【感想・ネタバレ】ゲームの王国 上のレビュー

あらすじ

サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「識(ヴィンニャン)」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるでゲームのように。

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Posted by ブクログ

SFということになってますが前半はひたすらポル・ポト時代のカンボジアの話で、空想はともかく科学はあんまり出てこないです。下巻でちゃんとSFになるのでご安心を。
時代背景的にもご想像がつくと思いますが、残酷描写は多めです。ご注意ください。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

面白いというと不謹慎な気がするが、非常に興味深い本だった。

カンボジアの革命 クメール・ルージュを題材としていて、革命 大虐殺の歴史を学ぶ上で、非常に学びの多い内容だった。
それだけでなく独特のキャラが際立っており、物語として読み応えのある面白い内容だった。ファンタジーと実話を掛け合せたような感じだった。
話の展開も上巻の半分過ぎくらいから、どこを読んでも急展開で、読むのが楽しかった。この怒涛の展開で下巻が続くのだとしたら、下巻は相当に面白いと思うため、下巻を読むのが非常に楽しみである。

物語の視点がコロコロと変わるため、始め読むのに苦労したものの、慣れれば苦では無かった。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最近ハマっている作者。

舞台はカンボジアで、フランスやベトナムなどの様々な国からの圧力や思想が入り混じり内乱状態の時代背景。

共産主義を掲げ、実行するサロトサルやそれに対して密かに反乱を企てる娘のソリヤ、とある町で生まれ、激動の人生を過ごすムイタックとティウンの兄弟…。
とにかくいろんな人物の視点から思惑と理想、現状に対する不満などがひっきりなしに描かれている。

正直、カンボジアの歴史的背景を押さえていた方が絶対に楽しめるので読者の根本的な教養が問われる部分が多いため全てを楽しむには私の実力不足が否めないが割と面白いので下巻にも期待。

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2025年06月07日

Posted by ブクログ

緊張と緩和のバランスが絶妙。史実を基としたかなり重苦しいテーマを描いているのに、所々で笑わされてしまう。難しいことを分かりやすく説明できるのが本当に頭のいい人だと言うが、作者の小川哲さんは正しくそういう人だと感じた。

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2025年01月02日

Posted by ブクログ

全編にわたって著者の初期衝動が爆ぜまくっていて、一気に読みました。

昔、仕事でポルポトやクメールルージュのことをかなり調べました。

資料的な理解が進めば進むほど、理解の本質からは遠のく違和感がずっとあった。こういう時代だったとは頭でわかる。けれど、人々の息遣いや、緊張感や、死は、どうしても質量を伴って身体に落ちてこなかった。

あのとき、この本が世の中にあったら良かった。

いつだって、胸を刺すのは誰かの人生の物語。

多くの生きる喜び、死への痛みに刺され続けた上巻でした。

下巻も楽しみです。

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2024年05月09日

Posted by ブクログ

カンボジア独裁政権下を知略・運・不思議な才能等持てる力を駆使して生きた人々の物語。前編。

平和な日本にいる身にはファンタジーに感じられるほど個人の権利、生命が脅かされる様子が淡々と描かれている。さっきまで笑ったり将来を憂いていた人物がほんとうにあっけなく死ぬ。たった一手間違えたがために局面が悪くなって死ぬ。真実のデスゲーム。

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2024年03月09日

Posted by ブクログ

何かの書評をみて、何気に買ってみた本。ジャンルはSF?小説?とにかく引き込まれました。話の内容は、想像と全く違う笑 ポルトガルについて全くの無知!なので、頭が追いついていかない、、、でも途中から、どんどん進む速さが速くなります。

カンボジア
ポルポト
革命
聞いたことあるけど、全く知らない世界の話
でも、それは確かに存在した事実が含まれていて
事実の上の物語だからこそ、現実に
重ねることができたと思う。

人生で、カードを最後まで引き続けるのは
怖いことだし後悔することもあると思うけど
引かないとそれもわからない
人生のルールは、つくられてるけれど
つくってもいける
自分の物語は、あるようでない
覚えてるようで不確かで作り上げてるものかもしれない
人生は勝ち負けじゃないけど、なにかを勝ちとして、何かを信じて生きていくしかないんだと思う。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Audibleで聴いた。

登場人物が多くてカタカナなので、最初の方は誰が誰だったかわからなくなりかけたが、紙の本で確認しながら聴いた。
面白い!
でも残酷なシーンが多いので、映像化したら楽しめないと思う。
理不尽に殺されてしまう、ゲームのような世界。
ソリアとムイタックという2人の天才が、これからどのようにカンボジアを変え、戦って行くのか下巻が楽しみ。
最初はこの2人は協力関係になるのかと思っていたが、上巻の最後で敵対関係になったのが意外な展開だった。
他にも、面白いキャラクターが沢山出てきて、面白かった。輪ゴムとか。

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2024年02月08日

Posted by ブクログ

政治とは何か? 正義とは何か? 思想とは何か? 思考とは何か? 生き残ることと勝つことは同義なのか?

強者が弱者に、弱者が強者に、一瞬で替わる時代。

本当の強さとは何か? 答えは存在するのか?

すべてが混沌と暗澹に包まれた世界。

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

理想に向かって革命を起こしたのに、理想通りに行かない、理想通りにいかない理由を読み違える、その結果、革命前と変わらなかったり、かえって悪くなることがある。

どこまでがノンフィクションで、どこからがフィクションなのか、無知な私には良くわからなかった。

下巻の展開が楽しみ。

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2023年11月03日

Posted by ブクログ

シハヌークからロンノル、そして革命により誕生したポルポト政権。
移りゆくカンボジアの情勢を史実とフィクションを混えて描かれた作品。

これスゴい、、
まだ上巻だけど、めちゃくちゃ読み応えあって引き込まれた。

ポルポト政権って言葉は聞いた事あったけど、無知で詳しい事は全く知らなかった。
歴史に残る独裁政治家。
だけどこれって1970年代の話で、そんなに昔ではないという事が衝撃だった。
凄惨で痛ましい描写にゾッとしながらも、混じえられた個性的なキャラの魅力にクスっと和まされたり、嫌になる事なく夢中で読み終えた。

上巻の話の軸になってたソリヤとムイタック。
2人のこの先が気になる。
下巻が楽しみ!!

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2023年08月02日

Posted by ブクログ

胸が詰まる怒涛の展開。
共産主義のイデオロギー暴走をつぶさに描いておる。
奇抜なキャラ多いけど、何か絶対的なものに縋って生き抜くしかない人間の脆さをひしひしと感じる。

では下巻へ。

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2023年07月21日

Posted by ブクログ

小川さんの文章はこの本の上巻の中のものが一番良いと思う、特に序盤、小市民の日常が暴力で理不尽に引き裂かれるところがほんとに恐ろしい

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2023年06月01日

Posted by ブクログ

最高だった。
まずはヤバすぎるカンボジアの歴史を学べたこと。
概略程度の知識しかなかったポルポトあたりのカンボジアの悲惨さがリアルに描写されていた。
知的興奮が味わえて、裏切りの連続で物語としてめちゃめちゃ面白く、それに作者独特の淡々とわけのわからない話を魅力的に展開していく力が融合して、新感覚を味あわせてくれる作品だと思う。
新感覚すぎて途中何回か「これなに?」って思うかもしれないけど、読み切ってほしい作品。
泥が無双するところとかポカーンとしてしまった。

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2023年04月24日

Posted by ブクログ

前情報何もなくタイトルだけで手に取ると、
想像と180度違う内容に驚愕する小説。
とにかく日本人の作家が選ぶ題材としてはかなり挑戦的な部類だろう。

後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュの首魁サロト・サル。
その首魁の隠し子とされるソリヤという少女。
そして貧村ロベーブレソンに生を享けた天賊の智性を持つ神童のムイタック。
皮肉な運命と偶然に導かれた二人は、
軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで出会った。
秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺。
百万人以上の生命を奪った全ての不条理は、
少女と少年を見つめながら進行する。あたかもゲームのように。

世界史の授業で触れた程度だったカンボジアの歴史。
ポル・ポトの行った事実も知っている程度ではあった。
だがそれはフィクションの世界ではと疑いたくもなる地獄だった。
そんなことがつい50年前に当たり前の様に起こっていたこと。
その歴史的背景と出来事を下地に物語は繰り広げられていく。
フィクションなのだが、フィクションではない事実。
全て目を覆いたくなるような、そんな胸を締め付けられる重厚な物語。

初めは、本気で皆が幸せに暮らせる世界、
それを心から信じて始まったことなんだろう。
繰り返されていく歴史を見て常々思う。
どこでその道は間違った方向へ向かってしまったのだろうか。
クメール・ルージュに関してはこれがことさら醜悪である。
簡単に一言で片付けてしまえば、バカの集まりである。
こんなバカ共が統治する国がまともに発展するわけがない。
そんなこと、誰もが解りきっているのに悲劇は起こってしまう。

その悲劇性をしっかり携えつつ、
物語としてきちんと昇華している作家の手腕に感服である。
知識を奪うという最も発展を妨げる愚行。
そんな愚行が横行することなど、もう二度とあってはいけない。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

上下巻感想。

カンボジアを舞台に、ポルポト政権発足前の時代から現代までを描く壮大なエンタメ小説。

なぜ買ったのかも思い出せないまま読み始めたから、カンボジアが舞台ということも知らなかったし、どういう方向に進んでいく話なのかも分からないまま手探り状態で読み進めることになった。

キャラクター視点の切り替わりがあまりにも頻繁に行われるので、話の目的が中々見えてこないだけでなく、上巻の途中まで主人公が誰なのかすら分からない。

けれども、カンボジアという滅多に見ない舞台ということと、泥を食べて泥と会話できるようになった男(その名も"泥")などの独特すぎる特殊能力を持つキャラクターが大量に登場して、何を読まされてるか分からないのに面白い。

上巻を読み終わる頃には作風にも慣れ、主人公や目的も明らかになったと思いきや、下巻では時代が大きくスキップし、ストーリーに新しい要素が加わる。意地でも読者を落ち着かせないという作者のサービス精神に翻弄された。

好みかどうかは置いておいて、ラストも予想外だった。最後まで先を読ませない小説で間違いなく面白かった。

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

ポルポト政権下の混乱と暴力の渦にもみくちゃにされたカンボジアを舞台に、神童、天才少女、秘密警察、クメール・ルージュ関係者、ロベーブレソン村民らの命を賭けた革命(ゲーム)が始まる。
輪ゴムと会話するクワンや、土を操る泥(プク)など、マジック・リアリズム的表現が、世界観に御伽噺性を帯びさせており妙な中毒性がある。
多くの登場人物らが入り乱れる序盤は正直乗り切れなかったが、(上巻の)最終盤でそれらの点が線につながり俄然盛り上がり始めた。下巻が楽しみ。

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2025年05月13日

Posted by ブクログ

ポル・ポトの隠し子かもしれない少女ソリヤと、科学も教養もない村に突然変異のように生まれた天才少年ムイタックを(いちおうの)中心人物として、おおむね時系列で、いろいろな人の視点から、それぞれの見た世界が語られる。

上巻の舞台は、フランスから独立したカンボジアの、汚職や賄賂が続く状況を共産主義によって変えようとするクメール・ルージュが政府によって敵視され、関係者とされる人々が冤罪で次々と殺されていった時代から、そのクメール・ルージュの統治が始まり未曾有の虐殺が行われた時代である。

ポル・ポトの大虐殺についての前提知識がほとんどなく、馴染みのない固有名詞に苦労はしたが、わりと細かに切り替わるそれぞれの人物の章?節?ごとに、その人物の価値観によって描き分けられている世界を読んでいくのはとてもおもしろかった。たとえば、「因習に疑問を抱かず論理的な話のできない村人」とか「土と会話できる農民」とか。

夢中レベルで言えば「テスカトリポカ」レベルで、今のところ今年の一位。

下巻の感想に続く

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2025年03月28日

Posted by ブクログ

「日本SF大賞受賞作品」という帯のタイトルに惹かれて買った。久しぶりにSF、日本のSF物を読みたくなったのも手に取った理由の一つ。
読み始めるとカンボジアの革命の話から始まった。「え?歴史物なの?」と戸惑いながら読み進めるとこれが面白い。登場人物も多くそれぞれの物語が交差しながら話が展開していく。SF?なのかな?と思いつつ下巻の展開がとても楽しみ。

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2025年02月01日

Posted by ブクログ

文庫化されたことでとあるし『百年の孤独』に再チャレンジしようか、と思わされました。「泥」のあたりは、かなりそれに近いように思いましたが、記憶はあやふやです。先に下巻を読みますが

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2024年09月01日

Posted by ブクログ

舞台は1956年〜1978年のカンボジア。ポル・ポト率いるクメール・ルージュの誕生から支配までを背景に、一市民や秘密警察官、クメール・ルージュ幹部など視点を変えながら、その時代を描く。

クメール・ルージュのことは概要しか知らなかったものの、著者がまるでこの土地、この時代を生き自身の目で見たのではないかと思うほど情景が精緻に描かれており、殺戮や拷問などのおぞましいシーンがありつつも(とはいえそれほど長くもない)、引き込まれるように読んだ。

中には、輪ゴムで未来を予知する村人や、泥を操れる村人など特殊能力を持った人物も出てくるが、さほど物語に重大な影響を及ぼすのでもなく、個人的には余計に感じてしまった。本の紹介にSFとはあるものの、SFと呼べそうな要素は上巻を読んだ限りではこれくらいで、歴史小説という方が近い。

一方で、下巻は少し開いて見た限りではだいぶ雰囲気が変わりそうな感じもする。引き続き期待。

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

理解力・思考力が低いわりに傲ってて会話が通じない年配との会話の解像度があまりに高くて笑ってしまった。綺麗事ではどうにもならないODAの難しさ。
そんな農村でのムイタック・ソリアの邂逅、徐々にタイトルの「ゲーム」の意味が判明してくる過程は興奮した。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「そんな人いないだろ」と思うというより、神話的に受け入れることができる人物描写。
コメディかと思うような文章の後にシリアスな場面がサラッと描かれるのがさらにそのシリアスさを増す。
理屈にならない理屈が罷り通っていた時代に、天才同士が邂逅を果たす。

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2023年12月06日

Posted by ブクログ

上は面白かった。カンボジアの歴史という、あまり知らない知識に触れられた。
社会描写はある程度史実に基づいているらしいのに、天才児ムイタックや、輪ゴムから未来を予知するクワン、土を自在に操る泥、など不思議で強烈なキャラクターが出てきて、マジックリアリズムを感じさせた。
翻訳された外国文学を読んでいるような気がした。
SFかどうかは別にどうでもいい。

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2023年10月10日

Posted by ブクログ

シハヌーク〜ロン・ノル〜ポル・ポト。時代背景は大虐殺があったカンボジア激動期。理想の王国の建設、渦巻く知略謀略、特殊能力を持った子どもたち…なるほど、後の「地図と拳」「君のクイズ」の原点とも言えるような要素があちこちに見受けられ、引き込まれた。上巻はSFというより歴史小説。

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2023年10月11日

Posted by ブクログ

ポル・ポト、クメール・ルージュについての話ということだったので前もって歴史をおさらいしてしまい、どんよりとした気分で読み始める。
史実、ノンフィクションに近いと思われる部分にはやっぱりどんよりしつつ、突然能力バトルみたいな話になって唖然としたり、ムイタック、ソリヤがその才能の片鱗を見せつける場面にはワクワクしたり、そして上巻ラストではうわー!ってなったり…感情揺さぶられまくりながら下巻へ続く。
…下巻1ページ目、どういうこと!?

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2023年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1970年代のカンボジア暗黒時代を舞台にした物語。
腐敗した王族の専制、資本家の搾取、秘密警察の暗躍。
こうした腐った社会を打ち倒すために反政府革命を目指したはずだったが、革命の理想は曲解され、社会はより一層荒廃し、事実無根の罪で大量の人が軽々と殺されていく。

愚かさと理不尽さと残酷さが執拗なまでに描かれ、タイトルの「ゲーム」とはほど遠い展開が続く。どこにゲームっぽさがあるんだろうかと思いながら読み進める。

中盤くらいになって、やっと「ゲーム」の意味が分かってくる。この物語におけるゲームとは、「複雑怪奇なルールの下で、一つでも違反をすれば殺される命賭けのゲーム」であり、理不尽な社会の下で生き残るためのゲームだった。

世界のあちこちで、密告と疑心暗鬼と殺戮による支配が繰り返されてきたのかと思うと、人間の愚かさにウンザリしてくる。国ガチャと時代ガチャのハズレはキツい。個人の力ではなかなかどうにもできない。
「最も高い理想を掲げている人が最も残酷なことをする」という言葉が重い。下巻で救いはあるんだろうか。

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2023年06月20日

Posted by ブクログ

2024年25冊目
山本周五郎賞を受賞された本作の上巻。それぞれのキャラを覚えるのに苦戦したが、共産主義の世界を理解するのに非常に良い一冊。まだ話の途中なので、トータルの評価は下巻で。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

山本周五郎賞というか手の香りをよく理解していないから、この作品が合致していることを極めるために取り組んだ。
しかもSFは好みじゃないというハンデもおまけで。

ポルポトは世界有数のジェノサイドの現場・・キリングフィールドを観た記憶が長い時間を経ても離れない悍ましい出来事。

SF作品とうたっているものの、情感を終えた時点ではその匂いは薄く、むしろ、子供を取り巻く世界の惨さと聡明な子供らが浮上する絵図がゲーム感覚のように映るイメージ。ムイタックは水浴び、プックは泥、クワンは輪ゴム、綱引きで運命が切り開けていったマットレスという大人も登場し、どんどん世界観を掴めなくなっていく。
その合間で虫けらのようにあっという間に殺されて行く人間の存在。
時代は1956~1978  世界的に再貧困の層に属するといわれてきたカンボジアが宗主国 フランスから独立し 独裁君主シアヌーク~アメリべったりの腐敗政権ロンノル~そして中国から教示を受けたポルポトへ猫の目の様にトップが変貌していった時間。

クメール・ルージュ・・時間的に世界が共産主義哲学、思想に染まって行ったエリアが増えた時間である。
名を隠し、愛称ポルポトで終始し、最後までなぞと言われた彼・・作品ではサロト・サルで登場。
思想 哲学 倫理 ヒューマニズム 正義 腐敗 …通常頭にあるそれらの語彙が本来の意を持っているか否かすら揺れ動く場面が連続し、結局 下巻への展開に繋ぐ。
ただ、リアとムイタックは目指す方向は同じながら相克の関係に流れていきそうな感じ。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

小川哲さんの本はこちらが初めて。話題になっていたので、いつか読みたいと思っていたのですが、長編がよいかなと思い、プノンペンもシェムリアップも行ったことがあったので、親近感が湧いたこちらの作品を選びました。

上巻を読んでの率直な感想。

・なんとなくクメールルージュについて知っていても、なかなかついていくのが大変。背景知らずに読んだらきっと話についていくのが大変そう。
・馴染みのない名前の登場人物なので、ついていくのが大変。
・かつ50年前のカンボジアを舞台としているため、登場人物に感情移入しにくい。はたして当時の人らはこういう行動をするのだろうか。
・内戦だけあり、状況はかなりグロい。気持ち良くは読めないので覚悟して。
・長い。
・ある程度史実に基づくのか、完全なフィクションなのか。
・ただキャラクターがとても個性的で活き活きと描かれていて、引き込まれるストーリーラインも上記の点を補っている。

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2023年07月17日

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