小川哲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ26歳の若者が、世界一の金持ちを目指して起業し、成功を収め、そして自滅してゆく話。焦るように、大学院にて日の当たらない研究を続けている中学の同級生に、起業を持ちかけたのは、桐田奈南。「光合成をするコンクリート」をつくることに決め、仲間を集め、会社を作り上げていく。スタートアップとか、起業とかって、こういうことだったんだと、知識的にも面白かったし、次々入れ替わる話者の、興奮、葛藤、逡巡、動揺、勢いみたいなのが、手に取るようにわかる。たゆみない向上心と、行動力、どんな相手にも物おじしないハートの強さと、誰もを惹きつける圧倒的な才能。そんな人物たる桐田奈南の欲望とは、なんだったのか。熱き心を持った若者たちの青春小説でもあった。そして、桐田の被った皮が、ぼろぼろと剥がれていく様がすさまじかった。
-
Posted by ブクログ
ミステリーではなく恋愛モノではなく
悲しくなく勉強のためでもなくSFでもない
でもちゃんと展開がある、
そんな小説が読みたくて
本屋さんをぐるぐる回っていたときに
手に取った1冊。
なかなかそのとおりの本を
手に取ったな、我ながら。
本当に個人的に、言葉を選ばずに感想書くと、
えーこの人なんか面倒くさくて
うるさいな、、笑 という
感想を抱きつつ、なぜか、なぜだか
最後まですっと読んでしまった。
不思議な感覚。
一つの出来事に対して
こんなに多角的に物を考えられる賢さが
羨ましくもありつつ
生きるの大変そう。
だけどそんな大変さを共有してもらえて
おもしろいなと感じた。
主人公の名前と筆者の名前が同じだから
エッセイなのかな?どこまでが本当で
どこまでがフィクションなんだろうなと
思いを巡らせなら読むのも楽しかった。
けどやっぱ
ちょっとうるさいなー笑 っていう気持ちはあるので、
再読は数年先にしようかな!笑
と。ここまで書いて、
他の人の感想を読んでみた。
この小説から感じ取るものや受け取るものが
人によって全然違う…!
だけど何かしら受け取ってる。
すごいな。感想まで含めて、おもしろいと思った!
そしてこの本を読んだあと、
いまの自分の語彙力の無さに
がっかりしながらこれを書いてる。笑
本を読んだ後にこんな感覚になったのは
初めてかもしれない! -
Posted by ブクログ
小川さんの小説や過去のインタビュー・書評・卒論(!)から、切り抜いてきた文章で構成された切り抜き集。
小川さん自身の主張とは異なる文章もあるというが(小説から切り抜いてきたら当然そうだろう)、どのように誤読されても良いとのこと。
そして、そもそも「すべての文章が著者の意図通りに伝わるなんてことはあり得ない」のであり、「読書の醍醐味とは誤読である」と言う。これ、めちゃくちゃ同意です。私自身たぶんいっぱい誤読してる…。これまでの自分の経験と響き合うことによって、私たちは物語に様々な解釈を見出す。それは、きっと幸せな誤読だろう。
やっぱり、小川さんは頭が良い方なんだなぁと思わせる文章ばかりでした。まだ読んでいない著作も沢山あるので、読んでいきたいです。
以下は、特に好きだった章です。
↓
● 野球
野球には不可解なネーミングが多い、という話。ストライクとボールとアウトは、それぞれ、動詞・名詞・副詞(前置詞)だ。品詞が揃っていなくて気持ち悪いと言われて初めて、確かにそうだなぁと気づく。
●普通
あらゆる美徳の中で、「普通」がもっとも過小評価されているのではないかという話。
私たちの生活は「普通」によって守られているんだなぁ。普段考えてもみなかったことに気づかされました。
●唖然
SF作家の樋口恭介氏と初めて対面したときの話。とある、めちゃくちゃ気まずい瞬間を描いているのですが、気まずさの因数分解が上手すぎて、笑いました。作家が同業者と出会ったときに1番やってはいけないことをしてしまった末路…確かにそれは危険。その危険に全く気づかなかった人間と、その危険を犯す人間などいないと思い込んでいた人間によるコントみたいな悲劇。それを小川氏は「唖然の無限フィードバック連鎖」と名付けていますが、まさに言い得て妙。
●思考停止
アニメーション映画『君の名は。』について、ストーリーに無理があるんじゃないか…と考え始めた瞬間にRADWIMPSが流れ出して思考停止させられる、という話。「粗のない作品を考えることと同じくらい、作品の弱点をどう気づかせないように工夫するかという点も重要」という指摘には、納得させられました。 -
Posted by ブクログ
火星への移住を成功させた地球人たち。そんな中知的生命を探すために移住してきたカワナベは、今までゴミ同然に扱われていた物質に不思議な性質があることに気づく。
一方、火星生まれの学生リリは地球への旅行を夢見ていたが、実現まであと一歩というところで誘拐されてしまう。
地球と火星、同じ人類同士なのに住む場所が違うせいですれ違ってしまった彼らは、このふたつの事件を皮切りに一触即発の状態へと陥っていく。
かつては惑星間でなくとも地球の大陸間でもあったであろうタイムラグによる意思疎通の難しさ。
それに意思疎通という意味では言語が違うだけでも正確にやりとりするのは難しい。いや、同じ言語を使っていても相手に間違えた解釈をされることもあるか。
なんにせよ、互いが互いを知り、思いやることで、実は大きな諍いですら減らせるんだよね。 -
Posted by ブクログ
クイズ番組の決勝で、僕の対戦相手は1文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たす。彼はなぜ正答できたのか? 推理作家協会賞受賞&本屋大賞6位、圧巻のエンターテインメント。文庫化に際し短編小説「僕のクイズ」を収録!解説は田村正資氏。
(朝日新聞出版ホームページより 『君のクイズ』紹介文)
私はクイズ番組を見るのが実はちょっと苦手だったりする。
緊張している人を見るのがまず苦手。目を見開いて思考をフル回転させているクイズプレーヤー達の表情が恐ろしい。勝ち負けが決まるまで、ハラハラするのが本当に嫌だ。そして、勝敗が決まったら決まったで、勝った方が喜んでいる横で、負けた方ががっくり肩を落としているのを見てしまったりすると悲しくなって「勝敗などつけなければ良いのに」と思ってしまう。
しかし『君のクイズ』を読んでクイズに対する印象が変わった。主人公の三島玲央にとっても、彼の対戦相手の本庄絆にとってもクイズは人生だった。クイズ≒人生。勝敗≠人の優劣……私、勝負のこと人の優劣を決める行為だと思ってたのか、とハッとする。クイズに正解するためにテクニックを磨いたとて、クイズに誤答はつきものなのだ。武の無い武道すぎる。
感想の多くで「ミステリーだと思ってたけど、思ってたのと違う」と書いている人を見かけたけれど私も同じ気持ち。「どうして彼は1文字も問題が読まれないうちに答えられたのか」と犯人を追い詰めていく物語になるのかと思っていたら「人は何故クイズをするのか」みたいな話となり「そこから!!!?」となってしまった。クイズの0文字回答が可能なのか、クイズ回答のテクニックから可能性を探り始めるのも驚かされた。そういえば5文字くらいしか問題が読まれていないクイズでもバンバン早押ししているクイズプレーヤーってよく見るかも。あれは特定のキーワードとイントネーションから予測してできるテクニックだったんだ……。クイズプレーヤーの思考回路を垣間見ることができたような気分になれる、他にない読後感の本だった。
「答え」を口にするために、問題を耳にした瞬間クイズプレーヤーの頭の中では記憶がフル回転する。答えは暗記した内容だけではなくて、今まで出会った人とのやりとりや、見かけたポスターに書いてあったりもするという。何かの経験から答えを引っ張りだすクイズプレーヤーの思考の描写には、ニュートンが林檎が落ちるのを見て「万有引力」という答えに至った話と同種の魅力を感じてしまう。人間はまだどこかに、ごく小さなきっかけから大正解を引っ張り出してこれる可能性を秘めているんじゃないのか。クイズ、人の勝敗を見るのは苦手だけれど、自分でやるのはちょっとやってみたいかもしれないとすら思ってしまった。(記憶力・瞬発力にかけるので多分全然できないけど。)
人生物語でもあり、青春物語でもあるが、主役はクイズそのもので、人間模様が重すぎず、良い意味でライトに読めるのがとても良かった。