あらすじ
たとえ批判されても、これからの時代のために、建築をつくる。
新国立競技場を設計する建築家・隈研吾が、決意を語る。
建設予算の高騰、“景観破壊”批判などにより、ザハ・ハディド案が白紙撤回となり、
再コンペの結果、隈研吾が参加するプランが選ばれた。
“火中の栗”を拾った隈研吾のもとには、新プランへの様々な意見が寄せられている。
中には、日本の建築界を引っ張ってきた先輩建築家からの、思いもよらない批判もある。
だが、それでも、図面を引く。批判を受け止め、先に進むために。
コンクリートで作られた、スター建築家による“アート作品”ではなく、
人々が集い、愛される、「木のスタジアム」を作るために。
日本を襲った震災、そして、社会のギスギスした空気。「建築」そのものに対する強い風当たり。
あらゆるものを引き受ける意思はどこから来たのか。
なぜ今、「木の建築」なのか。余すことなく語る。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
(2017/4/13)
あのヘルメットみたいな、牡蠣みたいなザハ・ハディド案から、
神宮の森と調和する木が基調の隈案になって、
まずはほっとした新国立競技場。
しかし昨今の豊洲問題、国有地払い下げ問題を知るにつけ、
利権の甘い汁を吸おうという国賊がやたらばっこしていることに気づく。
いろんな思惑でとっとと取り壊されてしまったもとの国立競技場。
あれを壊さず改修する、というのが一番無難だったと今でも思う。
そうすれば、2019年のラグビーワールドカップにも当然間に合ったのに。
自然に優しい国立競技場になれたのに。
まあたられ場を言っても仕方ない。
隈さんの考えはとても自然なので、
いい競技場を作ってもらおう。
そして2021年にはラグビーを観に行こう。
第1章 逆風のなか、新国立競技場をつくる
第2章 木の建築だからできる"偉大なる平凡"
第3章 都市のさまざまな矛盾を引き受ける
第4章 "辺境"の日本から理屈を超えた建築を
第5章 先輩の仕事を引き継ぐ――大成建設 山内隆司会長
第6章 黒子として支える――梓設計 杉谷文彦社長
第7章 都市の祝祭性と建築――対談・茂木健一郎
Posted by ブクログ
日本人はどうも「妥協」という言葉をネガティヴにとらえがちですが、妥協とは大人が備えるべき高い能力のひとつであり、社会が必要とするのは、美しい妥協であるとぼくは考えています 木という素材は人々を調整する最高の道具です ヨーロッパ大陸は、ゲルマン的な価値観が支配する場所で、しぜんは制圧すべきものであり、崇拝の対象にはなりません ロジックでオレたち本当に幸せになれるかな なぜコンクリートのオフィスが必要だったかというと、柱のない大空間にたくさんの人を閉じ込めないと、効率的な仕事が出来なかったからです 里山資本主義 藻谷浩介 雲の上のホテル 日本人は、行間を読み合う人たちで、思考の強みは、茶道が象徴するように、空間と行為と言語の一体化にあると実感しました
Posted by ブクログ
受け身で戦う。プロジェクトの進め方の鍵として、軸が見つかるまで徹底して聞き役に徹する姿勢にに共感。建築の在り方は地域や環境に密着したもの、そのための木の役割は大きい。
紀元前ローマ時代に征服地から連れてこられたバラバラな人々をまとめるために、アウグストゥスは大理石でローマ都市を築き統合を成し遂げた。
紀元前に、建築という先端技術が社会を変えたことが、隈研吾さんは複雑化した現代社会で木こそがそのメディア的役割を担えるのではないかという。
オリンピックに向けた完成が楽しみになってきました。