったが、
小川哲は「慟哭」を描くスキルを完璧に会得していると。
悲劇の物語だが希望もあり、
この時代の満州の知識も深まった素敵な読書体験であった。
Posted by ブクログ
骨太です!
巻末の参考文献がえげつないほど多い
この膨大なリサーチをもとに描かれた、圧倒的な物語。
舞台は満州、登場人物も多いし、中国人名が読めない覚えられないし・・・
けどそれは杞憂
読み始めると、登場人物やエピソードが面白くて、どんどん読み進められた
当時の満州と日本、戦争とそれに巻き込まれていった人々を緻密にリアルに構築した素晴らしい物語だと思います
直木賞受賞、そりゃ獲るでしょ!
パチパチ!
Posted by ブクログ
日露戦争前後から第二次大戦終了後までの満州の地を巡る人々、国々のが絡み合った歴史を力強く再構築した歴史改変もの。孫悟空という人物が出てきたり戦争構造学研究所と仮想内閣という要素があることで歴史改変SF的ではあるのだけど、史実のifを描くことが主題ではないので満州を巡る歴史や戦争、それらにまつわる人々の人生や感情に深く引き込まれる。
全編に渡る大きなテーマはタイトルにもなっている「地図」と「拳(暴力、戦争)」。戦後80年となる現在も世界では多くの拳が振るわれていることはもちろんだが、この物語ならではということでいうと「地図」の現在についても色々と考えることになった。日本国内に限れば「拳」と共に並べられる文脈は少なくなっていると思うが、例えば毎年規模を増す自然災害の復旧により各地で新たな都市や集落が構想され地図が更新されたり、人口減少が進んでいく中でこれまでの地図通りでなくなったり新たな地図を作らねばならなくなったりしているところは多くあるのだろう。新たな地図を作るとき、その周囲にはどのような人や想いがあるのか、歴史的にも地理的にも思考が渦巻きながら広がる素晴らしい小説だった。
Posted by ブクログ
面白かった。とにかく圧倒的なスケール感。
多くの人物が交差する群像劇が、下巻で一気に広がりと深みを見せ、息をのむような物語の密度に引き込まれた。
10頁にも及ぶ参考文献リストにも驚かされる。
架空の物語でありながら、史実に裏打ちされた圧倒的なリアリティがあり、物語に説得力と重みを与えていた。
決して読みやすい作品ではない。登場人物の多さや専門的な描写もある。
でも一度世界に入ると、ページをめくる手が止まらなくなる。
読み終えたあとには、深い余韻とともに、歴史を“どう描くか”“どう見るか”という視点を問い直される感覚が残る。
歴史小説でも戦争文学でもない。これは、歴史を語る“構造”そのものを問う、唯一無二の物語だった。
Posted by ブクログ
下巻はいよいよ戦争まっただ中となっていき、それぞれの登場人物が揺れ動きながら生きていき、そして死んでしまいます。
タイトルは地図と拳ですが、全編に地図のエピソードが強く意識された作品だと思います。
Posted by ブクログ
とにかくスケールの大きな物語。正直理解しきれない部分も多く、時代が飛び飛びでどこが山場なのかもいまいち分からなかった。
しかし雰囲気と文章の巧みさで引き込まれたのでこの評価。
Posted by ブクログ
視点がどんどん変わり、登場人物が多いので、決して読みやすい話ではなかったけれど、どんどん引き込まれていった。またベースとなっている史実についても知らないことが多く、勉強になった。
あと、地図と拳(戦争)についての話だったけれど、建築についての話でもあった。子どもの頃、建築家になりたかったことを思い出した。
Posted by ブクログ
最後に小刀が出てきたとこで涙した。
色んな立場の色んな人が出てきて難しいなと思いながら読んだけど、良い終わり方だったと思う。
「もはや自分の命は、自分のものではない。自分の命が自分のものでないことを選ぶ権利もない」
Posted by ブクログ
地図には国家の野望と歴史が宿る。日露戦争前夜から終戦までの満洲を舞台に、半世紀に渡る人々の生き様と思想が圧倒的な筆力で描かれる。痺れるほど魅力的なシークエンスが積み重なりながら、信仰力・知力・武力、そして創話の力が示される。下巻以降は、暗く重たい史実にそれら全てが飲み込まれそうになるが、人々が祈りの如く希望を捨てない様は実に感動的。
Posted by ブクログ
この2カ月ほど忙しくて読み進めず、義和団の乱から復習して読みに行くけど、真実の悲劇に迫るというよりは、どちらかというとSFなので、気合入れて復習した以上の涙や感動は得られなかったかなと思う。
Posted by ブクログ
第168回、直木賞受賞作。
近代史、特に戦争モノ×SFはシンプルに好きです。
視点が登場人物ごとに変わり、歴史は細かく進む。
面白かったけれど、SF的要素の物足りなさと、ラストのあっさり感は残りました。
Posted by ブクログ
ひとつの都市が現われ、そして消えた。
人々は夢を地図に描き出そうとする。夢はもう一つの夢と対立し、拳で解決せんとする。
実在しない都市をめぐる物語が、歴史の一端を表しているようだ。
なぜ地図に存在しないはずの島が描かれたのか?
桃源郷は、どこにあるのか?
その答えは?
Posted by ブクログ
小川哲『直木賞受賞作品 地図と拳 下』。
満州国建設。
満州を巡って、複雑に入り乱れるそれぞれの思惑。
明男も建築学徒として、仙桃城へ。
関東軍の乱暴な支配に支那人との対立は激しくなっていく…
土地の利権を巡って、人たちは拳を交える。
土地を知るために、地図を作り、そして我が物とするために戦う。
まさにウクライナとロシア、イスラエルとガザ地区…
日本は石油がないために石油を求めて、戦争へと。
勝てるわけがないのに…
細川のような人間がいれば、第2次世界大戦は防げたのかもしれない。
戦争は何も産まない。
平和であることを望む。
やっぱり歴史小説は史実に基づく方が。
空想が入るのは何か違和感を覚えてしまう。
歴史好きからすると。