建築士というと、斬新で奇抜なデザインとお洒落の極みの印象があった。
本書によれば、実際そのように思考する物もいて経済システムの一部としての割り切りでいることも確かなようだ。
それはどこか窮屈さを感じることもある。
そのような中でビジネスとは違い、その時、その場所に最も適した建築を思考してきた著者の
...続きを読むスタイルにすごく共感した。
その源泉は幼き日の原風景であったり、地域の大工との語らいであったりと肌で感じた経験に基づいている。
日本は歴史ある古い国であり、多くの自然災害から学んだ建築技術がある。その極みは余す所なく使い倒す木造技術だ。
残念ながら、文明開花によって古くさいものとして扱われた。
迎えた大量生産、大量消費の工業化の中でコアとなったのは「家」でありいわゆる三種の神器は従属品に過ぎないとする着想は新鮮に響いた。
日本の里山や日本家屋に見られる縁側など自然との距離感の曖昧さや一体感が実は豊さなのではないかと感じた。
新国立競技場のコンセプトが自然ありきであることは、日本人のDNAに刻まれた我々は自然の中の存在に過ぎないことを再認識させてくれそう。
そのような視点で新国立競技場を訪れてみたくなった。