あらすじ
サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「識(ヴィンニャン)」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるでゲームのように。
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Posted by ブクログ
最近ハマっている作者。
舞台はカンボジアで、フランスやベトナムなどの様々な国からの圧力や思想が入り混じり内乱状態の時代背景。
共産主義を掲げ、実行するサロトサルやそれに対して密かに反乱を企てる娘のソリヤ、とある町で生まれ、激動の人生を過ごすムイタックとティウンの兄弟…。
とにかくいろんな人物の視点から思惑と理想、現状に対する不満などがひっきりなしに描かれている。
正直、カンボジアの歴史的背景を押さえていた方が絶対に楽しめるので読者の根本的な教養が問われる部分が多いため全てを楽しむには私の実力不足が否めないが割と面白いので下巻にも期待。
Posted by ブクログ
Audibleで聴いた。
登場人物が多くてカタカナなので、最初の方は誰が誰だったかわからなくなりかけたが、紙の本で確認しながら聴いた。
面白い!
でも残酷なシーンが多いので、映像化したら楽しめないと思う。
理不尽に殺されてしまう、ゲームのような世界。
ソリアとムイタックという2人の天才が、これからどのようにカンボジアを変え、戦って行くのか下巻が楽しみ。
最初はこの2人は協力関係になるのかと思っていたが、上巻の最後で敵対関係になったのが意外な展開だった。
他にも、面白いキャラクターが沢山出てきて、面白かった。輪ゴムとか。
Posted by ブクログ
「そんな人いないだろ」と思うというより、神話的に受け入れることができる人物描写。
コメディかと思うような文章の後にシリアスな場面がサラッと描かれるのがさらにそのシリアスさを増す。
理屈にならない理屈が罷り通っていた時代に、天才同士が邂逅を果たす。
Posted by ブクログ
1970年代のカンボジア暗黒時代を舞台にした物語。
腐敗した王族の専制、資本家の搾取、秘密警察の暗躍。
こうした腐った社会を打ち倒すために反政府革命を目指したはずだったが、革命の理想は曲解され、社会はより一層荒廃し、事実無根の罪で大量の人が軽々と殺されていく。
愚かさと理不尽さと残酷さが執拗なまでに描かれ、タイトルの「ゲーム」とはほど遠い展開が続く。どこにゲームっぽさがあるんだろうかと思いながら読み進める。
中盤くらいになって、やっと「ゲーム」の意味が分かってくる。この物語におけるゲームとは、「複雑怪奇なルールの下で、一つでも違反をすれば殺される命賭けのゲーム」であり、理不尽な社会の下で生き残るためのゲームだった。
世界のあちこちで、密告と疑心暗鬼と殺戮による支配が繰り返されてきたのかと思うと、人間の愚かさにウンザリしてくる。国ガチャと時代ガチャのハズレはキツい。個人の力ではなかなかどうにもできない。
「最も高い理想を掲げている人が最も残酷なことをする」という言葉が重い。下巻で救いはあるんだろうか。