小川哲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
出てくる地名や川の名前に場所の注釈が無く
自分の不勉強のつけがとうとう回って来たなと思いながらも
背表紙に世界地図を描き、地名を調べながらプロットしていく始末(架空の地名も幾つかありました)
やっているうちに、楽しくなってしまい
この1冊のプロになってやるというスイッチオン
知らない単語に丸をつけ、余白に解説を書き込む
上下と読み切るまでに四日と時間を要しましたが、圧巻の小説でした
同じ直木賞受賞作品でもある「同志少女よ敵を撃て」でお馴染み、歴史的事件をミクロな視点で描く本作品は、それぞれの正義、視点が描かれており最後まで楽しめました
また、日露戦争について学び直すきっかけにもなり面白さもさることながら、為になる1冊となりました
大河ドラマ好きにおすすめ! -
購入済み
問題を一文字も読み上げていないのに、クイズに正解してしまったのは何故?というシンプルな謎を解いていく。
ミステリーというよりはクイズのことを深く知れる面白い作品でした。
昔友達にクイズをしてる人がいたので主人公とその友達を重ねて読みましたが、本当に似ているところがたくさんあり、特にクイズをやっていると恥ずかしくなくなるというのはなるほどな〜と思いました。
クイズ番組を見る目が変わる作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれがデビュー作だなんて信じられないくらい良かった。
よい生活をするためにはよい思想を持つ必要がある。物騒なことやネガティブな考えを抱いては自分の価値が下がるなんて、ゆるやかな思想統制に違いなかった。
でも労働のない安心安全な暮らしは多くの人間が望むものだろうとも思えるので、それを求める気持ちも分からなくはない。思想の自由と犯罪を事前に取り除いた社会、比べることのできないこのふたつの狭間で悩まされる読書となった。
章ごとに視点が変わっていくところが特に良かった。さまざまな立場の人間のさまざまな選択と主張から、リゾートの何が問題なのかが見えてくる。人類全員が同じ考えを持つことはできないからこそ対話の重要性を説き、一言で表すことはできない「自由」というものを、一冊を通して言葉を尽くして語っていると思った。
第四章のドーフマン視点の話が一番印象深い。被害者と加害者の未来を救うシステムであるという思いが人々に届いておらず、もっとも絶望を感じた。
ユートロニカの意味、人間は次第に無意識状態に回帰して……という話が恐ろしかった。情報が溢れた現代ではこれがもう起きているようにも思えるし、生成AIが広く使われるようになった今、この小説のような未来はそう遠くないようにも思える。
全体を通して、海外の小説を読んでいるような気分にさせられた。ほかの作品も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
発売、話題になってからしばらく経っていたけど、YouTubeきっかけで全巻(このとき3巻まで)購入した。
読み物として、こんなにワクワクしたのは久しぶり。読みたくて読みたくて、玄関に置き配される気配をドキドキしながら待っていた。
紙の本ファンにはたまらないよね笑
510(ゴート)円以上の価値があることは間違いないと思う。
現代作家の本をなかなか読めない私だけど、短編で各作家のエッセンスを味わえるのは、本当に美味しい体験すぎて申し訳ないくらい。
雑誌名の秀逸さとか、企画の画期的さとか、時代にこんなにぴったり”ハマった”ものが生まれたときの興奮って、同時代の人間にとって勇気を与えるんだなと思った。小学館さん、これからも頑張ってください! -
Posted by ブクログ
1.SFっぽくない感じが良かった。
全編通してSFっぽさは少なかったが、それ以外の良さがあった。完全なSF世界ではないからこそのリアリティがあるような気がする。「魔術師」で言えば、タイムマシンが本物であるかどうかわからないまま物語が終わるのが良かった。これについては「読者に任せる」書き方が効果的に感じた。 「ひとすじの光」はSF要素がなかったが、馬と自分とを重ね合わせて父親との関係性や自身のアイデンティティに思いを馳せる姿に感動した。「ムジカ・ムンダーナ」はSFというよりファンタジーかな。
2.嘘と正典が一番良かった。
前半はSF的な要素がないまま話が進んでいき、後半から過去との通信が出てきて一気に話が進んでいく展開に引き込まれた。そして冒頭のエンゲルスの裁判につながっていくところはもはや感動的でもあった。過去に干渉することができる機械によって、世界が分岐する場合は「正典」にあたるものはなにに該当するのだろうか。ニュートンがいなくても万有引力の法則が見つかっただろう。これは完全に同意する。しかし、エンゲルスがいなかったら共産主義は存在しなかったのだろうか。歴史を改変するものを妨害するために歴史を改変していないだろうか。少なくとも中継者や守護者の人生には大きく干渉していると思うし、それによってバタフライエフェクトが発生していないだろうか。なにをもって正典としているのだろう。
「嘘と正典」の過去に送れる電気信号は「Steins;Gate」のDメールに近いような感じがした。一度行った改変を取り消すことで元の世界を目指すのも同じかな。そのなかで、計算量を減らしたいという「嘘と正典」の動機は「Steins;Gate」よりも弱く感じた。「Steins;Gate」の独善的で身勝手でも仲間との絆を大切にする感じが大好き。 -
ネタバレ 購入済み
僕のクイズを問うている
僕の頭は藤川球児のストレートくらい回転している。
最序盤のこの文章から俄然引き込まれた。
すごく筋の通った展開で、タイトルとラストもリンクしていて読後感の良い作品。 -
Posted by ブクログ
小川哲の直木賞受賞作。
満州というかつて様々な国の思惑が重なった地図に、様々な背景の人間が心を描く群像劇。
全部読み終えた今、高木が小刀を頑なに手放さなかったのは何故だろうと考えてみる。小刀が指す意味は『拳』であり、つまり戦争である。高木は葛藤の末、その拳を手放さなかった故に細川が命の危険に陥るものの、細川はその拳を回収することに成功する。
この物語において、戦争は決して肯定されるものではないが、その拳がなければ高木が決死の戦線に向かって死線を守ったように、今がこの形で存在していたかはわからない。戦争において、拳は必ず必要なものなのだ。
しばらくして、その細川によりオケアノスの意味を持つ名前を授かった須野明男が生を受け、明男はその小刀に興味を持つものの、母の恵子により取り上げられてしまう。
つまり、明男が請け負った使命は、拳を使用せずにオケアノスを目指すことだ。オケアノスを発見することはかのアレキサンダー大王すら成し遂げていない偉業であるにも関わらず、その手段である拳は取り上げられてしまった。そこで、明男は次なる手段として『建築』を習得していくことになる。
以上の流れから、小刀とは拳、つまり戦争の象徴であり、小刀を持たない明男は、戦争とは無縁の、平和を建築するための人物として育っていくこととなる。
さて、明男はこの惨劇の製造機である戦争のその先に、平和を築くことはできるのだろうか―――