小川哲のレビュー一覧

  • 嘘と正典

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    SFの基本のキと言っても決して過言ではないだろう時間に関するSFがぎゅっと詰まった一冊。僕は、ムジカ・ムンダーナが一番気に入りました。
    四次元HIP-HOPばり収録全作が面白い短編集でした。

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    2025年11月11日
  • 嘘と正典

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    単行本からの再読。SFを基軸にミステリや歴史などのジャンルを横断した作品集。改めて読むと著者のその後の作品に登場する、小説を連綿と続く系譜として位置付ける発想や、実験の失敗から信じ難い真実へと辿り着く合理主義的な科学者などの要素が垣間見られることがわかった。

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    2025年11月08日
  • 嘘と正典

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    6篇の短編で構成される短編集。
    時間スケールは異なるけれど「歴史」が横串のキーワードではないかと思う。

    共産主義の打倒を目指し時空間通信で歴史改竄を企てる表題作の「嘘と正典」は伏線の回収で何度もゾワッとさせられるし、過激な正義や短絡的な介入は歴史や状況を変えないということを再確認させてくれる。他の作品もそれぞれ毛色が違ってどれも面白い。

    個人的にはひとすじの光が好きだ。名馬スペシャルウィークの血統を遡りながら自分の血筋が明らかになっていくが、その過程がなんとも不器用な父親からの愛に感じられてホッコリする。やはり小川哲、侮るなかれだな。

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    2025年10月29日
  • ユートロニカのこちら側

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    直木賞作家、小川哲氏のデビュー作ということで読書開始。
    壮大な世界観と近未来の倫理が、美しい比喩表現で描かれていて、終始圧倒された。
    ビックテックに個人情報が握られる監視資本主義や、防犯カメラだらけの現代が描かれていると感じる。
    最後が読みにくいという意見もわかる。最終章は、哲学書のような文体になっている。
    ただ、全体を通じて傑作としか思えない。

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    2025年10月21日
  • ゲームの王国 上

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    面白いというと不謹慎な気がするが、非常に興味深い本だった。

    カンボジアの革命 クメール・ルージュを題材としていて、革命 大虐殺の歴史を学ぶ上で、非常に学びの多い内容だった。
    それだけでなく独特のキャラが際立っており、物語として読み応えのある面白い内容だった。ファンタジーと実話を掛け合せたような感じだった。
    話の展開も上巻の半分過ぎくらいから、どこを読んでも急展開で、読むのが楽しかった。この怒涛の展開で下巻が続くのだとしたら、下巻は相当に面白いと思うため、下巻を読むのが非常に楽しみである。

    物語の視点がコロコロと変わるため、始め読むのに苦労したものの、慣れれば苦では無かった。

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    2025年09月10日
  • スメラミシング

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    初めて小川哲の作品を読まれる方にはおすすめしません。なんだこいつ、って感想になりかねない。そういう本でした。
    「ユートロニカのこちら側」を読まれると良いと思います。そうして水が合った方向け。

    一歩引いて飄々とした作風から一転して、熱量のある作品たちでした。
    いつも根底に哲学的な姿勢を取られますが、それがいつになく強く、キャラクターより構造を重視したものになっています。ですので読後感はすっきりしません。しかし咀嚼していくに従って、この単行本そのものが小説のていをとった哲学論だという理解をすると、腑に落ちる気がします。
    虚構を信じる力に善悪はない。貨幣経済や信仰をはじめとした道徳という実体のない虚構を信じることは文明を発展させる源であるが、人々を分断させ憎しみ合わせることもできる。両義性あるその力こそが、人類の優れた才のひとつである。
    そういう受け取り方をしました。どうでしょう、バラモンになれますか?(笑)
    こういう読み方自体が術中なんだろうなぁ。

    ……うん。考えたら疲れたので、砕けますが。
    コロナ禍前後で、色々思ったり傷付いたり腹立ったりしたのかな。
    大なり小なり、みんなあの時期には色々思ったけど、小説家っていう職業であるからこそ、そしてヴィトゲンシュタインに文転させられたような人だからこそ、言葉が人を断絶させるっていう状況下にめっちゃ物申したかったんかな……。
    そういう意味では、ここまで思想で殴ってきたのは、小川哲の生の感情の現れなのかなあとか。思ってた以上に苛烈な人なんかな、とか。って思わせるのも手法なのかなぁ。
    色々余計なことを考えたりなどしました。

    一番のお気に入りは「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」。仮説を立てること自体が神という虚構を信じるということ、文面にされるとくるものがあります。フィクション全肯定じゃん。思わず泣きました。ありがとう、小説読んでて良かった。

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    2025年08月27日
  • スメラミシング

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    ネタバレ

    小川哲の最新短編集。表題作「スメラミシング」を含む歴史、SF、数学、宗教を縦横に駆使した、言葉と物語による創造と救済、支配と欺瞞の世界の記録。



    面白かった。表題作「スメラミシング」をはじめ、「なぜ人は理由や物語を求めるのか」というテーマが通底する短編集だった。中でも「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」が印象的。

    科学至上主義を掲げる国家・理国を舞台に、神や信仰を否定する体制のなか、叙事詩の矛盾を暴く書簡形式で物語が進行する。

    ヴォネガット『タイタンの妖女』を思わせる壮大な構成と、理性と感情、客観性と直感が人間を形づくるという主題が胸を打つ。科学も信仰も“物語”として人を導くのだと感じた。

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    2025年07月19日
  • スメラミシング

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    “宗教と科学”
    相反することでも相対することから、何かしらの関連性を感じさせること

    6編の物語では「過去」「現在」「未来」を行き来しながら、信仰することと探求することが線を引くことのできない間柄であるように感じてくる。

    『ゲームの王国』でのナイフのような感覚から少し滑らかにはなったけど、どこか金属的な味のする作者の物語

    これからも読み続けそう。

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    2025年07月18日
  • スメラミシング

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    小川哲は本当に作風に幅があって驚く。キリ教出身なので、神とか宗教とかテーマの短編集は見逃せない。お気に入りは、七十人聖書を巡る宗教裁判「七十人の翻訳者たち」と、天皇を運ぶ家柄の配達員「密林のモガリ」。表題作も雰囲気がかなり好き。

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    2025年07月13日
  • 嘘と正典

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    ネタバレ

    短編集でこんなに全部面白いことある!?ってくらい、良かった、とても楽しかった。

    ・魔術師
    マジックが文面でこんなに生き生きと表現できるんだと圧巻。思わず心を掴まれる臨場感のある演出描写、含んだ終わり方も全部好きだった。めちゃめちゃ好み。

    ・ひとすじの光
    競馬すぎて面白かった(笑)競馬好きとして非常に楽しめた。小川さんが競馬好きとしか思えないくらい熱意感じた(笑)血統のロマンがふんだんに描かれていて、ますます血統の魅力を感じました。

    ・時の扉
    ファンタジー要素強め。いちばんよく分からなかったけど、世界観や価値観を楽しめたかな。抽象的で少し難しめ。

    ・ムジカ・ムンダーナ
    音楽を通貨とする島のお話。独特の世界観が面白かった!オチも好き。良い。

    ・最後の不良
    星新一っぽい社会風刺めいた話。とても好みだった!これ短かったけど、もっとこの世界観楽しみたかったなあ。

    ・嘘と正典
    共産主義の話は難しかったけれど、分かりやすく書いてくれていたので、話はすっと入ってきた。何よりタイムトラベル絡みなのが面白かった。話としては短かったけど、充実度がとても高い!クオリティの高い短編だった。

    全体的に、嘘や歴史が共通しているような感じがして、繋がりも楽しめた。
    どれも短編ではもったいないくらいに好きな世界観で、クオリティが高かった。
    すっごく好きでした!楽しかった。

    (オーディブルにて)

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    2025年07月03日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    著者と様々な分野のゲストが語り合うラジオ番組を書き起こした本。著者があくまで小説家としてラジオを進めており、その中でフィクションとはなんなのか、全く関係のない他分野とどのような共通点があるのかといった洞察が散りばめられていた。

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    2025年06月27日
  • ゲームの王国 下

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    ネタバレ

    上巻はたしかにカンボジアの歴史的背景をもとに共産主義の破綻や翻弄される国民を描いていたはずだった。 
    このテイストで物語が続くのかと思いきや、下巻に入った途端、2023年という現代に突然移り変わる。

    そして、何より脳波を使ったゲーム「ブラクション・ゲーム」を基準に人の思い出や社会とゲームの違い、勝利と敗北…色んなところに話を展開する。最終的な場面はゲームの情景を説明しているのかムイタックとソリヤが思い出を懐古してるのかもぐちゃぐちゃなんだが、たしかにSF小説であり、でも読み手を置き去りにしてるような感じで…。

    なのに、なんだこの満足感。

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    2025年06月11日
  • ゲームの王国 上

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    ネタバレ

    最近ハマっている作者。

    舞台はカンボジアで、フランスやベトナムなどの様々な国からの圧力や思想が入り混じり内乱状態の時代背景。

    共産主義を掲げ、実行するサロトサルやそれに対して密かに反乱を企てる娘のソリヤ、とある町で生まれ、激動の人生を過ごすムイタックとティウンの兄弟…。
    とにかくいろんな人物の視点から思惑と理想、現状に対する不満などがひっきりなしに描かれている。

    正直、カンボジアの歴史的背景を押さえていた方が絶対に楽しめるので読者の根本的な教養が問われる部分が多いため全てを楽しむには私の実力不足が否めないが割と面白いので下巻にも期待。

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    2025年07月14日
  • ゲームの王国 下

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    ようやく上巻の複雑に交錯する登場人物らと舞台設定に慣れたと思ったら、物語は突然のリセット(半世紀の時が流れる)。
    アルンとリアスメイに世代交代、ムイタックとソリアの神話(ゲーム)はようやく幕を下ろした。
    本書の雰囲気や読後感はマルケスの『百年の孤独』っぽい。
    先に『地図と拳』を読んでいたが、本書のほうが好み。

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    2025年05月25日
  • ユートロニカのこちら側

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    その街ではお金はもらえる、仕事はしなくていい、犯罪は起きない、まさに楽園だというのに、はじめからディストピア感満載だ。
    小川哲さんのデビュー作は、すでに彼独自の文体、世界観が確立されており、唯一無二を感じさせる。ここから『ゲームの王国』や『地図と拳』等へと連なっていくわけだが、この淡々と進む物語はなぜか叙情的な読み心地にさせる。
    作品の根底に流れる哲学的な要素は、著者の岩波文庫を読破した下地があることは間違いなく、そこからの面倒くさい思考、さらに作品への落とし込みが、まさに魅力になっている。

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    2025年05月23日
  • Street Fiction by SATOSHI OGAWA

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    ラジオで放送していた内容の書籍化。
    小説家を中心とした豪華な面々との対談は軽快で読みやすい。が、まえがきとあとがきは小川先生らしい捻くれた感じで、このスタンスで対談してるの面白いな。小泉今日子さん、千早茜先生、逢坂冬馬先生、太田光さん、加藤シゲアキ先生の回が好きです。
    最初は二人だけ挙げたのに、後からこの回も良かったなと書き足してしまい、今の段階でも(でもあの人の回も良かった……)と思っているので、それだけどなたとの回も面白かったということで。

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    2025年03月20日
  • ゲームの王国 上

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    緊張と緩和のバランスが絶妙。史実を基としたかなり重苦しいテーマを描いているのに、所々で笑わされてしまう。難しいことを分かりやすく説明できるのが本当に頭のいい人だと言うが、作者の小川哲さんは正しくそういう人だと感じた。

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    2025年01月02日
  • 君が手にするはずだった黄金について 無料お試し版

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    自分を構成するもの

    自分を構成するもの――それを円グラフで表す。
    それが元素であれば、炭素、水素、酸素、窒素、その他金属。
    ハガレンのエドに言わせれば、子供の小遣いでも材料は買える。
    だが、他の要素でグラフを書くとしたら?
    エントリーシートとか懐かしいし、いきなり自己分析しろと言われても困ったことを思い出す。

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    2024年11月30日
  • ゲームの王国 上

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    全編にわたって著者の初期衝動が爆ぜまくっていて、一気に読みました。

    昔、仕事でポルポトやクメールルージュのことをかなり調べました。

    資料的な理解が進めば進むほど、理解の本質からは遠のく違和感がずっとあった。こういう時代だったとは頭でわかる。けれど、人々の息遣いや、緊張感や、死は、どうしても質量を伴って身体に落ちてこなかった。

    あのとき、この本が世の中にあったら良かった。

    いつだって、胸を刺すのは誰かの人生の物語。

    多くの生きる喜び、死への痛みに刺され続けた上巻でした。

    下巻も楽しみです。

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    2024年05月09日
  • 嘘と正典

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    小川哲の多才

    村上ラジオのプレ番組でのレギュラー出演で知り、地図と拳に打たれ、この作品で改めてその多才さを知りました。音楽の話も、馬の話も手品の話もみんな楽しい、小川さんを知ることができて良かった。

    #感動する #癒やされる #カッコいい

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    2023年05月18日