小川哲のレビュー一覧
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購入済み
問題を一文字も読み上げていないのに、クイズに正解してしまったのは何故?というシンプルな謎を解いていく。
ミステリーというよりはクイズのことを深く知れる面白い作品でした。
昔友達にクイズをしてる人がいたので主人公とその友達を重ねて読みましたが、本当に似ているところがたくさんあり、特にクイズをやっていると恥ずかしくなくなるというのはなるほどな〜と思いました。
クイズ番組を見る目が変わる作品でした。 -
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ネタバレこれがデビュー作だなんて信じられないくらい良かった。
よい生活をするためにはよい思想を持つ必要がある。物騒なことやネガティブな考えを抱いては自分の価値が下がるなんて、ゆるやかな思想統制に違いなかった。
でも労働のない安心安全な暮らしは多くの人間が望むものだろうとも思えるので、それを求める気持ちも分からなくはない。思想の自由と犯罪を事前に取り除いた社会、比べることのできないこのふたつの狭間で悩まされる読書となった。
章ごとに視点が変わっていくところが特に良かった。さまざまな立場の人間のさまざまな選択と主張から、リゾートの何が問題なのかが見えてくる。人類全員が同じ考えを持つことはできないからこそ対話の重要性を説き、一言で表すことはできない「自由」というものを、一冊を通して言葉を尽くして語っていると思った。
第四章のドーフマン視点の話が一番印象深い。被害者と加害者の未来を救うシステムであるという思いが人々に届いておらず、もっとも絶望を感じた。
ユートロニカの意味、人間は次第に無意識状態に回帰して……という話が恐ろしかった。情報が溢れた現代ではこれがもう起きているようにも思えるし、生成AIが広く使われるようになった今、この小説のような未来はそう遠くないようにも思える。
全体を通して、海外の小説を読んでいるような気分にさせられた。ほかの作品も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
発売、話題になってからしばらく経っていたけど、YouTubeきっかけで全巻(このとき3巻まで)購入した。
読み物として、こんなにワクワクしたのは久しぶり。読みたくて読みたくて、玄関に置き配される気配をドキドキしながら待っていた。
紙の本ファンにはたまらないよね笑
510(ゴート)円以上の価値があることは間違いないと思う。
現代作家の本をなかなか読めない私だけど、短編で各作家のエッセンスを味わえるのは、本当に美味しい体験すぎて申し訳ないくらい。
雑誌名の秀逸さとか、企画の画期的さとか、時代にこんなにぴったり”ハマった”ものが生まれたときの興奮って、同時代の人間にとって勇気を与えるんだなと思った。小学館さん、これからも頑張ってください! -
Posted by ブクログ
1.SFっぽくない感じが良かった。
全編通してSFっぽさは少なかったが、それ以外の良さがあった。完全なSF世界ではないからこそのリアリティがあるような気がする。「魔術師」で言えば、タイムマシンが本物であるかどうかわからないまま物語が終わるのが良かった。これについては「読者に任せる」書き方が効果的に感じた。 「ひとすじの光」はSF要素がなかったが、馬と自分とを重ね合わせて父親との関係性や自身のアイデンティティに思いを馳せる姿に感動した。「ムジカ・ムンダーナ」はSFというよりファンタジーかな。
2.嘘と正典が一番良かった。
前半はSF的な要素がないまま話が進んでいき、後半から過去との通信が出てきて一気に話が進んでいく展開に引き込まれた。そして冒頭のエンゲルスの裁判につながっていくところはもはや感動的でもあった。過去に干渉することができる機械によって、世界が分岐する場合は「正典」にあたるものはなにに該当するのだろうか。ニュートンがいなくても万有引力の法則が見つかっただろう。これは完全に同意する。しかし、エンゲルスがいなかったら共産主義は存在しなかったのだろうか。歴史を改変するものを妨害するために歴史を改変していないだろうか。少なくとも中継者や守護者の人生には大きく干渉していると思うし、それによってバタフライエフェクトが発生していないだろうか。なにをもって正典としているのだろう。
「嘘と正典」の過去に送れる電気信号は「Steins;Gate」のDメールに近いような感じがした。一度行った改変を取り消すことで元の世界を目指すのも同じかな。そのなかで、計算量を減らしたいという「嘘と正典」の動機は「Steins;Gate」よりも弱く感じた。「Steins;Gate」の独善的で身勝手でも仲間との絆を大切にする感じが大好き。 -
ネタバレ 購入済み
僕のクイズを問うている
僕の頭は藤川球児のストレートくらい回転している。
最序盤のこの文章から俄然引き込まれた。
すごく筋の通った展開で、タイトルとラストもリンクしていて読後感の良い作品。 -
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小川哲の直木賞受賞作。
満州というかつて様々な国の思惑が重なった地図に、様々な背景の人間が心を描く群像劇。
全部読み終えた今、高木が小刀を頑なに手放さなかったのは何故だろうと考えてみる。小刀が指す意味は『拳』であり、つまり戦争である。高木は葛藤の末、その拳を手放さなかった故に細川が命の危険に陥るものの、細川はその拳を回収することに成功する。
この物語において、戦争は決して肯定されるものではないが、その拳がなければ高木が決死の戦線に向かって死線を守ったように、今がこの形で存在していたかはわからない。戦争において、拳は必ず必要なものなのだ。
しばらくして、その細川によりオケアノスの意味を持つ名前を授かった須野明男が生を受け、明男はその小刀に興味を持つものの、母の恵子により取り上げられてしまう。
つまり、明男が請け負った使命は、拳を使用せずにオケアノスを目指すことだ。オケアノスを発見することはかのアレキサンダー大王すら成し遂げていない偉業であるにも関わらず、その手段である拳は取り上げられてしまった。そこで、明男は次なる手段として『建築』を習得していくことになる。
以上の流れから、小刀とは拳、つまり戦争の象徴であり、小刀を持たない明男は、戦争とは無縁の、平和を建築するための人物として育っていくこととなる。
さて、明男はこの惨劇の製造機である戦争のその先に、平和を築くことはできるのだろうか――― -
Posted by ブクログ
面白いというと不謹慎な気がするが、非常に興味深い本だった。
カンボジアの革命 クメール・ルージュを題材としていて、革命 大虐殺の歴史を学ぶ上で、非常に学びの多い内容だった。
それだけでなく独特のキャラが際立っており、物語として読み応えのある面白い内容だった。ファンタジーと実話を掛け合せたような感じだった。
話の展開も上巻の半分過ぎくらいから、どこを読んでも急展開で、読むのが楽しかった。この怒涛の展開で下巻が続くのだとしたら、下巻は相当に面白いと思うため、下巻を読むのが非常に楽しみである。
物語の視点がコロコロと変わるため、始め読むのに苦労したものの、慣れれば苦では無かった。 -
Posted by ブクログ
初めて小川哲の作品を読まれる方にはおすすめしません。なんだこいつ、って感想になりかねない。そういう本でした。
「ユートロニカのこちら側」を読まれると良いと思います。そうして水が合った方向け。
一歩引いて飄々とした作風から一転して、熱量のある作品たちでした。
いつも根底に哲学的な姿勢を取られますが、それがいつになく強く、キャラクターより構造を重視したものになっています。ですので読後感はすっきりしません。しかし咀嚼していくに従って、この単行本そのものが小説のていをとった哲学論だという理解をすると、腑に落ちる気がします。
虚構を信じる力に善悪はない。貨幣経済や信仰をはじめとした道徳という実体のない虚構を信じることは文明を発展させる源であるが、人々を分断させ憎しみ合わせることもできる。両義性あるその力こそが、人類の優れた才のひとつである。
そういう受け取り方をしました。どうでしょう、バラモンになれますか?(笑)
こういう読み方自体が術中なんだろうなぁ。
……うん。考えたら疲れたので、砕けますが。
コロナ禍前後で、色々思ったり傷付いたり腹立ったりしたのかな。
大なり小なり、みんなあの時期には色々思ったけど、小説家っていう職業であるからこそ、そしてヴィトゲンシュタインに文転させられたような人だからこそ、言葉が人を断絶させるっていう状況下にめっちゃ物申したかったんかな……。
そういう意味では、ここまで思想で殴ってきたのは、小川哲の生の感情の現れなのかなあとか。思ってた以上に苛烈な人なんかな、とか。って思わせるのも手法なのかなぁ。
色々余計なことを考えたりなどしました。
一番のお気に入りは「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」。仮説を立てること自体が神という虚構を信じるということ、文面にされるとくるものがあります。フィクション全肯定じゃん。思わず泣きました。ありがとう、小説読んでて良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川哲の最新短編集。表題作「スメラミシング」を含む歴史、SF、数学、宗教を縦横に駆使した、言葉と物語による創造と救済、支配と欺瞞の世界の記録。
面白かった。表題作「スメラミシング」をはじめ、「なぜ人は理由や物語を求めるのか」というテーマが通底する短編集だった。中でも「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」が印象的。
科学至上主義を掲げる国家・理国を舞台に、神や信仰を否定する体制のなか、叙事詩の矛盾を暴く書簡形式で物語が進行する。
ヴォネガット『タイタンの妖女』を思わせる壮大な構成と、理性と感情、客観性と直感が人間を形づくるという主題が胸を打つ。科学も信仰も“物語”として人を導くのだと感じた。