小川哲のレビュー一覧
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小川哲『地図と拳 下』集英社文庫。
第168回直木賞受賞作、第13回山田風太郎賞受賞作と各界から絶賛された歴史空想小説。
歴史という真実の中で描かれる空想の街。消えては産まれる空想の街。戦勝を信じて、最後まで皇国を胸に軍人であり続けた者も居れば、最初から敗戦を知り、敗戦の先にある未来を描きながら、戦火の下をのらりくらりと掻い潜った者。
兵どもが夢の跡……
虚しさだけが残る結末。
今、まさにこの瞬間も、プーチン率いるロシア軍はウクライナ侵攻を続けている。まるでソ連が崩壊したにも関わらず、それを信じようとしない愚かな指導者の姿を見るようだ。
日本は戦後80年を迎えても、なおアメリカに支 -
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ネタバレ短編集でこんなに全部面白いことある!?ってくらい、良かった、とても楽しかった。
・魔術師
マジックが文面でこんなに生き生きと表現できるんだと圧巻。思わず心を掴まれる臨場感のある演出描写、含んだ終わり方も全部好きだった。めちゃめちゃ好み。
・ひとすじの光
競馬すぎて面白かった(笑)競馬好きとして非常に楽しめた。小川さんが競馬好きとしか思えないくらい熱意感じた(笑)血統のロマンがふんだんに描かれていて、ますます血統の魅力を感じました。
・時の扉
ファンタジー要素強め。いちばんよく分からなかったけど、世界観や価値観を楽しめたかな。抽象的で少し難しめ。
・ムジカ・ムンダーナ
音楽を通貨とする島 -
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小川哲『地図と拳 上』集英社文庫。
第168回直木賞受賞作、第13回山田風太郎賞受賞作と各界から絶賛された歴史空想小説。
物語はまるで地固めするように極めてゆっくり、じっくりと展開していく。せっかちな自分は冒頭から登場していた日本から満州に渡った密偵の高木が主人公だと思っていたら、早々に戦死してしまう。どうやら本当の主人公は高木に帯同し、通訳を務めていた細川と存在しないはずの青龍島を探して海を渡った須野なのだろう。
細川と須野以外にも、ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ、李家鎮という街を乗っ取り、仙桃城と名付けて支配する孫悟空、孫悟空の百八番目の娘、孫丞琳も物語では重要 -
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ネタバレ上巻はたしかにカンボジアの歴史的背景をもとに共産主義の破綻や翻弄される国民を描いていたはずだった。
このテイストで物語が続くのかと思いきや、下巻に入った途端、2023年という現代に突然移り変わる。
そして、何より脳波を使ったゲーム「ブラクション・ゲーム」を基準に人の思い出や社会とゲームの違い、勝利と敗北…色んなところに話を展開する。最終的な場面はゲームの情景を説明しているのかムイタックとソリヤが思い出を懐古してるのかもぐちゃぐちゃなんだが、たしかにSF小説であり、でも読み手を置き去りにしてるような感じで…。
なのに、なんだこの満足感。 -
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ネタバレ最近ハマっている作者。
舞台はカンボジアで、フランスやベトナムなどの様々な国からの圧力や思想が入り混じり内乱状態の時代背景。
共産主義を掲げ、実行するサロトサルやそれに対して密かに反乱を企てる娘のソリヤ、とある町で生まれ、激動の人生を過ごすムイタックとティウンの兄弟…。
とにかくいろんな人物の視点から思惑と理想、現状に対する不満などがひっきりなしに描かれている。
正直、カンボジアの歴史的背景を押さえていた方が絶対に楽しめるので読者の根本的な教養が問われる部分が多いため全てを楽しむには私の実力不足が否めないが割と面白いので下巻にも期待。 -
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高尚すぎて、理解できているかは言い難いが、自分なりにこの作品から切り取ったことがいくつかある。まず、コロナウィルスやワクチンに対する陰謀論的な見方、本当にそう思っているのか?防衛からくる心理なのか?など、思想の根本はどこにあるのだろうと考えさせられた。
また、『神についての方程式』が、ひいお爺さんの話の真実を追求するというテーマのもと、宗教や神の存在を数学を使って論じるところが魅力的だった。実数を0で割ることの意味について、社会と結びつけて考えたことなどなく非常に興味深かった。
ラストの『ちょっとした奇跡』も好みだった。 SFの世界にロマンティックな要素が少し感じられるところが良かった -
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ネタバレ(上下まとめての感想)
とんでもなく面白かった、、すごい作品に出会ってしまった、、、
カンボジアを舞台にした近未来SFといった感じ
そこまでSF要素はなかった
色んな話が並行して進んでいくけど、話の中心人物として大きくスポットを浴びているのが、ムイタックとソリヤ。
最後まで読んでようやくわかったような気がしているけど、この小説は2人の壮大な追いかけっこだったんじゃないかと思った。
人生をかけた壮大なゲーム、素晴らしかった。
1度会ったきりなのに、お互い無意識下で執着してしまう。もっと掛け合いがみたいなとも思いましたが、余韻を残したこの終わり方が1番美しく儚い、素晴らしい終わり方だったと思い