小川哲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
評価が難しい。前半はやや登場人物が物語のための装置のような感じがしてしまい思ったよりは読むのに時間がかかった。もっと高木の苦悩をみたかったよ。
でもこれは都市を中心にしてある時代を切り取った壮大な空想科学小説。これ以上の書き込みは作品として長大になりすぎて成立しない気もする。ただ壮大さ故に世界史の教科書的な概観が多い気もしてしまう。
あとミステリーに慣れすぎて目標が設定された道のりの予想との差異を楽しむような読み方になっている感はある。
この物語の強みは壮大で重厚なテーマの中でキャラクターが持つ狂気を魅力として掴みながら引っ張り回されるような読み方がいいのかもしれない。
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Posted by ブクログ
1970年代の地獄のカンボジア。
ポル・ポトの支配していた時代を駆け抜ける、史実を元にした物語の下巻。
大量殺戮の季節が生んだ、復讐の誓いと二人の訣別。そこから半世紀後。
政治家となったソリヤは理想とするゲームの王国を
実現すべく権力の頂点を目指す。
一方でムイタックは自身の渇望を完遂するため、
脳波測定を使用したゲーム『チャンドゥク』の開発を
早熟な少年アルンと共に進めていた。
過去の物語に呪縛されながらも光ある未来を
希求して彷徨うソリヤとムイタックが最後に手にしたものとは。
壮絶な歴史を描いてきた上巻とは打って変わって、
いきなり物語は50年後の現代、そして一気にファンタジー感を増す。
思ってもみなかった展開に最初は拍子抜けしたが、
根本は一応変わってはいなかった。
ゲームの王国というタイトルから想像できる内容になってきた。
それはつまり予想ができてしまう物語ということなのだが。
上巻の圧巻的な内容からは少し薄味かなという印象。
この下巻に記された物語をメインとして考えるならば、
上巻はそのためのセットアップといったところか。
だが、そのセットアップが歴史も相待って強烈過ぎたところが
下巻に対する評価の分かれ目だったのかもしれない。
とは言え、これだけの重厚な物語を
日本人の作家が描ききったという点は賞賛に値すると思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ神とか信仰をテーマした小川哲の短編集
テーマを絞っているようで、取り上げている題材と描かれている知識は膨大。まずはその情報量というか知識を浴びるのが楽しい。
短編なので基本アイデア勝負なんだけど、伏線張って回収していくこともきちんと押さえている。ただ、短編故の説明余地の少なさで、落とし噺のようにすっきり治まる話もあれば、難解のまま終わってしまう話もあって好みも分かれると思う。
聖書の解釈を巡る冒頭作で「なんじゃこの情報浴びせ系」と圧倒させておいて、SF感動譚の最終話でほっこりさせるという構成は良い。難解度的に、掴みはOKで始めるのも手だが、いきなり関門ガツンで最後ユル目ってのも1冊全体通すと好印象なんだなぁと。 -
Posted by ブクログ
前情報何もなくタイトルだけで手に取ると、
想像と180度違う内容に驚愕する小説。
とにかく日本人の作家が選ぶ題材としてはかなり挑戦的な部類だろう。
後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュの首魁サロト・サル。
その首魁の隠し子とされるソリヤという少女。
そして貧村ロベーブレソンに生を享けた天賊の智性を持つ神童のムイタック。
皮肉な運命と偶然に導かれた二人は、
軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで出会った。
秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺。
百万人以上の生命を奪った全ての不条理は、
少女と少年を見つめながら進行する。あたかもゲームのように。
世界史の授業で触れた程度だったカンボジアの歴史。
ポル・ポトの行った事実も知っている程度ではあった。
だがそれはフィクションの世界ではと疑いたくもなる地獄だった。
そんなことがつい50年前に当たり前の様に起こっていたこと。
その歴史的背景と出来事を下地に物語は繰り広げられていく。
フィクションなのだが、フィクションではない事実。
全て目を覆いたくなるような、そんな胸を締め付けられる重厚な物語。
初めは、本気で皆が幸せに暮らせる世界、
それを心から信じて始まったことなんだろう。
繰り返されていく歴史を見て常々思う。
どこでその道は間違った方向へ向かってしまったのだろうか。
クメール・ルージュに関してはこれがことさら醜悪である。
簡単に一言で片付けてしまえば、バカの集まりである。
こんなバカ共が統治する国がまともに発展するわけがない。
そんなこと、誰もが解りきっているのに悲劇は起こってしまう。
その悲劇性をしっかり携えつつ、
物語としてきちんと昇華している作家の手腕に感服である。
知識を奪うという最も発展を妨げる愚行。
そんな愚行が横行することなど、もう二度とあってはいけない。 -
Posted by ブクログ
帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範囲内での気持ちの揺れ動きが小さい所が逆に心に引っ掛かる。
〇 月の高さ/藤井太洋
劇団の舞台美術スタッフと星座との関係でほんのわずかながらにSFのにおいがするが、話の流れは至って普通の話。
〇 ちょっとした奇跡/小川哲
既読。初めて読んだ時にはかなりインパクトを受けたが、2回目ともなるとインパクトは皆無。逆に言うと、もう完璧に完成された作品であるとも言える。
〇 水星号は移動する/深緑野分
設定は宇宙旅行も簡単にできる未来社会。その未来社会でも下層社会で生きる人もいる。キャンピングカー、いや移動式の旅館「水星号」に搭乗、いや宿泊する人達とのなんでもないやり取りが実に面白い。
〇 グレーテルの帰還/森晶麿
立派な推理小説。「旅」というイメージよりも、人生の旅のようなイメージ。最大の賛辞を述べるならば、ミニ松本清張っていう感じ?
〇 シャカシャカ/石川宗生
まずは「シャカシャカ」が何であるか考えることから始まる。最初のシンガポールが何故4番なのか判らないまま読み始める。その後、それらの意味が判る。山田太一の「終りに見た街」が激しく連続して起こると言えば良いのだろうか・・・結末は全然違うけど。この作品が一番SFっぽくてとても楽しめた。素晴らしい作品だ。
裏表紙の解説で知ったが、この文庫本は「Voyage想像見聞録」の改題だった。そういうことか。 -
Posted by ブクログ
タグにディストピアって入れたけど、
本来この小説の世界では、舞台となる近未来アメリカで開発された【アガスティアリゾート】という街はユートピアのイメージなんだと思う。
個人の情報を全て売り渡す見返りとして、何から何まで管理され安全で働かなくても生活できる街への移住ができる。
そんな一見夢のような街、だけどそこに住む人は全て幸せになれるのか?
そのシステムに対してちょっと疑問を持った人たちの視点で各章ごとに、正解がなんなのかを考えさせられるお話。
解説にもあったんだけど、ドーフマンの笑える章がなかったら眠くなる小説だったって印象になりかねない。
SF小説ってあんまり読まないし、苦手な気持ちもあったけど、小川哲さんの小説ならばと思って読んでみた。
面白く読めた。
私はアガスティアリゾートには移住できるよって言われても拒否するわ。