小川哲のレビュー一覧

  • 地図と拳 下

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    小川哲『地図と拳 下』集英社文庫。

    第168回直木賞受賞作、第13回山田風太郎賞受賞作と各界から絶賛された歴史空想小説。

    歴史という真実の中で描かれる空想の街。消えては産まれる空想の街。戦勝を信じて、最後まで皇国を胸に軍人であり続けた者も居れば、最初から敗戦を知り、敗戦の先にある未来を描きながら、戦火の下をのらりくらりと掻い潜った者。

    兵どもが夢の跡……

    虚しさだけが残る結末。

    今、まさにこの瞬間も、プーチン率いるロシア軍はウクライナ侵攻を続けている。まるでソ連が崩壊したにも関わらず、それを信じようとしない愚かな指導者の姿を見るようだ。

    日本は戦後80年を迎えても、なおアメリカに支

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    2025年07月04日
  • 嘘と正典

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    ネタバレ

    短編集でこんなに全部面白いことある!?ってくらい、良かった、とても楽しかった。

    ・魔術師
    マジックが文面でこんなに生き生きと表現できるんだと圧巻。思わず心を掴まれる臨場感のある演出描写、含んだ終わり方も全部好きだった。めちゃめちゃ好み。

    ・ひとすじの光
    競馬すぎて面白かった(笑)競馬好きとして非常に楽しめた。小川さんが競馬好きとしか思えないくらい熱意感じた(笑)血統のロマンがふんだんに描かれていて、ますます血統の魅力を感じました。

    ・時の扉
    ファンタジー要素強め。いちばんよく分からなかったけど、世界観や価値観を楽しめたかな。抽象的で少し難しめ。

    ・ムジカ・ムンダーナ
    音楽を通貨とする島

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    2025年07月03日
  • 嘘と正典

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    歴史絡んだSFはかなり好みだった。歴史ネタじゃないものも柔らかくて、油断できない雰囲気の筆致と相まって飽きない。SFらしく読後はモヤモヤがあるけど(それを楽しむのがSFだと思うけど)SFを読み慣れない私には、解説が優秀だと感じた。いままで解説に満足したことなかったけど、この文庫は解説までセットで高評価。

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    2025年07月03日
  • 地図と拳 上

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    小川哲『地図と拳 上』集英社文庫。

    第168回直木賞受賞作、第13回山田風太郎賞受賞作と各界から絶賛された歴史空想小説。

    物語はまるで地固めするように極めてゆっくり、じっくりと展開していく。せっかちな自分は冒頭から登場していた日本から満州に渡った密偵の高木が主人公だと思っていたら、早々に戦死してしまう。どうやら本当の主人公は高木に帯同し、通訳を務めていた細川と存在しないはずの青龍島を探して海を渡った須野なのだろう。

    細川と須野以外にも、ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ、李家鎮という街を乗っ取り、仙桃城と名付けて支配する孫悟空、孫悟空の百八番目の娘、孫丞琳も物語では重要

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    2025年07月03日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    著者と様々な分野のゲストが語り合うラジオ番組を書き起こした本。著者があくまで小説家としてラジオを進めており、その中でフィクションとはなんなのか、全く関係のない他分野とどのような共通点があるのかといった洞察が散りばめられていた。

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    2025年06月27日
  • GOAT

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    初めて文芸誌を買いました。
    よく見かけるから気になるなぁという興味からだったのですが、全くの初心者にも楽しめた1冊でした。
    とにかく、この値段でこの分厚さで満足感すごいけど、手首が悲鳴を上げてました笑
    色んなジャンルに触れられて、読書って楽しい!って思わせてもらいました。
    そして気になる作品も増えました

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    2025年06月20日
  • ゲームの王国 下

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    ネタバレ

    上巻はたしかにカンボジアの歴史的背景をもとに共産主義の破綻や翻弄される国民を描いていたはずだった。 
    このテイストで物語が続くのかと思いきや、下巻に入った途端、2023年という現代に突然移り変わる。

    そして、何より脳波を使ったゲーム「ブラクション・ゲーム」を基準に人の思い出や社会とゲームの違い、勝利と敗北…色んなところに話を展開する。最終的な場面はゲームの情景を説明しているのかムイタックとソリヤが思い出を懐古してるのかもぐちゃぐちゃなんだが、たしかにSF小説であり、でも読み手を置き去りにしてるような感じで…。

    なのに、なんだこの満足感。

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    2025年06月11日
  • GOAT

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    初めての文芸誌で、愛のテーマに相応しいかわいい白と赤の表紙
    分厚いから読むの大変だと思ってたけど、はじめましてのいろんな作家さんを読めて嬉しい。

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    2025年06月09日
  • ゲームの王国 上

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    ネタバレ

    最近ハマっている作者。

    舞台はカンボジアで、フランスやベトナムなどの様々な国からの圧力や思想が入り混じり内乱状態の時代背景。

    共産主義を掲げ、実行するサロトサルやそれに対して密かに反乱を企てる娘のソリヤ、とある町で生まれ、激動の人生を過ごすムイタックとティウンの兄弟…。
    とにかくいろんな人物の視点から思惑と理想、現状に対する不満などがひっきりなしに描かれている。

    正直、カンボジアの歴史的背景を押さえていた方が絶対に楽しめるので読者の根本的な教養が問われる部分が多いため全てを楽しむには私の実力不足が否めないが割と面白いので下巻にも期待。

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    2025年06月07日
  • ゲームの王国 下

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    ようやく上巻の複雑に交錯する登場人物らと舞台設定に慣れたと思ったら、物語は突然のリセット(半世紀の時が流れる)。
    アルンとリアスメイに世代交代、ムイタックとソリアの神話(ゲーム)はようやく幕を下ろした。
    本書の雰囲気や読後感はマルケスの『百年の孤独』っぽい。
    先に『地図と拳』を読んでいたが、本書のほうが好み。

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    2025年05月25日
  • ユートロニカのこちら側

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    その街ではお金はもらえる、仕事はしなくていい、犯罪は起きない、まさに楽園だというのに、はじめからディストピア感満載だ。
    小川哲さんのデビュー作は、すでに彼独自の文体、世界観が確立されており、唯一無二を感じさせる。ここから『ゲームの王国』や『地図と拳』等へと連なっていくわけだが、この淡々と進む物語はなぜか叙情的な読み心地にさせる。
    作品の根底に流れる哲学的な要素は、著者の岩波文庫を読破した下地があることは間違いなく、そこからの面倒くさい思考、さらに作品への落とし込みが、まさに魅力になっている。

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    2025年05月23日
  • これが最後の仕事になる

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    最初の一文目が同じアンソロシリーズ。お気に入りは、桃野雑派「「アイドル卒業」一穂ミチ「魔法少女ミラクルミルキー」岸田奈美「声」、そしてさすがすぎる米澤穂信「時効」。求めてる面白さ!の人もいればこんなのも書くの、な人もいるのが良き。

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    2025年04月29日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    ラジオで放送していた内容の書籍化。
    小説家を中心とした豪華な面々との対談は軽快で読みやすい。が、まえがきとあとがきは小川先生らしい捻くれた感じで、このスタンスで対談してるの面白いな。小泉今日子さん、千早茜先生、逢坂冬馬先生、太田光さん、加藤シゲアキ先生の回が好きです。
    最初は二人だけ挙げたのに、後からこの回も良かったなと書き足してしまい、今の段階でも(でもあの人の回も良かった……)と思っているので、それだけどなたとの回も面白かったということで。

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    2025年03月20日
  • GOAT

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    凄くおしゃれでかわいい。紙質もいい。
    文学に関してオールマイティ。
    これでお値段510円。びっくり!
    付録の掌編の野崎まどさんの小説が凄くよかった。小説愛が溢れている。

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    2025年03月17日
  • 嘘と正典

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    めちゃくちゃ面白かった。一度で理解しきれず、繰り返し読んだのに、それでも理解しきれない。読むたびに新しい発見がありそう。

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    2025年03月09日
  • スメラミシング

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     高尚すぎて、理解できているかは言い難いが、自分なりにこの作品から切り取ったことがいくつかある。まず、コロナウィルスやワクチンに対する陰謀論的な見方、本当にそう思っているのか?防衛からくる心理なのか?など、思想の根本はどこにあるのだろうと考えさせられた。
     また、『神についての方程式』が、ひいお爺さんの話の真実を追求するというテーマのもと、宗教や神の存在を数学を使って論じるところが魅力的だった。実数を0で割ることの意味について、社会と結びつけて考えたことなどなく非常に興味深かった。 
     ラストの『ちょっとした奇跡』も好みだった。 SFの世界にロマンティックな要素が少し感じられるところが良かった

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    2025年02月08日
  • ゲームの王国 下

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    ネタバレ

    (上下まとめての感想)

    とんでもなく面白かった、、すごい作品に出会ってしまった、、、
    カンボジアを舞台にした近未来SFといった感じ
    そこまでSF要素はなかった

    色んな話が並行して進んでいくけど、話の中心人物として大きくスポットを浴びているのが、ムイタックとソリヤ。
    最後まで読んでようやくわかったような気がしているけど、この小説は2人の壮大な追いかけっこだったんじゃないかと思った。
    人生をかけた壮大なゲーム、素晴らしかった。
    1度会ったきりなのに、お互い無意識下で執着してしまう。もっと掛け合いがみたいなとも思いましたが、余韻を残したこの終わり方が1番美しく儚い、素晴らしい終わり方だったと思い

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    2025年01月22日
  • 嘘と正典

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    ネタバレ

    ユートロニカでただならぬ雰囲気を感じてこちらの本をチョイス。

    結論、この作者はめっちゃくちゃ面白い。

    この本自体は6つの短編からなるが、短編とは思えない密度を保ちつつショートならではの小気味良さも持ち合わせているので面白い。

    個人的には「魔術師」が面白かった。タイムマシンというマジックを披露した父の後を追って、数十年に渡ってトリックを準備し、後戻りのできない一世一代のマジックを披露する姉という短いながらも起承転結のしっかりした構成が好き。

    表題の「嘘と正典」も小難しい感じはあるもののすごく練られていて面白い。

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    2025年01月13日
  • GOAT

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    読書バリアフリーについてのページはUDフォントを使えばよかったのになぁ。
    UDフォントは障害がない人からも読みやすいという声があると聞いたことがあります。

    月間の文芸誌は連載途中の作品があってなかなか購読始めが難しいけど、GOATは読み切りばかりで嬉しい。次号も絶対買おう。

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    2025年01月12日
  • ゲームの王国 上

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    緊張と緩和のバランスが絶妙。史実を基としたかなり重苦しいテーマを描いているのに、所々で笑わされてしまう。難しいことを分かりやすく説明できるのが本当に頭のいい人だと言うが、作者の小川哲さんは正しくそういう人だと感じた。

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    2025年01月02日