小川哲のレビュー一覧

  • 嘘と正典

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    ネタバレ

    表題が面白い。
    過去にメッセージを送受信できる技術の発見により、共産主義を止めるというSFフィクションと、マルクスとエンゲルスの共産主義の誕生のノンフィクショナルな史実の組み合わせで面白い。
    オチも秀逸。

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    2025年12月24日
  • ゲームの王国 上

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    カンボジアの歴史を知らずに読んで、時折史実を検索しながら読んだ。凄惨な拷問シーンもあり、人間は他者にこんな酷いことができる生き物なのかと暗澹たる気分になる。登場人物がわからなくなり、戻って読み直したり確認しながらじっくり読んだ。下巻を買いに行くぞ!

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    2025年12月16日
  • 地図と拳 上

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    物語を楽しみながらも20世紀初頭の日本の激動の時期の歴史も学べるようでとても楽しめた。
    政治、宗教、人種などあらゆる要素を取り入れながらも上手くまとめている印象。
    テンポよく進むストーリーや特徴的なキャラクターも魅力だが、日本、中国、ロシア、それぞれの立場でそれぞれの正義があり、一概にどれが正解とも言えず、正義とは何かと考えさせられる一面もある。

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    2025年12月15日
  • ゲームの王国 上

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    1970年代にカンボジアで発生したクメール・ルージュによるクーデター、そしてその後続くポル・ポトによる独裁政権を舞台にした架空戦記……でいいんだよなこれ。舞台が舞台なだけにお辛い展開が続くし、主要キャラかと思った人もぽんぽんと死んでしまう。まだ上巻だがなかなかヘヴィな読み心地。特にムイタックとソリヤの関係性はそうなってしまうのかと意外な展開。
    あとさ、なんか登場人物紹介の時点でも変だなって思ったんだけど、ちょいちょい様子おかしい人出てきてない……? 特に土使ったスタンド攻撃みたいなことしてたやつ。あいつまじなんなんだよ……

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    2025年12月12日
  • スメラミシング

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    短編は発想が核だと思うけれど、作者のその幅広さと斬新さに驚く。ピリピリとヒリつくリアルな表題作にの不穏さに心震された。「七十人の翻訳者たち」と「ちょっとした奇跡」の、毛色の違うSF2作が特に好き。

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    2025年12月11日
  • 地図と拳 上

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    評価が難しい。前半はやや登場人物が物語のための装置のような感じがしてしまい思ったよりは読むのに時間がかかった。もっと高木の苦悩をみたかったよ。
    でもこれは都市を中心にしてある時代を切り取った壮大な空想科学小説。これ以上の書き込みは作品として長大になりすぎて成立しない気もする。ただ壮大さ故に世界史の教科書的な概観が多い気もしてしまう。
    あとミステリーに慣れすぎて目標が設定された道のりの予想との差異を楽しむような読み方になっている感はある。
    この物語の強みは壮大で重厚なテーマの中でキャラクターが持つ狂気を魅力として掴みながら引っ張り回されるような読み方がいいのかもしれない。

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    2025年12月10日
  • ユートロニカのこちら側

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    近未来SFだが、もはや現実であろう。無料でYouTubeを見れて喜び、LLMに思考をアウトソースする私たちは、果たしていかに(あるとするならば)自由を、得られるのだろうか。

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    2025年12月01日
  • ゲームの王国 下

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    1970年代の地獄のカンボジア。
    ポル・ポトの支配していた時代を駆け抜ける、史実を元にした物語の下巻。

    大量殺戮の季節が生んだ、復讐の誓いと二人の訣別。そこから半世紀後。
    政治家となったソリヤは理想とするゲームの王国を
    実現すべく権力の頂点を目指す。
    一方でムイタックは自身の渇望を完遂するため、
    脳波測定を使用したゲーム『チャンドゥク』の開発を
    早熟な少年アルンと共に進めていた。
    過去の物語に呪縛されながらも光ある未来を
    希求して彷徨うソリヤとムイタックが最後に手にしたものとは。

    壮絶な歴史を描いてきた上巻とは打って変わって、
    いきなり物語は50年後の現代、そして一気にファンタジー感を増す。
    思ってもみなかった展開に最初は拍子抜けしたが、
    根本は一応変わってはいなかった。
    ゲームの王国というタイトルから想像できる内容になってきた。
    それはつまり予想ができてしまう物語ということなのだが。

    上巻の圧巻的な内容からは少し薄味かなという印象。
    この下巻に記された物語をメインとして考えるならば、
    上巻はそのためのセットアップといったところか。
    だが、そのセットアップが歴史も相待って強烈過ぎたところが
    下巻に対する評価の分かれ目だったのかもしれない。
    とは言え、これだけの重厚な物語を
    日本人の作家が描ききったという点は賞賛に値すると思う。

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    2025年11月30日
  • スメラミシング

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    ネタバレ

    神とか信仰をテーマした小川哲の短編集
    テーマを絞っているようで、取り上げている題材と描かれている知識は膨大。まずはその情報量というか知識を浴びるのが楽しい。

    短編なので基本アイデア勝負なんだけど、伏線張って回収していくこともきちんと押さえている。ただ、短編故の説明余地の少なさで、落とし噺のようにすっきり治まる話もあれば、難解のまま終わってしまう話もあって好みも分かれると思う。

    聖書の解釈を巡る冒頭作で「なんじゃこの情報浴びせ系」と圧倒させておいて、SF感動譚の最終話でほっこりさせるという構成は良い。難解度的に、掴みはOKで始めるのも手だが、いきなり関門ガツンで最後ユル目ってのも1冊全体通すと好印象なんだなぁと。

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    2025年11月30日
  • ゲームの王国 上

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    前情報何もなくタイトルだけで手に取ると、
    想像と180度違う内容に驚愕する小説。
    とにかく日本人の作家が選ぶ題材としてはかなり挑戦的な部類だろう。

    後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュの首魁サロト・サル。
    その首魁の隠し子とされるソリヤという少女。
    そして貧村ロベーブレソンに生を享けた天賊の智性を持つ神童のムイタック。
    皮肉な運命と偶然に導かれた二人は、
    軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで出会った。
    秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺。
    百万人以上の生命を奪った全ての不条理は、
    少女と少年を見つめながら進行する。あたかもゲームのように。

    世界史の授業で触れた程度だったカンボジアの歴史。
    ポル・ポトの行った事実も知っている程度ではあった。
    だがそれはフィクションの世界ではと疑いたくもなる地獄だった。
    そんなことがつい50年前に当たり前の様に起こっていたこと。
    その歴史的背景と出来事を下地に物語は繰り広げられていく。
    フィクションなのだが、フィクションではない事実。
    全て目を覆いたくなるような、そんな胸を締め付けられる重厚な物語。

    初めは、本気で皆が幸せに暮らせる世界、
    それを心から信じて始まったことなんだろう。
    繰り返されていく歴史を見て常々思う。
    どこでその道は間違った方向へ向かってしまったのだろうか。
    クメール・ルージュに関してはこれがことさら醜悪である。
    簡単に一言で片付けてしまえば、バカの集まりである。
    こんなバカ共が統治する国がまともに発展するわけがない。
    そんなこと、誰もが解りきっているのに悲劇は起こってしまう。

    その悲劇性をしっかり携えつつ、
    物語としてきちんと昇華している作家の手腕に感服である。
    知識を奪うという最も発展を妨げる愚行。
    そんな愚行が横行することなど、もう二度とあってはいけない。

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    2025年11月28日
  • 嘘と正典

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    ネタバレ

    不思議な読み味の作品たちだった。
    小川さんの作品は、君が手にするはずだった黄金についてと、君のクイズしか読んだことがないけれど、その2作ともに感じた内包するテーマは深いけれど、ジャンルに形容し難い独特な短編集だった。
    ヒトラーの話、流行の話と最後の嘘と正典は、最後の最後にやられたー!と言いたくなる物語だった。
    というか、歴史とフィクションの織り交ぜ方がうますぎる…
    どの話も結構楽しめたので、このまま小川さんの作品を読み続けたい。

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    2025年11月26日
  • 地図と拳 上

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    史実と創作の見事な融合と言ったらいいのでしょうか、圧倒的な臨場感に引き込まれます。近代史を再勉強したくなります。頻出する中国語読みが気になって確認のためにページを戻る回数が多くて、読み進めるのに時間が相当かかるのが難点。いざ下巻へ!

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    2025年11月24日
  • 嘘と正典

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    もはや小川哲氏のファンになったので、理由なく手に取る。
    重厚ながら、ストレスなく読める文体。
    ご都合主義に終始しないストーリー。
    素晴らしい読書体験。
    短編だからか話が着地しきっていないようなところはやや物足りなかった。

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    2025年11月23日
  • 嘘と正典

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    SFって好きだけど疲れるから読むのは多くなくて、でも短編だと物足りないみたいな立ち位置だけど、これは全然物足りなくない。短編なのにちゃんと完成されてるって隙がないな。個人的には、最後の不良、嘘と正典、ムジカ・ムンダーナが好き。

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    2025年11月06日
  • 嘘と正典

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    話の展開がSFでおもろい。嘘と正典はタイムマシン、運命が決められている、歴史の改変し合いの戦いで面白かった。あとは究極の音楽を探す話も。どれも伏線があって最後には驚きがある。ただ登場人物はどの人もCPUみたいで記号のような形で感情は無い。

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    2025年11月04日
  • 旅する小説

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    帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。

    〇 国境の子/宮内悠介
    講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範囲内での気持ちの揺れ動きが小さい所が逆に心に引っ掛かる。

    〇 月の高さ/藤井太洋
    劇団の舞台美術スタッフと星座との関係でほんのわずかながらにSFのにおいがするが、話の流れは至って普通の話。

    〇 ちょっとした奇跡/小川哲
    既読。初めて読んだ時にはかなりインパクトを受けたが、2回目ともなるとインパクトは皆無。逆に言うと、もう完璧に完成された作品であるとも言える。

    〇 水星号は移動する/深緑野分
    設定は宇宙旅行も簡単にできる未来社会。その未来社会でも下層社会で生きる人もいる。キャンピングカー、いや移動式の旅館「水星号」に搭乗、いや宿泊する人達とのなんでもないやり取りが実に面白い。

    〇 グレーテルの帰還/森晶麿
    立派な推理小説。「旅」というイメージよりも、人生の旅のようなイメージ。最大の賛辞を述べるならば、ミニ松本清張っていう感じ?

    〇 シャカシャカ/石川宗生
    まずは「シャカシャカ」が何であるか考えることから始まる。最初のシンガポールが何故4番なのか判らないまま読み始める。その後、それらの意味が判る。山田太一の「終りに見た街」が激しく連続して起こると言えば良いのだろうか・・・結末は全然違うけど。この作品が一番SFっぽくてとても楽しめた。素晴らしい作品だ。

    裏表紙の解説で知ったが、この文庫本は「Voyage想像見聞録」の改題だった。そういうことか。

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    2025年10月23日
  • 旅する小説

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    国境の子:宮内悠介/月の高さ:藤井太洋/ちょっとした奇跡:小川哲/水星号は移動する:深緑野分/グレーテルの帰還:森晶麿/シャカシャカ:石川宗生

    それぞれの時、それぞれの場所で
    旅が生まれ物語りになる
    不思議な感じのする物語たち
    「シャカシャカ」の切り取られる世界のイメージは見た気がする……夢かな??

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    2025年10月22日
  • 大宮エリーの東大ふたり同窓会

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    凄い面白かった。どの方も、本当に魅力的だし、大宮エリーさんがその人の魅力を絶妙に表現してくれている。

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    2025年08月11日
  • 嘘と正典

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    書くのを忘れていたか、書いたのが消えたかしたが、非常に面白かった。

    おそらく初めに収録されていたボドゲの話と、競馬の話、ヒトラー?の話(だっけか)が印象に残っている。

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    2025年08月01日
  • ユートロニカのこちら側

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    タグにディストピアって入れたけど、
    本来この小説の世界では、舞台となる近未来アメリカで開発された【アガスティアリゾート】という街はユートピアのイメージなんだと思う。

    個人の情報を全て売り渡す見返りとして、何から何まで管理され安全で働かなくても生活できる街への移住ができる。
    そんな一見夢のような街、だけどそこに住む人は全て幸せになれるのか?
    そのシステムに対してちょっと疑問を持った人たちの視点で各章ごとに、正解がなんなのかを考えさせられるお話。

    解説にもあったんだけど、ドーフマンの笑える章がなかったら眠くなる小説だったって印象になりかねない。

    SF小説ってあんまり読まないし、苦手な気持ちもあったけど、小川哲さんの小説ならばと思って読んでみた。
    面白く読めた。
    私はアガスティアリゾートには移住できるよって言われても拒否するわ。

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    2025年07月31日